なんか、夢を見ていたみたい。
主文。被告人を懲役15年6ヶ月の刑に処す。
はぁ、ついに決まったようだ。
まぁいいか。
娑婆にいてもろくな事がなかった。
働かず、保護を受け、それでもギャンブルでいつも金はなし。
あの日も、賭け事で大負けして、とにかくムシャクシャしてたんだ。
だから、幸せそうなあの母子を見て、苛ついて仕方なかった。
生後一年くらいの子供をベビーカーに乗せて、時折話しかけるあの光景が。
坂道で、後ろからおもいっきり背中を蹴りつけてやった。
母親は、ベビーカー共々、転がっていった。
急な坂だったから、それはもう面白いように。
運が悪かった。
丁度、転げ落ちた先が車道で。
母親は死亡。子供は生きてたが、障害は残りそうだ。
運が悪かったというのは俺の事だ。
殺すつもりなんてなかった。
ただ、少し痛い目に遭わせてやろうと思っただけなのに。
もうどうでもいい。
ここなら、飯にありつける。
空腹に悩まされることもないだろう。
しかし、あの母親ももう少し頑丈だったなら死ななかったのに。
まったく女は脆すぎて駄目だ。即死ではなく、数日間は頑張ったようだが、結局死んだら同じだ。もう少し頑張ってくれれば、俺の刑期も短くなっていたものを。
とりあえず、表面上真面目にお勤めしてれば、早くでられるかもしれない。
外では話す者もいなかったが、ここなら大勢いる。
誰かのせいにして。
反省など皆無。
ここにいる者の半分がまた戻ってくる。
そんな者が多数。
俺も、出た所で希望もなにもない。
同じように、再びここのお世話になるかもな。
見ていた景色が揺れ出す。
世界が崩壊していく。
変わる。
今いた場所とは違う場所へと。
最初に目に入ったのは。
ただただ、赤い色だった。
地面に赤い液体が広がっている。
「・・・・・・・・・・・・うぅ」
それは血のように真っ赤で。
いや。
血のようにではない。
身体中の感覚が無かった。
液体の中に浸されていたのは、誰かの腕。
他にも指、耳、歯。
これは、誰のもの?
ここで、津波のように、激しい痛みが襲いかかった。
(ふがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)
声にならない声を心で叫んで。
気が狂うほどの痛みが。
「ん、あれ、まだ意識があったのか」
薄れる情景の中に、女が一人。
白髪の眼鏡。
手には血まみれのナイフ。
よく見れば、俺の腹は左右に開かされていて。
腕の感覚がないのも当たり前。
本来ある場所に俺の腕はなく。
思い・・・・・・だし・・・・・・た。
俺は、レベル5になって。
ここに運ばれ。
この女。
刑罰執行人、拷問士に。
執行されていたのだった。
俺が、死の間際で見たものは。
どこか他の国の話で。
この国では、罪人は別の方法で裁かれる。
レベルにあった罰を。
その身に受けるのだった。
母親を殺した俺は、同じく死を与えられ。
子供に障害が残るような傷を負わせた俺は、同じく傷を負わされる。
「さぁ、そろそろお行き。ここでの罰は済んだ。次は地獄で罰を受けるといい」
女は、ナイフを剥き出しの心臓に。
やめてくれ。
出来心だったんだ。
運が悪かったんだ。
俺は悪くない。
この時、俺の顔はどんなだったのだろう。
怯えか。
恐怖か。
だが、女の表情は最初から最後まで変わることはなかった。
そもそも俺を人として扱ってない。
人形遊びをする少女ではないけども。
人を人と扱わないこいつもまた人ではなく。
ナイフは無慈悲に心臓を貫いた。
ぴゅっと噴き出す血を見て。
俺は、次のステージへと。
本編は拷問がメインです。途中までは。