わわ、因果応報だよ。
出すつもりなかったのに、また紅子です。
私は紅 紅子。
あの凶悪殺人鬼集団、殺人鬼連合の一員。
今日は、本屋に来ているの。
私も殺人鬼とはいえど、年頃の女の子。
ファンションやらなんやらに興味はある。
目当ての雑誌をとって、レジに並ぶ。
そこは、複数のレジが並んでおり、客は中央に列をつくり空いた先から呼ばれるシステム。
私も列に加わり順番を待っていたのだけれど・・・・・・。
「お客さま、申し訳ありませんが、中央の列にお並びください」
そんな店員の声が聞こえた。
見ると、一人のお爺さんが、本を片手に会計後に通す出口から入り割り込んでいたのだ。
お爺さんは、最初は、渋々中央に向かった。
だけど、それは列の先頭で。
「次のお客様、どうぞー」
本来なら、列の先頭にいるのは私。
だが、そのお爺さんがレジに進んだ。
別にね、私はこんな事ではなんとも思わない。
お爺さんも、よく分かってないみたいだから、私より後ろの人には悪いけど先に会計をしてもらっても構わない、そう思ってた。
だけど、店員は流石しっかり見てるね。
「あ、申し訳ありません、ちゃんと中央のレジからお並びください」
そうお爺さんに伝えたのだ。
ま、これで自分が間違ってた事にも気付いただろうし、殺人鬼の私がちゃんと並んでるんだからしょうがないね。
言われた通り、素直に並び直せばいいものを。
そのお爺さん、まさかの行動に出る。
「あぁ? わかんねぇよっ! どこだ、列って、もういいっ! 馬鹿野郎っ!」
激昂し、持っていた本と暴言を店員に投げつけ、その場を離れていった。
「うわぁ・・・・・・」
店員さんは、それでも何事もなかったかのように、順番待ちをしていた私を呼んで会計に移った。
ほえー、さすが客商売だねぇ。
これだけ人が来れば、こんな客もいるか。
忍耐がなけりゃ、できない仕事だね。
あの、店員のお姉さんは人間が出来ていたけど。
私は違うんだなぁ。
そろそろうちのお爺ちゃんの顔にも飽きたし。
ああいうのも、たまには・・・・・・。
店を出て行って爺さんの後をつける。
人気の無い場所にさしかかった所で・・・・・・。
「むあがっ!」
口を押さえ、裏路地に連れ込んだ。
いやぁ、か弱いねぇ。少し力を込めれば何もかも折れそう。
貧弱、貧弱。
「おい、じじい。私はねぇ、中身はアレだけど、家ではおじいちゃんおばあちゃん子なんだよ。お年寄りは本来優しいじゃない、でも、実際、お前みたいなのも多いんだよね」
口を押さえる手はそのままで、耳元で囁く。
「お前の医療費って誰が賄ってると思ってるんだ、お前が本を投げつけたあの店員のように日々必死に働いている人達だ。現実問題、収めている本人がこの先もらえるとは限らねぇってのに、お前のようになんの役にも立たず、ただ生きているだけの不良債権のためにせっせと税金払ってんだぞ」
とはいえ、自分の祖父や祖母はね、一日でも一秒でも長生きして欲しい。
だって、あの糞親共と違って優しくしてくれたし。
だけど。
「てめぇーは、今すぐ死ねっ」
顔を引き上げ、取り出したナイフで。
喉を一気に切り裂く。
ずり落ちていく身体。
本当はここから顔の皮を剥ぐんだけど。
「性格は顔に出るって本当かもねぇ、その醜い顔はやっぱいらない」
これで、税金も浮いたね。
歳をとっても尊厳を失わず、立派に余生を過ごしている老人も多い。
そういう人には私が働くようになったなら、喜んで支えてあげたいと思う。
この国を作った功績は大きい。
それでも。
私にも言えることだけど。
人ってのは、生きてるのではなく。
様々なものから、生かされているんだ。
それを忘れちゃいけないよねぇ。
勿論、私からもね。
実際、昨日あった出来事。自分はただぽかーんとなっただけでしたが。