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うん、これは訓練みたいです(現状確認訓練編 中編の2)

 こんにちは、蓮華です。


 今、私は脳内物質の大洪水で溺れ死にそうになってます。


 それもそのはず、こんなものを見せられたら誰だって興奮してしまいます。


 ルールに則った格闘技などのエンターテイメントでもなく、単純な殺し合いや喧嘩とも違う。


 超一流同士のぶつかり合い。


 それも団体戦ですよ。


 本来絶対見られない映像です。


 でも、私は盗み見のさらに盗み見で見られております。


 ここまで素人目に見ても、お互い譲らない伯仲の展開ではないでしょうか。


 果たして、勝利の女神はどちらに・・・・・・。


 おや、こんな良いところで私宛に連絡です。


 ちょっと、空気を読んで欲しいところですが。


 そうも言ってられないでしょう。



        ◇


 振り上げた武器。


 それを阻止する矢。


「なんなんだよ、さっきからこの矢がうざすぎるっ」


 憤るは、護衛隊 黒鵜クロウ


 真っ直ぐ切りそろえた前髪が揺れる揺れる。


「あの弓のお姉ちゃんと遊びたいのに。遊びたいのにぃいい」


 黒鵜の前に立ちふさがるは、九尾 ラオユエ。


 九尾メンバー1、長身で屈強な肉体が武器そのもの。


「退け、お主では我の相手にはならぬ。これは訓練。できれば怪我をさせたくはない」


「はぁあああ? なんなの、お前、さっきからさあ、余裕ぶって、いちいち、いちいち」


 黒鵜の武器は、長い刀身のククリ刀。それを右手、左手へと巧みに掴み直しては相手を切り刻んでいく。


 いつもなら振れば肉が裂けた、血が噴き出し、苦痛の表情、でかい悲鳴、それが楽しくて楽しく、相手が死んだかどうか、我に返るともう人の形は保ってなかった。


それなのに、それなのに。


 今日は一度も武器を振り下ろせていない。


 否、振り下ろさせてくれない。


 攻撃の瞬間、奥から光りの如く飛翔してくる矢によって全て弾かれていた。


「あのお姉ちゃん、とんでもない精度でこちらの攻撃を邪魔してくる、いちいち、いちいちっ」


 援護射撃。


 包帯を巻いた腕で洋弓を構えるは 九尾 ユーファン。


 黒い制服を着るこの少女から放たれる矢はあちらのメンバーのほとんどの攻めを無効化していた。


 そうユーファンの妨害は黒鵜だけではない。


 あちらの護衛隊の全員が対象だった。


 その少し前方、それを補佐するようにシャレイのナイフによる投擲。


 これによりもはや護衛隊に攻撃する術はない。


「おいおい、さっきから斬撃がこない、まさか爺さんが抑えられてる!?」


 護衛隊には自分より後ろを確認する余裕は無かった。


 今、数秒でも目の前の獣から目を離せば食い殺される。

 

老兵の広範囲の斬撃が護衛隊に大きなアドバンテージを与えていた。


 それが今は何故か止まっている。


「こまったねー、ねー、わたしもねー、さっきから邪魔されるのねー」


護衛隊の近接要員達は攻めあぐねている。


 それなら、対する九尾達が圧倒的に有利かというと。


 そうではなかった。


「そりゃそうだよな、勿論あっちにもいるわな」


 鎖鎌使いのジールイが吐き捨てるように呟く。


 護衛隊側からも飛んでくる何か。


 それを防ぐため鎖を振り回し防御に徹するしかない。


「矢、それと小さな玉、片方は弓、じゃなくクロスボウ。もう一つは・・・・・・」


 それはサンアンの元にも容赦なく襲いかかる。


「くそ、いくら落としてもキリがねぇっ!」


 両手の指にはめた鉄甲でその小さな玉、あるいは矢を叩き落とすサンアン。


「この小さな玉はパチンコ、スリングショットか」


 ラオユエはその巨体にそぐわない俊敏な動きでその極小の球体を髪一重で躱す。


「これじゃ埒があかぬか。しからば・・・・・・」


 ラオユエが最前線を見据える。


 そこにはこの場で唯一双方の援護射撃の影響下にないフィールドが存在していて。


「やるのぉ、男子三日合わざればってやつかのぉ」


「あらいやですねー、一応私少女ですよー」


「少女ねぇ、今年お前いったい何歳に・・・・・・」


「あ、すいません、美少女の間違いでしたっ!」


 ババ様と鯨の一騎打ち、流石にここにはお互いの仲間も干渉できずにいた。


「ババ様にして、こちらを気にする余裕はなしか、ならば・・・・・・」


 トップであるババ様、そして筆頭であるロウトウが今指示を出すことは困難。


 時点で九尾全体の統制をとれるのは。


「ユーファン、シャレイ、対象を変更、リライの行動後に相手の援護を阻止っ!」


 声を張り上げる。


 即座に同調して、リライがまず鉄の糸を宙に放つ。


 一瞬、空が鉄の網で覆われた。


 絡み取られる双方の矢、短刀、玉。


「いいねぇ、そうこなくっちゃっ」


「こっちもねー、のぞむとこねー」


 網の帳が降りる。


 第二幕が始まり。


 九尾、護衛隊、連距離同士の衝突。矢と矢が、短刀と弾がぶつかり、相殺する。


「こっからは横槍なしの、純粋な近接戦闘戦」


 ラオユエが飛び出す。サンアンが駆け、リライが右へ、ジールイが左へと周り込む。


 対して、護衛隊も愛無、黒鵜が口角を上げながら向かって行く。残り二人も後方へと付き援護の態勢。


「矢もナイフも有限ヨ、早くしなきゃすぐ弾切れネ」


       


 訓練開始より数時間前。


 数十名の不穏な影。


 他にも2つ。


 さらに8つ。


 別々にされど一つに。


 復讐、任務、動機こそ違えど。


 最終目的は同じ。


 当主のトーラの抹殺。

 はい、やっぱり終わりませんでした。。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます!! 蓮華さん盗み見しているなんて。 悪い人ですね。地獄から抜け出してリョナ子ちゃんに付きまとっていそうな葵ちゃんがなんて言うのやら。 ラオユエさんは名前からして…
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