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うん、これは訓練みたいです(現状確認訓練編 前編)

こんにちは、シストです。


 今、僕達殺人鬼連合のアジトでは皆の声が響いております。


「護衛隊に100っ!」


「こっちも護衛隊に200やっ!」


「私もですわー、護衛隊に200っ」


 今の所ほぼ護衛隊が人気のようだね。


「・・・・・・私は」


 そんな中、紅子だけが小さな声で呟いた。


「・・・・・・あの集団、いや・・・・・・私を助けてくれたあの子達がいる・・・・・・」


 その瞳には僕には知り得ない信頼のようなものを感じた。


「500っ!」


 ざわつく室内、それもそのはず現在、護衛隊以外に賭けたのは紅子のみ。


 僕もタシイも目黒さんも、他のメンバーも皆護衛隊に入れた。


 これでもし紅子が的中したのなら、一人勝ちだ。



          ◇


 某日、本家邸宅。


「各々八割程度の実力で任務を遂行、勿論死人など出ないよう細心の注意を払って・・・・・・」


 ルールの説明が行われ。


「以上を踏まえ、十分後に開始とする」


 時間の指定も終わり。


 言葉の後。


 邸宅、その一帯ががらりと雰囲気を変えた。




 シストです。


 僕らはアジトに持ち込んだ巨大モニターで状況を把握。


 本家にいくつもあるカメラ、その中の映像から自動的に大きく動きがあった場面に切り替わるシステム。


「さぁ、後、一分、こんなの大金出してもみれねぇ、楽しみすぎる」


 アンティークチェアにどっしり背中を預けるタシイは本当に嬉しそうだ。


「しかし本来一族すら中々お目にかかれないのにアタシら部外者が見ていいのかねぇ」


 千枚通しを掌へ叩きながら目黒さんはそう言ったが、口とは裏腹にタシイと全く同じ表情。


 他のメンバーの視線もモニターに釘付け。


 皆の高鳴る心臓の音が聞こえてきそう。


 そして。


「・・・・・・始まった」


 本家本邸、時刻は午前10時丁度。


 不定期で開催される。


 お祖母様直属護衛隊。


    VS

  

世界屈指の殺し屋集団 九尾。


 お祖母様を守るのだ、護隊隊はどんな相手からでも守り切れなければならない。


 そう、それが例え世界最強の殺し屋集団相手でもだ。


 これは訓練でもあり、現状を知るためにも必要不可欠なイベントなのだ。


 前回は十数年前だったとか。


 その時は護衛隊が見事守り切ったとの事。


 今回はどうだ、お互いメンバーはほぼ入れ替わってる。


 でも僕はあのお祖母様が敗れる想像などどうしてもできない。


神のみぞ知る勝敗の結果。


 すでに封は切られた。



       ◇


 邸宅、正門。


 白いスーツ姿の数人が立ちふさがる。


 その先頭、白い長髪を後ろで束ねて、腰の刀に手を携える老兵。


「はぁ、やっぱり思った通り、そうだよねリョーちゃんならそうするよねぇ」


 こちらへ堂々と歩いてくる黒い集団。


「当然だ、正面突破、私らはそれが許される」


 不敵に笑う妙齢の女性。


 その後ろに控える黒い獣は7匹。


「・・・・・・ババ様、奇しくもあちらも同じ人数、如何なさいます?」


 片目白眼の男が問いかける。


「愚問だ、暴れろ、噛み千切って、食い散らかせっ」


 それが合図。


 次の瞬間、まるで照らし合わせたかのように、黒い集団の息が合わさる。


「「「「「「「輪廻転、死」」」」」」」


 その言葉は波をなり、前方の白の塊へと襲いかかった。


 ババ様を含む九尾七人による同時威嚇。


 それを受ければ本来全員がその場で膠着する。


 しかし、その波を全身に受け、通り抜けて、なお。


 老兵の刀が空間を切り裂く。


 刀身はすでに鞘に収まり。


 お返しとばかりに獣を切り裂く刃と化した。


 金属が爆ぜる音、ほぼ同時に八つ。いや後方も含めて十五。


 ババ様、その場の九尾全員がその斬撃を弾く。


 そして、護衛軍も同時に各々の得物で防いだ。


 

 この間、コンマ数秒。


 老兵による360度全方位の全体攻撃。


 敵も味方も巻き込んだ神速の一刀。


 護衛軍の誰かが輪廻転死で飲まれていたら。


 九尾のメンバーが誰か一人でも輪廻転死の効果に過信していたら。


 今の斬撃で首、もしくは胴体が切り裂かれていたであろう。


「か~、これで無傷なんてリョーちゃん、若さも強さもまだまだ健在だねぇ」


 老兵はやれやれと再び柄へと指を重ねた。


「そういうお前は随分老いたな、だが、技のキレは増しておるぞ」


 これでどちらも嫌でも分かった。


 これから戦う相手の実力が。


「え~ここまでなんて聞いてないっすよ、これ特別手当もらえます~?」


 白いスーツを着た気怠そうな女性、一見すると眠そうな目をしていたが、その眼差しは刺すように鋭い。


「僕、女の子がいいなぁ、あぁ、あの弓持ってる子、あの子美人だし、あれにしよう、仕事だから虐めていいよね」


 小柄な少年、前髪は綺麗に真っ直ぐ切り揃われている。


「ん~、じゃああたしわはー、あ、あの傷だらけの男の子にしようねー、だってお揃いだからねー、ほら、わたしもねー、傷いっぱいなのー」


 一人だけスーツではなく白いドレスの女。舌で唇をくるくる舐める。


 護衛隊は一族の者から選出される。


 それすなわち。


 そのほとんどが精神に何らかの問題を抱える。


 異常者集団でもあった。



       ◇


 自室でいつも通り、汲み上げた仕事の最終確認作業。


 傍付きのメイドが紅茶のおかわりを注ぐ。


 当主たる者、分家一族の行う業務の全てに目を通し、時には口や手を出しよりよい方向へと導いてあげなくてはならない。


 そんな訓練中であっても、いや訓練中だからこそトーラは通常を同じように過ごしていた。


 そのトーラの机の前に立つのは小さな女性。


 小人症の彼女の身長はとても低く、一見子供のようにも見える。


「あぁ、ここまで簡単に来れたのはこれかぁよ」


「う~ん、そりゃそうだね★」


 トーラの自室に足を踏み入れた少女二人は、その小さな女性を見て溜息をついた。


「こいつがいるから、他はいらないってかよ」


「一応、やってみようか☆」


 片方を三つ編みにした途轍もなく目付きの悪い眼鏡女。


 天使のような微笑みを見せる小柄な少女。


 二人は息を吸い込むと。


「「輪廻転、死!」」


 激しく相手を睨め付けた。


 まるで想像で切り裂くように、ズタボロにしようと爪を突き立てる。


 だが、それは。


「なっ!」「っ!!」


 二人が飛び退く。


「こいつ、逆に威嚇し返しやがった・・・・・・」


「まるで全く同じのを戻されたようだね★」


 目の前の女は確かに小さい、しかしその身に纏うオーラは部屋全体どころか屋敷すら覆うほどに大きく見えた。


 護衛軍 最終防衛線 魔鏡。


「どうした? そのまま巣に帰るのか?」


 明らかな挑発、いつもなら遙かに離れた実力差ゆえの余裕がそれを受け付けなかったが。


「あぁああああああああああああ?」


「誰にいってるのかな? ★」


 二人の逆鱗に触る。


 同時消える二人の姿。


 一息で魔鏡を挟み討つ。


 半月を描くギロチン蹴り。


 劇薬の無数の針。


 敵を一撃で何回も殺せる攻撃。


 それは。


「はっ!???」

「なにっ! ★」


 全て自分の元へと帰る。


 なにをされた、と二人の脳内に疑問符が湧くものの、すぐにかき消す。


 このレベルの戦闘において今の思考の隙は死に繋がってもおかしくない。


 しかし、この女からの追撃はこなかった。


 不可解な出来事、二人は再び距離を取る。


「・・・・・・てめぇ、なんで今攻撃しなかった?」


「舐めてるのかな? ★」


 どんな手品か、今、自分達の攻撃がそっくりそのまま戻された。


 それに驚いた二人にはわずかな隙が生まれた。


 なのに、魔鏡はその隙をついてこなかった、その事にこの日二度目の驚き。


「・・・・・・・・・・・・」


 魔鏡はなにも答えない。


 ただ構えもせず、二人を見据えるため。


「・・・・・・そうかい、ならもう一回だっ!」


 射殺す目付きで飛び込むリンシャン。


 刀剣を振り下ろすような斬蹴りを繰り出すも。


「ちっ、なんなんだ、一体っ!」


 全部、自分の意思とは別の方。


「ちょっとっ! ちょっとっ! ★」


 相方のスーアンの元へと。


 なんとか躱すも、服の一部を切り裂いた。


「・・・・・・あ~、てことは、あれかぁ、めんどくせぇなぁあ、おい」


「・・・・・・完全なカウンター系かな★ 今までも何人か見てきたけど、この人別格だねぇ★」


 攻撃は不発だったものの、すぐに相手の戦闘スタイルを分析。対処法をすぐに考える。


「なるほどな、だからさっき反撃してこなかったのか」


「うん、しなかったんじゃない、できなかったんだね☆」


 二人は答えを導くと。


「じゃあ、こっからは・・・・・・」


「スタミナ勝負だね☆」


 リンシャンの足に力が入る。


 スーアンの指に幾つも針が出現。


「いくらでも返していいぞ、結局は自分のだ、誰よりも知ってんだわ」


「うんうん、自分の攻撃なら怖くない☆」


 二人はここから際限ない攻めを行うことで魔鏡の体力を奪う事にした。


 九尾の二人による絶え間ない攻撃を一人で反射し続けるのは魔鏡一人ではさすがに無理というもの。


 あくまで一人だったなら。


「っ!」


 リンシャンが半身を大きく逸らす。


 何かが通り過ぎた。


「完全な不意打ち、なのに避ける、流石です」


 手に持つ箒でリンシャンを襲撃したのは、トーラに紅茶を注いでいたメイド。


 二人が現れるやいなや身を伏せ怯えた素振りを見せていたメイド。


 今は打って変わって、雰囲気はまるで逆転、修羅場を駆け抜けた猛者の目をしていた。


「くそがぁ、もう一匹いたかよ」


「凄いね君、こっちの嗅覚を欺くなんて★」


 箒の先に鎌の先端が取り付けられたいた。


 彼女の武器は箒型の大鎌。


「わたくし、当主付き護衛件お茶入れがかりの・・・・・・」


 鎌を横に構えながら、メイド服の裾を掴む。


「百目鬼 陸音です、ごきげんよう、さようなら」


 相対する両者。


「スーアン、今の分かったかぁ?」


「うん、まったくいいコンビだね、はぁ凹凹★★」


 先ほどのリンシャンへの攻撃。


 不意打ちじゃなければ避けた瞬間、首は無くなっていた。


 それ即ち、後の事は一切考えていない。


 攻撃だけに全集中していた。


 避けられる、防御される、反撃されるという概念が一切ない。


 純粋な攻撃。


「普通なら悪手以外のなにものでもない愚策・・・・・・だが」


「それを成り立たせる事のできる人がいるねぇ★」


 攻撃全振りの陸音。


 防御全振りの魔鏡。


 互いが補い合わさったとき。


 二人に死角は存在しなくなる。

水星おわっちゃった。。

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― 新着の感想 ―
[一言] シスト君の一族回!! 今回の護衛隊vs九尾はモニターで殺人鬼連合メンバーも見れているようですが、最近登場がない叶夜君やゾディファミメンバーもいたりするのですか? 異端者同盟の最後でトリムを…
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