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うん、全ては・・・・・・ですね (殺人鬼連合 対 異端者連盟編 其の十三 終)

 こんにちは、シストです。


 今、僕は全身の痛みに耐えながらある場所に向かっております。


 折れた腕にはギプスを。頭に包帯。


 両端には。


 バールを地面で引き摺るタシイ。


 千枚通しを手に中でくるくる回す目黒さん。


 丁度目的地についた所で僕のスマホに着信が入りました。



          ◇


 部屋全体に。


 耳鳴りに似た甲高い音が広がり。


 多数いた人影が小さくも倍に増えた。



 老兵が刀を抜いたのだ。



 トリムの真横で放たれたそれは。


 360度逃げ場のない斬撃となり波状した。


「うおおおおおおい、なにしてくれてるのよっ!」


「あっぶな・・・・・・」


「おいおい、勘弁してよ」


 今、この場で立っていられたのは安全圏にいたトリム。


 居合いを行った本人でもある老人。


 懐から出した得物でなんなく防いだ連れの護衛女。


 不意打ちにも関わらず間髪避けたナスチャとヴィーカ。


 最後、自分の元に迫った斬撃を蹴りで強制的に斜め上へと弾いたチャイカ。


「いや、すまん、すまん、まぁお前さん達なら避けてくれると確信しておった。が、よもや逸らされるとはおもわなんだ・・・・・・」


 老人の鋭い眼光がチャイカを見据える。


「あ・・・わあひ・・・あ? あああ?」


 そして生存者はもう一人。


 椅子に座ったまま呆然とする九條当主。


 頭のすぐ上を刀が通り過ぎた事には気付いておらず。


 ただ、周囲にいた味方の体が半分になり地面に落ちていったのを目の辺りにしただけ。 


「さて、九條祖音さま。今より我が当主であるクソバ・・・・・・トーラ様からの言付けをお伝え致します」


 無理矢理理性を保ちつつ、トリムが口を開く。


 

 


 覇聖堂、生徒会、通称方舟会。


 校舎に入ると一直線で生徒会室へと向かう。


 ドアを乱暴に開け放つと。


「・・・・・・これはこれは、皆さんお揃いで何か御用でしょうか」


「おー、アポとったのかよ」 

 

「私達は忙しいのだ、どうぞ速やかにお帰り願おうか」


 方舟会の面々は強気に出るが、もう前のような余裕は一切ない。状況は逐一届いていた。


「・・・・・・・・・ん」


 ここで方舟会の三人は異変に気付く。


「あれ、貴方は・・・・・・・?」


 中央、全身包帯だらけの、美少、年、女??


「はじめまして、シストと申します。ここにいるタシイの兄です」


「な・・・・・・」


「は?」


 シストが自己紹介すると、元々優秀な三人は全てを察した。


「お~、お前ら、おネニー様は、うちの次期当主だぞ、この落とし前どう付ける気だ、あぁあああああああああああああああああ??」


「まさか、一般人で無関係のシストくんに手を出してただで済むと思ってないよね~」


 方舟会、九條、久我、広幡の顔が青ざめる。


つよし、これはどういうこと?!」


「いや、そんなはずが、た、確かにそこにいる殺人鬼連合の頭だったはずっ」


「いやー、僕も急に襲われてびっくりですよ」


「おネニー様と私は見た目がそっくりだから、大方間違ったんだろ」


「間違いましたじゃ、すまないけどねぇ」


 事前にタシイへの報復を察知していたシストは、ここで身代わりになることであちらの正当性を逆手にとっていた。


 表向きには一般人で通しているシスト。実際殺人鬼連合の中で唯一人を殺していない。


「欺したなっ! 女装までしてこちらを欺いたんだっ!」


「やだなぁ、たまには可愛い格好したくなるでしょう、まさかこの時代、それがおかしいとは言いませんよね?」


「そうだ、おネニー様は私より可愛いくらいだっ!」


「うんうん、タシイに知性と理性を与えて凶暴性と残虐性を引けばシストくんになるのだ」


 そしてだめ押し。


「先ほど、僕に連絡が来ました」



 言葉と同時。


「ああがああああああああああああああああああああああああ」


「ひいいあああ、あ目が、アアアアが目がああああああああああああああ」


 バールで顎を割られた久我副会長。


 千枚通しが眼球に突き刺さる広幡書記。


「話はついた。後は好きにしろって」



        ◇


 ラブ女。


 体育館。


「こんなものでしょう」


「ええやん、ええやん」


 入り口はしっかり外から施錠させられて逃げ場はない。


「うあああああああああああああああああああああ」


「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいい」


 駆け巡るように逃げるのは異端者連盟の二人。


 空音の飼っている凶暴なピットブル10匹が二人を追いかける。


「ほらほら、早くお逃げなさい、じゃないとかみ殺されちゃいますよ」


「いいぞ、いいぞ、逃げろ、逃げろ、あ、でもそっちは・・・・・・」


 古論の忠告、それも時すでに遅し。


「あ? あがぎぃいああああああああああぃあいいいいいいいいいいいい」


 床が抜け、その下には釘が何本も備え付けられ、一条がそれを踏むことで足の甲を靴ごと貫通した。


「あ~あ、気をつけなあかんよー」


「ちなみに釘には私の可愛いペットたちの糞尿がべったりこびり付いてますわ~」


 二人は笑いながらしばらくその様子を見ていた。



       ◇


 覇聖堂、教室。


 三人が完全に回復したタイミングで皆一堂に集められた。


 それは奏、芳香、美沙の元クラスメイト達。


 あの時、三人を肉体的精神的にとことん追い詰めた残党。


 生徒達は各々机ありの椅子に座らせられ、足だけがコンクリートによって床と固定させられていた。


「どういうことだっ! ふざけんなっ!」


「いい加減、家に帰してよっ!」


「なんだよこれっ! 足、なんとかしろっ!」



 教室内では皆大声で不平不満を叫んでいる。


 足以外は皆自由に体を動かせている。


 そんな中聞こえるか聞こえないかのような声で三人が声を出した。


「私達でじっくり話あったの、誰が前で誰が後ろか」


「誰がもっとも醜悪で、もっとも陰湿かを」


「私達は右前から横へと移動していく」


 三人は宣言通りまず最初に右端の一番前に立った。


 各机の上にはナイフ、ノコギリ、など工具が置かれており。


「今から順番に解体していく。後ろの人は時間に余裕があるから自由にしてもらって構わない」


 奏が眼鏡を外すと。


 自前のナイフで横一線。


 まずは両目を潰した。


「ひああああああああああああああああああああああああ」


 続いて芳香が机のナイフで頬を右から左へと貫通。


 間髪入れずに美沙のナイフが太股を突き刺す。


「ぎゃあああああああああああひいいいいいいいいいいいいい」


 止まらない。耳、終われば鼻、指、一本、二本、肩に刺し、胸も、横腹、何度も。


 代わる代わる、三人は開いている部位を奪い合うように壊していく。


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ」


「おいおい、じょうだんだろおおお、おおおいいいおいいいい」


 その様子を見ながら叫ぶ者、震える者、声も出ず呆然とするもの、様々だった。


 五分ほどで最初の男は動かなくなった。


 返り血を浴び真っ赤になった三人は隣へと移る。


「い、いや、やめて、くれ、なんで、やめ、嘘だろ、うそ、ぁああああああああああああああああああああああああ」


 またも刃物が肉を削ぐ。


 二人目の生徒が動かなくなると。


 三人目に移る前に奏がもう一度助言した。


「もう一度いうね。後ろに行くまで時間に余裕がある。机の上の道具は自由に使ってもらっていい、これはチャンス、教室のドアは開いてるから」


 ここで大抵の生徒達に言っている意味が通じた。


 足は固定されていて動けない、だが教室のドアは開いている。机の上の道具は自由に使ってよい。


「ひっひ、嘘でしょ、そんなの、無理よ、ぜったい、だって」


「でも、や、らないと、あ、あいつらが来る前にやらないと・・・・・・」


 一人の女生徒が意を決して糸鋸を手にするも・・・・・・。


「はぁあ、あ、あはあ、ぁあは、ぁはあぁ、あはあぁ、はは、ははあは、ああああああ」


 過呼吸、刃を足に近づける。


「む、む、むむむ、む、むり、むり、無理、無理ムリムリ、無理無理無理無理無理無理、ムリィイイイイイイイイイ」


 やはり動けない。  


そうこうしているうちにも。


「はあぎゃああああああああああああああああああああああああああ」


「ひひぃびいあいあああああああああああああああああ」


 前から絶叫が響いてくる。


 それはどんどん近づいてくる。


 悲鳴もどんどん大きくなる。


「や、やるしか、はあはぁああ、じゃないと、はぁあはぁあ」


 震える手、汗ばむ体、ガクガク上下する口内。


「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 勢いで刃を押し当てた、足首、そこから上下に手を動かすだけ。


 なのに、痛い,痛い,痛い,痛い、痛い、痛い,怖い,怖い、怖い,怖い。


「ひぎゃああああああ」「あぎゃああああああああああ」「ふぎゃああああああああああああ」 


 絶え間なく聞こえる人のものをは思えないほどの鳴き声。


「うああああ、あぎゃああああああああああああああ、ぎゃあああああああああああああ、がああ」


 涙を流しながら、腕に力を込める、早く、痛い,早く、痛い、駄目。


 気付くと、三人はもう隣まで来ていた。


「あひぃいがああ、やめ、ゆる、やめあ、いたああ、あああああふゃあ」


 隣の子が泣き叫ぶ。


 その涙と血と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった顔。


 最後に目があって。


 そして腕から糸鋸が滑り墜ちた。


 少し立ってから聞こえた言葉。


「残念、時間切れ」


 その後はもう知らない。



          ◇


 柱に両腕を後ろで縛られ正座させられている男。


「はい、あ~ん」


 それにスプーンで食事を与えている女。


「あ、あああ、あああ、ああ」


 男は素直に頬張る。


「はい、あ~ん」


「あああ、あああ、ああああああ」


 それを何回も繰り返す。


 しゃがみ込む女の手にはスプーン以外は持ってはいない。


「はい、どうぞぉ」


 女は男の口に入れたスプーンを。


 今度は開かれた男の腹の中に入れる。


 そこで何かを掬うと。

 

 また口へと運ぶ。


「はい、あ~ん」


 口に入れた物は腹の中へ、それを取り出すと、また口へ運ぶ。


「あああ、ああああ、ああ、ああああ」


 目の焦点のあってない男は先ほどからずっと終わらない食事を与えられていた。


「いいね、いいよー、ラストミールって名前にもあってるし、なにより殺人鬼っぽいっ!」


「種さんっ、本当ですかー! ものすごく嬉しいですぅ」 


「うんうん、こいつらは白雪ちゃんを襲った連中だからね、円ちゃんも簡単に殺す気はないみたいだし、しばらくは練習に使っていいよ」


「はいっ、私、どうしても簡単に人を殺してしまいますので、こうやってじっくり殺すのに慣れてないのです、これはとても勉強になりますね」


「こいつの好物ちゃんと聞いた?」


「ええ、ステーキと言ってましたので、このとおり」


 ラストミールがスプーンで取り出したものを種に見せる。


「もう何だか分からないね。でも、羨ましいよ、だって最後の晩餐なのにずっと食べ続けていられるのだもの」   

  



 こんにちは、蓮華です。


 一連の騒動はしばらく経ってようやく落ち着いてきたみたいです。


「怪我の具合はいかがです?」


 今日は以前二人で会った殺人鬼連合のアジトの一つに再び来ております。


「まだ万全ではありませんが、概ね順調といった所でしょうか」


「それは何より。しかしあれほど燃え広がったこの戦争もそれだけの被害で済んだなら上々でしょう」


 勿論、飛び火した部分を入れればそんな事はありませんが。


「そうですね、結果的にはこちらは怪我人こそ出ましたが、皆回復に向かってます。逆にあちらは大変でしょうね、今回失うものが多すぎた」


「そこなんですよ。いくら何でも話がうまく行きすぎてる。例えシストくんが状況を予想し、私やマキナさんがそれを補正したとしてもです」


「・・・・・・といいますと?」


 この言い方はシストくんも分かって聞いてますね。


「はっきり言いましょう。今回の騒動、最初から仕組まれていたのではないかと。私はそう考え、最終的にある結論に至りました」


「・・・・・・お聞かせ願っても?」


「今回一番得した人物は誰かって事です。色々な人が今回何かしらの損害や痛みを被っているというのに一人だけ全く損をせず尚且つ膨大な利益を生んだ人がいます」


 表からでも裏からも直接衝突すればこちらも只では済まない、何より勝てる確証もない。


「だからその人は全てを作り集めたのです。火種も正当なる理由も、対抗するために必要な駒さえも外から」


「もしそうなら何故このタイミングでそれをしたのでしょうか、九條家、その分家とは以前より対立してましたよ」


「このタイミングだからですよ。全てが今この瞬間揃ったのです。横の線も縦の線も全て繋がった、その線上には私や貴方も含まれてます」


「なるほど。でもその仮説には一つ重大な矛盾があるのでは?」


「それはもう分かってます。何故、親友を巻き込んだか。その人の性格上それは絶対あり得ない。しかしそれも調べれば納得できました」


 店が放火された時に店内には誰もいなかった。営業時間内にも関わらず。


 それもそのはず、火を放ったのは眼球アルバムなのですから。


「店は老朽化が激しかったらしいですね。でも趣味でやってるような個人経営のお店です、立て直す余裕もなかったでしょう。銀行からの融資も中々厳しいかと。でも裕福なご友人には頑なに頼ろうとはしなかった」


「昔からそうみたいですよ、いつでも対等にいたいからなのでしょう。小銭すら借りたことなかったと」


「それでも力になりたかったのでしょう。だから間接的に店を新しくできるよう画策したのです」


 そして気遣ったのはお千代さんだけでなく、もう一人の親友もですね。結果的に代役を立て今回の戦闘には参加させませんでした。多分本人にとっては余計なお世話以外のなにものでもないでしょうが。


「もうあちらのグループは混乱を避けるために存在こそ認めてますが、中身は完全な傀儡でしょう。まさに勝者がルールを決めるなのです」


「そうですね、元々指示自体が、好きにやれ、ただし一族の者は誰一人殺すなとの事でした。多少体の損壊はあるかもですが一応全員生きてます。これもこの先代々飼いつづける魂胆なのでしょう」


それつまり、子や孫の代まで考えてお膳立てしてくれたって事でしょうか。


 何だかんだで家族思いな人なのでしょう。


       

             ◇


 本家、当主室。


「御当主、先ほど連絡があり例の店ですが来週無事再オープンとの事です」


「・・・・・・そうかい。なら客が入れないくらい大量に花送っておきな。開店祝いならあいつも文句は言わないだろうよ」


 無理矢理終わらせました。特別編の内容は決まりかけてるのでその内。

 ぼっちざろっく面白い-。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全てはトーラお祖母さんの手の内だったということですか。 本当に最初の最初から手の内だったのか、それとも事が起こったのを利用したのか。 確か、白雪ちゃんと紅子ちゃんの通っている学園の理事長でし…
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