ういうい、ゲームレビューなの、だ(本編と無関係番外編)
最近投稿さぼってたので番外編。
ういうい、円、だ。
今、私と白頭巾の二人はある建物に来ていた。
「これはこれは、ようこそお越し下さいましたっ」
出迎えてくれたのは、妙に明るいおっさんだった。
「私は、芸無 開発造です。このプロジェクトの責任者となっております」
「おー、まさにそんな感じの名前なの、だ」
「うん、つけた親はかなり頭いかれてるね」
このビルは国家機関である国民幸福度上昇研究所。
なんで、私達はこんなところに来たかというと。
「円さん、白頭巾っ! このたび、国家プロジェクトの一環で、あるVRゲームを秘密裏に作っていました! それがほぼ完成したということで、ゲームの得意な貴方達には現段階での評価、それを踏まえての最終調整のお手伝いをしてきてくださいっ!」
てことなの、だ。
今回のこれはレンレンの指令の中では、とてもいい部類なの、だ。
なんせ、国家機密でまだ世の中の誰も知らないゲームをいち早くプレイできるの、だ。
ゲーム好きの私達には夢のような任務。
「では、さっそくお願いしますっ! この専用のかぶる奴をつけて、そこに寝てください」
うむ、仮想現実にダイブする感じなの、だ。
さすがは国家プロジェクト、金のかけ方が一般企業のそれとは桁違い。
こんな小説やアニメのような事がこの時代に可能になるとは。
私の心臓の高鳴りは今、最高潮であった。
意識が吸い込まれる。
私達は現実からゲームの世界へ。
事前に聞いていた説明はこうなの、だ。
全世界初、フルダイブ型MMORPG。
現実と区別がつかないようなリアルなオープンワールド。
まさか自分が生きてるうちにそれを体現できるとは思ってもいなかったの、だ。
覚醒する。
それはゲームの世界。
まず目に入ってきたの、は。
「ん、え? は?」
「な、なに、ここ」
二人とも固まってしまった。
CGでできた世界は。
「これは・・・・・・酷い」
カクカクポリゴン丸出しだった。
地面はただ茶色、空はただ青、デコボコの木とか草が緑。
「え、なにこの20年以上前に出たプレステージ1レベルのモデリングは・・・・・・」
ただただクオリティーが低い。
[これに関しては私から説明しましょう]
唐突に空から声が聞こえて来た。これは芸無 開発造の声。
[ていうかですね、この規模のオープンワールドでリアルと同じクオリティーで作るのは最初から不可能でしょう。ここはまず一番に妥協しました。だって無理だもん]
こっちはまだ何も言ってないのに、言い訳してきたぞ。
[とりあえず、ここは受け入れて先に進んでください]
「わ、わかったの、だ」
世界がこんなだから、投影されている自キャラもお察しなの、だ。
私も白頭巾もアイクラやバーチャファイテングみたいな、全体的に四角い体だった。
[あっちに村がありますので向かってください]
あ、確かに向こうに何か見えるの、だ。
進んで村の門を潜る。
すると、体が急に動かなくなった。
「あれ、なんだ?」
「動けない」
[あ、ロードですね、ちょっと待ってください]
ロ、ロード? フルダイブでいちいち読み込み発生するのか。
待つこと1分。ようやく街の中に入れた。
「お~い、あんたら冒険者かっ! なら頼みを聞いてくれっ! 近くの森に魔物が出て大変なんだっ! 森はこっちだ、付いてきてくれっ!」
第一村人発見からの、怒濤の展開なのだ。
「会話が成立してないのに強制イベントなの、だ」
「なんか、先に行っちゃったよ。追いかけようっ」
第一村人がどんどん離れていく。
「はやっ!」
「こっちはカクカクなのに」
見失ったの、だ。
「え、まじどこ行った?」
「なんか、あっちに森っぽいのがあるよ」
遅れること数分、私達は森の入り口っぽい場所へと来た。
「多分、方向的にここでいいと思うの、だ」
「この辺、後はただ地平線が広がる茶色の大地だから間違いないと思う」
森へと足を踏み入れる。
そして体が動かなくなった。
[あ、ロード入りました]
うがぁー、いちいちテンポ悪いの、だ。
森に入った私達の頭上に。
[緊急クエスト発生っ! 迷った村人を助けろっ!]
ていう文字が出てきたの、だ。
それは空一面を覆うような巨大な文字だった。
「ええぇ、文字ぃ」
「ていうか村人ぉ」
「なんで、こんなでかい文字なの、だ。出すにしてもよくあるちょこんと出るステータス画面くらい、さりげなくのにして欲しいの、だ」
[ほら、今は少子高齢化なので、文字は大きいほうがいいんですよ]
「逆に見づらいっ」
「いいよ、もう、お姉ちゃん、まずは勝手に進んで勝手に迷った第一村人を探そうっ」
「そうだ、な・・・・・・」
さて、こうして村人を探す事になったのだが。
「なんなん、この広さ」
「ギミックもなく、敵もいないのに、ただただ広い・・・・・・」
見た目も代わり映えしないので、まぁ迷う。
やっと森の奥で村人を見つけたのは30分後であった。
「い、いたの、だ」
「この村人ぉ」
なんか、敵に囲まれているの、だ。
「た、助けてくれぇえ」
これはようやく戦闘、か。
[追加緊急クエスト、村人を魔物から救えっ!]
出た、空を覆う巨大文字。
「お姉ちゃん、来るよっ!」
「おう、なの、だっ!」
やっと戦えるの、だ。
多分、最初なのでチュートリアルのようなものだと思うが。
あれ、体が動かない。
またロードか?
いや。
[戦う] [防御] [魔法] [道具] [逃げる]
私の真横に等身大ほどのウインドウ。
「え、まさかのコマンド式??」
「嘘でしょ」
選ばないと動けない奴なの、だ。
「た、戦うなの、だっ!」
一番上の戦うを選択。
それにより、私の体が勝手に動いた。
ドシュン。
22ダメージ。
敵の攻撃。
ズドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。
532ダメージ。
「ひぎゃあああああああああああああああああああああ」
私は一撃で死んだの、だ。
「お、お姉ちゃんっ! て、ぎゃああああああああああああああああ」
続けて白頭巾も死んだの、だ。
そして目の前は真っ暗に。
気付いたら最初の地点に戻っていたの、だ。
[ゲームオーバーですね。もう一度最初からお願いします]
「はぁああ??」
「なに、あの強さ、チュートリアルの敵のレベルじゃないでしょっ」
[それはあれですよ、装備も整えてないし、レベルも上げてないじゃないですか、それじゃ死にますよ]
「は??」
開発造のいうには、まず村に入った時点で装備を買えばいけないらしく、その後、森に行く前のフィールドで敵を倒してレベルを上げる必要があったという。
「あれが最初の戦闘じゃなかったの、か」
「むしろ中ボス戦みたい」
なら最初から言えと思ったが、あくまで開発造はこちらがどういう動きをするか見るのが目的なの、だ。下手な助言はできない。
とにかく私達はまた最初から始めた。
「お~い、あんたら冒険者かっ! なら頼みを聞いてくれっ! 近くの森に魔物が出て大変なんだっ! 森はこっちだ、付いてきてくれっ!」
「うっさいっ! さっさと行くの、だっ!」
「だれが付いていくかっ!」
言うまでもなく森に向かった村人は無視して村の中へ。
「まず武器を売ってる場所にいくの、だ」
「武器・・・・・・ていうかそれを買うお金あるの?」
「確かに・・・・・・」
[あ、ゲーム内のお金は現実とリンクしてますので、それでなんとかなりますよ。逆にゲーム内のお金を現実のお金には換金できませんけどね]
クソ仕様なの、だ。
まさかフルダイブ中に課金するとは。
「鋼のナイフ、500Gなの、だ」
「えっと、1Gが現実の100倍だから、これは5万だね」
「ぼったくりなの、だ」
「逆にお金あれば、このエレクトリックエンシェントデスナイフも買えるね。10000Gだけど」
「誰が買うかなの、だっ! なんで最初の村でそんなご大層な武器売ってるの、だっ!」
その前に、このゲーム、装備できる武器がナイフ一種類だけなの、だ。
大剣とか弓とかそういう他の武器が一切存在していない。
一通り課金して装備を揃えたの、だ。このお金は返してもらえるのだろうな。
「よし、レベル上げなの、だっ!」
「おー」
そして四時間後。
「二人ともレベル30になったの、だ」
「これならあの森の敵も倒せるね」
また迷うこと30分。
「やっと着いたの、だ・・・・・・」
「ここまで長かった・・・・・・」
私達はこれまでのストレスを発散させるごとく。
「攻撃なの、だっ!」
ズギャババッババババババババババババババァっ!
4879ダメージ。
敵を一撃で葬っていったの、だ。
「超インフレなの、だ」
「どういう計算方式なんだろう」
最初の敵を一掃すると。
[続緊急クエスト、魔物のボスを倒せっ!]
デカ文字が出現。
どうやらまだ終わりじゃないらしい。
「ボス戦なの、だ」
「でも、今の私達ならっ!」
ゴゴゴと、大地から巨大な木の魔物が出現した。
「あれ、体が動くぞ」
「どう言うこと?」
[あ、ボス戦だけはアクションパートになります、自由に動いて攻撃してください]
「分ける意味ある?」
開発造の言い分としては、ボスはすべからず巨大なので、そういうあれらしい。
「どういうあれかは知らぬが、こっちの方が楽しそうなの、だっ!」
「そうだねっ!」
動きは相変わらずカクカクだが、自分の意志で動けるのは大きい。
ボスが枝のような腕を振り上げた。
「なにか来るの、だっ!」
「離れようっ!」
距離を大きく取る、さらに私達は周り込むように左右へと散開した。
そして。
ズギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!
円、18975ダメージ。
白頭巾、23587ダメージ。
「ひぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
「あぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
私達は即死したの、だ。
そして画面は真っ暗に。
明るくなった場所は。
最初の地点だった。
「・・・・・・・・・・・・なにが起こったの、だ」
「分からないよ、お姉ちゃん、分からない」
確かにボスの攻撃は届いてなかった。
なにに直撃したの、だ。
[あ、あれ当たってましたよ。見えない衝撃波的なのが出てますので]
「見えない衝撃波、だ、と?」
「亜空間アタック??」
初見のボスとあって、私達は距離を充分取ったの、だ。
「あれはですねぇ、くらうとそのレベルでは即死しますので、防御するのが正解でしたねぇ」
「正解でしたねぇ、じゃねぇの、だ」
「初見殺しにも程があるから」
[なら即死しないようにレベルをもっと上げるか・・・・・・、バハムートエターナルペンダントを装備して防御力の底上げをするかですねぇ]
「バハムートエターナルペンダント、全ての属性に耐性を持ち、防御力+500という凄いアクセサリーなの、だ。値段は確か・・・・・・」
「8000Gだよ、現実なら80万だよ」
「か、買うしかないの、だ」
「このさい、エンシェントデスナイフも買わなきゃ」
ここからなの、だ。
このゲーム内最強装備を得た私達の快進撃が始まった。
ちなみにオートセーブとかないからまた最初からやり直しなの、だ。
「そうだ、オプション、オプションはないの、かっ!?」
今更ながらやり直す前に、今まで怠っていたその部分を確認する。
[オプションありますよぉ。オプションと叫べば出てきますよぉ]
なんか開発造の声にイライラしてきたの、だ。
「オプションっ!」
戦闘コマンドと同じような等身大のウインドウが真横に出現。
「あったの、だっ!」
オプションを選択。
これで阿呆みたいなバランスの難易度とか、後、開発造の声も最小まで下げたいの、だ。
「ん?」
項目にあったのは。
「え、ステレオかモノラルの変更だけ? え?」
難易度とか音量設定とかそういうのが一切ない。
そもそもこの世界にその設定いる?
「もう行くの、だっ! この装備ならもうレベルとか上げなくてもいけるの、だっ!」
金の力は偉大で、さきほど即死したボス戦はあっさり終わった。
「よし、次なの、だっ!」
村へ戻る。
「次のヒントが出ないの、だ。ここからどこへいけばいいの、だ?」
村人に話しかけるも、なにも反応ない。
[あ、村人は基本最初の人しか喋りませんよ。このゲームの声優さん一人しかいませんし]
「声優一人? まんが〇〇昔ばなしでさえ二人いたの、だ・・・・・・」
魔物の声とかもその人が一人でやってるの、だ。じゃあこのゲーム、どこにお金かけてるの、だ。
それはそうとここからとんでもない苦行が続いたの、だ。
快進撃といったが、あれは嘘なの、だ。
「て、敵が多いっ!」
ある場所では敵が一斉に出てきて怒濤の攻撃を食らい、処理オチも相まってはめられ為す術もなく全滅したの、だ。
しかも無駄にこっちの防御力を高いおかげで、動けない、なかなか死ねないの地獄。
「敵が多いのに勝手にロックオンされるっ!」
近くの敵に自動的に標準が合うので、遠距離から攻撃してくる敵を先に倒そうにも倒せない。
「ボスが色違いっ!」
なんと、次のボスは最初のボスの色違いだったの、だ。モーションもほぼ同じ。
「村が一つしかないっ!」
最初の村がこの世界唯一の村だったの、だ。そりゃ、最強武器も売ってるの、だ。
「ダンジョンがとにかく無駄に広いっ!」
これが最大の敵なの、だ。
仕掛けは結局ラスダンですらなく、宝箱にかぎっては一つもなかったの、だ。
「よし、ラスボスなの、だっ!」
「はぁはぁ、やっとここまで来られた、ね」
使い回しの最終マップを進んでようやく辿り着いた。
その先で待っていたのは。
「ラスボスさえも色違いっ!」
茶色、青、赤、金色に変わっただけなの、だ。
円の攻撃。
ゴゴゴゴオファヤアアピキキキキンアアアシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアキュインキュインズババンザババババンっ!
789765ダメージ。
パキン、パキン、ゴゴゴゴゴゴ。
「そして弱いっ!」
超インフレした私達の前にはラスボスも一撃なの、だ。
そしてエンディング。
そのクレジットには。
村人。
雑魚魔物。
中ボス魔物。
ラスボス。
声優・・・・・・芸無 開発造。
「お前かい」
[ゲームクリアおめでとうございます!]
ここまで20時間かかったの、だ。
ほぼその全ては全滅からのやり直しだったの、だ。
「お疲れ様でした、ではとりあえずクリアしたという事で貴方達にはこの後お役所に出すためのレビューを書いてください。ちなみにこれ次第で私の評価や報酬に響きますので、何卒よろしくお願いしますよ、げへへ」
「分かったの、だ」「まかせて」
こうして私達は、このゲームの評価を書いたのだ。
円のレビュー。
まずグラフィック、音楽など二〇年以上前のゲームより酷い。それなのに無駄にフルダイブMMOとかぬかす始末。MMOの意味をまず作った人は検索したほうがいい。操作性も最悪で感覚では指令してから一〇秒くらいのラグがある、なのに敵だけはぬるぬる動くという奇想天外設定。とにかくこれ以上被害者を出さないためにもこれは世に出しては駄目なゲームなの、だ。文句無しの一点。
白頭巾のレビュー。
NPC、雑魚敵、ボスと原則一種類しかなく、ストーリーもない。オプションにいたっては謎のステレオモノラル変更のみ。基本課金しなければクリアまでにとんでもない虚無の時間を費やさなければならない鬼畜仕様。何をするにもいちいちロードが入るのでテンポが非常に悪い。あと一人だけでやってる声優の声が非常に不快。あれなら無音の方がましまである。自信満々の一点。
二人とも、忖度無しのありのままを書いたのだ。
これで少しでもこのゲームがマシになってくれるのを祈るのだ。
数週間後。
「円さん、白頭巾、そういえばこの前事前に体験版をプレイして貰ったゲームがついに公に発表になったみたいですよ」
仕事場でレンレンにそう言われ、そういえばそんな事があったなと思い出す。正直思い出したくなかったの、だ。
「あぁ、あの超絶クソゲーか」
「村人、開発造・・・・・・うぅ、頭がっ」
「政府の広報誌に、貴方達のレビューが載ってますね」
「ありのままボロクソかいてやったの、だ」
「正直あの酷さはまだまだ書き足りなかったくらいだよ」
「あれ? 私読みましたけど、その言動はおかしいですね」
「うな?」「どういうこと?」
私達は渡されたその広報誌に目を通す。
そこには。
年間7300時間はゲームをしてる廃人ゲーマー、魔怒蚊のレビュー。
まるで自分の完全な分身が生まれたかのような没入感、ゲームはついにここまで来たかという印象。マップ一つとってもその後待ち受ける冒険に期待が高まる。戦闘方法が部分部分で切り替わるシステムは開発者のセンスの良さがキラリと光り、それ自体が新鮮かつ爽快で何千回戦っても飽きない。極限まで無駄を省いたシステムは好感しかなく、ゲームはついにここまで来たかという印象。正直これは危険なゲームでプレイを始めればもう年間8760時間もやり続けられる中毒性有り、最後にゲームはついにここまで来たかと印象。
ソシャゲ課金額が収入を遙かに超える廃課金ゲーマー、スノーブラックのレビュー。
原作がないのに原作愛に満ちあふれている作品。最初に出会う村人の声がとんでもなくイケボなため永遠に聞いていたくなる。これだけでやる価値があるといっても過言でもない。ストーリーはないがプレイする人が勝手に想像することでその物語は無限大になる、自分はラストで感動のあまり涙で前が見えなくなった。音楽などをあえて省くことにより、自分の好きな音楽を想像する事ができるので自由度も高くその感動は一入。課金要素もあまりなく最強装備もちょっと借金するだけで簡単に揃えることができる。開発者には各種ノーベル賞を全て与えてもいい、3000点。
「あーあーあーあーあー」
捏造されとる。