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うん、これならなんとか戦えそうです(殺人鬼連合 対 異端者連盟 其の禄)

 こんにちは、シストです。


 ここまで何度見ても上手くいかない。


 ある時はタシイが暴走、あちらに正当性を与えてしまい。


ある時は僕以外の殺人鬼連合のみんなが蹂躙され全滅。


 ある時は目黒さんが我慢できずに異端者メンバーに手を出してしまい。


 僅かな選択ミスがバタフライエフェクトを引き起こし。


 最終的には。


 火炎は燃えさかり、燃え上がり、もう焦土と化すまで燃え広がる。


 最後に見た映像。


 護衛についた九尾はほぼ半壊。


 あの本体であるババ様ですら敗れた。


「あちらの最高戦力である三羽名有りに単独で挑んでは流石のあの方でも無理があったか」


 実際は同時に相手してほぼ相打ちに持ち込んだだけでも凄い事なんだけどね。


「さて、そうなると・・・・・・」


間違ったなら修正して、それも駄目ならまたやり直す。


 動かないなら動かして、足りないなら足すしかない。


 以前のタシイの声が耳に、頭に飛び込んでくる。


「・・・・・・だからって、さぁああ、いくらお祖母様の、って、あいつらのさぁあ、おネニー様は、それで、いいの、あいつらの顔見ただろ、可愛い可愛い、あいつらの顔がさああああ」   


 涙目で、それでいいの? と妹は問うた。


 僕は殺人鬼連合のリーダーで。


 すぐ暴走しがちなメンバーを纏めなくてはならない。


 つねに冷静に。


 つねに先を読んで。


 感情的にならないように、と。


 だけど。


 メンバーはどこか孤独なんだ、生まれつき人と少し違っただけ、なのに、だから馴染めず、無理矢理合わせる、それは破綻、乖離、それじゃ駄目なんだ、そうじゃないんだ。


 ここは居場所だ。


 助けを、仲間を、求めて、寄り合って。


 唯一存在を許される楽園。


 なのに守れなかった。


 奏、芳香、美沙。


「・・・・・・・いいわけないだろ、が」


 僕らに。


 僕らの場所へ。


 勝手に侵入し、踏み荒らして。


「ただで済むと思うなよ。綺麗に終わらすつもりは毛頭ない。全てを巻き込んで殲滅するまでやるからなぁあ」


 等間隔で襲ってくる目が飛び出るほどの痛み、鼻血は止まらず、手足、歯が全て抜け落ちたかのような精神的な消失感、未来を考えるたびはそれらからは逃れられない、すでに五回はシミュレーションしている。今の体力的に次がおそらく最後、次で導かなくてはならない。最善へと。




 奏達への襲撃はすでに起こっている。


 最初はこれに激怒したタシイの単独行動、これの阻止。これについては考えがある、結果は最終段階で明らかになるだろう。


 次に目黒さんへの襲撃、これも相手の思惑を事前に察知しているので目黒さんへ警告。話の分かる目黒さんはちゃんとこちらの指示に従ってくれた。その後の店への直接攻撃はあえて放置、目黒さんの安否は秘匿し、これにより本来動くはずのない人物達が動く事になる。


 そして当初紅子への牽制、友人である白頭巾への直接攻撃。


 これも申し訳ないが止めず助けない、むしろ紅子達から離すことで襲われやすい状況をあえて作った。


 これは相手にとって最大の悪手。


 白頭巾への攻撃は、もっとも敵に回してはいけない者を激怒させることになる。


 ここで一気に第一、第二の切り札が手に入る。


「だけどまだ足りない。あちらの最高戦力に対抗できる駒・・・・・・」


 啄み名有りのトップスリーはおそらく単独なら九尾のメンバーを越える実力。


 つまり現九尾メンバーより強い者を三人集めなくてはならないのだ。




 ういうい、円、だ。


 なんか、キラキラから急に電話がきたと思ったらとんでもなくぶっ飛んだ事を言われたの、だ。


「すいません、とにかく強い人すぐに三人集めてください。基準としてはうちの魔鏡さんレベル、できればそれよりちょっとでも強ければ申し分ないです」


「はあぁあああああ?」


 魔鏡ってあの小さな巨人、前に格闘大会で一緒に参加したがとんでもない強さだったのだ。


 あのレベルを三人て・・・・・・。


「あれ」

 

 意外にもすぐに思いついたのだ。


 一人は勿論あの人。


 もう一人はすぐ傍におる。


 そして、最後の一人、これは来てくれるか。


 もし来てくれたなら。


 間違いなく・・・・・・。


 

         ◇


 某国、某所。


 当国の高官達が円卓を囲む。


「これは由々しき自体ですな」


「よりによって我々に協力を仰ぐとは」


「冗談ではない、これでもし無慈悲の女王側が勝つような事があれば、我々は反目したと見なされるではないか」


「しかし、彼女の要請を無下にするわけにもいきますまい」

 

「そんな事は重々承知、ならばどうするか、それを話し合っているのではないか」


「となればあくまで我らは不干渉を貫き、第三国の秘匿機関に委託すればいいのでは」


「・・・・・・確かにアレの使い所としては元々こういう場合に適用するにかぎる」


 



 その国はとても小さく、貧弱な国土は産業といえるものも長年実を結ばず。


 彼らが外貨獲得のために最終的に辿り着いたもの。


 それは人。


 存在しない人間を各国に提供する。


 目的は様々、勿論公には口外できるはずはない。


 その中の一つに戦闘員という項目がある。


 依頼国、有事の時に戦力として生まれた時からそれように特化教育された者達。


 その過程で選別されクラス分けがなされる。


 最低ランクは俗に言う捨て駒のような役割。


 逆に最高ランクに組み込まれると高度なミッションを要求される。


 しかし長年の功績、高い成功率からこの者達の報酬は小国にとってかなりの潤いを与えてくれるほどに成長した。


 世界からその存在を隠され続ける者達。


 通称、両頭討伐。


透明な体が今、極東の地で発現する。



       ◇


 某日、とある国際空港。


 三つの影が搭乗口から降りてくる。


「う~ん、久しぶりっ」


「こんなに早く来る事になるなんてね」


「私なんてついこないだ来たばかりだぞ」


「あぁ、隊長達この前ここで大暴れしたんだっけ?」


「元、隊長な。あの時は初めて死ぬかと思ったよ」


「いいな、楽しそう。私達はお留守番だったもんね」


 先頭を歩くのは黒髪碧眼、その左右には白銀の妖精のような少女達が付き従う。


「迎えに来てるはずなのだが・・・・・・」


 ここは第一ターミナル、待ち合わせは二階の時計台。


「お~いっ! こっちなの、だーっ!」


「おっ! いたいたっ!」


 黒髪女性は顔を見るなり走り出す。


「まどっちっ! 久しぶり??」


「う~ん、そうでもないの、だ」


 二人は抱き合い、目を合わせた。


「元隊長、その人ですか、この国にいる親友ってのは」


「そうだ、まどっちだ。こっちは私の仕事上の元部下達、ナスチャとヴィーカだ」


「よろしくね」「どうも」


「よろしくなの、だ。三人とも態々来てくれて感謝なの、だ。疲れているとこ悪いが、車は隣接している立体駐車場においてあるからそこまで歩いていくの、だ」


 三人は円と共にその場へと向かった。


 エレベーターに乗り目的地へ。


 国内屈指の大空港だけあって、巨大な立体駐車場がいくつか連なっていた。


 通路を通り車へと向かう円。


 その背中を追う三人。


 その時だった。


 車の影に隠れていた複数の人影が。


 一斉に円へと襲いかかった。

 

 息を、気配を、完全に遮断し、死角からの攻撃。


 急な不意打ち、円は反応できず。


 されどこの三人は違った。


 思考よりも体が動く。


 白き妖精、二人の蹴りがすでに囲んでいた一角を崩す。


 吹っ飛び激しく壁や車へと叩き付けられた刺客。


 パンと響いた音、それはチャイカの踏み込み。


 囲む刺客の背中すら越えて、中心の円の元へと一直線。


 すでに振られていた相手のナイフ、チャイカは円の頭を持つとそれを力ずくで下げ、ナイフの軌道から逸らせた。


 そのまま手に掴んだ円の頭を基点に回転、時計の針を高速で回すように蹴りを放つ。


 それを受け刺客達は放射上に広がり四散した。


「ヴィーカ、ナスチャっ、見届けてる奴がいるはず、探せ」


「「・・・・・・あっちの駐車場、見てるっ」」


 二人は別の建物で、全く同じ形状の隣接する巨大駐車場に目を移した。


「こいつらガチだ、もう死んでる、あっちは意地でも捕らえるぞっ」


 こっちの屋上からあっちの屋上まで、距離にして50メートル強。


「「了解」」


 まずナスチャが走り出す、その勢いのまま隣の屋上へと向かいジャンプ。


 しかし流石に届くはずもない、だが。


 間髪いれず同様に飛び出したヴィーカ。

 

 この時点で先に飛んだナスチャの上体は空を向き、両腕はレシーブの型。


 重なる二人、ヴィーカはナスチャの腕を踏み台にさらに前に飛ぶ。


 その際、ナスチャも両腕を使って思いっきり押し出す。


それでも50メートルの距離にはまだ届かない。


 そう、ヴィーカもまた踏み台なのだ。


 完璧なタイミングで後を追うはチャイカ。


 ナスチャはヴィーカに続けて自ら土台となりチャイカも同様に前へと飛ばす。


 中継地点で宙に浮かぶはヴィーカ。


 ナスチャと全く同じスタイルをとり、飛び込んでくるチャイカを受け止める。


 空中に出来たナスチャ、ヴィーカという足場を使ってチャイカはさらに上へ、先へと。


 これで届く。


 常人では考えつかない、成立できない方法を使って。


 これには逆側にいた刺客の仲間も想定外。


 地面へと足をつけたチャイカ、この時点で全てが終わった。


 瞬きのうちに、全身を映していたチャイカの姿が、次の瞬間には顔だけになった。


 見届け役の男は、一瞬で意識を失う事になる。



 そして。


「なんだい、まどっちはまた狙われているのか」


「こいつら本当ならかなりの手練れよ。ただ実戦経験はこっちのほうが圧倒的に上だったみたいね、初動が全てってわけよ」


「任務失敗とみると全員が自ら死を選んだ。しかも全員爆弾付き。見届け人を抑えてなかったらここ崩壊してたね」


「えぇ、ここまでやる連中に全然身に覚えないの、だ。こいつら一体何者なの、だ」


「まぁいいよ、どんな奴が来てもまどっちは私が守ってあげるから」


「いやぁ、これはまぢで頼もしいの、だ。そっちの二人も屋上から落ちてなんで無傷なの、か」


「え、落ちる瞬間、こう体を回転させて衝撃を分散させるのよ、こんくらいの高さなら誰でも普通に出来るでしょ」


「うんうん」


「いや普通とは」



         ◇


 こんにちは、シストです。


 円さんは無事三人集めてくれそうです。


 しかも、嬉しい誤算ですね。その内の一人におまけで二人付いてきてくれました。


 この二人の強さもまた九尾メンバーレベル。


 戦力は大いに越したことはないです。


 またいつ想定内の敵が増えるかも分かりませんので。


 話がどんどんでかくなっていく。すでに出来てる番外編もだそうと思ってましたがこれ書くの予想以上に時間かかったので投稿ずらそうと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 久々の更新だ!!待ってました。 本当に話がどんどんでかくなってますね!? 敵戦力が、まだ完結してない頂上決戦編の最強であろう2人と互角とは……… そしてそんな人を3人とは。1人はババ様、も…
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