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わわ、火は大きく燃えさかってきたっす(殺人鬼連合 対 異端者連盟編 其の二)

 紅子です。


 なんか変な連中に絡まれました。


 異端者連盟。よく分からない連中っすけど、メンバー一人一人の家柄はこの国に多大な影響を及ぼすほど強大で。


 はっきりいって異端者連盟トップの九條家はシストさんやタシイさんの本家と二分するほどの勢力。


 いままでのごり押しでどうこうできる相手ではないっす。


 私達のいるラヴ女では分家である空音さんと古論さんが来てくれたので殺人鬼連合側と異端者連盟側は膠着状態。


 しかし、いざこざはここだけじゃなかったっす。


 あいつらはあっちにも仕掛けていたんすよ。




一切の告知がないまま、覇聖堂学園の生徒会、通称 方舟会のメンバーが総入れ替えになった。


 会長に九條 しき、副会長に久我 しょく、書記に広幡 つよし


 覇聖堂もまた格式に拘り、ここの生徒なら誰もが知っているであろう九條、久我、広幡といった名家の三人、その突然の就任には戸惑いこそあったが異議を唱える者は皆無であった。



 制服と同じく清潔感のある白を基調とした室内。


 つい最近総入れ替えになった方舟会室。


 方舟会の会長である、九條色、彼女は女ながらに髪は坊主に近い短髪であった。


「朝起きると、まず頭を入念にチェックする、そして傷がないか確かめる。寝ている間に奴らはチップを埋め込んでるかもしれない」


「うむ、奴らなら充分ありえる。救世主の孫であるしきは最重要人物。こちらの動きを悟られるわけにはいかない」


「この国を裏で操る奴らを野放しにはできない。同志の救済、脅威の排除、一刻も早く作戦を進めなくては」


 しきは方舟会の会長であると同時に。


 異端者連盟の会長でもある。


「世界規模の魔女狩りはすでに始まっている。このままではいづれ我々、そして同志達も奴らに捕まり、そして排除されるであろう」


 色はつねに思う。


 世界では皆多様性を認めるような流れを作っている。


 しかし、それは表面上に過ぎない。


 これはあぶり出し、私は欺されない。


 甘い香りに誘われ身をさらせばもう抜け出せない無間地獄。


 落ちて、落ちて、溺れて、足掻き、上の穴から覗かれる。


 渦巻き、それは永久、これは罠。


 そう世界による魔女狩りはもう始まっている。


「立ち上がるのだ、第一歩を、踏み出すのだ、第一歩を、今でこそ我々は異端者と呼ばれ蔑まされてはいるが、これを正常な清浄なる世界に変えるのだ」


 自分達が間違っているのではない。


 世界が歪んでいるのだと。


 


殺人鬼連合。


 色の認識。


 異端者の集まりでありながら、世界を変えようとしない異端者。


 あれほど強大な後ろ盾を持ちながら行動をしない理由は一つ。


 奴らは偽物で、我々をあぶり出す撒き餌。


 自分達は欺されない。


「救うのだ我々で、世の中で苦しんでいる同志達を。なにもかもが許される世界へと」


        

 ◇


 覇聖堂に通っている殺人鬼連合のメンバーは三人。


 かなで芳香ほうか美沙みいさ


 彼女達の教室が一夜にして完全に入れ替わった。


 奏のクラスは奏を覗く全員が男子生徒に。


 そして芳香、美沙のクラスメイトも全て別の生徒へと。


蛇の道は蛇。


 色は徹底的に殺人鬼連合を調べた。


 あくまで自分は正道。


 直接的な行動は抑え、もっとも効果的な方法で個人の心を抉る。


 トラウマを抱える三人は過去へと戻される。


 ど真ん中の席で、男子に囲まれ、わざと耳に入るような卑猥な言葉、絡みつく視線、奏はつねに気が狂いそうだった。


 ひどい虐めを受けていた芳香、美沙も同様、過去にされた非道な行いをトレースされるように、クラスの者達全員が敵となり、汚い罵声、嫌がらせ、苛まれていく日常。


 覇聖堂はラヴ女とは違い殺人鬼連合側の影響力は薄い。


 なので、今や完全に学園を掌握していた方舟会の思うがままであった。


 

 地獄のような日々、だが三人は決して逃げようとはしなかった。


 それは殺人鬼連合の面子を保つため。


 この世界では引いたら敗北。


 三人はタシイや目黒に相談する事もなく。


 耐えに耐え続け。


 そしてその瞬間は訪れた。


 表面張力でギリギリ保っていた精神が崩壊。


 ほぼ同時のタイミングで三人はクラスメイトに手を出してしまう。



          ◇


 方舟会室。


 その一報を聞いた色が微笑む。


「状況は?」


「一人はシャーペンで生徒一人の太股を刺し、一人は女生徒の髪を掴んで机に叩き付け、一人は体に噛みつき肉片の一部を損傷させたようだね。今も絶賛攻撃中」


「よし、先に手を出した、これで大義はこちらにある」


 しきは立ち上がり。


「これより第二フェーズに突入する」


         ◇


 もう意識はどこか別の場所にあった。とにかく動く者にシャーペンを振り落とした。


 最後にうっすら覚えているのは隣の男子生徒が徐にズボンを下げて、これ見よがしに。


 大声で叫びながら、とにかく強く握ったシャーペンを振り回す。


 眼鏡はとうに外れ、視界はもうやっと色彩を認識できるくらいで。


 普段は放課後まで閉ざされていた教室のドアが開いた。


 黒い影が一つ入って来て。


 後はもう覚えていない。




 紅子っす。


 学校を終え。


 今、アジトで。


 怒号と、鳴き声が混じって。


「おらあああっ!! 早くっ! 車とってこいっ!」


 アジトの入り口に黒いワンボックスカーが止まったと思ったら、なにかが投げ込まれたっす。


 普段、ここにメンバー以外の者が来るのは珍しかったので、みんな最初は少し不審におもってたんすよ。


それが人だと分かったのは最初に近づいた私だったんす。


 正直誰だか認識できなかったっす。


 でも制服でもしかしたらって。


 見れば見るほどそれは確信に変わっていくんすけど。


 どこか否定してる自分もいて。


 呆然と立ち尽くす私を押しのけてタシイさんがその何かを抱きかかえて何か言ってました。


 多分、名前だったかなって。


「タシイさんっ! 車用意できましたわっ! 私達が連れていきますっ!」


 一緒にいた空音さんと古論さんも慌ててるっす。


 私は終始立っていただけだったっす。



          ◇


 啄み部隊。


 古来より九條家お抱えの荒事専門集団。


 全員が鴉の仮面をつけその身体能力は常人の比ではない。


 次に黒き翼が落ち立つは。


 聖フィリップラヴクラフト女学園。

 続きすぐ上げるかもです。

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― 新着の感想 ―
[一言] あくまで物理的にはやらずに精神からやっていき、手を出してきたらそれを理由に報復……… 想像以上にエグいことを………… 最初の机や椅子が変わってたのがかわいいな。 今のところシスト君が出てくる…
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