表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/177

ういうい、潜入中なのだ。(対ゾディアックファミリー編其の八)

 ういうい、円なのだ。


 館に忍び込んだ私は。


「で? どこ、だ、どこに、いる」


 奥の一室。


 壁、床はすでに血が飛び散り赤く染め。

 数人の関係者が、身体の一部を欠損させ事切れていた。


「ほ、本当に、知らない・・・・・・そんな子、リストには・・・・・・あがあああああああああああ」


 私は机に腰掛け、正座させていた男に問いかける。

 男がなにか喋る度に、何かを飛ばす。

 今は片耳。


 耳があった場所から大量に垂れ流れる血を必死に押さえ、悶えながら床に頭をつける。


「・・・・・・・・・・・・」


 仲間は全員殺した。

 そして、この状況。

 でも、男は知らぬ存じぬの一点張り。


 本当に知らないの、か。


「・・・・・・リストを、見せるのだ」


 男が持つ端末、それを操作させる。


 開示される情報は、このゲームの参加者、その出資ランク、そしてそれらの餌。生け贄。

 生け贄の数は参加者の数十倍に及ぶ。

 一体、どこから調達してきたやら。


 貧民層、そして罪人、それだけでは数が足りない。

 まぁ、国が主導しているならどうにでもなるか。

 

 途中で、殺人鬼連合の面々と思われる名が連なっていた。


 あいつらは、犯罪者クラブ経由だろうから身辺調査はさほど厳しくないだろうに。

 バールも目玉もスキンラバーも、本名で堂々と参加している。


 こっちで一つ、チームを作るので・・・・・・。


 キラキラは最初にそう言ってた。


 なるほど、そういうことか。


 あくまでキラキラは一般人を貫くか。

 あいつの名前がリストのどこにもない。つまり最初からキラキラはゲームに参加してなかったの、だ。

これはキラキラが貼ったいくつかの保険の一つに過ぎないが。

 今回のゲームにおいてこいつだけはルールに縛られず好きに動ける。

 いやそもそもこういう行動は、他はどうなろうと、頭だけは確実に残すシステム。


 殺人鬼の集団の中で、唯一、潔癖、純白。

 協力関係にあっても一切こちらに隙は見せない。


 なにが一般人だ、幾層にも重なる皮を剥けば多分こいつが一番・・・・・・。


「・・・・・・・・・ん?」


考え事をしながらも参加者リストは軽く目を通して。

 生け贄のリストをじっくり確認していると、助けた少女の名前。


 そして、その隣に、聞いていた姉の名が。


 あった。


「・・・・・・これは、どういう事なの、だ?」


 名は、上でも下でもない。


 隣、なのだ。


「・・・・・・う、あ、ああ」


 未だに耳を押さえ苦しんでいる男に問いかける。


「答える、のだっ!」


 髪を掴んで引き上げる。


「ああ、そ、それは・・・・・・」


 男から聞かされた答えに。


 私は愕然とした、のだ。


「い、生け贄を売った人間の名、で、す。い、生け贄は、子供、女が・・・・・・特に高値で・・・・・」


 て、ことは何か。


 この姉は。


 妹を売った、のか。


 姉が、妹を?

 家族を?


 最悪の殺人鬼と言われた、私の姉でさえ。


 私を目一杯可愛がってくれたのに。


 こいつは。


「・・・・・・もう、いいの、だ」


 ナイフを振る。 

 

男の喉がぱっくり割れた。


 とても、気分が悪い。


 とても、とても、とっても、だ。


 だから、こんなくだらないゲームは早く終わらせて・・・・・・。


 元凶を早くなんとかしなければ。



 それから数十分後。



 はい、シストです。


 今、魔人みたいな人が来ました。


 レベルブレイカー、切り裂き円。


 ゆっくりこちらに近づいてきます。


 これが現役最強が醸し出す殺気でしょうか。


 ゾディアックファミリーの面々は、目を離さず見ているだけ。少しも動けません。


切り裂きが一番端に到達。


 そこにいたゾディアックメンバーの首が。

 

 傾いた。


 不自然に。


 膝から崩れるメンバー。


 顔が地面につく前に、切り裂きはその人の髪を掴むと。


 手に持つナイフを顔面に幾度となく突き刺した。


地面に飛び散る血。

 とっくに息絶えているのに、手が止まらない。

 

 短く、そしてとても長い時間。


 漸く髪から手を離すと、抜け落ちるよう死体は地面に。


 切り裂きは、その俯せの身体を蹴り上げ、仰向けにした。


 顔は血がまだ溢れるほど。ただ赤く。

 切り裂きは無言でしゃがみ込むと、もう動かない死体に。

 またナイフを突き立てた。

 顔と同じように、今度は胸周辺を。

 何度も、何度も、表情はただ暗く、なにを考えてるのかもよく分からない。

 ただ、ただ、ナイフの抜き差しを繰り返し。


 それはじょじょに下腹部、腕、足と移っていく。


 その間、僕を含め、その場全員はそれを見ているだけ。

 死体の四方八方に血が広がっていく。


 切り裂きも返り血を浴び、どんどん身体に血がこびり付く。

 顔の半分、腕全体を、相手の血で染めて。


 一頻り、ナイフを突き刺すと。

 ゆっくり立ち上がった。


 次の獲物を見定めるように、顔を上げ。


 一番近くにいたゾディアックファミリーの頭がまた変な角度で傾いた。


 取り囲むメンバー達は助けようともせず。

 また、逃げようともせず。

 ただ、自分の順番を待っているかのように立ってるだけで。


 

 大型の捕食動物が生きたまま人を喰らっているような光景。

 口を真っ赤にさせ、柔らかい腹から内臓に牙を突き立てている、そんな感じ。


「なにやってんだ、お前らっ!」


 蛇苺と戦闘中だったルークが見かねて声をかけるも。


 それでも反応はない。


 強固な膜が周囲を取り囲んでいる。

 それを破るにはルークの声では少々弱い。


「・・・・・・なら、出てくるかな?」


 ここで、僕は小さく笑った。

 やっと会えそうだから。


 ここで、空気が再び変わる。


 様々な色が交わる場所で。


 また一際、濃くも鮮やかな。


「・・・・・・・・・全く、もう、しょうが無いなぁ」


 ルークの身体が少しだけ震えた。


 そして、声がまた別人に。

 大人と少年の境目のような、低く高い、綺麗な。


「動きな」


 それは別段大きくもなく、叫んだわけでもない。

 なのに、その一言で、ここまで膠着していたゾディアックファミリー達が一斉に息を吹き返す。

 固まっていた身体が、縛られていた身体が、解き放たれる。


 切り裂きの恐怖を押しのけた。


「はじめましてだね、君がキングか」


 ここからでは届かない僕の呟き。

 でも、相手はこっちを見てくれた。


 交差する視線。

 マスクをしていてもよく分かる、熱い眼差し。


「そこのレディー、申し訳ない、少々お時間を頂きたい」


 キングが蛇苺に片手をあげた。


 その蛇苺は何も言わずに僕の方に顔を向ける。

 欲していた答えに、僕は小さく頷いて返すと、蛇苺は肩をすくめた。


 僕は肉の壁を押しのけ、前へ進む。


「オネニー様っ!?」

「シストくん?」


 僕の行動に驚くタシイと目黒さんをも越えて。


 キングも僕の元へ歩いてきてくれた。


 二人の距離が最も近づく。


「僕はキング・・・・・・いやちゃんと名乗ろう、僕がゾディアックファミリーのボス、ニルヴァーナ」


「ご丁寧にありがとうございます。僕はシスト。殺人鬼連合の一応リーダーです」


 相手に好印象を与えるよう、目一杯笑いかける。


 相手の表情は当然だけど読めない、でも笑い返してくれた気がした。 


「うん、知ってる」


 キングはそう言うと。


「じゃあ、死のうか?」


 幻か、一瞬で夜空が広がったように。


 幾千の星が瞬き。


 強烈すぎるプレッシャーが僕を襲い。


「オネニー様っ!」

「シストくんっ!」


 それをいち早く察知したタシイと目黒さん。

 でも、そこからではどんな行動も遠い。


 どこから取り出したのか、キングのナイフが僕の喉元に。


 でも。


「は? 嫌だよ」


 温かい微笑みは一気に氷点下へ。


 目を見開き、顎を少しあげた。


 ナイフが直前で止まる。


「・・・・・・あ~、見つけたぁ」


 キングがそんな事をいう。


「いた、探し出した、やっと・・・・・・」


 顔を空へ。両手で自分を抱きしめる。


「探していたんだ、君こそ運命の人、今、確信したっ。今、僕は君がとても愛しい、どうだろう、一日中、狭い部屋に籠もって、ずっと二人きりで、裸で抱き合いながら、ナイフで互いの身体を切り合おう、小さい傷が身体全部を埋めるほど、何時間も、何日も、とにかく傷つけ合って、壊し合って、そう、どちらかが死ぬまでっ」


 う~ん。ちょっと言ってる事がわかりませんね。


「いい考えだと思わないっ!? どうだろう? 君さえよければ、今、この場ですぐにでもっ!」


「いやいや・・・・・・・・・・・・」


 ちょっと僕が対応に苦しんでいると。

 ここで、スマホから着信が。


「あ、ちょっと失礼します」


 断って電話を取る。

 相手はあの人。 


「あ、はい。あぁ、準備は整いましたか。はい、ありがとうございます、では、また」


 短い会話の後、僕は電話を切った。


「どうやら、遊びはここまで・・・・・・」


 スマホをポケットにしまって。


「ここからは・・・・・・」


 ゆっくり口を開いた。


「一方的なジェノサイドです」


 僕がそう告げると。


 周囲から大爆発が巻き起こる。

 夥しい銃声も湧き上がり、それは悲鳴さえもかき消す。


「ん~? これは一体」


 キングの頭がキョロキョロ動くが、状況はつかめない。

 

 なので、説明してあげようと思う。


「ちょっとした根回しですよ、そもそもこんなゲームは社会的に許されるものではない。だから、ちょっと告げ口したんですよ、そうなると困るのは裏で主導していたこの国でしょう、じゃあどうするか、決まってます、隠蔽するか、他の誰かになすりつけるか、どっちかでしょう」


 実際には告げ口ではなく脅迫なんですけど。

 人権を重んじる周辺国は騒ぐだろうね。制裁は免れない。

 

 ステージ外で待機させていた瑞雀さん達が入ったね。

 監視、閉鎖していた軍部は取り払った。


後は、参加者も生け贄の皆さんも全部纏めて死んでもらえばあっちも満足だろう。

ルールでは銃火器の使用は禁止、なので、ここにいる者は皆、為す術もなく虐殺される。


「参ったな、ここまでするかー」


 キングは口調とは別にとても嬉しそう。


「いや、するかじゃないね、ここまでできるか、かな」


「まぁ、僕は頼んだだけで、やったのはまた別の人ですけどね。僕にとっては、蛇苺や切り裂きよりよほど恐ろしい人物です」


「へぇ~、それはそれは、僕も大いに興味があるね。今度、紹介してもらえないかな?」


「あー、残念ながら彼女は少々出不精でしてね。中々自分の巣から出てこないんですよ」


 まぁ雑談はこの辺にして。

 そろそろ、キングにも退場してもらいましょうか。

 なんか、この人もかなり厄介そうです。


 僕が後ろの蛇苺さんに合図を送ろうと顔を向けた、その時。


「・・・・・・やっぱり、お前だ」


 高速で空から振ってきた人物が。

 それは、大きなナイフを握って蛇苺に凄まじいスピードで襲いかかった。


「うわ、会って二秒で戦闘かい」


 そこは流石蛇苺。強襲にも即座に対応、瞬時に避ける。


「ああ・・・・・・そういえば伝えてなかったなぁ」


 その相手は、瑞雀さん。

ここにいる者は仲間以外皆殺しって言ってあったから勘違いしたのかな。

 前もこんな事ありましたねぇ。


「円っ! 白いの連れてここから逃げなっ! こいつら隙あらば殺しにかかるぞっ! お前は妹を失いたいのかっ!」


 キングの登場にも関係なしと、近くの者にひたすら刃を向けていた切り裂きが漸く動きを止めた。


 銃声は絶え間なく、周辺の爆発が激しくなる。

 黒い煙がどんどん新鮮な空気を呑み込んで行く。

 

「ここで口説くのは中々厳しいかな。後日、改めて迎えにいくよ、それまで花弁を毟りながら待っててね」


 ん、逃げる気か。

 でも、この包囲網、もう逃げ場はないはずだけど。


「あぁ、君達、あの子達は対象外にするよ」


 いつの間にかキングの近くに人影が。

 全員、銃を持った軍服だけど、この国のものではないね。


 て、ことは。


「君の国の、非合法作戦部隊か。考える事は一緒だったね」


 とはいえ、あっちは本物だけど。

 某国の特殊部隊にあって最もベールに包まれてる存在。他の特殊部隊から特別にスカウトされた少数精鋭、通称N中隊。非合法軍事作戦を主に行動するインクリメント。

 他国の内戦に支援として行動中に、ささいなミスでその存在がわずかに知られることになったらしいけど。今だ大部分が謎の部隊。


「そっくり、そのままお返ししますよ、ここまでできるか」


 キングことニルヴァーナが煙りと共に消えていく。 


「できれば、もう二度と会いたくはないけど・・・・・・」


 そうもいかないか。なんだか気に入られたようだし、首はしっかり取らなきゃね。


さて、この一帯はもう色々入り交じってもう無茶苦茶な状態。


 まずは瑞雀さんを止めて、協力してこの場から離脱しよう。


蛇苺が言った、隙あらば殺しにかかる発言。

 否定はしないよ。

 僕達にはドールコレクターとの契約があるから手を出せないけど。

 母さんや瑞雀さん達は関係ないからね。


 でも、そんな事をしたらなにが起こるか分からない。

 彼女達のボスの逆鱗に触れそうだし。

 

 なにより、ドールコレクターの残したパンドラの箱。


 いくつあるのか、どんな効果かは知るよしはないけれど。

 妹を守るために絶対なにか埋めていったはず。


 そう、彼女は死してなお、僕達を縛り続ける。

纏まりませんでした。適当すぎたので後で修正するかもです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ