表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/177

おや、どこも目が離せませんね(続 頂上決戦編 其の四)

 こんにちは、蓮華です。


 もはやこの街は戦場、それも最前線。

 

 あちこちで戦闘が繰り広げられております。


 中でも注視するは勿論、身内である円さん、そして一緒に行動する謎の女。


 そして。



           ◇


 チカチカと。


 瞬きの感覚で起こる閃光。


「は、はは、よいぞ、よいぞっ!」


 宙にその身を留めたままに。


 ババ様の止めどない攻撃。


 白い衣を身に纏いし大男は両拳でそれを凌いでいた。


 それつまり。


 同じ速度で。


 一つも取り残すことなく。


 世界最高峰の拳撃を見極めているという事。


「なんネ、あいつ、やっぱりおかしいヨ」


「ボソボソ・・・・・・」


「そうネ、ちゃんと戦闘になってるヨ、あのババ様と」


 自分達ならまだしもと。


 二人は正直驚きを隠せない。


 しかし、だからといって感覚が少しでも逸れる事はない。


 彼女達もまた超一流。


 空気を裂いて高速で飛来する物。


 二人は瞬時に察知。


 それは小さな鉄球。 


一際周囲を振るわす高い音、それと衝撃、光。


 一直線にババ様へと向かっていたそれ。


「シャレイ、逃すでないぞ」


 遮ったのはリライの鉄の糸。網のように張ってそれを防いだ。


 それより前にシャレイが駆ける。


 軌道からもう一人の位置を特定。


 その場へと、風の如く。


 その後、二射、三射と追撃がくるも。


 巻き網のように前方へ広げるリライの鉄の糸が絡め取る。


 

 九尾とは文字通り本体であるババ様の尾。


 それぞれが矛であり盾であり手足。


 自動で動く超高性能な殺人マシン。


 シャレイは捉えている。


 高い場所で、当初から存在には気付いていた。


 だが相手の天然光学迷彩がこちらの索敵能力を上回っている。


 まさにそれ用に特化したかのような立ち振る舞い。


 それでも今は。


「いるネ、見えてるヨ、もう逃げさないネ」


 壁を垂直に、高低差、段差、シャレイにとって全て平地。


 柵を跳び越え、着地と同時に横へ飛ぶ。


 その場を鉄球が通り過ぎた。


 シャレイが同じ位置に一秒でも留まる事はない。


 残像をその場に、つねに移動しつつ。


 相手と対峙。


 下の大男と同じ白い服、そして鋭い歯形のマスク。


 間違いない、雰囲気が以前自分が戦った者と酷似している。


 なら確実な事が一つ。


「お前も相当強いネ、楽しみヨ」


 斜め前でジグザクと瞬動、ナイフを構えて。


 やがて二人の距離は皆無。




 ういうい、円、なの、だ。


 今私はチャイカと自転車に乗りながら坂を駈上っており。


 そして。


「ひぇええええええええええええ」


 後ろからヒュンヒュン飛んでくる矢を避けているの、だ。


 足だけでチャイカの体にしがみつき、体は海老反り。


 後方確認。


「な、なんなの、だ。あれは」


 ここは斜度でいえば二〇%近くある坂なの、だ。


 それをだ、弓を構えているので勿論両手はハンドルから手を離して、立ち漕ぎしながらロードバイクでヒルクライムなの、だ。


 と、思ったら、今、私の視線に何かが通り過ぎた。


「追いつかれたか。流石、トレップドマーレ、いいロードだ」


 いつの間にかすぐ斜め後ろにもう一人。


 こちらは鎖鎌をブンブン振り回している。勿論手放し。


「いいね、まるでゲームみたい、まどっち、視点任せたっ」


「え、ゲーム、え、視点? どういう事なの、だっ」


「そのまんまの意味さ」


 


 チャイカの視界にモザイクが入る。


 ドットが世界を書き換えていく。


 画面は横スクルールに。


 自分と円をのせた自転車、それを追う二台の自転車。


 後ろの二台はたまに攻撃を仕掛けてくる、矢が飛び、鎌が飛ぶ。


 コントローラーの十字キーを右、左と押してそれを避ける。


 血と臓物だらけの戦場で。


 いつしかチャイカは見方を変えた。


 最近の実写と見違うような美麗なグラフィックはいらない。


 懐かしいあのドッド絵、それでいい。


 あれなら脈うつ心臓も、蠅のたかる死体も、千切れた腕も足も、ずっと見ていられる。


「矢、来るの、だっ! あ、鎌もっ!」


「オーケーっ!」


 下を押して身を屈める、タイミングを合わせて横ボタン。


 この世はゲーム。操作さえ間違わなければ全てうまくいく。


 しかし、もう追いつかれたのも事実。


 ここからはジャンルを変えなければノークリア。


「まどっち、もうすぐ頂上につく、その後はまた坂だと思う、だから一時サヨナラだねっ」


「えっ、どういうっ」


 ハンドルを持ってチャイカはその場で逆立ち。


 頂上についた瞬間、手を離し後方の弓を構える女へと変則ドロップキック。


 円は自転車に取り残されそのまま下り坂へと。


「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 円の絶叫が遠ざかっていく。


 弓使いの黒い女は引き釣り降ろした。


 鎌男はそのまま円を追いかけていった。


 チャイカの目には一人の女がドッド絵表示される。


 もう一人の男にも同時に攻撃は仕掛けていた。自転車前輪のスパークを狙ってナイフを放ったが鎌で弾かれた。


「本当は二人ともここに留めたかったけど。良かったよ、二人がかりだとちと骨が折れた」


 相手のステータス、謎の女。レベルは99。



        ◇


 ういうい、円、だ。


 なんか知らないうちに自転車を運転してるの、だ。


 そうこう言ってる間にも。


「ひぃ、ひょえ、ひぃいい」

 

 鎌がヒュンヒュン飛んでくる。


 今が下り坂で良かったの、だ。これが登りならとっくに死んでるの、だ。


 マックススピードを出せる分、何とか逃げ切れておる。


 ギリギリ、相手の間合いの外をキープ出来ているが、下り切ったらどうなる。


 頼りのチャイカとはどんどん離れていき。


 そして、その時は訪れる。坂の終わり。


  ◇


 円は知らない、すでに発動している。否、もう過去何回もこれは起こっている。

 

 過保護な、可愛い、愛する、残した、プログラム。



 下り坂、平地にさしかかり、惰性のスピードは緩やかに落ちていき。


 鎌が首を今か、今かと。


 切っ先は迫り、迫り。


 黒き死神。


それは届く、まずは後輪。


「ふぎゃああああああああ」


 狩りとられ、まだかなりのスピードを要していた自転車のバランスは崩壊する。


 制御不能となった自転車から飛び降りる。


 地面に足をつけたが最後。


 切っ先は迫る、迫る。


 黒き死神。


 それは届・・・・・・、かない。 


 弾くは警棒、追い返す。


 空からの攻撃、鎌を叩き落とす。


「っ!」


 それはユラユラと目を覆う着物柄の帯。


「汐見、かっ!?」


 ふわりと身を置くは小柄な少女。


「あぁ、本当面倒くさい。なんで毎回毎回私がっ」


「た、助かったの、だ」


 思わぬ援軍にほっと胸をなで下ろす。


 しかしそれも束の間。


「いい、そこのクソ殺人鬼、よく聞きなさいっ! 前に格闘大会があったでしょう」


「おうっ?!」


 格闘大会、私達が蛇師匠達と前に一緒に参加したやつなのだ。


「本当は分かっていたのよ。分かりやすく言えば、あの時私の強さは五段階で4、他の三人は5だった」


「お、おうっ!?」


「そして今、目の前にいるあいつも5よ。つまり私より強いって事」


「ええっ!?」


 なら負けるの、だ。やばいの、だ。


「ちなみに、あんたは2よ」


「・・・・・・・・・・・・」


 鎖に繋がった鎌が空気を切り裂く。


 ずっと相手の頭上でグルグル回っている。


 一応、あっちも見極めているのだ。


 まだ攻撃はしてこない。


「どっちにしろ、もう汐見に頑張ってもらうしか、ないの、だ・・・・・・」


 他力本願でも私では太刀打ちできないの、だ。


「何言ってんのっ! 頑張れじゃない、あんたも頑張んのよっ! 4足す2はっ!?」


「・・・・・・え、6なの、だ」


「ならギリギリいけるでしょっ!」


 大きく息を吐いて。


 汐見の纏う空気が代わる。


「そう、か、そうだ、な」


汐見が警棒を強く握り直し。


 私もナイフを握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 異次元には異次元をぶつけるんだよ!!! やっぱりみんなおかしいよ。こんな戦いについていけるなんて。と思っていたら久々汐見さんの登場で驚いたし、円ちゃんの戦力足りないと言われてしまうとは。円ち…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ