うん、やっぱりこの人は頼りになりますね(対ゾディアックファミリー編其の六)
あ、どうも、シストです。
今の状況を簡単に説明しますと。
僕達三人は、ゾディアックファミリーの面々に完全に囲まれてしまいました。
四方八方、彼らのトレードマークである青と黄色の外套で埋め尽くされ。
ざっと見積もって、30人てとこでしょうか。
「ぶっ殺すぞぉっ!」「無茶苦茶にしてやんぞっ!」「お前ら、ここで終わりだぁ!」
それぞれから怒号がわき起こります。
相変わらず、こういう輩は本当に五月蝿い。
「うるせぇええええええええええええええええええええ」
「お前らこそ、数多いだけで粋がるんじゃないよ」
こちらもタシイと目黒さんが負けじと声を出します。
この人数に囲まれても一切臆してません。
喧噪の中、人垣をかきわけて奥から姿を現せたのは。
「きゃはっ、強がっちゃって可愛いー」
これまた皮のマスクを被った・・・・・・。
「始めましてー、私はビショップ。チェスメンバーの大幹部でーす」
クィーンに代わって、この場に出てきたのはまたも大幹部の一人。
マスクの首元から長く束ねた金髪が地面に流れるように伸びる。
一見、同じようなマスクだけど、縫い糸が違うね。この子は、蛍光色の赤。
「あー、大丈夫、ここでは殺さないから安心して、ファミリー全員でじっくり殺るから、何日も、何週間も、ずっと一緒・・・・・・きゅっはっ」
ビショップが前にどんどん出てくる。
「はぁああああ? お前らにやれんのか? あぁ?」
「そうそう、アタシらはそう簡単に掴まんないよ」
タシイも目黒さんも同様に向かっていく。
「きゃはっはっは、この状況で、よくもまぁ・・・・・・」
ビショップはそんな二人を笑うけど。
そちらが時間稼ぎをしていたのは重々承知で。
それを分かって無視していたのは。
こちらも、同じだったから。
「おい、お前ら、そろそろ出てこいや」
タシイの一言で。
近くの建物から、数人の人影が。
「ういすっ!」「かしこまり」「はいっ」「ただいまっ!」
それは。
「う~ん、なになに、仲間?」
ビショップも予想外だったらしく、歩みを止める。
ここで、僕も歩き出し、タシイと目黒さんの間を裂くように最前へと。
「今の今まで、隠しておきました。これが、僕達、殺人鬼連合です」
僕達の後ろにつくように、他のメンバーも相対する。
最初から僕らは全員参加している。
ただ、表に出さなかっただけ。
タシイや目黒さん、切り裂きが行動不能にしたゾディアックファミリーを預けておいた。
つまりは、後始末という拷問役。
「きゃはっはっはああああああ、それがどうしたの? 三下がちょっと増えただけでしょ? 総力戦ってにはいまいちだね。まだまだこっちの方が量も質も上だよ??」
僕らの仲間の登場にも動揺はしない、むしろ笑え声が高くなった。
随分、見くびられているけど、それはしょうが無い、実際、ビショップのいう通りだし。
それは、僕も認めるよ。
「あぁ、勘違いしないでください。この子達は、ただの壁です」
「おぉ、お前ら、今オネニー様のいった通りだっ! お前らは肉の壁だっ、オネニー様に指一本触れさせるなよっ!」
「ちゃんと、囲んで、死んでも、守れっ」
そう、この子達では、大幹部クラスの狂気には堪えられない。
この場で奴らとまともに戦えるのは。
僕の妹のタシイと、眼球アルバム目黒さん。
そして。
「やぁやぁ、お、もしかして始まってる?」
僕達の前、さらにゾディアックファミリーの人垣よりも後方。
そこに登場したのは。
「う~ん、見えないけど、まだ大丈夫そう。蛇お姉ちゃん、ゆっくりしすぎ」
「あはは、ごめん、ごめん、でも、文句は円に言ってよ、あいつが時間になっても来ないのが悪い」
一斉だった。
青と黄色の外套が翻る。
全員が、僕らより後ろへと注意を向けた。
それはビショップも同じで。
「・・・・・・なになに、なんなの、あんたらも殺人鬼連合?」
余裕は一瞬で吹き飛んだみたい。
そりゃそうだね、そこにいるのは、まさしく強者。
肌を通して、本能に訴えかける。
「ん~? 私? いや、違うけど、まぁ、依頼者的な?」
「一緒にしないで。私は昆虫採取部。そっちより全然上」
兎のマスクと、白いレインコート。
殺し屋蛇苺。そして、切り裂きの妹分、地上最年少レベルブレイカーにしてレコード持ちの白頭巾、レッドドット。
切り裂きの姿が見えないけど、まぁ問題ない。
彼女だけいればいい。
「で、なに? こいつら全員倒せばいいのかな?」
兎の仮面の女性は、人垣に向かう。
「よくわかんないけど、つまりは敵って事ね。なら・・・・・・・・・グチャグチャにしちゃぇえええええええええええええええええええええええええ」
ビショップが声高に叫ぶ。
その声は、まるで輪のように広がり、その場全員の身体を突き抜けた。
僕の周りの仲間は、それを受け、一瞬身体を強ばらしたが。
こちらのタシイに目黒さん。
あちらの蛇苺、白頭巾にはまるで効果はない。
蛇苺には狂気や威嚇はそもそも無意味。彼女は自分が強き者だと自負し、絶対的な自信がある。ただ殺すのが好きなだけの奴らが何をしようが効くわけがない。
それよりも驚くべきは白頭巾の方。
彼女はこれ系の体勢が抜群に高い。
それもそのはず、白頭巾は以前から、あのカリスマ拷問士と共にし、さらにタシイ、目黒さん、切り裂き、はたまたドールコレクターや僕の母さんといった狂気の塊のような人達と接してきた。本来、殺人鬼の天敵で恐れて止まない拷問士に対しても臆さない。
精神力でいえば、姉貴分の切り裂きよりももしかして・・・・・・。
「おらぁ、止まれ、この糞アマっ!」
ゾディアックファミリーの一人が飛び出し、蛇苺へ蹴りを繰り出す。
それを。
蛇苺は、両手で軽く受け止めると、脇腹に押し込むようにクラッチ、掴んだまま自ら飛び上がると、捻りを加えながら相手を地面に叩き付けた。
おおー、あれは確かドラゴンスクリュー。
蛇苺はすぐ立ち上がると、倒れ込んだ男の顔面をサッカーボールのように蹴り上げた。
ボールは飛ばなかったけど、凄まじい音と共に変な角度に折れ曲がる。
「て、てめーっ!」
続けて、襲いかかる大柄なゾディファミの男。
が。
蛇苺の爆発的な踏み込みの後。
蛇苺の肘が相手の鳩尾に食い込む。
さらに、両腕を合わせた掌底打ちで追い打ち。
さらにさらに、流れるような動きで最後に繰り出すは・・・・・・。
懐に入り込んでの。
鉄山靠だぁあああああああ。
相手は吹っ飛び、後方にいた仲間を巻き込んで倒れ込む。
おお、やばいです、僕らしくもなく、興奮してしまった。
それほどまでに、無茶苦茶。
何でもありだね、あの人。
「はい、次、どんどん来なー」
まるで稽古をしている師範代のような言い回し。
彼女にとっては、まさに練習台くらいの考えなんだろう。
「くそがぁああああああ」
「ぶっころすっっっっっっっっっ」
「おらあああああああ」
今度は三人同時。
ナイフで突き刺しにいく男。
もうこの先はここからでは遠いし、動きが早すぎてよく分からなかった。
とりあえず、パンパンと手で腕を弾くような音がした。
と思ったら、男のナイフはいつの間にか蛇苺の手に。
なぜか腕を捻られつつ倒れている男の腕を曲げて、そこにナイフが通され勢いよく天に向かって振り抜いた。
宙に飛び散った血が、まだ重力によって落ちる前。
またもパンパンの音の後に、別の男は地面に倒れており、その顔や首に蹴りで追い打ち、というか止め。
最後の一人、攻撃の勢いを弾いては誘導、頭をロックしてからの。
おっとーーーー、そのまま持ち上げたーー。
何するんだ、何をする気だ。
おおお、垂直だ、垂直に持ち上げてのーーー。
ブレンバスターァァア。
相手の頭部をそのまま地面に叩き付けたぁあ。
それをこの固い地面でやったから、相手の首はもうあらぬ方向を向いている。
おっとっと、また興奮してしまった。
本当、無茶苦茶だな、この人。
「どけぇ、俺がやるっ! 素人はどいてなっ」
む、ここで一際体格のいい男が出てきたね。
筋肉の付き方が違うから、なにかやってる感じか。
「ん~? 君は中々やりそうだね」
素人目だけど、相手は構えから見て打撃系か。
「俺は、アンダーグランドの格闘技で何人も殴り殺してきた、お前も潰してやるよっ」
やはり、経験者。
でも、蛇苺の対応は変わらない。
相手の素早いステップ、瞬時に距離が詰まる。
しかし、伸びきった腕に対して、蛇苺の防御が同時に攻撃に。
反射的な避けがカウンターになり、相手の顔面に強烈な一撃。
さらに、股間を蹴り上げ、蹲る男の顔に膝を打ち込む。
まさに一瞬だった。
「一対一はつねに短期決戦、いかに相手の急所をつくかだよ」
誰もが言葉を失った。
それだけ圧倒的な強さ。
「よく、どの格闘技が強いなんて議論が起こるけど・・・・・・」
蛇苺が両手を広げる。
「そんな事はナンセンス。さっき私は、クラヴ・マガ、シラット、他にも色々使ったけど、どれが強いかじゃない、私が強いの。なにを使って強いのではなく、それを使う私が強い!」
その言葉には自分に対する自信に満ちている。
それだけの事、そう思えるだけの事を、彼女は日々しているのだ。
絶対折れる事がないほど、僅かにも揺らぐことがない柱を。
「さぁ、まだまだ私はやれる、でも向かってきたら確実に死ぬよ。殺す事しか考えてない欠陥品の皆さん、たまには死ぬ事も考えてみるのもいいんじゃないかな?」
とりあえず、この場は凌げるね。
今は蛇苺さんに丸投げするとして。
さて、次の一手はどこで指そうか。




