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うん、ついに僕達にも魔の手が迫ってきました(頂上決戦編 其の三)

 こんにちは、シストです。


 大きなニュースがまた飛び込んできました。

  

 一族の分家、九曜桜、甘露寺家に続いて。


 今度は木目沢家が狙われました。


 時刻は不明。


 木目沢家も独自に私兵を用意し備えていたみたいでしたが。


 ガチガチに固めていた防御は意味をなさず。


 屋敷にいた者は木目沢家、私兵共々全員死亡。



 そんな中。


「追い返された?」


 匿うため本家に送った空音、古論が戻ってきました。


「はい、なんでも当主様の大事なお客様がお越しになるとかで・・・・・・」


 一体どういう事だ。


空音も古論もいずれ各分家を担う時期当主候補。


 僕達同様充分狙われる可能性はある。


 それより一族しか基本入れないはずの本家に来客?


 僕が知る限り本家に出入りできる外部の人間は、あの元拷問士のお千代さんのみ。


 今ならリョナ子さんも単独でいけそうだけど、そもそもリョナ子さんが入れたのは旧知の仲のお千代さんが連れて来たからだ。


 逆にいえばお祖母様が全面的に信頼しているお千代さんなら誰を連れてきても入れるという事。


「僕達の事など知ったことないという事でしょうか。それとも、僕らの世代の事は僕らでなんとかしろと・・・・・・」


 分家を壊滅させるだけの敵に僕らだけでどう対抗すればいいというのだ。


「おネニー様っ! 外が騒がしいっ!」


 言ってる傍から。


「シストきゅん、襲撃っ! すぐに移動をっ!」


 慌てて中に入ってきたのはゾディファミ統括ニルヴァーナ。


 アジトの周囲をゾディファミに見張らせていたんだけど。


「敵は10人以上、でもかなりの手練れっ! うちの者達じゃ凌げないっ!」


「メンバーを事前に決めていた三つに分ける、他のメンバーは空音、古論を守りながら逃げろっ!」


 僕とタシイ、空音、古論に分割、それぞれメンバーを伴い別々に逃げる。


 車を用意する余裕はない、僕達はここから反対側へ自分達の足で散開した。


 敵は三つに分かれるか、あるいは。



       ◇


 数刻前。


 分家、木目沢別宅。


 広いエントランスを二人の人物がゆっくり歩いて行く。


「なんネ、なんネ、こいつら全く」


「・・・・・・ボソボソ」


「そうね、あまりにネ。あまりに・・・・・・」


 二人の周囲には人が集まってくるも。


 ただなにもせず歩いているだけに見えて。


 どんどん地に伏せていく。


「弱すぎネェ」


 早すぎて見えない、シャレイの投擲。


 リライの長い裾から細く強靱な糸が飛ぶ。


 二人に近づくと。


 顔に突き刺さる小さな金属。


 首が落ち、腕が落ち、足が切断される。


 二人をラインに、その後ろには死体がどんどん積まれていく。


 廊下が血で染まっていく。


「後でちゃんと確認するネ。ま、そんなヘマする私達じゃないネ」


 歩みは止めず。


「いくらなんでももう少しマシなのいないのカ」


 二人の動きを止めようとどんどん人は増えるも。


 二人の動きは止められずどんどん人は減っていく。


「止まれ、俺は第三部隊、たいちょ・・・・・・」


二人の前に立ち塞がろうとした男。


 おでこから頭頂が綺麗に離れる。


 脳の断面を見せながら他と同様に崩れた。


「ん、今、こいつ何か言ったネ?」


「・・・・・・ボソボソ」


「そうネ、気のせいネ」


 二人はどんどん先に進んでいく。


 死体を増やし死臭を撒き散らせながら。

  

「協力者は優秀な人物ネ。こんな楽な死事はないヨ。すでに前準備は済んでいて、私達はただ殺すだけでいいネ」


「・・・・・・ボソボソ」


「あぁ、そうネ。もう少しネ。私達からは決して逃げられないネ」



      ◇


 こんにちは、シストです。


 ゾディファミを盾に必死に駆けます。


 街まで逃げ切れれば奴らも派手な行動はできないでしょう。


 そしてあそこは彼女のテリトリー。


 たぶん、僕達を助けてくれるはず。


「シストきゅん、駄目だ、僕らの仲間じゃ足止めにすらならない。追いつかれるのも時間の問題だよ」


 こちらは今、僕、タシイ、目黒さん、ニルヴァーナ、ベアトリスの5人。


 他にもニルヴァーナの取り巻きが数人いたのだけど、それらはすでに・・・・・・。

   

「ベアトリスっ! お前は残り、ここで少しでも時間を稼げっ! 命をかけてシストきゅん達を逃がすんだっ!」


「・・・・・・了解しました」


 二本の斧を携え、ベアトリスが足を止め、背中を向けた。


「ベアトリスさん、すいません、お願いしますっ!」


 ベアトリスはゾディファミの中でも特に戦闘能力が高い。


 それでも所詮は殺人鬼として。


 プロ相手にどこまで通用するか。


 でも、やはり僕達が狙われたか。


 他はちゃんとした護衛が付いてるからね。


 ついてないとしたら僕達か。


 

        ◇


 ボサボサの髪。


 ボロボロの服。


 一人の女性がフラフラと街を彷徨う。


 目的はない、ただ今日の獲物を探していた。


 基本は単独行動、好き勝手。


 今日は誰を殺そうか。


 今日は誰で楽しもうか。


 それだけを考え。


 あいつはどうだ。


 あいつは駄目だ。


 あいつは良さそう。


 あいつに決めた。


 静かに息をひそめて獲物に近づく。


 その最中。


 数人の男達が彼女を取り囲む。


「間違いない標的の一人、本家序列四位、トリムだ」


「・・・・・・・・・・・・あかぁあああ??」


 

       ◇


 ここで死んでも敵を止めろ。


 ベアトリスはそう命じられ。


 素直に従った。


 ニルヴァーナの命令は絶対。


 あの方には恩も大義もあると。


 そう死すら厭わず。


 でも、ほんの少し。


 ほんの少しだけ。


 気の迷いか、いつしか音楽を嗜むようになった。


 最初はお遊び程度だったが。


 どんどん心を奪われていって。


 この国に腰を下ろし、あるバンドのメンバーに入った。


 気が済めばいつでも辞めるつもりだった。


 でも、不定期に開催されるライブで違う自分に出会えた。


 楽しい。


 嬉しい。


 いままであまり感じなかった感情が一気に湧いてきた。


 初めて充実していると。


 何も考えず人を殺し続けて。


 見るのはいつも今際の沢の相手の顔だけ。


 涙を流す絶望の顔。


 でも、ライブでは違った。


 自分に向けられる感情は。


 今までにない。


 熱く、純粋な。


「・・・・・・私はここで死ぬのか」


 もう少しでライブであった。


 ここまで必死に練習して。


 少しでも観客の期待に応えようと。


 メンバー一丸で頑張ってきたが。


「いたぞっ! こっちだっ!」


 追っ手がここまで来た。


「ごめんね、みんな」


 残念。最後に思いっきり演奏したかった。


 みんなと一緒に。


 もう一度あの光景を。


 向かい討つは10人を越える男達。


 ベアトリスには瞬時に悟った。


 これは自分ではどうにもできないと。


 でも、可能なかぎりここでと。


「えっ! 嘘っ! 嘘でしょっ! これは夢、夢なのっ!」


 近くで女性の声。


 あぁ、可哀想にとベアトリスは思った。


 この場を見られた以上巻き込まれて一緒に殺されてしまう。


 だが、その者達はこの異様な光景を前にして離れる所か。


「ベ、ベ、ベ、ベ、ベ、ベアトリスちゃん、で、ですか???」


 近づいてきた。


 二人組の女性。


 特に目立つ特徴は・・・・・・。


「おいおい、なんだ、嬢ちゃん達、悪いが・・・・・・あぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 女性達を制止しようとした男。

 

 その男の腕が折れ曲がる。


 真っ白い。

 

 髪。


 睫。


 肌。


 二人組。


「感動の出会い。邪魔しないで。なにあんた達、あぁ、さてはベアトリスちゃんのストーカーね。ベアトリスちゃんはこれから大事なライブがあるの、なにかあったら・・・・・・私絶対許さないから」


 そう感情を露わにするのは普段は大人しいヴィクトリア。


 今はとても激昂している。


「なにをごちゃごちゃと、構わねぇ、こいつらも殺せっ!」


 訓練された動き。


 だが、ヴィクトリアの前にはなんら意味をなさない。


 瞬時に周り込み。


 男の後頭部は掴まれ。


 地面に叩き付けられる。


 潰れる顔面。


 さらにそのまま急加速。


 地面に押しつけられたまま前進。


 削られる顔。


 それは壁に到達してもまだ続く。


 よじ登るように壁にすら押し込まれ。


 どんどん上に駆け上がる。


 男の顔を持ちながら。


 壁の途中、見上げる高さで。


 顔の全面を失った男の死体が落ちてくる。


 とんでもない指の力で壁にひっついているヴィクトリアの顔は。


 まさに獣であった。


「あーあ、ああなったヴィーカは私でも止められないわよ。まぁ、歌音派の私もヴィーカと同じ気持ちよ。ライブのためにも貴方達、ここで死になさい」


 アナスタシアが風になる。


 近くにいた男の首が三回ほど回転した。


 男達が常人以上の力量だったのは間違いない。


 だが、この二人は。


 それよりも遙か上に位置していた。



     ◇


 トリムの指に血がべったりとこびり付く。


「ぁあああああ、あああ、なんだ、なんあだったんんだぁああ、こいつらぁああ、あぁあまぁいい、殺す、殺した。今日はこいつらで我慢しよ、そうだぁ、そうしよぉ」


 トリムの遊戯はこれから、殺してからもなお続く。


  

     ◇


 こんにちは、シストです。


 どうやら襲撃者は全部こちらに来たようですね。


 追っ手も分断。


 挟み込まれるように前方へ現れました。


 でも、それももう済んだこと。


「信じてましたよ」


 それはここにいない彼女への言葉。


「任務完遂、これより対象者を安全な場所まで誘導する」


 僕達を助けてくれたのは金髪集団。


 いや一人だけ違いますね。


 黒髪のリーダー、ゾフェアベーゼ率いるミドガルドシュランゲ。


「あ、ゾフィア、頼む、後ろで戦ってるベアトリス・・・・・・いや、なんでもな・・・・・・」


「ゾフィアさん、助けてもらったついでで悪いのですが、僕達の護衛より今ベアトリスさんが後方で足止めしてもらってます、そちらを今すぐ助けて頂きたい」


 ニルヴァーナが呑み込んだ言葉を僕が代弁する。


「・・・・・・あちらはすでに問題ないと報告があった。なので助けは不要だろう」


「・・・・・・そうですか」


 蓮華さんがそういうならそうなのだろう。


 何がどうなってるか今だに全体像が掴めない。


 襲撃者はなぜ僕達の場所がわかった。


 本家をマークしていて空音や古論がつけられたのか。


 まだピースは不完全だけど。


 ここらで一度やっといた方がいいかもしれないね。

 

 シストシミュレーション。


 これで少しは現状に近づければいいのだけれど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本家に九尾の2人が行ったのかと思いましたが、彼女達は木目沢家に行った感じですね。 それにシスト君やトリムさんの所には部隊の人達(雇われですかね?)が行ってましたし。 ベアトリスさんまさかの…
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