うん、みんな仲が良さそうで何よりです。
好きな漫画だっただけに残念です。今回はそんなお話。
こんにちは、シストです。
最近めっぽう暑くなってまいりました。
今日もアジトで一休み。
ここは一見鉄筋剥き出しの廃屋なんですけど。
実はクーラーをいくつも完備した快適な空間だったりします。
そんな事でメンバーの何人かもここに涼みにきていて。
「目黒ちゃん、借りてた漫画見たよ~、凄い面白かったっ」
「お~、それは良かった、続き後で持ってくるよ」
「あ、私、それ借りた後自分でも買っちゃったっすよ~」
「あ、モンタージュ? 私もそれ好きー」
「あ、私もです。いいですよね~、モンタっ」
なにやらタシイ達が何かの話題で盛り上がってるね。
「あ~、続きが気になるー」
「この作者、私達と同年代みたいっす、凄いっすよね」
「これ原作と作画は別なんだね。どっち?」
「えっと、作画の方っすね」
「へぇ~、それはますます応援したくなるね」
「素敵な絵ですっ」
話してるのは。
タシイ。
目黒ちゃん。
紅子。
奏。
分家、百目鬼の空音。
分家、大下倉の古論。
最近加入した血染めの芳香。
みんな仲良く語り合ってる。
良かった、分家や新加入のメンバーも馴染んできてるみたい。
百目鬼空音、代々本家の傍付き兼情報収集を生業としてきた一族。空音はそこの時期当主。
ここは四姉妹だけど、空音が一番優秀という事で次女でありながら序列一位になっている。
この中では一番年上だけど背は紅子よりも小さい。
木下倉古輪、見た目はとても普通、黒髪で肩くらいの長さ、他に特徴はない、年中マスクをつけてるくらいか。木下倉家は後始末専門の一族。彼女達がいるから僕らも多少無茶できる。
この二つの分家は今の所本家に忠実。
そしてもう一人。
「芳香も、読んでるんだ?」
「はい、私も目黒さんからお勧めされて嵌まっちゃいましたっ」
笑顔を見せる芳香。血染めの制服少女。今はもちろん普通の制服だけど、少し前までとは表情まで別人だ。
この子は変則的にメンバー入りしたからまだ実態を掴めていない。
ここにいる者達のほとんどが先天的な異常者達。
元々普通の学生だった芳香がこれからどれだけやっていけるか。
その答えは数日後すぐに出ることになった。
◆
シストです。
今日も暑いですねぇ。
僕はソファでアイスを舐め舐め。
タシイ達も最近ここで漫画を読んだりして寛いでいます。
うちとしては一時の平穏。
血とは無縁な・・・・・・。
「タシイちゃん、大変っ」
「ん、どしたの、空音ちゃん」
慌ててアジトに入ってきた空音さん。いつもは大人しい彼女にしてはとても珍しい。
「モンタあるじゃんっ、あれ連載打ち切りになりそうっ!」
「えっ! なんで、今面白くなってきたし、これからアニメや舞台なんかも・・・・・・」
「今、リークがあったのっ! 作者・・・・・・原作の方が強制わいせつでこれから捕まるって!」
「うわあ、まじか・・・・・・」
タシイの周りのメンバーも顔を見合わす。
「え、それじゃこの漫画終わっちゃうの・・・・・・」
「そんな。作画の方、関係ないのに可哀想・・・・・・」
なにやら大騒ぎになってるね。
伝わってくる話では、タシイ達が夢中になってる漫画は原作と作画担当がいて、その原作の方が犯罪を犯したと。
「強制わいせつって一体なにしたんだ?」
「自転車で後ろから近づいて女子中学生の体を触ったとか。他にも余罪はありそう、あの近辺そんな事件頻繁してたし。中には小学生もいたって」
「・・・・・・最低の屑野郎だな」
「だから男は・・・・・・」
「襲われた方の気持ちを考えれば打ち切りは当然だけど・・・・・・」
「このまま捕まって事件が公になればこの漫画は二度と日の目をみないぞ」
「そんなのあんまりっす」
みんなそれ以降黙ってしまった。
そして待っている。
この中で僕以外で唯一この殺人鬼連合を動かせる人物の言葉を。
「・・・・・・しゃ~ない」
タシイが立ち上がり。
「この漫画の一ファンとして。目黒ちゃん、空音ちゃん、奏、紅子、古輪、芳香。殺人鬼連合、動くぞ」
タシイに続いて全員が体を起こした。
「まずは、そいつをここに連れてくるか」
僕はその様子を溶けかけたアイスを舐めながら眺めていた。
そして一時間もしないうちにその男はここに連れてこられた。
「え・・・・・・、な、なんなんだ、おい、ここは・・・・・・」
目隠しされていた男は。
強制的に赤い椅子に座らせられ。
「お、おい、ちょっと、どういう・・・・・・あういがあああああああああああかあ」
腕を固定。
勿論拘束具ではない。
直接肌に五寸釘を打ち込まれてだ。
「よう、センセイ。ようこそ、歓迎しますよ」
取り囲むタシイ達。
「アタシ達、センセイの大ファンなんですよぉ」
「こういう形で会うことになって残念だけど」
「あの漫画は好きなんで」
「終わらせたくないんですよ」
「あぁ、この手ですか。悪さをしたのは・・・・・・」
「ひぎゃあああああああああああああああ」
また打ち込む。
手の甲の方から肩に向かって、腕にいくつも釘が刺さっていく。
「ひ、ひ、い、いあだあい、いだだい、いだだあぁああああああああああああああい」
「ほ~ら、センセイ。貴方の大好きな美少女がいっぱいですよぉ」
目隠しを取る。
「あ、なん、いだだい、なんで、ああぁ」
「あぁ、センセイはまだ知らないんですよね。自分に捜査の手が迫っていたのが。逮捕は時間の問題だった。それを横取りしたんですよ。センセイには捕まってもらっちゃ困るから」
「そうそう、もし捕まったらもう連載は続けられない。センセイだけならまだしも、あの漫画は一人で作っているのではない。もう一人いますよね」
「作品には罪はない。でも人には罪がある。この場合、どうするか。センセイが罪を償っても作品のイメージは変わってしまう。これまでのような純粋な目で作品を楽しめない」
「なら私達が犠牲になって他の読者を救いましょう」
全員が刃物を取り出す。
「センセイにはこれからも話を考えてもらいます」
「これから行われるのは私達の一方的な八つ当たり」
「でも、他の人達はこれまで通りこの作品を楽しめる。作画の先生も出版社も被害は被らない」
「気持ち悪い、貴方に触られた女の子達が可哀想。可哀想、殺したい、いますぐ、でも殺せない・・・・・・ならせめて」
奏が手の甲にナイフを上から突き刺す。
「ひぎやあああああああああああああああああああ」
「この手、いらない手、穢れた手、この手、いらない手、諸悪の手」
「話を考えるだけなら目もいらないね。一応ネームの確認とかあるかもだから片目だけにしてあげる」
目黒さんの千枚通しが男の眼球に深く刺さった。
「あ、ああ、ひゃっあ、あぎゃあ、ひゃあっひゃ、はやあっひゃあ」
それをグルグルと掻き回す。
面白い事に逆側の目も同じように円を描いた。
「じゃあ、私は顔の皮でも剥ぐっす」
紅子が顎にナイフをあてがい。
「じゃあ、私は手と足の爪貰います。これに色塗って写真とればSNS映えしそう」
「わ、私は悲鳴を録音したい。私悲鳴を聞きながらじゃないと眠れないんで」
分家の二人も近づき。
「はぁ、はぁ。わ、私もいいですか。あぁ何してもいいんですよね? でも殺しちゃ駄目か。なにがいいですかね? あぁ、どうすれば」
芳香が男の首に手を伸ばす。爪を立てて深く食い込ませた。
「あぁ、目から色々垂れてくる。私の手にそれがつく」
芳香が興奮している。この時点でまだまだなんだけど。一先ず僕の心配は杞憂だったと思う。
「じゃあ、私はここかな。元々ここが原因だ。これさえ潰せばもう変な気起こさないだろうよ。性犯罪者は再犯率がとても高い、だから拷問士も大抵真っ先にここ潰すってよ」
タシイがバールを高く掲げた。
そして振り下ろす。
男の股間目掛けて。
全力で。
「っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!」
男は声にならない声を上げた。
その後、男は分家の一つが経営している病院に隔離。
各方面に根回しを終え。
「今週も普通にのってるね。良かった、良かった」
「しかし、よくあれだけの事されて話考えられるものだ」
「なんか、目は虚ろで聞かれたら勝手にしゃべるみたいよ」
「そういえば印税どうなるんすかね。やっぱあいつもこれからも半分入るっすよね?」
「あぁ、それは勿論没収、介護分差し引いて後は被害者にでも配ってやれ」
「後は普通に完結したら・・・・・・」
「もういらない。殺してその辺に捨てときましょう」
「人気漫画原作者、他殺体で発見、みたいな見出しでしょうか」
「それはそれで宣伝になりそうだけど、もう一人の先生の次回作に影響が出るからいつもどおりに無難に処理しとこ」
みんなキャッキャッと語らいでいる。
今回の件でまた少し絆が深まった気がするよ。
僕もその漫画読んでみようかな。