おや、勉強会でしょうか。
こんにちは、蓮華です。
少々困った事になりました。
これは私も全力で取り組まなくてはなりません。
その由々しき事態とは・・・・・・。
ここは、いつもの仕事場。
学校帰りの白頭巾が先に訪れ。
「ういう~い」
そして遅れて円さんが登場しました。
手にはドーナツとコーヒーを持っています。
おのれは海外の警察官か。
「ん、どうしたの、だ、なんか二人ともテンション低いの、だ」
珍しく場の空気をよんだ円さん。
「どうもこうもありませんよ、これ見て下さい」
「一体なんなの、だ」
私は円さんに数枚の紙を手渡します。
「5点、7点、6点、11点、2点・・・・・・」
「白頭巾の小テストです・・・・・・」
「う、なまじ11点とかあるから10点満点の可能性は即座に消えたの、だ」
「次の期末テストで、これだと保護者を呼び出しますよ。あの学園かなり厳しいですからね」
「その場合、私達のどっちかが行く事になるの、だ」
私はそもそも外に出たくありませんし、円さんが姉としていくのは凄い印象が悪くなります。
毛先の黒い金髪、歯はギザギザ、目は淀んでいる殺人鬼。
こんな円さんが保護者として学校にいけば。
(ういうい、お前が白頭巾の担任か、この度はすまんの、だ。だが、世の中勉強だけが全てではないの、だ。白頭巾には殺人鬼の才能があって、これからいっぱい人を殺していけば、そのうち、私や九相図、眼球アルバム並に、そして戦闘能力でいえばそれこそ蛇師匠のお墨付きをだな・・・・・・)
駄目だ。礼儀とか以前の問題です。
「白頭巾、そもそも貴方が普段からもっと勉強をですねっ!」
「ふえ~、円お姉ちゃん~」
「む、まぁまぁレンレンもそんなに怒らなくてもいいの、だ。白頭巾も仕事と勉強の両立で大変だったの、だ」
「またそうやって甘やかすっ」
例え嫌われても怒る役がいなくちゃ駄目なんですよ。
甘やかすだけが可愛がる事ではないのです。
「そういうなら、円さんが次のテストでいい点数とれるように勉強を教えてくださいねっ!」
「え・・・・・・それはちょっと面倒臭いの、だ」
「あぁ、そうですか、ならお説教の続きですっ! ガミガミガミガミガミっ!」
「ま、円お姉ちゃんっ」
「わ、わかったの、だ。教えるの、だっ」
こうして円さんに白頭巾の家庭教師を任せました。
その10分後。
「ふえ~、蓮華お姉ちゃん~」
「ん、どうしました。勉強はまだ始まったばかりですよ」
「円お姉ちゃん、なに言ってるかわからない」
「え~」
どういう事でしょう。
ちょっと様子を見てみます。
「だから、この問題は、これをこうしてこうすればこうなるからこうなの、だ」
「訳分からないんだけどっ」
あぁ、そうでしたか。円さんは天才型だから普通の人に教えるのは難しいのです。
「何回言わせるの、だ。これはちょこっとここに移動してこれをこっちにシフト、同時にアタック、ここであれを配置して、そしたらオープンでフィニッシュなの、だ」
もはやなんの教科すら分かりませんね。
「れ、蓮華お姉ちゃん~」
「しょうがない、こうなれば・・・・・・」
こっちがこうなら、あっちも同じ事になってるでしょう。
◆
こんにちは、シストです。
少々困った事になりました。
これは僕も全力で取り組まなくてはなりません。
ここは僕達殺人鬼連合のアジトの一つ。
「おい、紅子、これはやべ~だろ」
「これ10点満点じゃないよね?」
「逆にどうやったらこんな点数とれるか聞きたい」
紅子がテストでやらかしました。
「うぅ、すいません」
「殺人鬼連合はその辺のチンピラ集団とは違うんだよ、メンバーに馬鹿がいたら他に舐められだろうがっ!」
「うぅ、申し訳ないっす」
「まぁまぁ、タシイもその位にしてやりなよ」
「でも、目黒ちゃん、そもそもこいつが普段から勉強をしないからっ」
「はいはい、それじゃこの件に関して僕なりに対処したいと思う。まず・・・・・・」
ここで僕のスマホに連絡が。
あぁ少し遅かったですね。
こっちがこれならあっちも同じ事になってるはず。
時間差でこっちに押しつけられました。
「仕方ないね。じゃあ、これから僕が名前を呼んだメンバーはこっちに集合して」
予想通り、蓮華さんが白頭巾をこちらに送り込んできた。
「よ、よろしく」
「白雪ちゃんと一緒に勉強っ」
こっちでいっぺんに教える事になりました。
蓮華さんも円さんも頭はいいくせに根が面倒くさがりだから困る。
「さて、二人には短期集中コースで頑張ってもらうよ。僕が用意した講師達を紹介しよう」
5教科に対してこちらも5人。
国語担当、殺人鬼連合 奏。
数学担当、殺人鬼連合、分家 百目鬼 空音。
社会担当、殺人鬼連合、分家 大下倉 古論。
理科担当、殺人鬼連合、柊 芳香。
英語担当、本家序列三位、マキナ伯母さん。
他の者達も決して悪くはないんだけど、このメンバーが考え得る限り最効率。
「さぁ、とにかく時間もありませんので、スパルタでお願いしますっ!」
あの学園は厳しい。
もし、またこんな点数を取ろうものなら保護者が呼び出される。
紅子の両親は海外だし、学園には僕達が保護者って事になってる。
そうなるとタシイ辺りが行く事になるんだろうけど。
見た目は美麗、中身は悪魔。
(この度はうちの妹(偽)が大変ご迷惑おかけしました。今後このような事のないよう普段から勉強を・・・・・・、おらぁああ、紅子、お前も謝れやぁああああああああああ、頭すりつけて許しを乞え、だいたいお前が不甲斐ないから私が呼び出される事になるんだろがぁああああああああああああああああ)
駄目だ。タシイは外面はいいんだけどスイッチがどこで入るか分からない。
どうにかいい点数をとってもらわないと。
多分、こういうのはドールコレクターが一番得意そうなんだよね。
あの子は他者の能力を極限まで引き出す。
この二人の面倒を見させれば、方法はどうあれ確実に満点取らせそう。
とにかく僕は正攻法でやってみようと思う。
勉強開始から数時間。
「じゃあ、この登場人物はこの時、どんな気持ちだったでしょう?」
まずは国語か。奏が二人の問題を出す。
「う~ん、おい、あんま舐めてると殺すぞ? って思ってたんじゃなかろうか」
「違うでしょ、ここは、ヒョンピラッピで僕ふしだらマンゴーナイフだぞ、だと思う」
次が数学。
「とりあえず、この問題解いてみてくだされ」
「えっと、これをこうしてだから、答えはΩ」
「違うでしょ、ここはこうだから、答えはΣ」
次が理科。
「じゃあこれ、酸素の元素記号は?」
「えっと、これは簡単、Ω」
「違うでしょ、ここはΣだよ」
次が社会。
「ほなら、この年、大きな戦争がありました、その戦争とは?」
「図書館戦争」
「ラグナロク(神々の黄昏)」
最後が英語。
「じゃあ、僕は雷が怖いです、これを英語にしてみて」
「えっと、マイ ネーム イズ レールガン」
「違うでしょ、ドウ ユウ ハブ ア ライトニングボルト だよ」
こうして全教科の勉強が終わった。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
講師陣全員だんまり。
みんな憔悴しきっていた。
とりあえずやれる事はやった。
後は、二人を信じよう。
数週間後。
「ういうい、お前が白頭巾の担任か、この度はすまんの、だ。だが、世の中勉強だけが全てではないの、だ。白頭巾には殺人鬼の才能があって、これからいっぱい人を殺していけば、そのうち、私や九相図、眼球アルバム並に、そして戦闘能力でいえばそれこそ蛇師匠のお墨付きをだな・・・・・・」
「この度はうちの妹(偽)が大変ご迷惑おかけしました。今後このような事のないよう普段から勉強を・・・・・・、おらぁああ、紅子、お前も謝れやぁああああああああああ、頭すりつけて許しを乞え、だいたいお前が不甲斐ないから私が呼び出される事になるんだろがぁああああああああああああああああ」