うん、二人は死神みたいです(対ゾディアックファミリー編其の四)
今回視点三回変わります。 タバサ→ゾディアックファミリーボス→シストと。
視界は真っ暗。
しかし、声だけは鮮明に。
現代の魔女狩りとはこの事。
私は、あらぬ疑いをかけられ拘束。
不当な裁判の後、有罪。
その後、目を隠されたまま、この場所へ。
これは、ゲーム開始、5時間前の出来事。
私はタバサ。
無抵抗主義を掲げ、賛同者を募り新たな教えを説いていた。
仲間もじょじょに増え、これからという矢先。
「で、こいつどうしゅるの~?」
「そうねぇ、どうしようかしらね~」
「と、とりあえず、あれだよ、いつものあれしよう、ね、いいでしょ?」
「・・・・・・・・・どうでもいい」
「決まってんだろ、俺らのすることはよぉ」
聞こえるは、五人の男女の声。
「で、どうするよ、キング」
そして、最後には。
「いいよ、君達の好きにすれば、僕は最後のおこぼれに預かろう」
少年、にしてはいやに落ち着いた印象。
全部で六人。
私を取り囲む人達。
「好きにしてください。殺すならどうぞお好きに」
これこそ、私の信条。誰も傷つけず、傷つける位なら殺された方がマシ。
私は無抵抗主義者。
私に暴力は通用しないのです。
「よし、こいつもそういってる事だし、まずは俺からだな」
低い声でそう告げた男は、いきなり私の衣服をはぎ取った。
「きゃああぁあ、ちょっ、なにをするのですかっ!?」
「はぁ? お前、無抵抗主義者なんだろ? じゃあ声あげんなよっ!」
そういうと、男はその後、一時間私を好き勝手に弄んだ。
「よし、交代、今度は私の番」
ようやく終わったかと思ったら今度は女の声が。
そして、激痛。
「ぎゃああああああああああああああああああああああ」
目隠しの上から、瞳を何かで刺された。
「ちょっと、うるさい。貴方、無抵抗主義者なんでしょ? なら悲鳴も上げちゃ駄目よ」
今度は、逆の目に強烈な痛み。
「あがやあああああああああああああああああああああ」
今まで味わった事のない悲痛。
「いやいや、だからさ~、やかましいから声出さないでってー」
女は、その後、執拗に私の顔を痛めつけた。
「はいはい、今度は僕の番だよー」
幼き声が耳に入る。
「じゃあ、僕は両腕もらうねっ」
失った視力の代わりに、状況を教えるのはただただ痛みのみ。
「うぎゃああああああああああああ」
血の涙が頬を伝う感触の中、新たに、指の感覚が無くなる。
「あれあれ、お姉さん、無抵抗主義者なんでしょ? じゃあ、身体をビクつかせちゃ駄目だよっ、人形のように動かないでっ」
そう言いながら、少年? は私の指を一本ずつ切り取っていった。
「・・・・・・じゃあ、そろそろ俺がやるわ」
物静かな口調。
でも、やることはひたすら陰湿。
「お前のお仲間? あれ、俺が全部殺したぞ、子供も老人も・・・・・・異端者には罰をだ。みんな無抵抗主義とか言ってた割りには、泣き叫んで、逃げようとしてたぞ、ははは」
この時点の私には、もう嘆く言葉も出てこなかった。
痛みと絶望の中、ただただ死を願う。
「・・・・・・殺し・・・・・・殺して・・・・・・」
なんとか言葉を絞り出す。
「は? 何言ってんだ、まだまだ続くぞ。俺の後はビショップだ、あいつはやべえぞ」
そうだ、この人達は、6人いた。
という事は、まだ終わりはこない。
恥辱の限りを受けて、私はもう呼吸すらままならない。
「はいはいは~い、やっと私の番じゃーん」
若い女の声が耳に入り。
「ああああああがあああああ、あああがああああ」
そして痛みが始まる。
肉をそぎ落とされ。
皮を剥がれ。
されど、まだ死ねない。
殺してとは言ったけど。
拷問してとは言ってない。
こんな過剰な暴力は想定していない。
楽に死ねると。
そもそも、私には最初からそんな覚悟はなかったの・・・・・・か。
「さて、最後は僕だね」
青年のような声。
「僕はね、死にかけが一番好きなんだ。最後の断末魔がっ、さぁ、君はどんな声を出す?」
首の奥に差し込まれる鋭利な物。
それが左右へとゆっくり移動する。
「――――――――――――――――――――――――――――――――」
私の声はどんなだったのか。
もうなにも聞こえない。
ゲーム開始、五分前。
はじめまして。
僕はキングこと、ニルヴァーナだ。
ゾディアックファミリーのリーダーをしていて。
ここには仲間が総勢、60人ほどいる。
人の皮で作ったマスクを被った僕はファミリーの前に立つ。
全員、正直まともじゃない、日々鬱憤も溜まっているだろう。
だから、こうして一斉に発散させる場を設けさせる。
主催者側とは裏で繋がってるから、結構自由に動ける。
「いよいよ、始まるよ。僕達、ゾディアックファミリーのお祭りだ」
黄色のラインに青の外套、仲間の証。
全員、今にも爆発しそうな程、感情を膨張させてうずうずしている。
鎖を外すのは僕の役目。
「さぁ、みんな、行くよ。全員、好きなだけ殺せ、何をしても何をやっても自由だ。この街を血で染めろ、地面も壁も真っ赤にっ」
雄叫びが上がる。
獣が一斉に吠える。
血を求め、家族達がこの場から散っていく。
ゲーム開始、一時間後。
こんにちは、シストです。
しつこいようですが、殺人鬼連合のリーダーをしております。
建物の中に面白いものがありました。
爆弾が設置された樽です。
それも3つ。
開始直後の選定で使われる予定だった物でしょう。
ですが、ここに配置された参加者は最初の時点で失敗したようです。
だから、この爆弾は使われる事ないまま残った、と。
折角なので、僕達はこれを暇つぶしに使います。
ゾディアックファミリーに遭遇するも雑魚ばっかり。
最高幹部グループのチェスが全然出てくる気配がありません。
なので、お仲間の皆様には責任をとってお遊びに参加して頂きます。
「さて、皆さん、選んでください」
青と黄色の外套を羽織った3人を樽に縛り付けます。
樽爆弾には導火線がそれぞれ繋がっており。
「ここで、問題です。この導火線の中で、一番早くそっちに辿り着くのはどれでしょう?」
1、直接、地面に火薬をまぶして樽まで繋げたもの。
2、チューブに火薬を詰めた導火線。
3、花火に使われる細い緑の導火線。
「君達の拘束はわざと少し緩めた。だから、一番遅いのを選んだら助かるよ」
樽に括り付けられたゾディアックファミリーの三人は、慌てて声をあげた。
「直接が一番早いっ! だから、チューブにしてくれっ!」
「そうだ、火は酸素が無ければ燃えないはず、だから俺もチューブでいいっ」
「お、俺もだ、花火のやつは早そうだしっ」
ほう、珍しく一発で意見があったようです。
こういう、命がかかった場面だともっと議論しそうですが。
「はい、じゃあ、皆さんのいう通り、チューブに火をつけますね」
この間も、男達は必死に縄を解こうと藻掻いていた。
タシイに合図して火を灯してもらう。
チューブに詰められた火薬は。
瞬く間に樽の元へ。
凄まじいほどの大爆発。
激しい炎を閃光をまき散らし、隣接している樽、全てに誘爆。
距離は取っていたはずだけど、熱風はここまで届いた。
「あ~あ、折角チャンスをあげたのに、残念です」
「あはは、汚い花火っ!」
「まぁ、正解してても、アタシに滅多刺しされてただけだけど」
男達の身体は四散、黄色と青の布がヒラヒラと宙を舞っていた。
「火薬は圧縮すると爆発するんですよ。爆発による熱は早く進みます。火薬中の硝酸カリウムのお陰で、チューブ内でも酸素は不足しません」
バラバラになった男達に一応説明しておく。
「ちなみに、一番遅いのは花火に使う導火線です。これが早かったら危ないでしょうに。ちょっと考えれば分かったはず」
少し、時間を潰して外に出たら、僕らは囲まれていました。
「おー、おー、随分暴れてるじゃねぇか、あぁ?」
「俺らを敵に回して、ただじゃ死ねねぇぞっ」
「手と足切り落として、キングに差し出してやるわ」
6人か。
「タシイ、目黒さん、お願いします」
ゾディアックファミリーもピンキリのようですね。
こいつらは全然、響かない。
少なくともアリア、アクアマリンを見た時は少しは心躍ったものだけど。
やっぱり、最高幹部クラスじゃなきゃ駄目かな。
「おらぁああああああああああああああああああああ、誰に物言ってんだぁ? あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「アタシらになんかしようっての?」
二人にスイッチ。
これだよ、これ。
こういう目に見えそうな狂気。
実際、人の見る能力ってのは低い。
物体が光を反射して、それを捉えたものを脳が処理して認識。これが僕らの見えるだ。
人間が可視光として認識できるのは370~780ナノメートル前後。
他の動物なんかは、人間よりもっと鮮やかに世界が見えてるものも多い。
見えない力は多い。放射線、赤外線。プラズマボールってのも理論上、マイクロ波干渉してれば出現する。他には音もそうだし、空気固化なんか・・・・・・。
話がズレましたが、もしかしたら彼らには見えてるかもしれません。
「今、あの人達にはタシイ達がどんな風に映ってるかな?」
僕の前を左右から前に進む二人に問いかける。
「どうだろうねぇえええええ、目黒ちゃん、どう思う?」
「さぁね、死神が手招きしてるように見えてるんじゃない?」
タシイと目黒ちゃんの背中には、鎌を持ったおなじみの黒装束骸骨がいて。
そいつがカタカタ顎を揺らしている感じかな。
男達の一瞬でかわった引き攣った顔を見ると。
案外、あり得ないとも言い切れないね。
先週モンハンしてたら更新しそびれちゃいました。