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うん、二人はウキウキみたいです(対ゾディアックファミリー編其の三)

 前回の白頭巾ですが、不意打ち投げナイフで相手を倒しました。

  こんにちは、シストです。

 殺人鬼連合のリーダーをしております。


 今、僕達はあるイベントに参加しておりまして。


「おねにーさまー、お待たせー」

「仕込みは済んだよー」


 建物から出てきたのは、妹のタシイと目黒さん。


 二人はうちのWエースで殺人鬼。


「よし、じゃあ、こっちも行こうか」


 すでに人間狩りは始まっている。

 今回協力関係の切り裂き達も動いているだろう。


 タシイがバールを手に、目黒さんは千枚通し。

 ここでは正体を隠す必要はない。


 最初っから狂気全開で始めようと思う。



 あちこちから怒声や悲鳴が聞こえる。


 僕達は、路地の真ん中を堂々と歩いて行く。


 すると。


「た、助けてぇええええええええ」


 女性が一人、男達に追われて走ってきた。

 後ろで手錠をされてるから獲物って事だね。


「おらぁ、待てやぁあああああ」

「ほらほら、逃げろ、逃げろ、がはははは」


 涎まみれで女性を追う男達。


 僕達は、参加者だけど一見無害に見える。

 この場には不釣り合い。外見は若く、身体の線も細い。

 

 だからかな、女性は僕達を見つけると一直線に向かってきた。


「ああ、た、助けて、お願い、助けてぇえ」


 後門は狼、前門は羊か何かに見えたのかな。


 タシイに抱きつくように、近づく女性。


「お、お願いしますっ! た、助け・・・・・・ぎゃばぁあああああああああああ」


 藁にも掴む想いで、僕達の前に来た女性は。


 無慈悲にもタシイのバールを顔面に激しく浴びて吹っ飛んだ。


 鼻は折れ曲がり、血を撒き散らし地面に滑りこむ。


「ぎゃあああ、いだあああああ」


 ゴボゴボと栓を抜いたように鼻から血が流れる。


 それにより男達も追いついた。


「あぁあ? おい、なんだ、テメェら、横取りは無しだぜっ!」

「参加者なら、暗黙のルールは知ってんだろっ」


僕達の行為に不満を漏らす男達。

 それに対して、タシイは恐ろしい形相を見せ、バールを地面に叩き付ける。


「あああぁああああああああああ? そんなの知るかぁ。この世のルールは自分で決めるんだっ、誰かが作ったものに従う理由はどこにもねぇ。私は自分勝手にやる、世界は自分中心に回ってるんだ、そんなの誰だってそうだろがっ!」


 そう言いながら、タシイはズンズン前に出て行く。


「まず、お前はゲームオーバーだ」


 血だらけで顔を向ける女性の首元にバールを打ち付ける。

 鈍い音と小さな断末魔を残し、女性は崩れた。

 タシイの女を見下ろしていた目は、男達へ。


「お、おい、参加者同士の争いは、運営上・・・・・・」

「もう、いい、そいつはお前らにやるから・・・・・・」


 距離が近づくほど、タシイの狂気が強くなる。

 男達はそれを察して、急に弱きになった。


「私のな、ここでのルールはこうだ。とりあえず、目に付いたものは全員殺す、参加者だろうが獲物だろうが関係なく殺す、殺して、殺して、殺して、殺して・・・・・・皆殺し、そして最後には誰もいなくなる」


 目黒ちゃんも、うんうんと頷きながら後に続く。


 タシイも目黒ちゃんも普段抑制している感情がどんどん溢れてきてる。

 きつく締め付けられていた拘束具がここでは全部外される。


 だから、ここから二人はどこまでも突き進んでいくだろう。



 大通り、裏道、建物の中、首を回せばそこら中で狩りが行われていた。


 馬乗りになり獲物を滅多刺しにする参加者。

 

 車に繋げ、獲物を猛スピードで引き摺る参加者。


 わざと獲物を逃がして、少しずつ追い詰めていく参加者。


 そして・・・・・・。


「おらぁああああああああああああああああ」

「そりゃああああああああああああああああ」


 とりあえず、近くにいる者、全てに攻撃を加える参加者(勿論それは・・・・・・)


 背中から頭部を目掛けてバールを振り下ろす。頭蓋が西瓜のように割れた。

 髪をつかみ、その顔に、何度も千枚通しを突き刺していく。

 

 獲物を追いかけ、通り過ぎようとするバイク。横切る瞬間、その顔面にバールをフルスイング。当然、バイクから派手に吹っ飛び、参加者は地面に叩き付けられる。首も腕もあらぬ方に折れ曲がり、ヘルメットをしてないとこうなりますよ、といういいお手本が出来た。


 鬼ごっこ、追いかけられていた獲物の少年は、鬼がいなくなって一瞬、助かったと錯覚するも、後ろにいた目黒さんの千枚通しの餌食になる。首を掴まれ心臓にいくつもの穴が開いた。


「あぁあああああああああああ、最っこうぉぉおおおおおおおおお」

「いやぁほぉぉおおおおおおおおおおおおおお」


 二人のテンションは最高潮。

 殺人鬼としてこれほどの喜びはないだろう。

 好きなだけ、好きに殺せるのだから。


 通る道を血だまりに変えていき進んでいくと。


 少しだけ、皮膚がざわついた。


 建物の角で。

 ぐったりしている女性の顔に腰をうちつけている男が一人。

 近くには二人の男女。


 全員が、イエローラインの青い外套。


「あぁ、やっと会えました」


 事前に調べておいたから、僕にはすぐわかった。


「ん? あれ~、君達、もしかして・・・・・・」


 必死に腰を動かしていた男がこちらに気付いた。

 乱暴に髪を掴まれている女は、もう死んでるね。

 そして、近くには片方の目が転がっている。

 無理矢理作られた穴は。

 つまりは、そういうこと。


「あ、ちょっと、待ってて、すぐ終わるから・・・・・・」


 その間、タシイと目黒ちゃん、あちらの二人が無言で威嚇しあっている。


「ふう、お待たせー」


 漸く、奥の男がズボンに手をかけながらこちらに歩いて来た。


「君達、あれでしょ? 殺人鬼連合とかなんとか」


あっちもすでに認知済みか。

 ちゃらちゃらしながらそう話す男は、いきなり大当たり。

 ゾディアックファミリー、幹部の一人。


 首元から見える黒いタトゥーは顔の半分まで延びている。

 耳には大きな穴、舌にもいくつものピアスが。


 満月の墓荒らし、オーガスタ。


 妊娠目的以外の性行為を悪とした母の教えが、激しく歪曲した異常者。

 極度のマザコンで、母親似の女性を標的にし、とにかく殺しまくる。

 オーガスタは外界は堕落の世界と母親に成人するまで家に軟禁されており、若い女は淫らで穢れた存在と刷り込まれ続けた。その母親が死んだことで、抑制されていた性欲と妄想は一気に異常な方向へと向かった。初めて触れた女性の身体は死体、墓場を荒らしては新しい死体を持ち帰り、思う存分楽しんだ。


「あ、君、僕のお母さんの目元に似てる、あ、そっちも耳の形がそっくり・・・・・・」


 オーガスタがタシイ達に興味をしめした。

 母親という言葉と共に目付きが変化する。


「しかしあれだねぇ、態々、こんなとこまで、仲間の仇討ちにきたの? そりゃあ仲間があそこまでされちゃ怒るよねぇ、かなり楽しい事いっぱいしてあげたしぃ」


 オーガスタがいう通り、僕達の仲間は酷い殺され方をしたね。死体は解体され、目も耳も顔の皮も無かった。あそこは切り取られ、判別は困難を極めた。


「は? 別に仲間がやられたからじゃねぇよ、こっちの面子が潰されたから来てんだわ」

「そうそう、そこら辺、勘違いされちゃ困るねー」


 僕的にはどうでもいいんだけど、自分達の狩り場が荒らされると色々面倒だし、これで舐められて他の奴らがちょっかい出してくるとも限らない。なので報復は必要。

 

「言うねぇ、島国の小物共にしちゃ上出来じゃない、仲間があそこまでやられてビビらないだけ大したもんだ」


 僕らを見て、へらへらと笑う。完全に自分達を上に見てるね。

 

 でも。


「小物ねぇ。お前らの国って死刑ないんだろ? 人権第一主義だから刑務所も快適、どんな異常者でもよくて終身刑、どう思うよ、目黒ちゃん?」


「優しすぎて涙が出ちゃうねぇ。あんたら、アタシらの仲間をとことんいたぶったつもりだけど・・・・・・」


 ここで、一気に戦闘モード。

 二人が完全に相手を捉える。


「原型がわかるだけマシなんだよ。ウチの国じゃ掴まったが最後、何もかもが完璧に壊される。お前らはどうせうちらの仲間を死んだ後に解体したんだろう。だけどこっちだと生きたまま抜かれていくんだ、歯も耳も目も鼻も、皮も、指も、爪も、生きたままだ、最後の最後まで死ぬ事を許されず、痛み、苦しみはずっと止まらない、死ぬ頃には綺麗さっぱり無くなってるんだよ、なにもかもなぁああ」


「どうだい、素晴らしくもとても異常だ。うちらはそんなリスクの中でこうやって殺し続けてる、あんたらとはそもそも最初から覚悟が違うのさ」


 まぁ、広い世界で僕達の国くらいだろうね、罪に対して罰が同等なのは。


「そうかい、なら試してみればいいよ~、どっちがより世界に嫌われてるかねぇえ」


 オーガスタがナイフを取り出した。

 同時に、近くの仲間も構える。


 それを見越して、僕がタシイと目黒ちゃんの間を割って前に出る。


「まぁまぁ、普通に殺りあっても、お互い損するだけです。ここはどうでしょう、ゲームで決めませんか?」


 僕の提案に、オーガスタが眉を潜める。


「ゲーム?」


「そうです、ルールは一対一、ジャンケン・・・・・・そちらだとシザー、ペーパー、ストーンでしょうか。ようはそれを最初にしてですね・・・・・・」


 道の隅に放置されていた大きな樽を移動させる。


 樽の上には、タシイのバール、そしてオーガスタのナイフが置かれた。


「つまりは、ジャンケンに勝ったほうが、樽の上の武器をとって攻撃できるってことだね、で、負けた方も自分の武器で防御に徹する、なるほど、いいよぉ、楽しそうじゃん」


 本来、これには防御用にヘルメットが使われるのだけど、今はないので、武器で代用する。


「じゃあ、やろうかぁ、まずは私からだ」


 タシイが先行。あちらはオーガスタ。

 二人とも、樽の前に立った。


 互いの仲間は、それを後ろで覗き込むように見守る。


 ここで、相手の考えを読んでみよう。


 とりあえず双方、どちらも屑だ、これが前提にある。


 なのでジャンケンの勝敗はまず関係ない。

 どちらにしろ、武器を取れるからね。


 結局は先に攻撃した方が勝ち。


 あちらがこちらの提案を飲んだのはそれもあるだろう。

 バールとナイフじゃ、明らかに初動が違う。ナイフが圧倒的に有利。


 だから、オーガスタはジャンケンの後、勝ち負け関係なくナイフを手にとり、タシイの喉を切り裂こうとするだろう。


 ならどうするか。


「最初はグー、ジャンケン~~~~~っ」


 二人がジャンケンの体勢に入り、手を振り上げる。


掛け声が上がる刹那。


 オーガスタの手が消えた。


 正確には、隣にいた目黒さんの千枚通しがオーガスタの手を上から打ち抜いた。

 振り下ろされた千枚通しはオーガスタの手を樽へと打ち込む。

 

 蝶の標本の如く、相手の手の甲が樽に深く沈み・・・・・・。

 時すでに、タシイはバールを引き寄せ、強く握っていた。  


「ポンっ!」


 捻った体から放たれたバールがオーガスタの顔面を直撃する。


「がぎはぁあっっ!!」


 こめかみがバールの形にへこむ。固定された腕は一瞬張り詰め、その後それを支点に垂れ下がるように身体が崩れた。


 答えは、ゲームなんて最初からしない。


 ここからはあっという間だった。


 目黒さんが、すかさずもう片方の手から千枚通しを後ろの仲間に投げつける。

 タシイは樽に足をかけるとオーガスタを跨ぐように飛び込んだ。空中から後方にいた相手の頭目掛けて振り落とす。

 

 千枚通しは、喉を貫き。

 バールは額を割った。


 地面に倒れた二人に追い打ち、バールを釘抜き部分に切り替え、頭、顔を集中的に何度も腕を上下させる。最初の絶叫、それは回数を重ねる度に小さく短く。先端は赤く染まり、動かなくなってもそれは当分続いた。


対称に千枚通しは、ゆっくり進む。元々穴が開いてる部分に抜き差しを繰り返す。穴からは大量に血が流れ出す、それは顔全体を覆い、首まで染める。


「さてと・・・・・・」


 僕は、樽の上の手から続くように身体全体を垂れ下げるオーガスタに近づく。


「貴方は幹部なんで、この後記念撮影があります。なので、少しおめかししましょうか」


 漸く気が済んだタシイと目黒さんも僕の後ろに立った。


「・・・・・・ひ、卑怯、て、てめぇ、ら、なにが・・・・・・殺、す、殺す」


 オーガスタは力を振り絞って、固定されていた手を無理矢理剥がした、手が割れ、左右の指が異様に長くなったよう。


 でも、それは全くの無駄な抵抗で。


「うがあぁあ」


 立ち上がろうとしたオーガストの肩、左側には千枚通しが深く突き刺さり、右肩にはバールの先端が突き刺さる。これにより、オーガスタの身体は再び沈んだ。


 僕達は腰を落とし少しだけ笑って、オーガスタを見下ろす。


「あぁ、撮影は死んだ後で結構ですので、もう動かなくて結構ですよ」


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