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わわ、虐め駄目、絶対、だよ。

 大ざっぱなパワーバランスと、適当に登場人物紹介的なお話。この子が主観なのはこれと次くらいです。

 私、くれない 紅子べにこはドSなの。


 とにかく人の嫌がる様を見るのが大好き。


 だから、学校でも虐めまくってる。


 以前、追い込みすぎて相手が自殺しちゃった。

 あれ以来、少しは加減するようにしてるの。


 で、今の標的は・・・・・・。


 

 同じクラスの白雪ちゃん。

 無口で物静か。いつも一人で本を読んでる。

 活発な私とは正反対。

 

 自分からは他者に干渉しないタイプだね。


 だから無視は効果が薄い。

 とりあえず、持ち物を隠したり、壊したり。


 だけど、この子は気にしない。


悪口、罵声の類いも全く効かない。


 そうなると、どうしても泣き顔が見たくなる。


 自分の手は汚したくないから。

 知り合いのつてを使って、襲わせよう。


 柄の悪い連中に、放課後、遊んであげてと頼んだ。


 その様子は動画にでも撮ってもらって後で楽しむ事にする。


 これで、明日からこの子は学校に来なくなるだろう。

 それはそれで寂しいなぁ。



 そう思って翌日登校すると。

 

 いつも通りに、彼女は席についていた。


 おかしい、指示は昨日だったはず。


 まさか、これも効かないというのか。


 そんなはずはない、そう考え、委託した連中に連絡を取る。

 だが、繋がらない。誰一人。

 すんでの所で、怖じ気づいたのか。


 チッと、軽く舌打ちして。

 白雪ちゃんに視線を送る。


 まぁ、いい、次の考えもある。


 この子は友達を作ろうとはしなかったけど。

 近づいてくる者もいる。


 読んでいる本で、気が合ったのだろう。

 図書委員で一緒の子と少しだけ仲がいい。


 白雪ちゃんが振り向いてくれないというのなら。

 この子を使って、その顔をゆがめてあげよう。


 お弁当にゴミを入れようが、トイレで水を浴びせようが。

 本を破っても、鞄を捨てても。

 

 何をしても動じなかった彼女が。


 やっと、表情を変えてくれた。


「おはよう、白雪ちゃん。あぁ、そういえば、友達いるじゃない、えっと、なんだったっけ、あぁ、そうそう、隣のクラスの・・・・・・橘さん。彼女、どう? 最近、元気かな?」


 私が、朝一番で白雪ちゃんに声をかける。


 白雪ちゃんは一瞬、眉を潜め。

 こちらを向いた。


 目と目が合う。


「・・・・・・橘さんが、なんだって?」


 私を軽く睨んでる。

 いいねぇ、その目も素敵。


「いや、別に~」


 私はニヤニヤとそれに適当に答え、その場から離れた。



効果は抜群だね。

 本当はもっと直接的にやってもいいんだけど。


 それこそ、身体を切り刻んでやってもいい。

 その白い肌を。

 その白い顔を。


 大概の事は、もみ消してくれる。


 だって、私は。


 殺人鬼で。


 あの殺人鬼連合のメンバー。


 第三殺、スキンラバー。


 これでももし駄目なら。

 もう殺しちゃうしかないよね。



人の顔を剥ぐのが好き。


 マネキンの頭だけを飾り。


 そこに、剥いだ顔を貼り付けて。


 家族を作る。


 部屋には、おじいちゃんから弟までみんな揃ってる。


そうだ、白雪ちゃんは、あれだ、従姉妹にしようか。


 あまり近い人を殺すのは躊躇われるけど。

 学校の子はまだ誰も殺してないし。

 一人くらい、いいよね。


 

 翌日。

橘ちゃんに何が起こったのか。

 白雪ちゃんの耳にも入ったみたい。


 ポニーテールを揺らしながら、教室に入ると。


 その瞬間、すでに登校していた白雪ちゃんの顔が私に向く。


 その顔は。

 とても、綺麗で。

 とても、強ばって。

 今まで見た事のない表情。


 そうそう、その顔だよ。

 私が見たかったのは。


 悔しいのかな? どうなのかな?


 白雪ちゃんが席を立つなり、私の元へ。


「・・・・・・お前か」


 これでもかと私を睨め付ける。

 いいねいいよいいねいいよ、ゾクゾクしちゃう。


 実際、身体が震える。あぁ、最高。


「え~、なにいきなり。なんの事~?」


 わざとらしく惚けて。

 馬鹿にしたようにとにかくにやついた。


「どうでもいいけど~・・・・・・」


 その顔を見れたのは満足。

 でもね。

 白雪ちゃん、誰に向かって敵意を向けてるのかなぁ。


「気安く話しかけんな、くそブスが」


 私がその気になればお前なんか、いつでも殺せるんだぞ。

 泣き顔も、絶望顔も、なんでも見られる。


「分かったら、自分のに戻れよ、この小動物が」


 私の言葉に、クラスメイト達もクスクスと笑い出す。

 この学年のヒエラルキーの一番上は私だよ。

 白雪ちゃんは、一番下。

 だから、そんな口の利き方はないんじゃないかなぁ。


 皆の笑い声の中。

 白雪ちゃんは、顔を俯かせた。

 プルプル震えている。

 それは、怒り、悔しさ?

 なにはともあれ本当の小動物みたい。


「・・・・・・つけてやる」


 ん、なにか呟いてるね。


「え? なに?」


 それはとてもとても小さな声で。


「言いたい事があるならはっきり喋れよっ!」


 私の怒声に。

 白雪ちゃんの俯いていた顔が。

戻る。


 その目は・・・・・・。


「言いつけてやる・・・・・・お姉ちゃんに。言いつけてやるっ!」


 激しい眼光。

 ほんの一瞬だけ。

 そう、一瞬だけ。

 私は、怯んだ。

 それほどの迫力だった。


 でも、はっとし、すぐにいつもの体裁を保つ。


「は、は? え、何々、言いつける? 誰に? お姉ちゃん? はぁあ? これは面白い事いうね、どうぞ、どうぞ、いくらでも言いつけて~」


 自然に笑いが零れた。

 この子は馬鹿だ。大馬鹿だ。

 例え、警察だろうが、教師だろうが、行政だろうが、誰に言っても無駄だよ。

 私は、表向き、品性方正のお嬢様。 

 それに加えて、裏の顔はもっとやばい。

 途轍もない後ろ盾を持ってる殺人鬼集団のメンバーだよ。


 相手が悪すぎる。


 白雪ちゃんは、それ以上なにも言ってこなかったけど。

 

 もう少し、遊んだら。


 殺して、皮を剥いで。


 家族にしてあげる。


 

 週末。


 私は、殺人鬼連合の会合に参加していた。

 町外れの廃工場。

 周囲には瓦礫が散乱。


 総勢、11人。


 最奥にいるシストさんをトップに。


 序列的には。

 その妹で、九相図の殺人鬼ことタシイさん。壊した顔は数知れず、気にくわない者はとことん粉砕、最恐ツインテール。


 その親友で、通称眼球アルバム、目黒さん。抉った眼球は数知れず、気に入った者の目をとことん抉る、最狂パンダ目おかっぱ少女。


 この二人がうちのダブルエースで、私も認める殺人鬼の先輩。


 後は、どうでもいい。私より下。

 この一殺、二殺ってのは、私の独自の判断基準でつけてる。

 それで私が三殺。三番手。


 シストさんは、リーダーだけど殺人鬼ではないから外れている。


 今日の議題は多分、敵対組織の話だね。

 最近、ちょっかい出されてる。


 その内、本格的にぶつかるとは思うけど。


 シストさんが話始めて。

 そのすぐ横にはタシイ先輩と目黒先輩。


 それに向かい合う感じで、他のメンバーが話を聞いていた。


 始まって数分で事件が起きた。


 薄暗いアジト内。

 アジトというからには、まるで秘密基地。

 当然、他の者が訪れる事はない。

 ここを知ってるのはメンバーのみ。


 なのに。


 予想外の訪問者が現れたの。


 重い扉が、左右にゆっくり開いていく。

 光がじょじょに中へと。

 

 そこには一人の女。


 入るなり、どんどん進んでくる。


 予定外の来訪者に、その場の全員が身構えた。


 殺人鬼連合のメンバー達が、シストさんを隠すように前に立つ。

 手には得物を取りだし、それはナイフだったり、鉄パイプだったり。


 でも、その女は構わず近づいてくる。


 誰かが口を開いた。


「・・・・・・切り裂き、か?」


 と。


 切り裂き。

 私は直接会ったことはなかったけど。

 勿論、名前は聞いたことはある。


 今や伝説、あの最悪の殺人鬼ドールコレクターの後継者。

 中身の無い人形に愛を与え、そしてこれでもかと寵愛を受けた。


 金髪、ギザギザの歯、眠そうな目。

 深緑深層の右腕。


 私ら殺人鬼連合すら手を出さない。


 現役最強、切り裂き円。



「・・・・・・紅 紅子ってのは、どいつ、だ」


 誰に向けたか問いかける。


 誰も口は開かなかったが。

 視線が自然と私に集まる。


「お前、か」


 こっちを見る。


 刹那、特徴的な眠そうな瞳が。


 がらりと変わった。


 射殺され。


 私は、声を失った。


 赤い雨が降りしきる。

 

 後ずさりたいのに、身体が動かない。


 一歩、一歩、近づいてくる。


 前にいたメンバー達が。

 何もせず、何も言わず、さも自然に道を空けた。


 それは、私へと一直線に伸び。


 切り裂きに道を作るメンバー達。 

 皆、目を見開き、あほみたいに口を開けるだけで。


 ついに、その姿は、私のすぐ前まで。


「あ、あ、ああ、あの、わ、私に、な、なにか・・・・・・ご用で・・・・・・」


 言いかけて。


「・・・・・・があぁああぁああああああああああああああああああ」


 なにが起きたか理解できなかった。

 一気に口へ広がる鉄の味。


 殴られたのか、とにかく私は後方に吹っ飛ばされて。

 地面に倒れている。


 見上げる天井に、切り裂き円の顔が覗き込んだ。

 次の瞬間。


「っがああぁあがあ」


 腹部に激痛。


「があやぁあああ」


 今度は腕。


「ひゃああああぁああ」


 今度は足。


 悲鳴を上げる私の目の前に。

 切り裂き円のつま先が。


「あひゃああああああああああ」


 顔面に鋭く突き刺さる。


 確実に鼻の骨が折れ。

 盛大に鼻血が吹き上げた。


 まだ、終わらない。

 今度は口元目掛けて。


「うあがあああああああああああ」


 歯が折れ、曲がり。


 両手で必死に顔を押さえる。


 すると、胸が、へこんだ。

 つま先が、肋骨を砕き、肉に包み込まれる。


「ばあやあああああああああああああああ」


 痛い、痛い、痛い、痛い。


 なに、なんなの、なになになに。


 切り裂きはしゃがみ込むと。

 今度は、私の指を掴んで・・・・・・。


「あふぁあああぁあああああああ」

 

 関節とは逆に曲げた。

 小気味いい音と共に、骨が折れる。

 

「お前、私の妹に、随分、好き勝手やってくれたのだ」


 い、妹、え、え、え。


「じゃあああああああああああああああああ」


 また一本。


「いがヵあああああああああああああ」


 また一本。


「た、助け・・・・・・」


涙と血と涎と鼻水、グチャグチャの顔を見せて。

 周りのメンバーにそう叫ぶが。


 誰も動かない。


 なんで、なんで、なんで。


「タ、タシイ・・・・・・先・・・・・・目黒・・・・・・先・・・・・・ひぎゃああああああああああ」


 助けを求めたはずの二人は真剣な眼差しでそれを見ているだけ。

 全く、止めようとしない。


 なんで、私はメンバーで。

 可愛い後輩で。


 その私は、こんな目にあってるのに。


 なぜなぜなぜ。


 助けてくれないのぉぉぉぉぉぉぉぉ。


 切り裂きの私への暴力はまだまだ続く。


 自慢のポニーテールを掴まれ、頭を浮かせると。

 おもいっきり地面に叩き付けられた。


 もう数える余裕はない。


 顔中、血だらけ。

 乱暴に掴む髪は、引っ張られるたび抜け落ちる。


 喉に相手の爪が深く突き刺さり。


 く、苦しい。


 力がどんどん強くなる。


「う・・・・・・うう・・・・・・や、やめ・・・・・・」


 あらぬ方向に折れ曲がった両手で必死に振り払おうとするが。

 全く動かない。今の状況を差し引いてもとんでもない力。


「うちの妹に手を出したのだ、まだ死ねん、ぞ」


 いやいやいやいやいや、このまま、じゃ死ぬ。

 死にたくない。

 なんで、私が、こんな目に。


 血の混じった涎が、口から溢れだし。


 死を目の前にして。


 妹? 妹? 妹? 誰の事? 


 ここで、やっと一つ思い出した。


〈お姉ちゃんに言いつけてやる〉


 あああああ、まさか。


 切り裂きに妹分がいるのは有名な話。

 

 最年少レベルブレイカーのレッドドット。

 顔は知らないけど、たしか歳は同じだった。


 て、ことは。


 薄れる意識の中。


 じゃあ、白雪ちゃんは。


 この切り裂き円の妹で。


 通称白頭巾のレッドドット。


 って事?  

 

  


 今はいつだかは分からない。


 目を覚ましたら病院のベットの上だった。


 身体中包帯まみれで。

 少しでも動かせば激痛が走った。


「お、漸く目を覚ましたか」

「全く、お前は馬鹿だな」


 顔は動かせない。

 でも、声で相手がタシイさんと目黒さんの二人だと分かった。


 声も出せない。


 ただ、ぼんやり病室の天井だけが見えた。


「紅子よぉ。切り裂きっていうか、昆虫採集部には絶対手を出すなよ。あそこはうちでも手が出せねぇ、相手が悪すぎる」


「まぁ、今更だけどねぇー」


 本当に今更ですよぉぉぉ。

 どっちにしたって白雪ちゃんがレッドドットだなんて知るよしも無く。


 今思えば、睨まれた時ゾクゾクしたけど。


 あれって、昂揚からじゃなく・・・・・・。


 単純に恐怖を抱いての事だったんだ。

 

 あの時は認めたく無かったけど。


「お前、動けるようになったら白頭巾に謝りにいけよ」

「そうそう、アタシらも一緒に頭下げてやるから」


 そうか、私が殺されなかったのは。


 まだ、許してもらってないから。


 フラッシュバック。


 あの時の切り裂きの顔が脳裏に浮かぶ。


 ああああああああああ。


 心で叫ぶ。

 何度も。


 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

 許して下さい、許して下さい、許して下さい。

 許して下さい。

 ごめんなさい。

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