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夢の記憶  作者: 151A
9/11

奇妙な家




 さて、ご無沙汰しております。


 春先はなにかと忙しかったり、眠かったりと環境や体調の変化に振り回されますね。

 特にアレルギー性の鼻炎持ちには様々な花粉に悩まされる季節で、とにかく憂鬱な時期でもあります。


 できればすっきりとするような夢の話を――と思っていたのですが、やはり精神的に追い込まれているのでしょうか。

 ノートを捲っていて目につくのは陰鬱なものばかり……。


 もういいや。


 なんでも(自棄)。


 きっと楽しい夢の話より、不思議だったり、怖い話の方が喜ばれるはず。

 そう期待して。


 今回はいつもと同じ場所なのに、なんだか違う印象を受けた――そんな奇妙な夢のお話。





  ☆20020116☆



 出かけてすぐに忘れものに気づく。


 持っていくはずだったお菓子が入った袋。


 慌てて来た道を戻り門扉を開けて、玄関までの短い玉砂利の上を歩く。

 狭いながらも大きな石が入った作り庭は手入れが大変で、仕事が忙しいことを理由に植木は殆ど伸び放題の状態。


 空は曇天。


 世界は灰色に染まっている。


「ただいま」

 一応声をかけて引き戸を開けると、古い日本家屋特有の無駄に広く薄暗い玄関。

 玄関に立つと左手に二階へと上がる階段、右手に洋間の扉、廊下を辿って真正面に和室の扉が見える。


 しんっと静まり返った家の中。


 昼間でも灯りを点けなければ一階では生活ができない我が家は、こうやって外側から見ると酷くじめじめとして暗い印象を与える。


 それは毎度のことだったけれど、今回は微妙に違った。


 言葉ではうまく言い表せない。


 しいて言うなれば空気が違う。

 同じ玄関、同じ間取りの家なのに、別の家に迷い込んだかのような感覚に陥ったのだ。


 ――――おかしいな。


 そう思いつつ靴を脱いで上がり、階段を登る。

 急で幅の狭い階段は注意しないと踏み外してしまう。


 慎重に登って行くと廊下も仕切りも無い畳敷きの一間になっていた。


 本来ならば廊下があり、真ん中に押入れを挟んで六畳の和室と四畳半の和室があるのに。


「えっ…………?」


 やはり違う家なのか。


 一瞬狼狽えて余所様の家に勝手に上がり込んだことをどう説明しようかと思い巡らせながら部屋を見渡す。

 そうするといつもと全く違う景色の中に「私の部屋なのかな?」と思わせるような痕跡や面影が残っていることに気づく。


 古い畳の縁の柄や日に焼けた色の感じだとか、窓枠の木の桟についた傷や太陽の微妙な射し方の角度だったり、窓の外に見える風景、本棚に並ぶ本、見覚えのある小物の数々。


 違うようでいて、似ている。


 気味悪く思いながらあまりあちこち見ないようにしようと下を向いたまま自分の部屋があった方へと行く。

 記憶通りの場所にお菓子が入っている袋があったのでそれを掴むと、急いで出ようと階段の方へと振り返る。


 そこに階段を登ってきていた祖母の顔が手摺の間から覗いているのに気づいてびくりと固まった。


「○○ちゃん、帰ってきとったと?」

 確かに祖母の顔と声。

名前を呼ばれたが私にはそれが本物の祖母なのか判断がつかなくて「うん。でも、もう行くけん」そう答えるのがやっと。

 顔を上げないまま祖母の横を走り下りて玄関に出ると、靴を引っかけるようにして外へ飛び出した。




  ☆  ☆  ☆



 さていかがでしたでしょうか?


 私が夢の中で忘れ物を取りに帰ったあの家は我が家だったのでしょうか?


 祖母は本当に私の祖母だったのか?


 実際そんなオカルト的なことが起きてもおかしくないような家だったので、きっとこんな夢を見たのだと思います。


 よく知っている場所のはずなのに、ふとした瞬間別の場所のように見えてしまうことも現実ではあることでしょう。


 みなさんも十分気を付けてください。


 現実だと思っているその景色が本当は全く違う世界かもしれませんよ?





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