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悪役令嬢だけれど何か文句ある?  作者: 一九三
やっとたどり着いた本編~高等部~
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ふっかつのじゅもんよりもリセットボタンが欲しい

 「………オーケーオーケー、大丈夫、わかったわ。理解した。わかってるわ」

 「先輩、壊れてませんか…?何かあったんですか…?」


 そういえば後輩はヴィオラと会ったことはないし、あの子の三人称は『あの馬鹿』だものね。その『ヴィオラ』が先輩にいることになんか、気づいてないわよね。

 気遣ってくる後輩に「大丈夫」とだけ答える。


 ヴィオラは破滅しないのがおかしなほどの馬鹿だ。だから、破滅して、勘当されたんだろう。そして、教会で拾われて、主人公と育った。

 主人公をお笑い要員に育てるのは、ヴィオラだった。

 そうだ。プレシアとエリオンの問題は解決していたが、ヴィオラ問題は解決していなかった。その答えが、これか。


 さてここで問題、ヴィオラが勘当されなかった理由とは何であるか。


 答え、本人の幸運もあるが、セリア・ネーヴィアの気に入りであったから。


 つまり、どう考えても私の行動が原因よね。

 私が犯人よね。

 うん。


 「ちょっくら死んでくるわ」

 「っ先輩!?」


 やることなすこと、裏目にしか出てないじゃない!

 本気で!何も!しなければよかったぁあああああ!!!

 ばっかじゃないの私!

 え?行動した結果、どうなったの?

 お兄様に迷惑かけて?

 レイヴァン怖がらせて?

 ジオルクと敵対して?

 スカイのオネェを確固たるものにして?

 先生を危険な製薬の道に戻して?

 プレシアを利用して?

 エリオンの頭痛の種を増やして?

 祖父や父母に迷惑かけ通しで?

 その結果、主人公がお笑い要員じゃなくなった?


 なにそれ。

 まるきり無駄じゃない。

 何もしないほうがよかったじゃない。

 もう本当に、私なんて早く死ねばいいのに。


 「………私は生まれてきたことから間違いなのよ…ふふふ…生まれてこなきゃよかったんだわ、私なんて…」

 「先輩が鬱った!鬱の先輩とかレアすぎる!」

 「はーあ、もうどうでもいい。乙女ゲーとか悪役令嬢とか、どーにでもなーれ。私、もー知ーっらない。いーちぬーけたっ」

 「や、あ、ほら、じゃあ他のことするとか…」

 「他にもくひょーなんてないもーん。てゆーか、なんで商会とかやってんだろ?何のために?馬鹿じゃないの私。何がしたいんだろーなー、もう」

 「投げやりにならないでくださいよ。先輩が投げたら残されるのは俺なんですよ?」

 「あんたはすでに逃げてるし、いーじゃん。あの子がどんなバッドエンド迎えようが、どーでもいいし。もう追放でもなんでも好きにして。生きる目的が見つからない」

 「駄目だ先輩が鬱だ…!」

 「あー、消えたい。今すぐ消えちゃいたい。あはは、お空きれーい」

 「戻ってきてください先輩!」


 空を眺める。わー、うろこ雲だー。明日雨かなー。


 「―――ってことで私は降りるわ。こんなクソゲー、誰がプレイしてやるもんですか」

 「あ、戻ってきた。いつもの先輩だ」

 「紛いなりにも乙女ゲーだから無駄にイベント多いのだけれど、全部ブッチしてやるわ。もう知るもんですか。もういいわ」


 主人公のため、自分の命のため、頑張ってきたけど、もういい。

 もう、うんざりだ。

 誰かのために必死になって、挙句にその行動で壊されるんなら、もう、誰のためにも動きたくない。

 未来の自分のためにだって何もしてやらない。

 今、自分が生きたいように生きる。


 「さしあたり、商会はお兄様に完全移譲して、あの辺りとも手を切るわ。レイヴァンとも、何が何でも婚約破棄して、お祖父様との会議も止める。ただの一人の学生として、再出発するのよ」

 「………俺は目覚めてはいけない何かの誕生の瞬間に立ち会ってしまったのだろうか…」

 「さあ、好き勝手動いてやるわ…!自分探しの旅にも出てやるんだから!働いてなんかやるもんですか!自分のことしか考えないで、精々目の上のたんこぶになってやるわ!おーっほほほほほ!」

 「………悪役令嬢爆誕の瞬間である」

 「潰すわよ」

 「冗談ですスミマセンデシタ」

 「よろしい」



 決めた、もう誰のためにも動きたくない。自分勝手に生きてやるんだ。


 そう決めて、まずは三年の教室に向かった。


 「あれ?セリア?どうしたの?」


 そこにいるのは兄。私はびしりと、言い放つ。


 「突然の訪問失礼します。本日は至急お伝えしたいことがあり参りました。また誠に勝手ですが単刀直入に申します無礼をお許し下さい。さて、この度、私ことセリア・ネーヴィアは度重なる心痛で限界を迎えてしまいました。そこで、お兄様の優秀さを見込んでお願いがございます。私の行っていた業務をお祖父様と折半してやっていただけないでしょうか。具体案は帰ったから書面でお渡しします。まずは先触れをと、約束もせず失礼させた頂いた次第でございます。では、名残惜しいですが、失礼致します」

 「せ、セリア?」


 そして優雅に礼をして出て行った。

 次はスカイ。


 「スカイ」

 「セリア、どうしたの?セリアが来るなんて珍しいね」

 「あなたのことはいいお友達だと思っているわ。でも、あの女を好きっていうのなら、あなたも敵よ。今までありがとう。さようなら」

 「………は?」


 教室を出る。

 この辺りで昼休み終了のチャイムが鳴ったが、無視。サボる。

 せかせか歩いて、中等部に。

 そして授業中の二人の教室に乱入する。


 「授業中失礼致します。―――プレシア、とても残念だけれどスカイと敵対したわ。ついでに私は雇用主じゃなくなるから、これでさよならよ。元気でね、プレシア。エリオン、これから好きにやらせてもらうわ。詳しい話は後でしましょう。お時間いただけるかしら?よろしくね。―――では、以上です。失礼しました」


 ぽかーん、としている教師を置いて教室を出る。

 ずんずん進んで、その最中に声をかける。


 「ウィル、いるわね?」

 「はい」


 姿は見えないが声はする。聞こえているならいい。


 「絶望したから好き勝手やるわ。逃げたいならちゃんと言ってからにしなさいね。勝手に逃げたら裏切りとみなして殺すわよ」

 「ご主人、相変わらず過激ッスね。逃げやしませんよ。今の俺の主人はあんたですから」

 「そう。ありがとう。後でエリオンと会合するわ。場所の手配をお願い」

 「承知しました」


 それきり声がなくなる。仕事が早いから、もう行ったんだろう。


 さあ、辿り着いた教室。

 私のクラス。

 ドアを開けて、中に入る。


 「む、どこに行っていたんだね?」

 「所用で出ておりました。失礼しました」


 教師に一応言って、席にはつかず、レイヴァンとジオルクのほうを向く。


 「レイヴァン、もうあなたは用済みよ。婚約解消しましょう。それから二人とも、私はもう全部嫌になったわ。しばらくは自分のために生きたいの。そうじゃないと立ち直れないわ。だから私の行動に一切関与しないで頂戴」

 「え!?セリア!?」

 「おい、何があったんだ」


 驚いた、心配そうな二人。

 反吐が出る。


 「レイヴァン、私知ってるのよ。あなたが私の敵と、リリー・チャップルと内通してること。よくもまあ、それでおめおめと私に話しかけられるわね。恥知らず。この屈辱は忘れないわよ。覚えておきなさい。必ず、報復してあげるわ」

 「み、見てたのか…!?」

 「五月蠅い。…ジオルク、あなたが付いていながらレイヴァンのこの体裁はどういうことなの?お兄様とグチグチ説教してくるし。ねえ、私達ってそんな仲良しだったかしら?いい加減、ウザいのよ」

 「………」

 「だから今度はちゃんと面倒見て頂戴ね。私はもうレイヴァンの世話なんて懲り懲りだから。全部あなたに一任するわ。しっかり、監視するのよ。頼んだわよ」

 「………ああ」


 ジオルクに返事に頷いて、―――敵を見据える。

 リリー・チャップルを睨みつけ、見下す。


 「リリー・チャップル。私はあなたが嫌いよ。あなたの罪は、万死に値するわ。…いいえ、あなたは何も悪くないことはわかっているの。でもあなたを許したら私のこれまでが瓦解するの。だからあなたを恨むわ。憎んで、絶対に許さない」

 「………なにそれ」

 「発言を許した覚えはないわ、平民。不敬罪に処されたくなければその汚らしい口を噤みなさい」

 「………セリア、そこまで言うことはないだろ…」


 レイヴァンがリリーを庇う。

 裏切り者め。

 睨みつけると、レイヴァンはびくっと怯えた。


 「それは、横暴じゃありませんか?」


 それを見て、リリーは発言した。

 殺すと脅したのに。

 怯えも見えず、私の目を見据えた。


 「私は悪くないんですよね?なのに、私のせいなんですか?おかしいです、そんなの」

 「黙りなさい」

 「それに、不敬罪っていうんなら、あなたの王太子様への態度のほうが不敬です。人に注意する前に、まずご自身を顧みたらいかがですか?」


 生意気な小娘だ。握った手は震えているのに、目は決して逸らそうとしない。


 「横暴なんて、この世界では普通のことでしょう?平民のあなたにはわからないかもしれないけれどね。それに、レイヴァンと私のことに部外者が口突っ込むんじゃないわよ。あなたが、私とレイヴァンの何を知ってるっていうの?レイヴァン本人が不敬だとでも言ったの?まさかあなたごときがレイヴァンの代弁を出来るとでも言うんじゃないでしょうね。なんて思い上がり。それこそ不敬よ」

 「………」


 ぐ、とリリーが言葉に詰まって、


 「………じゃああなたには王太子様のお気持ちがわかるっていうの?」


 そう言った。


 「確かに平民の私になんかわからない世界かもしれないけど、王太子様だって一人の人間でしょ。あなた、王太子様に何して来たの?無理やり婚約して鞭打って逆らえないようにして、それで用済みだからいらない?……私には貴族のことなんてわからないけど、人間として、あなたが最低だってことはわかる。あなたなんて、最低最悪で、非人間的で、周りのことなんか気にもかけないで、―――まるで悪役よ!」


 リリーの言葉に、はんっと鼻で笑った。


 「ええ、そうね。全く、その通りだわ。で、―――悪役令嬢だけれど、何か文句ある?」


 ないわよね、まさか。

 そう嘲った。

悪ふざけですが何か?(`・ω・´)

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