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悪役令嬢だけれど何か文句ある?  作者: 一九三
やっとたどり着いた本編~高等部~
42/76

ヒャッハー!世紀末テンションたのしー↑↑

 さてさてさあさあ、新学期ですのことよ!

 本日も変わらず、キチってるテンション、略してキテンでお送りします、悪役令嬢セリア・ネーヴィアです!

 新学期ですね?クラス替えですね?おっと??クラスに??天使とあだ名される予定の美少女がいるぞ????

 っそうです!主人公ことリリー・チャップルは成績優秀なのでAクラスなのです!やったねセリアちゃん!むしろ、主人公と同じクラスになるためだけにお勉強頑張ってたと言っても過言じゃないNE!お勉強にも凝るわね!Call(コール)Her(ハー)Name(ネーム)


 「………セリア、えっと、確か俺達昨日、いつものセリアが一番だって言わなかったっけ…?」

 「心臓に悪いから、その全開の無邪気な笑顔をやめろ。可愛くていろいろやばいし、何をしでかすか考えただけでやばい」


 同級生二人の言葉は無視無視。ていうかいい加減レイヴァンと婚約解消したいんだけど、今度はレイヴァンのほうが止めてきてるのよね。ああ面倒くさい。いとわろしよ。


 「今日の私は臨床で危篤状態の横隔膜に代わりまして変人がお送ります、略して臨機応変でお送りますよ!」

 「誰かフランツを呼んできてくれ。俺達じゃどうにも出来ない」

 「セリア、熱でもあるのか?大丈夫か…?」

 「熱?ないわよそんなの!今日も私は体温273度の絶対零度の女よ!ノープロブレム!ノープログラム!ノーパラグラフ!」

 「高等部からAクラスになり、初めてこいつを見た生徒、こいつも普段はこんなやつじゃないんだ。誤解しないで欲しい。今まで一緒だった生徒、こいつの豹変ぶりに通報したくなるのはわかるが、ちょっと許してやってくれ。多分そのうち治るから。だから早く何とかしろという目で俺達を見ないでくれ。無理なものは無理だ」

 「…ジオルクー…お前らが責任取れよって視線が痛いー…。なんでこうなるまで放っておいたんだって目で言われてるー…。助けてー…」

 「………無理なものは無理なんだ。というか、普段こういうのは、あいつが自分で騒ぎを起こして、自分で収集つけていただろう。あるいはフランツ。俺達じゃどうしようもない」

 「マッチポンプね!マッチに対してポンプって大人げなさすぎ!でもそこに痺れる憧れるぅ↑↑ズギャァアアアン!」

 「………レイヴァン、本気で、フランツを呼ぼう」

 「うん、それしかないと思う」

 「やだっ、お兄様が来るの!?兄貴が、あにぃが、にーちゃんが、兄さんが、お兄たまが来るの!?マイ・ブラザー、キャモォオオン!グランド、キャニオオオオン!」

 「………駄目だな」

 「………いつものセリアが好きです…いつものセリアに戻って下さい…」

 「ふふ、レイヴァンったら、好きだなんて嬉しい事言ってくれるわね。キスするわよ」

 「あ、それは止めて。セリアのキスが嫌なわけじゃなくて、ジオルクから殺されるから止めて」

 「そう、前から言おうと思ってたんだけれど、あなたたち、簡単に好きとか言っちゃ駄目よ。襲うわよ」

 「………じゃあ、ぜひ襲ってもらいたいぐらいだな」

 「オッケーりょーかいまっかしといてー!えい!」


 ジオルクにキスした。

 といっても頬だから問題なし!挨拶です異文化交流ですやましい気持ちは一切ございません!


 「………」

 「さあレイヴァン、次はあなたよ。別に初めてってわけでもないでしょう、かまととぶらずにおいでなさい」

 「え、や、俺はキスとか初めてだから!ほっぺにならいいけど、口には困るっていうか、そもそもほっぺにでも殺される…!」

 「じゃあハグね。ハグゥー!」

 「は、はぐぅ?」

 「きゃん、レイヴァンったらかあいい!お持ち帰りぃー!」

 「セリア!?」

 「らったらったらんらん♪らんらんらん!」

 「ら、らん?」

 「らんらんるん!るんるんらん!」

 「るんるんらん…?」

 「きゃー!レイヴァン大好きー!」

 「っ誰かこのセリア止めてー!ジオルク、助けて!話が通じない!」

 「………」

 「ジオルクもフリーズしてた!…え、えっと、セリア!」

 「ぷきゅー?」

 「っ可愛いけど分からない!セリアの言いたいことが分からない!!」

 「幸せなら手を叩こう、はいはい、幸せなら手を叩こう、はいはい、幸せならさあ手を叩こうよ、うっせーこのリア充、はいはい」

 「っ王太子としてセリア・ネーヴィアに命じる、今すぐいつものセリアに戻ってください!!」

 「いつものセリアの定義が不明だにゃー。セリアはセリアだにゃん♪」

 「誰か助けてーー!」

 「………セリア」

 「あらジオルク、なあに?」

 「まず、レイヴァンから離れろ」

 「いいわよ。で?」

 「……落ち着いたか?」

 「最初から落ち着いてるじゃない。話はそれだけ?終わったなら決闘しましょ」

 「何故」

 「だって楽しいんだもの。こう、ぐわーっときてわーっとなってぎゃーなのよ。だからばーんしかないでしょう」

 「………すまない、分からない」

 「もう、嫌ね。つまりセリアとっても楽しいワン☆ってことよ」

 「………」

 「ハイホー、ハイホー、背後が好きっ、後ろから忍び寄るー、のさっ、たったったっハイホー、ハイホー、最後が好きっ、断末魔響かせるー、のさっ♪」

 「レイヴァン、助けてくれ」

 「無理」

 「あ、言い忘れるところだったわ。今日のおやつに唐揚げ持ってくるって言ったんだけど、揚げたてのほうが美味しいから、食べる時に揚げるわね。下準備はできてるから大丈夫よ。もう、美味しいんだから!秘伝の下味よ!」

 「へえ!楽しみだな!」

 「ふうん…揚げたてか…。揚げたてといえば、フライドポテトも揚げたてが一番美味いと言っていたな」

 「ええ、あれもそのうち揚げたてで食べさせてあげるわ。期待して待ってなさい」

 「うん!期待してる!」

 「……その手のものに関しては、ハズレがないからな」

 「でねでね、二人とも聞いて聞いて!」

 「あまり聞きたくないが、なんだ」

 「嫌な予感しかしないけど、何?」

 「私…好きな人が出来たのっ…!」

 「っなんだと!?」

 「ええ!?」


 ぽっと顔を赤らめて、テレテレと続ける。やだ、はずかちー!


 「その人のことが気になって気になって、いつも考えちゃうの。その人ならどうしたのかしら、なんて思っちゃったりして、その人に会えるのが楽しみで、会えるってだけでうれしくてたまらなくなるの」

 「どこのどいつだ。吐け。誰が、お前に手を出したんだ」

 「なんでるっくんったら人の二、三人殺しそうな形相で私を睨むの?せーちゃん泣いちゃう!」

 「ふざけるな。誰だ」

 「れーくんよ」

 「っレイヴァン…!」

 「ええええ!?違う違う絶対違うから!俺じゃないから!お願いだからサーベルから手を放して!」

 「冗談よ、るっくん、れーくん」

 「じゃあ誰だ」

 「……俺を巻き込まないで…」

 「やだ、こんなところで言えるわけないじゃない!恥ずかしい!」

 「…じゃあ場所を変えて、人気のない場所に、二人きりで、話をしようか。よし行こう。何が起こっても俺はもう知らん」

 「待て待て待てジオルク!早まるな!」

 「そんなにセリの好きな人聞きたいの?るっくん、セリのこと好きなの?やん、セリ照れちゃう!」

 「そうだと言ってるだろうがさっさと吐け」

 「恥ずかしくって言えないよぉ…!でもでも、そこまで言うなら言っちゃう!感謝して二拝二拍一礼してセリア大明神様って崇めてね!」

 「………レイヴァン、やはり鍵のかかる部屋に連れ込んだほうが早い気がするんだが」

 「なんとか堪えてくれ。頼む」

 「あのね、あのね、新しく入学してきた平民で特待生のリリー・チャップルさんのことが好きなの!誰にも言わないでね!約束だよ!」

 「………女か」

 「………皆聞いてるけど…本人にも聞こえてるけど…」

 「内に秘めた、禁断の恋なの!一目惚れしちゃったの!絶対誰にも言えないの!だから、レイヴァンとジオルク以外が知ってたら、二人ともお仕置きだからね☆」

 「いやいやいや!セリアが今言ってたから!俺達じゃなくてセリアが言ったんだから!」

 「理不尽にも程があるだろう!…レイヴァン、やはり人気のない密室のほうが…!殺るのに良い…!」

 「あれぇ!?ジオルクのって、そっちの意味だったのか!?密室殺人する気だったのか!?」

 「ってわけで、告白してきまーす!応援してね!」

 「っ内に秘めた恋じゃないのか!?」

 「さっさと振られて元に戻れ。今のお前は鬱陶しい」

 「バイバイキーン!」


 さて、教室でドン引きして逃げ出そうにしてるけど注目が集まりすぎて出来ない主人公の方に行く。

 ………ん?ドン引き?


 「あ、あの、昨日は嫌いとか言って、ごめんね…?本当は、あの、…好きなのっ…!私と恋のランデブーしてください…!」

 「………ごめんなさい」


 ドン引きのまま頭を下げられた。

 あれ?

 おかしい、あのおちゃらけ主人公なら、ノリに乗ってOKするなりツッコむなりするのに…。


 「………あなたの趣味と特技、聞いてもいいかしら?」

 「え…。………趣味は土いじりで、特技は…一応勉強です、けど…」


 は?


 え?


 なんだって?


 「………………ふふふふふふふ」


 笑いが漏れる。

 なんだって?趣味土いじり?特技勉強?

 全くおちゃらける様子もない?


 そんなの、そんなの……っ私の待ち望んでいたお笑い要員兼主人公じゃないわ…!


 「っあなたなんか、あなたなんか好きにバッドエンド迎えればいいのよ!もう知らないんだから!私が、私があなたのためにどれだけ尽くしてきたと思って…!」


 涙がこぼれた。

 主人公がそんなのなら、私の努力はなんだったのよ。

 私の安全だけなら傍観すれば良いって後輩に気付かされたけど、それでも、主人公のためのことだって言い聞かせて自分を慰めたのに。

 ルートだって、主人公がいい方に向かうように誘導策とか考えてたのに。

 幼い頃から頑張ってきたのは、何だったの。

 三歳のときから今まで、約十二年間の努力は、なんだったの…?

 全ては、あのお笑い要員の漫才を間近で安全に見るために、そのためだったのに…。


 「―――っあなたなんて、大っ嫌い…!」


 言い捨てて、私は教室を飛び出していた。






 で、戻ってきた。


 「っ戻るのか!今から追いかけようと思っていたのに、それより早く戻ってくるのか!」

 「これからホームルームがあるじゃない。サボったりしないわよ」

 「……セリアが情緒不安定すぎる…どうしよう…」

 「うっさいわねー。どーせ私は馬鹿よ。馬鹿で間抜けで無駄な努力ばっかりよ。あーあ、もう嫌になっちゃった。退学しよっかなー」

 「セリア!?そこまで!?」

 「何があってどうなったらそうなったんだ。お前とあの新入生は知り合いなのか?」

 「ちっとも知らない子。あんな子知らない。私の、私のリリーはあんな子じゃなかったもの…!」

 「………ええと、うちのセリアが騒がせて済まない。が、お前とセリアは知り合いなのか?正直に答えろ」

 「いえ、全然知りません…。昨日のが、初対面です。…えっと、新入生代表をなさっていたセリア・ネーヴィア様ですよね…?」

 「っ平民風情が気安く呼ばないで頂戴!あなたなんかリリーじゃないわ!恩知らず!」

 「セリア、落ち着け。あそこまで浮かれた挙句人違いだったことで残念なのはわかるが、落ち着け。周りに迷惑だ」

 「うっさいっつってんでしょこのサド野郎!私が黙れっつったら黙りなさい!私の悲しみもわからないくせに、知ったような口利いてんじゃないわよ朴念仁のホモ野郎!」

 「待て。誰がホモだ」

 「あんた以外に誰がいるのよ、ゲイ野郎!乙女童貞!ヘタレ!童貞菌が移るから触らないで頂戴!」

 「………」

 「っセリア止めて!そんな汚いこと言うなんてセリアらしくないよ!ジオルクを殺さないで!」

 「来たわね、乙女童貞その二!いつまでもガキな甘ったれ!弟にまで気を使わせるクズ!我儘なお子ちゃま!飼い主の手ぇ噛んで脱走した以上、戻ってきて甘えられると思ってんじゃないわよ!帰ってきたら以前以上に厳しく躾けて反抗の意志も失わせてやるわ!」

 「セリア…!?」

 「もう大っ嫌い!二人とも大っ嫌い!リリーも大嫌い!今すぐ消えて!」

 「………」

 「………」

 「っ何逃げようとしてんのよ殺すわよ!女の子が駄々こねてんだから優しく抱きしめて慰めるぐらいしなさいよ甲斐性なしども!それでも本当にアレついてんの!?」

 「セリア止めて!女の子はそんなこと言わないから!」

 「………抱きしめてもいいのか?」

 「あんたの耳は何?飾りなの?引っ張るための持ち手なの?それとも言葉も理解できない馬鹿なの?早く死ねば?」

 「………じゃあお言葉に甘えて」


 ジオルクが抱きしめてきた。

 ………ぎゅっと抱きつく。


 「……やっと会えたと、思ったのに…!今までずっと、ずっと会えるのを楽しみにしてたのに…!」

 「そうか。残念だったな。ああ」

 「あの子のためにって、頑張って、ずっと、頑張って来たのに…。全部無駄なんて、全部、無駄だったのよ…。お兄様に迷惑かけてまでお祖父様と会議したのも、レイヴァンと婚約してジオルクと敵になったのも、スカイと友達になって先生と遊んで後輩の気持ち悪さに耐えたのも、全部、全部無駄だったのよ…!私の十二年間はなんだったの…!」

 「……そうか。だが、その女のおかげでお前と会えたなら、俺は良かったと思う。レイヴァンも、同じように思っているだろう。無駄なんて言わないでくれ。俺はお前に会えて良かった」


 ジオルクが頭を撫でてくる。

 だから甘えて、さらに抱きついた。ジオルクの体温が、匂いが、心地良い。じんわりと、ずたずたになった心が癒やされていく。


 「………ごめんなさい、取り乱して無駄だなんて言っちゃって…」

 「いや、いい。今回お前が壊れて、よくよく思い知った。俺達はお前に頼り過ぎていたな。だからお前が疲れている時にフォロー出来ない。これからは、お前に頼り過ぎないよう、お前を支えられるよう、俺達も努力する」

 「セリア、いつもごめん。俺、確かに甘えてばっかりでセリアやジオルクに頼りきりだった。でも、これからは俺が二人を守れるようになる。二人が安心して任せられるような、国の皆を守れるような、立派な王になる…!」

 「レイヴァン…ジオルク…」

 「レイヴァンも、こんなに大きくなったんだ。…もう、お前一人で頑張ることはない」

 「………ありがとう、二人とも…」


 ジオルクから離れて、二人に笑みを見せた。二人とも、笑顔を返してくれた。ああ、無駄なんかじゃない。私は、無駄なことなんてしてなかったんだ…。


 「あの…」


 そこに、そろりと入ってくる主人公、リリー。


 「私、覚えてなくて…ごめんなさい」


 申し訳なさそうに、その美貌に憂いを交えて言う。


 「許さないわ」


 だから私は睨みつけた。


 「よくも期待を裏切ってくれたわね。絶対に許さないわ」

 「セリア!?ここは仲直りすることじゃ…!?」

 「そんなもん知らないわ。それともレイヴァン、あなたこの子の味方する気?それってつまり、私の邪魔をするってこと?なら、あなたでも容赦しないわよ」

 「え、ええええ!?」

 「……まだ落ち着いてないのか?大丈夫か?」

 「失礼ね。私はいつでも冷静沈着よ」

 「……さっきの取り乱しようを見せてやりたいな」

 「とにかく、レイヴァン、ジオルク、あなたたちは私とその子、どっちにつくの?」

 「も、勿論セリアだけど…でも…」

 「どちらか、と言われればお前だが、……落ち着け。謝罪しているんだし、受け入れろ」

 「はあ?なんで私が、平民風情の謝罪なんて受け入れなきゃいけないのよ。即処刑にしたいぐらいよ。ああむかつくこと」

 「……可愛さ余って憎さ百倍、だな」

 「リリー・チャップル。同じクラス内で面倒だろうが、できるだけセリアの視界に入るな。セリアに存在を感じさせるな。いいな?」

 「………それ不可能な気が…」

 「何か文句でもあるのか?」

 「………いいえ。かしこまりました」

 「よしレイヴァン、よくやった。あとはフランツにこいつの説得を頼もう」

 「うん、もうフランツに頼るしかないと思う」

 「お兄様に頼るのはいいけれど、私の邪魔をしたら、あの子の味方をしたら、あなたたちでも潰すわよ。肝に命じておきなさい」


 悲しみに浸かりながら、今日の唐揚げを楽しみに席についた。


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