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悪役令嬢だけれど何か文句ある?  作者: 一九三
長すぎる事前準備~中等部~
30/76

でもここで発揮されることはないわ。

 「―――というわけよ」


 語り終え、紅茶を口に含む。


 レイヴァンの婚約解消の意図が見えなかったし、これから忙しくなるから、いよいよ真意を問いただすべく、『もしかして二人に嫌われてるの?それなら悲しいわ』という話をしたところだ。勿論ゲーム云々の部分は除いて。


 え?気にしてないのか?

 前回の冒頭で、どうでもいいって明言してるでしょう?それが全てよ。

 大体本当に気にしてるなら、なんで二年間も寝かせてるのよ。その間、フツーにお茶して話して喧嘩して遊んでたわよ。嫌われててもどうでもいい、とか言いはしたけれど、ここまでやって来て嫌われてないことはわかりきっているし、嫌われてもゲーム補正でしょう?そんなもんで傷つくほど悲劇のヒロインやってないわよ。

 ………まあ、ここまで仲良くしてたのに、本当はずっと嫌われていたのなら、さすがにそれは傷つくけれど。


 閑話休題。

 だからわざわざ二年も経ってからそんなことを言い出したのは、これから忙しくなるからだ。

 以前、ヴィオラとプレシアとエリオンとスカイに構っていた時、二人とも拗ねて不機嫌になって、兄に諌められてしまった。

 今回はそうならないように、私が別行動していても良い理由を作ることにした。

 それがこの、『嫌われてたなんて泣きそう』作戦だ。

 いつものお茶の時間に、淡々と言ってやったから、二人共本気にしていない。本気にされても困るからそれでいい。


 「………セリア、えっと、つまり婚約解消を迫る理由を話せってことか?」

 「ええ、そうよ。じゃないと私、泣きそうで泣きそうで…」

 「白々しいことこの上ないな…。で、その婚約解消を聞き出すという名目で、何を要求するんだ?レイヴァンが言いたがらないのはわかっていて、今の今まで放置していたのに急に持ち出してきて、何を要求したいんだ?」

 「話が早くていいわね。ちょっと用があって単独行動したいのよ。でも素直にそう言ったらまた機嫌を悪くするでしょう?だから、『隠し事をしていて気まずい』って負い目を負わせて自然に距離を置こうかと思って」


 『隠し事をしている』『一方的に婚約解消を申し出た』『問いに答えてない』という状況なので、私のほうが優位だ。だからそれを反保にして、『単独行動するけど口出すな』という要求を通そうという腹だ。

 勿論、レイヴァンが婚約解消の理由を話してくれても良い。それはそれで気がかりが一つ消えてくれる。損はない。それまでに悩んでくれたりなんかしたら最高だ。私が一番に欲しいのは『問いただしている』という過程であり、『答えを得る』という結果は二の次だが、二つ得られるのならそれが最高だ。


 「………どんな用があるんだ」

 「ちょっと人を雇ってもらったから、その関係よ」

 「………どんなやつだ?男か?」

 「……あなた、なんか不機嫌じゃない?どうしたのよ…。―――男性よ。家庭教師で来てもらうの」

 「ほう、お前ほどの成績で家庭教師が必要なのか。ふうん。へえ」

 「厭味ったらしい言い方はやめて頂戴。……前々から興味のある人だったのよ」

 「………ほう?」

 「……だから、その苛立つ態度はやめて頂戴。…ヴィオラのお兄様なのよ」

 「なるほど」

 「あー、びっくりした。セリア、ジオルクが怖いから不用意なこと言わないでくれよー」


 いつもはこれ以上に言い合う喧嘩をしているのに、何故か今日に限って震えていたレイヴァンが復活した。なんで震えてたのかしら?ジオルクも、そういえばいつも以上にしつこくて怒っているような態度だったけど。


 「コラソンさんに話を聞いていて、ヴィオラがあれで、ちょっと気になったのよ。話を聞く限り、優秀だけどドジっ子で、それでクビにされたらしいわ。ね、面白そうでしょう?」

 「セリアって、そういうときは楽しそうだよな。あと誰かを甚振ってる時」

 「もう中等部になるのに、全く変わらないな」

 「何よ、変わらないのはあなたたちも同じでしょう?いえ、人間関係を広げてる分、私のほうが上よ」

 「広げていると言っても、俺とレイヴァンの妹弟と、オカマ野郎と馬鹿じゃないか。まともな交友関係とは言い難いな」

 「ヴィオラはどうでもいいけれど、うちの専属デザイナーを馬鹿にしないでくれる?スカイは話題も合うし、私以上に女の子らしい良い子よ。プレシアも、日頃から仲良くしてるし、お母様だって気に入ってるわ」


 プレシアは、ここ二年で変化があった。内向的だったのが、ある程度社交的になり、作り笑顔も上手になった。モデルとして契約延長は値段を釣り上げられたので断り、『個人的』に『お友達』として、うちの商品を無料で渡す代わりに宣伝をして貰っている。プレシア的には変わりはないし、うちの家族たちに懐いていたので、『また一緒にいられるんですか…!?』と大喜びだった。あんまり可愛かったからクッキーをあげた。

 それに対してウェーバー公も反発してきたが、金銭のやりとりはないし、プレシアと仲が良いのも事実なので、営業スマイルでやりすごした。別に脅してはいない。少ししか。


 板挟みで不憫なプレシアに思いをはせていると、妹に同情したのがわかったわけでもあるまいに、お兄さんが不機嫌になっていた。


 「………そうだな、お前はあいつにプロポーズしたぐらいだからな」

 「プロポーズだけじゃないわ。口説き落として、贈り物をして、共に愛し合って、プロポーズしたのよ。思いが実った時のあの幸福感は、あなたにはわからないでしょうね」

 「………」


 何故かものすごく睨まれた。

 あら、何か悪いこと言った?

 レイヴァンを見ると、黙って首を振られた。何か悪いことを言ったようだ。


 「冗談よ。友達として仲良くしてるだけよ」

 「………あのカマ野郎は、女遊びが激しかったはずだが、今は落ち着いているな」

 「ええ。お仕事が忙しいらしいわ。そもそも女性に手を出すのも、可愛らしいものを求めていたからだそうで、今の可愛らしいものに囲まれた生活で、わざわざ手を出すほど飢えてないそうよ」

 「ふうん。そんなものなのか」

 「私もそう思ったから深く聞いたら、『こんな性格もまるごと受け入れてくれる相手がいるのに、浮気なんかしないわよ』って言われたわ。スカイは恋愛より友情を取るタイプみたいね」

 「………へー」


 今日はジオルクが不機嫌な日だ。嫌味と軽口の応酬なら楽しいが、不機嫌でピリピリされるのは居心地が悪い。

 でもなんでここまで不機嫌なのかしら、と考えて、思い至った。


 「ジオルク、あなたの心配はよくわかるわ」

 「ん?」

 「ま、まさかセリア、気づいたのか…?」

 「ええ。でもね、スカイにそういう気持ちはないし、そもそも対象外だそうよ―――男性は」

 「………は?」

 「………へ?」

 「だからいくらお兄様が素晴らしくても、スカイの心が女性でも、スカイがお兄様に惚れる心配はないわ。安心して頂戴。私もね、あんまり素晴らしいお兄様だから、どうかしらって心配してたのよ。スカイはレズだけれど、お兄様みたいな人に出会ったら目覚めるんじゃないかって。そんなことされたら男同士でお兄様も困るんじゃないかって。いえ、困るならまだしも、二人が愛し合ったらどう始末しようかと悩んでたのよ。男同士なんて評判も悪いし、子供も出来ないし、スカイは子爵の息子で、しかも一人っ子よ?結婚相手としての価値はないわ、評判は落ちるわ、子供も産まれないわ、子爵家の跡取り問題もあるわ、面倒ったらないもの」


 メリットが一つもないくせにデメリットが豊富な、嫌な縁談だ。是が非でも壊していた。


 「でもね、スカイはやっぱりレズで、女性が好きなんですって。お兄様みたいな素晴らしい男性がいることはわかったけれど、恋愛するなら女性だって。本当によかったわ。絶対お兄様には惚れるなって釘も刺しておいたから、心配無用よ」

 「………お前は?女のお前に惚れることはあるのか?」

 「スカイとは言葉で殴りあって忌憚のない意見を言い合うような仲よ?大体同姓枠だし、子爵だし、そんな面倒事を持ってる相手と云々したくないわ。私に利益がないじゃない。あの子、結構性格キツイのよ」


 面倒で、適当に適当な服を着ていたら、『何その服、寝間着?早く着替えてきなさいよ。みっともないわよ』とか言われるぐらいだ。兄には『セリアに似てきたね』と言われた。私はあそこまでキツくない。性格が悪いだけよ。

 だから、スカイとなんて…。


 「ジオルクと恋人になるぐらいありえないわね」

 「………」

 「セリア…」


 冗談のつもりで笑って言ったら、なんでかジオルクが死んでレイヴァンが同情するような目で見てきた。なんなのかしら?

やっと主人公が出てきてくれそうなので、次回どばっと出すかもです。

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