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悪役令嬢だけれど何か文句ある?  作者: 一九三
長すぎるプロローグ~幼少期~
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地位目当てで婚約したけど問題なんてあるの?

 勿論、両親を通して陛下にお話して…、という正規の面倒くさいプロセスを踏む必要があるので、すぐにとは行かない。

 行かないが、最速で駆け抜けることは出来るはずだと、私は燃えに燃えて突っ走った。


 まずは両親の説得。


 「お父様、お母様、私、王太子様の婚約者になりたいんです。結婚は出来なくても構いません。暫定的にでも、『王族の一員になるかもしれない』という立ち位置を手に入れたいんです。よろしいでしょうか」

 「せ、セリア…?どうしたの、あなた…」

 「こ、王太子様とかね?…ま、まあ、セリアがしたいのなら…」

 「ありがとうございます」


 これは即効で終わった。さすが我が馬鹿親。子供に言いくるめられている。


 次、こっちはややこしい、あちらがわの両親へ話を通すこと。

 どうするかと攻めあぐねたが、


 「話をしていただく時間を作った。一緒に行こうか、セリア」

 「っはい!お祖父様大好き!」


 優秀な祖父がアポを取ってくれ、さらに同行してくれるとのことだった。なんと素晴らしい。思わず祖父に抱きついて、思いっきり甘えてしまった。兄が「セリアばっかりずるいー!」と拗ねたのが可愛くて、ちゃんと後で順番を譲ってあげた。祖父は二人の孫に懐かれて、とてもお喜びでした。


 そして両陛下とご対面。


 「陛下、こちらは私の孫娘です。今回、御令息様と婚約したいと言い出したのでお連れしました」

 「お初お目にかかります、セリア・ネーヴィアと申します」


 まずは貴族らしくご挨拶。幼い頃から叩きこまれてるから、例え三歳のお子様にだってできちゃうんだぜ!


 「あら、可愛らしい。おいつくなの?」

 「王太子様と同じ、三歳です」


 王后陛下に、にこ、と微笑んで軽くアピール。どーだどーだ、見た目だけは良いお母様に似て可愛かろう。


 「息子、レイヴァンの婚約者にと言うが、どこかで会ったのか?」


 陛下に問われる。


 待ってました!


 「いえ、お会いしたことはございません」

 「では、何故…」

 「ですが、」


 言葉を遮らないように注意して、顔をあげる。


 「国営のため、ご利益になると存じます」


 そこから、『私を王家に入れることに対するメリット』をプレゼン形式で熱く語った。プレゼンも前世ではしていなかったが、軽いものなら余裕だ。なにせ、『お集まりいただきありがとうございます』とか『最後に、何かご質問はございませんか』とか、暗黙の了解(お決まり文句)がなくても冷たい目で見られないんだもの!日本のあの暗黙の了解(お決まり文句)には最後まで振り回されましたよ!ええ!あれがないなんて、楽勝だわ!


 そうしたプレゼンの結果、王太子、レイヴァン・サルトクリフの婚約者の地位をゲットして帰還しました。



            ***



 これでバリバリ国政に口出し出来る、とばかりに祖父を通じて改革を行いました。祖父を通じて、なのは、三歳児がでしゃばってるとぎょっとされるから。そりゃ当然ですよね。むしろ平然と受け入れてた我が祖父がおかしい。そんな祖父が大好きだけど。


 しかし気にしていたら国政は回復しない。しっかり口出しして、せめて同じ形式の書類を使わせたり、お米の普及を心がけたり、塩害対策に防風林を植えさせたりした。


 そうして祖父と「私の家に来ないかね?」と言われるほど仲良くして二年が過ぎた。私ももう五歳になるが、変わらず祖父と国のための悪巧みをしている。


 そんなある日、


 「そういえばセリア、レイヴァン様とは会ったのか?」

 「あ」


 我が婚約者様と一切顔を合わせていないことを指摘された。



 我ながら、ものすごく無礼だと思う。あからさまに『あなたに興味はない。興味があるのは将来の王妃という地位だけだ』と主張している。これはいくらなんでも失礼だ。


 というわけで、また頼りになる祖父に頼って、王子と会う場所を作ってもらった。


 「………お前が俺の婚約者か」


 王子レイヴァンは、はっきり言って、可愛くなかった。

 二年前に会ったならまだ可愛げがあったのかもしれないが、今となっては皆無だ。全然可愛くない。


 しかしそれも私に非がある。顔見せもしないままに勝手に婚約を決め、今の今まで放置していたんだ。仕方ないだろう。


 「はい。初めまして、セリア・ネーヴィアと申します」

 「ふん」


 レイヴァンは不機嫌そうに鼻を鳴らして、


 「どうせお前も俺の地位が目当てなんだろう。こんな婚約は、絶対に解消させてやる」


 と、言った。


 むかついた。


 「あら、他のどんな理由があってあなたと婚約するのでしょうか」


 だから笑顔で、馬鹿にする。


 「私はこれでも公爵の娘で、しかも宰相の孫でもあるのですが?それなのにその物言い、何をお考えなのでしょうか。と言いますか、三歳児が三歳児に婚約を申し出るなんて、地位以外の何を見て決めるとお思いなのですか?ひょっとして外見に惚れるとでも自惚れていらっしゃるので?鼻たれ小僧で涎だらだらのお子様に、私が惚れると?それに今の言い方ですと、地位目当ての女とは婚約したくない、というように聞こえますが、政略結婚もろくに出来ないお子様なのですか?逆に地位以外のどこを理由として挙げて欲しかったので?少なくとも私は、あなたに地位以外の魅力を感じませんでしたが?」

 「………」


 ぽかーん、と間抜け面のレイヴァン。

 ざまあ。


 「あ、私も一時的に『王家の一員』という地位が欲しいだけですので、宰相の孫として国政に干渉出来る年齢になりましたら婚約は解消させていただきますね。その歳になればきっぱりすっぱり絶縁しますが、それまで地位に群がる女避けとしてご活用ください」


 笑顔で言い捨てて、退室した。





 後に、レイヴァンに「あの女だけは敵にしたくない」と恐れられることになった。目移り防止にばっちりだとほくそ笑んだのは秘密だ。

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