表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢だけれど何か文句ある?  作者: 一九三
長すぎる事前準備~中等部~
29/76

乙女心もあるにはある、

 問い:友人の婚約者の頬にキスし、『最悪だ』と真っ青な顔で口を抑えていた場合における男性の真意はなんであるか。


 答え:友人に悪い、最悪仲違いさせかねない最低なことをした、と後悔する。



 残念ながら、ここで『ジオルクに嫌われてるのかしら…』なんて傷つく乙女心は持ち合わせていない。そもそも私とジオルクは会えば喧嘩ばかりの間柄で、好きか好きでないかで言えば好きだが、好きか嫌いかで言えば嫌いになるような関係だ。

 ゲームでのハッピーエンドでも、本命の俺様王子ルートですら追放ですんでいるのに、ドS公爵ルートでは唯一、悪役令嬢が死亡している。

 確かに嫌い合っていて、主人公の邪魔もしたが、難易度が高いのはドS公爵の親戚のせいでもあるのに、『事故死』させられている。


 嫌われているにしても、『へー、そうなんだ』で受け入れられるぐらい、意外性のない話だ。

 だからそのへんの話はどうでもいい。

 ジオルクがレイヴァンと兄とぎくしゃくしていたり、なんか話し合って友情深めたり、軽く吹っ切れたりしたようだが、どうでもいい。かなりマジで。

 しいてあげるなら、レイヴァンが笑顔で婚約解消を求めてきたことぐらいだろう。その時は『別にいいけれど、今丁度権力利用してるところだから、高等部あたりまで待って』と答えた。商会が軌道に乗り、国政に『将来の王妃候補』の座がなくても口出しできるようになるまで、そのぐらい必要だと踏んだからだ。ちなみに理由を聞いたら、妙に口ごもって、『セリアは親みたいなもので、そういう風に見れないから』と嘘を吐かれた。


 レイヴァンを躾けてきたのは本当だし、親だと言われれば何も言えないが、その程度で政略結婚を反故にするほどではない。レイヴァンも、婚約解消を申し出る前も後も、私をちゃんと『婚約者』として女の子扱いしてくれている。恋愛感情がないのはわかりきっているが、それだけで数々のメリットを捨てて婚約解消するほど、嫌われてはいない。むしろお互い好意的なので、普通の恋愛結婚と遜色ない程度には幸せな結婚が出来るだろう。

 好きな子が出来たならそう言ってくる。反対しないと言ってあるし、隠し事をするような仲でもない。

 婚約するのに不都合が出たわけでもない。待てと言えば二つ返事で了承してくれたし、私に対する態度も変わらない。政治情勢的にも、動きはない。

 つまり、―――そう、なのか。

 追放フラグがないと安心して、信じきっていたけど、駄目なのか。

 あれほど懐いてくれていた、仲良くしていたレイヴァンも、―――そうなってしまうのか。


 一度、見直しをしよう。

 まず主人公のために、阻止すべきなのは『俺様王子ルート:バッドエンド』、『ドS公爵ルート:バッドエンド』、『癒し系教師ルート:バッドエンド』、『女遊び先輩ルート:バッドエンド』、『逆ハーエンド』だ。優しい生徒会長のバッドエンドは、悪役令嬢に命じての実行なので、私の采配次第で手心をかけられるのでそこまで警戒は必要ない。同じ理由で、ノーマルエンドも警戒しなくて良い。

 次に私のために阻止すべきなのが、『俺様王子ルート:ハッピーエンド』、『ドS公爵ルート:ハッピーエンド』、『癒し系教師ルート:ハッピーエンド』だ。優しい生徒会長ルートのハッピーエンドは、たとえ市井に投げ出されても余裕でやっていけるので問題ない。

 これより、『優しい生徒会長ルート』、『女遊び先輩ルート:ハッピーエンド』、『ミステリーな後輩ルート』に誘導すると双方に良いことがわかる。

 しかし、私は自己防衛が何よりも大事だ。

 だから徹底して、俺様王子とドS公爵、癒し系教師のハッピーエンドは避けなければならない。


 レイヴァンとジオルクは、そんなフラグは完全に折れたと信用しきってしまっていたが、……ただの油断だったかもしれない。

 レイヴァンは嘘を吐いてまで婚約を解消したいと思っていて、ジオルクは私のことを相当嫌悪している可能性がある。

 あの行動をよくよく、冷静になって考えてみれば、かなり私に不利な状況に陥らせる布石になる。王太子の婚約者でありながら、その友人と不義をなすなど、到底かばいきれないスキャンダルになる。そんな事実はなかったと言い張っても、休憩室に二人きりで、今までの付き合いからそれなりに仲良く見えている。とてもじゃないが噂になるのは避けられないだろう。

 あの時、宿敵(ライバル)なんて言ったから、ジオルクはそういう行動に出て、私をはめようとしたのかもしれない。

 レイヴァンに悪いと気づいて正気に返っただけで、そこまでされるほど、私と『良い敵』ですらありたくないと、嫌悪されているのかもしれない。

 二人が話し合い友情を深めたのも、レイヴァンが裏のない笑顔で婚約解消を迫るのも、お互い私を邪魔者扱いしていると分かり合えたからかもしれない。

 ゲームでは、俺様王子は悪役令嬢との婚約を嫌がり、ドS公爵は悪役令嬢と仲が悪かった。

 それが、全てかもしれない。



 面倒なうだうだはすっとばして、中等部に入学する年。

 兄は中等部でも生徒会長を務めている。

 癒し系教師はドジって仕事を辞めさせられ、フリーになったので、家庭教師として雇ってもらった。

 うじうじしている間なんてない。


 ―――でも、あの二人に嫌われていたと思うと、胸がキリキリと痛む…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ