コンプレックスで卑屈になってる女の子って、正直ウザいわよね
巻きで行きたいのに長引いて、主人公がまだまだ出てきてくれない…
更に年月が経ち、一年後。お兄様が中等部に行ってしまった四年生の春。
寂しいけれど仕方ないと思って、やることやっていくわ。
まず、この年にはいろいろなことがある。
その一、ジオルクの妹が入学してくる。
その二、中等部に女好き先輩が入学してくる。
その三、癒し系教師がお城に出仕する。
その一に関すれば決まっていたことだし、何の問題もない。ジオルクが「兄として一応様子を見に行けと言われているから見に行く。が、今までろくに話したこともないから一人で行ってもつまらないのでお前らも来い。というか妹の顔を忘れた。見つけ出すか呼んでくれ。兄の俺が妹を探すのだとおかしいが、見知らぬお前らが呼ぶのなら普通だろう」と言っていたために三人で見に行くことが決まっている。いい加減、私にもレイヴァンにも遠慮とかがなくなっているジオルクだ。今まで一応、レイヴァンへの配慮はあったし、私に頼るのは癪だという風であったのに。
その二は、女遊び先輩は兄と同級生だから予測はしていた。内進組じゃなくて外部組なのも、初等部の時点でいなかったことからわかっていたし。そのうち兄に会いに行くという名目で探りに行こうと思う。
その三もその三で予定調和だ。勤め先が決まらず、父親のツテでなんとか、なんてこと、ありふれた話だし。私にしても今のうちから家庭教師を雇い、高等部まで雇い続けるのは手間だ。できれば中等部後半あたりから雇っていきたい。
そうそう、もう一つ、レイヴァンの弟さんの件があった。
レイヴァンの弟も今年初等部入学の歳だが、兄のレイヴァンがいるからという理由で、私達の通うゴートン学園ではない、別の国立学園に行っているらしい。会ったこともないし、レイヴァン自身も行事のときぐらいしか顔を合わせないからどう転んでもどうでもいいそうだ。希薄な兄弟関係の二人に、私と兄の仲良しぶりを見せつけてやりたい。
そんなわけで、新学期になってから早々にジオルクの妹のところに行こうと思っていたのだが。
「セリアセリア!聞いてくださいっていうか聞かせてあげます!大ニュースです!聞きたいでしょういいでしょう教えてあげます感謝してください!」
「レイヴァン、サーベル」
「えー…この前磨いたばっかなのに…」
「じゃあ俺のを貸してやる。遠慮せず使え。血しぶき程度は許容する」
「ありがとうジオルク。さあヴィオラ、その不敬に対して処罰するわ。首を出しなさい」
「やだセリアったら、照れなくていいんですよ?私とあなたの仲じゃないですか!」
「王太子として、許可する。殺っていいぞ、セリア」
「むしろ殺れ」
「ええ、そのつもりよ」
とりあえず、ヴィオラは滅多打ちにして涙と涎を垂らしてのたうち回るようにさせてあげた。大義名分はこっちにある。身分も権力も、この上なくある。王太子と国内トップ貴族かつ宰相の家の娘と公爵の嫡子。ただの伯爵子女程度、片手でひねり潰せる。
「ひ、ひどいセリア!もう教えてあげないんだから!」
ヴィオラは泣きながら逃げていった。
その見事な吠え面には感嘆せずにはいられないが…、
「……あそこまでやられたのに、まだあの調子なのか…俺なら土下座してるのに…」
「……なんというか…逆にすごいよな、あいつ…」
「耐久度とウザさだけは素直に認めるレベルね。まあいいわ、行きましょう」
ジオルクにサーベルを返し、三人で一年の教室に向かう。
ぼっちが虚しくて友達作りに奔走したのも、昔の話だ。
うっかりあんな馬鹿を引っ掛ける可能性があるし、よくよく考えれば私は相手の方から寄ってくるスペックだし、友達作りなんてやめた。クラスメイトは普通に友達だから、それで良いと思ったからかもしれない。
幸せは身近にあるものだ、とは、青い鳥の一節だったか。
だからもう、私は期待していない。
別に、ジオルクの妹と友達になりたいなんて、全然思ってない。思ってないんだからね!
それでも、声をかける役目は「同姓だし、怖い先輩に呼び出されたって同情しか生まないセリアで行こう」ということで私になった。生意気を言ったレイヴァンはお仕置きをしておいたが、確かに入学早々王子様に呼び出されてやっかまれるよりはいいだろう。友達ができなくなるしね!
「ウェーバー様、いらっしゃいます?」
最初の三年は家柄で、次の三年は成績で振り分けられるらしい、そういえば。だから、ジオルクがAクラスだった以上、その妹も同じAクラスだ。
そう思ってAクラスを覗いて声をかけたけど、なんかすごい子がいた。
白髪なのである。
教室の隅に縮こまって、好奇の視線にさられていたが、それも無理もないと思うほど総白髪の女の子がいた。
なんなのあの子、と思っていたら、
「え…あの…?」
その子が、私の呼びかけに答えた。
ジオルクを見た。レイヴァンも同じだ。
ジオルクは、首をひねっていた。
「………妹は病弱で、いつも帽子を被っていた。そういえば、髪を見た覚えがない」
「眉の色とかでわかるでしょう」
「顔色がいつも悪かったから、違和感はあってもそのせいかと。そしてそもそも妹の顔をまじまじと見ない」
「あー…わかる。兄弟とか見ないし、俺なんか兄弟何人いたか覚えてないぐらいだ」
「弟一人と妹一人よ。覚えてなさいよ、政治利用出来ないじゃない」
「それはなんか違うと思う…」
「じゃあお前は、フランツがお前のことをそういう風に思っていたらどうするんだ?」
「そう思ってないほうが不安だわ。ここまで使い勝手の良い駒なのに、お兄様ったら少ししか使われないのよ?妹として愛されてるのはわかってるんだから、もっとえげつなく使ってくれてもいいのに」
「セリアがセリアでセリアだった」
「フランツも大変なんだと思った」
「何よ、文句あるの?」
「―――あの…」
やいやい言っていたら、こっちに来ていた白髪の少女に声をかけられた。
そういえば、私が彼女を呼んだんだった。
「突然呼び出してごめんなさい、私はセリア・ネーヴィア。あなたのお兄様のクラスメイトよ」
「え、え!?あ、あのセリア様…!?お、王太子様まで…!?」
少女は驚きで目を回している。
レイヴァンは『何か言ってやれよ』とジオルクを突く。私とレイヴァンでは、混乱を悪化させるだけだろう。
ジオルクもわかっているので、渋々といった体で妹に話しかける。
「おい、プレシア」
「っは、はいお兄様!」
「体調はどうだ」
気遣いから入る、ね。いいじゃない、やるわねジオルク。それと妹さんの名前はプレシアっていうのね。それ最初に言いなさいよ。聞かなかった私達も私達だけど。
「最近は、その、大丈夫、です。療養していたおかげで、日常生活に支障があることは、あまり、ないです…」
「そうか。学校はどうだ?行けそうか?」
「………頑張ります」
消極的な返答。つまり『いいえ』ってことね。さすが腐っても貴族、その辺りの言い回しはあの馬鹿みたいに直球じゃないのね。
「学業のほうはついていけそうか?」
「………本ばかり読んでいましたから…」
「じゃあ、心配はいらなそうだな。俺は四年のAクラスにいるから、何かあれば来てもいい。……お前らは何かないか?」
きちっと、というか淡々と業務でもこなすように必要事項を聞き、解散しようとしているジオルク。
「その髪って、病気のせいなのか?」
その意向を読まないのがレイヴァン。
その斜めの角度に突き抜けてるところ、いっそあなたらしくて良いと思うわ…。
「……いいえ、生まれつきで…。…気持ち悪い、ですよね…」
自笑気味に、泣きそうな顔で言うプレシア。灰色の瞳が潤んでいる。
「まったくね」
だから同意した。
「せ、セリア…!」
「何よ、そのとおりじゃない。老婆みたいで、汚らしい髪。ウェーバー公もさぞがっかりなさったでしょうね、こんな娘で」
「………」
ぐっと俯いているプレシア。
「………セリア、俺もいくらなんでもそれは言いすぎだと思うが…」
「事実じゃない。本人が気持ち悪いと思うかって聞いてきたから、そうねって肯定しただけでしょう?この子の髪が老婆のようなのも汚いのも政治的道具になれないのも、事実よ。他意はないわ」
「あ、そう言って、『傷ついたのなら謝罪するわごめんなさい』ってさっさと収めるつもりなんだ。自分から言い出した手前、『許さない』なんて言えないし、嘘は言ってないし、悪意もないって言ってるし。セリア、上手いなあ…」
「心配しなくても、レイヴァンにはそういう根回しなしに罵倒してあげるわ」
「えーと、ジオルクの妹、そんな容姿じゃ学校生活大変だろうけど、セリア以上に怖いやつなんていないから大丈夫だ!どんないじめっ子も、セリアに比べたら全然だからな!ジオルクより強いぐらいだし!」
「レイヴァン、ちょっとそこに座れ。正座でだ」
「レイヴァン、歯を食いしばりなさい」
二人で教育的指導をして、「じゃあ、そういうわけで一応挨拶に来ただけよ。邪魔したわね」と帰ろうとしたら、
「―――あ、あの…!」
プレシアが声をかけてきた。
帰ろうとしていた足を止め、三人で不思議そうにプレシアを見る。さっきまで怖がっていたのに、どうして呼び止めるのかしら?
プレシアは不安げに俯き、ぎゅっと服を握っている。
「………あの…、私、ここで上手くやっていけますか…?」
「あ、そういう不安の吐露は兄妹二人のときにやって頂戴。レイヴァン、さっさと行きましょ。この感じは巻き込まれたら長くなるわよ」
「おい、俺を見捨てるな」
「……でもジオルクの妹だろ?フランツは妹の面倒見てたぞ?」
「………」
「いいこと言うわね、レイヴァン。今日はお新香とおむすびだから、おやつって感じじゃないけれど、お腹減ってるから丁度いいわよね」
「おしんこ?おむすび?」
「あら、知らないのね。実際に見たほうが早いし、行きましょうか。心配しなくてもジオルクの分も食べておくから、心置きなく妹さんと語らって頂戴」
「お前の性格の悪さはとどまるところを知らないな。あの馬鹿並みに苛立つ」
「…なんですって?私が、あの馬鹿と同等?そう言ったのかしら?」
「そう言ったが、違うのか?人の妹に出会い頭の罵倒、勇気を振り絞った言葉にこの態度、あの馬鹿以上に最悪だ」
「あなたが本当に妹さんのことを思って言っているのなら多少は考えたけれど、そんな心にもない言葉、白々しいだけだわ」
「お前には言われたくない。それに、本当に思っているかどうかなんて問題ではないだろう。兄として、正式に抗議しているだけだ」
「あらあら、立場が変わると言うことも180度変わるのね。当てにならないこと」
「その言葉、そっくりそのまま返してやる。というわけで、妹への謝罪を要求する」
「お断りよ。で、次は決闘?私、勝つわよ?」
「決闘決闘と、野蛮なことだ」
「お得意の負け犬の遠吠えね。すっかり上手になったじゃない」
ジオルクと喧嘩している間に、「それで、何の話なんだ?」とレイヴァンがプレシアと話を進めていた。プレシアは喧嘩に右往左往していたけど、もうこんなの日常茶飯事で、レイヴァンも慣れきっている。
私達もどちらからともなく止め、プレシアの言葉を待つ。
プレシアは急に状況が整ったからかおろおろしていたが、やっと口を開いた。
「わ、私の髪、どうして、こんなに嫌われるん、でしょうか…」
「あら当然じゃない?周りと違うとそれだけで嫌でしょう?ついでに老婆のようで気味も悪いわ。そんななりじゃ政略結婚の駒にすらならないし、疎まれて当然ね。白髪で、病弱で、小心で、態度に自信がなくて、甘えがあって、見ていて苛々するわ。そこまで揃っていて嫌われないほうがおかしいと思わない?」
プレシアは顔を真っ青にして絶句した。今にも泣きそうだ。
ジオルクとレイヴァンは、「あんな不用意なことを言うからだな」「セリアにあんなこと言ったらこうなるのは当然だし」と頷いていた。明日のおやつはなしにしよう。
「そもそもあなた、嫌われるのが嫌なら好かれる努力はしてるの?髪ぼっさぼさで艶もないけれど、ちゃんと手入れしてるの?嫌な相手を前にしても笑顔で会話出来るぐらい社交でも出来るんでしょうね?大方今日一日誰とも話せなくて、好奇の視線に晒されて心が折れかけて、初めて声をかけてくれた味方に頼りたくてあんなこと言い出したんでしょうけど、私達味方じゃないわよ?味方だとしても、何勝手に信用して甘えてるのよ。嫌な子。私そういう子嫌いなのよ」
「セリアー、そのぐらいにしといてー。まだ一年生だからー」
「フランツを連れてきたほうがよかったな。俺達にもプレシアにも」
「―――わ、わたし、だって…!」
お、プレシアが顔を上げた。顔をあげて、私を強く見てきた。
「私、だって、あなたみたいな綺麗な髪が、欲しかった!私の苦労も知らないで、勝手なこと、言わないで!」
「そのままそっくり返してあげるわ。容姿も武器の一つよ?私がこの髪や容貌を保つために、より美しくなるために、どれだけ努力してると思ってるの?まして私は王太子の婚約者、将来の王妃。一挙一動が問われ、相応しくない行いを少しでもすれば一気に叩かれ、レイヴァンやこの国に泥を塗ることになるわ。引きこもって自分の世界に閉じこもって悲劇の主人公ごっこしている小娘に、私の苦労なんかわかるもんですか。そもそもあなたの苦労ってなあに?本当に苦労しているのは駒にもならない我儘娘を養っているあなたのお父様よ。それと、こんな自分に酔ってる子供を世話する侍女たちね。本当にご苦労様だわぁ、心から、同情するわね」
「………っ」
ひくっと声を引きつらせるプレシア。
「触るわよ」と一応声をかけて、髪を取る。
「ほら、ろくに整えてないじゃない。これなら汚くて当然よ。あなたって馬鹿ね、言葉も出ないほど愚かだわ。奇異ってことは、目立つってことなのよ?」
「………目立つの、嫌だもの…」
「何故?認識されないと、話も進まないわよ?一発で顔と名前を覚えてもらう武器があるのに、もったいない。あなた、将来どうする気だったの?こんなんじゃ結婚相手も出来ないわよ?」
「………」
「病弱だし、結婚より一人でも身を立てられるぐらいになりなさい。ほら、顔挙げて」
頬を両手で包んで顔を挙げさせる。
色白で、灰色の瞳も白に近い灰色だ。さすがジオルクの妹というか、容姿は整っている。病弱なせいか、体型も華奢で折れてしまいそうなほどだ。
「顔は悪くないわね。手厚くされて滋養に良い物ばかり食べてたのね。肌も綺麗。礼儀マナーも知識もある。十分なものを持っているのに腐らせているなんて、本当に馬鹿ね。ちょっと見た目を整えてにっこり微笑むようになったら、そりゃあ話題になるわよ。ウェーバー家の天使、とか言ってね」
「……え…あの…」
「特異っていうのは有効活用したら強いってことよ。真似出来ないもの。それを腐らせるのは、本人の資質ね。つまりあなたは最低。卑屈になって主人公気取って、周りに甘え続けるくせに努力はしない。本当に嫌な子。大嫌い」
プレシアを離して、レイヴァンとジオルクのほうに行く。
「話は聞いたってことでいいでしょう?行きましょう。私もう、お腹ぺこぺこよ」
「………セリアって…いや、なんでもない」
「……とりあえず、お前のブレなさに驚いている…」
「あの、ネーヴィア様!」
プレシアがまた邪魔してきた。お腹減ってるって言ってるのに。
「私、ネーヴィア様のような綺麗な髪になりたいです!どうやって手入れなさっているんですか?教えてください!勿論、謝礼はします!」
「………そうねえ」
ただで教えろと言ってこないだけ見込みはある。ヴィオラなら、『じゃあ教えさせてあげますよ!ほらほら、教えてもいいんですよ?驚いてあげますから!』とか言い出すだろう。あの子のウザさは、もう一種の才能だ。
「じゃあ、うちの商品を融通してあげるわ。その代わりに、商品モデルになってくれるかしら?」
「………商品?モデル?」
「お前、商会なんか持ってたのか?」
レイヴァンとジオルクも怪訝そうになった。そういえば、言ってなかったっけ?
「家で趣味で作ってるの。お母様を通じて、一部の親しい方にしか売ってないから、あまり有名ではないわ。お父様がお暇のようだから、お父様を代表者にして、そろそろ真面目に売り込もうかと思ってるの。本当は私とお兄様とお母様で広告塔をやろうと思っていたのだけれど、元がいいからって思われちゃうかもしれないでしょう?その点白髪の少女なんて、話題性ばっちりだし、丁度いいわ」
「………お前な…」
「勿論、ちゃんとウェーバー公にも許可は取るわよ?もし勝手にやって駄目だって言われたら、全部無駄じゃない。最初に許可を貰ってからやり始めるわ。これでウェーバー家と親交も持てるし、万々歳ね」
ウェーバー家は、なんというか、かなり面倒くさい一家だ。
なんでも建国当時からあった家柄ということで、無駄に偉そうだし親戚筋も多くいる。現在なんて、当主のウェーバー公より周りの親戚のほうが力を持っている始末だ。
家柄とか勢力で言えばネーヴィア家のほうが強いが、面倒臭さで言えばウェーバー家だ。『何があっても滅びない』とまで言われているしぶとさも誇る。
正直本気で面倒くさい。ゲーム内でも、ジオルクがその辺りに確執を持っていることやそのせいで主人公が妨害されたりしている描写もあった。ていうかジオルクルートの難易度が高いのはそれが主な原因だ。いくら悪役令嬢がジオルクを嫌っていたとはいえ、『あんな平民とくっつくなんて、お似合いね』と溜飲を下げることもある。悪役令嬢の嫌がらせと平行して、ジオルクの実家からの圧力があったから、難易度が高かったのだ。普通に考えたら悪役令嬢が好いている癒し系教師や兄のほうが妨害は激しい。
しかし敵に回したら面倒くさいってことは、味方につけたら便利ってことでもある。中には敵にしても味方にしても嫌な馬鹿もいるが、ウェーバー家はそんな馬鹿ではない。友好的にして、双方で利益を共有したい。
「というわけでジオルク、そのうち先触れを出して挨拶に行くわ。あなた――プレシアって呼ばせてもらうわね――プレシアも、それまでに堂々と行動する癖をつけておくこと。文句があるなら今のうちに聞いておくわ」
「………うちの親ならともかく、親戚筋は…死ぬほど厄介だぞ」
「………私も、そう思います…」
ウェーバー兄妹は遠い目をしている。大変なのだろう。療養していたプレシアと、結構プライドが高いジオルクが、ここまで憔悴しているなんて。
「無能と話しても意味ないじゃない。心配しなくてもちゃんと上手く立ちまわるわよ。じゃあ、話も終わったし、おやつを食べに行きましょ」
話はまとまったし、後のことはまた後日だ。
だからレイヴァンとジオルクと教室に帰ろうとしていたのだが、
「………え?」
それまで黙っていたレイヴァンが、驚きの声をあげた。
そちらを見ると、
「な、なんでお前がここにいるんだ…?」
レイヴァンが、明らかに死亡フラグな台詞を吐き、
「やあ、兄さん」
男の子が、意味深に微笑んでいた。
プレシアことB子ちゃん登場です!彼女はひたすら不憫です!頑張れ!