さよならデート
しゃり、しゃり、しゃりと突然、並んで歩いていた彼女が駆け出した。白い砂浜に青い海、そして青い空が広がる多島美をバックにくるりと振り向き微笑む。
「気持ちいい~」
潮風まじりの春一番に、長いスカートがふわりとなびく。季節外れの海岸には、ぼくたち以外誰もいない。
やはり、来てよかった。彼女はご機嫌だし、ぼく自身にもいい思い出になる。
問題は、これから。
いつ、別れ話を切り出すか。
「うわあ、しょっぱい」
指先に付けた海水を舐めたようで、波打ち際にしゃがんだ彼女が涙まじりの苦い顔で笑っている。
どきっとして、視線を外した。
歩いてきた方を振りかえると、白い砂浜に彼女の足跡だけがまっすぐ続いていた。
おしまい
ふらっと、瀬川です。
自分のホームページに掲載していた旧作品です。