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クリスマスイブの夜。

 クリスマスという行事についてそこまで真剣になる必要があるのだろうか。街を歩けばチープな恋を満喫する男女で溢れかえる。そんなただ甘すぎるだけの時間を無駄に過ごし、生涯の貴重な青春という時間を浪費するのは間違っている。これはあくまで、誤解されたくないのであえて言うが、その費やす時間が間違っているというだけで、今私がやっているようにパソコンに向かってニコ動を鑑賞するようなことが正しい、というわけではない。しかし甘い恋にベトベトになっていくよりよっぽどましである。

 と、いった感じで脳内で論じる私の無力さ。別に彼氏が欲しいわけではない。ただ、彼氏がいるといないで優劣がつけられているようでそれには耐えられない。彼氏がいない者はこのクリスマスという行事のとき、1日中、24時間中、1440分間中劣等感に苛まれ続けなければならない。しかもイブもあるのだから二日間である。苦痛とはまさにこのことかもしれない。

 まぁ、ニコ動面白いし、別にもうそんなこと考える必要ないか。

 そんなことを思ったイブの夜。見ていたパソコンの画面がいきなり瞬いた。驚いて目を閉じると、そよ風に包まれ、寝言のようにささやく葉のせせらぎを聞いた。

 目を開けてがっかりした。それは変わらず私がパソコンに向かっていたからだ。ついに現実逃避を超越して二次元への通行切符をつかんだと思ったのに。

「どうしたの? はるかちゃん」

 あー、後ろから美声が聞こえる。クリスマスの波はストレスでついに私に幻聴まで聞かせるようになったか。

「だからどうしたのって?」

 その時、優しい重みを肩に感じた。温かい体温にたくましい胸板。

「だいじょぶ?」

 声が耳元でささやかれる。これってまさか抱きつかれてる! この距離はまずい、芳しくない。やばいってこれは、これはこれは。耳を甘噛みされそうな距離だー!

 振り向いたらこの状況が霧のように霞んでしまいそうで振り向けなかった。でもその代わり、肩からまわされる腕に目をやり、その先の手にふれてみた。骨ばった男らしい手だ。

 現状を把握していこうとすればするほど胸の鼓動だけが高鳴り、気が飛びそうだ。こんなに私は男に免疫がなかったのか。

 人は欲が出てしまうものである。顔が見てみたい、私の後ろから抱きついている彼の。たぶんイケメン、いや、絶対。

 おそるおそる振り向き、彼の栗色の髪が見えた瞬間、正面のパソコンが高い音を発したかと思うと、画面がすべて崩れ落ち、落ちたガラスが綺麗な球体を構成させた。

 唖然とする私の前で、球体は閃光を放った。

 ――――あっ! ……パソコン画面が寝起きの私の目に針を刺した。寝起きにパソコンの画面を見るのは辛い。結局、ただの夢か。ため息というか、安堵でもれた息というか、とにかく口からは息が溢れた。

 疲れてるのかな、と思い。ふらつく足でベットに潜り込んだ。

 今日はクリスマスイブの夜。サンタの正体を知りながら、むなしいと分かっていながらも、私は子供のようにお願い事をした。

「サンタさん、さっきの夢の続きが欲しいです。今年はいい子にしてましたから」

 二話で終了となります。短くてすみません。

 私としては一話の方より二話目の主人公の方が共感できてしまいます。というか、ほぼ私の体験談です。


 ご精読ありがとうございました。

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