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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第1章 魔王が転生しました
9/65

理事長と学級裁判

 事件から数日後。

 私は皆さんにすっかり不良(ヤンキー)として認識されていました。

 退学になったんじゃないのか?

 はい。私も一度は退学を覚悟しました。

 教室をシルヴィアが爆破したあと、私たちは理事長室に呼び出されました。

 理事長室のドアをノックして部屋に入る私たち。

 そこにいたのは額に縦ジワを作って説教を始めるダンディーなおじ様……

 ではなく……もみ手をしながらヘラヘラとこびた笑みを浮かべる脂ぎったさえないオヤジでした。

 油っぽいオヤジなので油オヤジ。今思いつきました。

 そんなどうでもいい事を考えていると油オヤジ(仮名)が汗をかきながら私たちに言いました。


「シルヴィア殿下ぁーッ!それにアレックス様。良くぞお越し頂きましたぁ!

わたくし、この学校の理事長のニコラスでございます」


 油オヤジ(仮名)はわずか5歳のガキに最高レベルで媚びまくってます。

 私はなんかその姿に意味もなくイラッとしたせいかメンチ切って威嚇してました。

 ですが、さすが油(めんどくさくなった)も媚を売るだけで今の地位を築いた人間です。

 ガキのメンチなど一切気にせず、げひゅーっげひゅーっと神経を逆なでする息切れの音をさせながらニコニコしています。

 そんな油はわざとらしい笑みはそのままで、酒の飲みすぎで荒れた胃から発せられる臭気を出しながら話しを始めます。


「では本題に入りますね。

シルヴィア殿下とアレックス様にたてついた逆賊ですが……」


 逆賊?


「あのいじめっ子の虫けらどもは退学処分に決定いたしました!」


ん?


「ちょっと待てーいッ!」


 つい叫んでしまいました。

 油はそれを聞いて小動物のように小首をかしげています。

 実にきもいです。

 (アレックスのストレスが20上がった。合計20)


「いやいやいやいや。退学はダメでしょ!

あんた教育者でしょ!子供の未来はどうなんのよ!」


「やりすぎたり、権力者に喧嘩売るようなガキなんて教育必要ないでしょ」


 油は『なに当然のこと言ってんの?』と言わんばかりの顔をしてます。


「いやいやいやいや。そこまで気にしてませんから!

な、シルヴィア!」


 私がシルヴィアの方に目を向けると彼女は話し合いに参加もせずに舟を漕いでいました。

 居眠りしてたのです。


「おーい……おきろー!」


 シルヴィアを指でつつきます。


「んにゃ? ねーむーいーのーだー。

アレックスはそういうの得意なんだからー適当にまとめておいてー」


 キャラが完全に崩れてます。

 私は無駄だと悟り再び理事長の方に向きました。

 すると油は張り付いた笑みをさらにえぐい角度に曲げ、これ以上ないくらい醜悪な笑みを浮かべてました。

 (アレックスのストレスが20上がった。合計40)


「すばらしい!さすが将軍のご子息!

いやーそのお年で殿下の信頼を勝ち取っているとは!いやーこの色男!」


 肘でつついてきます。

 (アレックスのストレスが40上がった。合計80)


「もう……なんかめんどくさいんでお咎めなしでいいです。

つうか事件自体なかったことにしましょう……」


 私はなんかもうどうでも良くなってきました。

 考えるのが嫌になったのです。

 すると油はウインクをして、してやったりという顔になりました。


「あ、そうですか!では仰せの通りに!いやーさすが将軍のご子息!寛大でいらっしゃる!モテモテですよー!もうあちこちの貴族から『あの男らしい子供はどこの誰か?』って問い合わせが殺到しまくってまして!いやーもうこの色男!そう言えばもうそのお年で剣術を極めてらっしゃるとか!いやー将来はお父様と同じ軍人になるのですか!いやーもう格好いいなあ!なにこの完璧超人!しかもシルヴィア様ともご親友!いいなー!あ、シルヴィア様もその圧倒的な魔力!いやもう最高!あ、そうそうそれでですね…………………」


 マシンガントークはエンドレスに続きます。

 媚びた態度でここまで苛立たせてくれるというのは一種の才能なのでしょうか?

 (アレックスのストレスがたくさん上がった。合計999)


「……」


 私は貝のように押し黙りました。

 もう嫌だったのです。この油と一緒にいるのが……

 ええもうなにもかんがえ……たく……ない……で……す……


「うぜええええええええええええええぇッ!」


 私は叫びました。

 理事長室で?

 いいえ。出てから中庭で叫びました。

 どんな手段を使おうとも油とコミュニケーションを取るのだけは避けたかったのです。

 キレる私。

 それを見てシルヴィアが一言。


「でも我らのやったことも全てウヤムヤになったぞ」


 わかっています。

 あのウザい油の目的は最初から全てをウヤムヤにすることだったのです。

 それをちゃんと理解してはいるのです。

 でもなんか負けた気持ちになったのです。

 なんでしょう……この手のひらで踊らされたような不快な気持ちは。


「きいいいいいいいいいッ!」


「猿かお前は」


「寝てた人にだけは言われたくない!うがああああああああああッ!」


 私は頭をかきむしるのです。

 負け犬となった私の叫び声が中庭に響き渡りました。



 翌日。

 本当に何もなかったことになったようです。

 説教され大人しくなった男子たち。

 なぜか私の方を見てもじもじしている女子たち。(うれしくない)

 そしてすでに本性が露見したのに演技を続けるシルヴィア。

 私は朝のシルヴィアによる薄ら寒い演技を思い出しました。


「私、ちょっと取り乱すと魔力の制御ができなくなってしまうの。

みなさんごめんなさい」


 と、先週まで一緒に頭からパンツを被り『オパンツ魔人ごっこ』に興じていた友人が白々しくそう言いました。

 シルヴィアの目の前には同じ教室で学ぶ生徒たち。

 私は背中にうぞぞぞと虫の這うような感触がしたような気がしました。

 そうシルヴィアは素直に謝ることを選んだのです。

 じゃあ私は?絶対に謝りません。

 それは敗北主義です。

 絶対に頭なんて下げないからな!

 私が呆れているとシルヴィアがこちらに来るように手を振ります。

 何事かと私は思い、シルヴィアの方に行きました。

 するとシルヴィアは私の頭を掴み無理やり頭を下げさせました。


「アレックスも悪気はなかったの。

ほら!ごめんなさいしなさい!」


 私は無理やり頭を押さえつけられながら考えました。

 謝るべきか。それともこのまま意地を通すか。

 それを決めるために少しだけ頭を上げて教室を観察しました。

 私を見つめる何十もの視線。

 みんな私が謝罪するのを期待してました。

 冷や汗が出る私。

 いまさら『絶対謝らないぞ!』なんて言えない空気がそこにはありました……


「……ごめんなさい」


 私は何が悪かったとかは横に置くことにしました。

 私は負けたのです。

 空気に。プレッシャーに。

 そして子供の無垢な視線に。

 今でも私は悪かったなどとは思ってません。

 私は、泣きそうでした。

 情けなさで胸がいっぱいになりました。

 ところがその情けなさは一瞬で終わります。


「アレックス君は悪くないよ!」


 女子生徒の高い声が響きました。

 私は頭を上げます。

 それはいじめられていた女の子でした。


「アレックス君は悪くないよ!

わたしがいじめられていたのを助けてくれたの!」


 必死に私を弁護してくれます。

 私はうれしくて涙が出そうになりました。

 すると教室からぽつぽつと私を擁護する発言が出始めました。


「アレックス君は悪くないよー!」


「悪くないよねー」


 私はありがたい気持ちになりながらみんなの不規則発言を聞いていました。

 するとだんだんと会話の内容が変わります。


「お前が悪いんだよ!」


「そうだよいじめっ子!」


「お前らが悪いんだぞ!」


 完全に矛先が変わりました。

 今度はいじめっ子たちへの魔女狩りが始まろうとしていました。

 私は止めたほうがいいか判断が下せず、シルヴィアの方を見ました。


 最高に悪い顔をして仁王立ちする魔王がそこにいました。


 シルヴィアは最初からそれを狙っていたのです。

 よく考えればわかることでした。

 女の子を集団でいじめる連中が好かれているはずがないのです。

 クラスを力で支配していたところに数段上の兵器である私とシルヴィアが投入。

 一気にクラスの戦力バランスが塗り換わったのです。

 そして私はとりあえず空気を呼んで謝罪できる程度には無害なのです。

 クラスのみんなは私につくことに決めたようです。

 いじめっこに対する学級裁判は熾烈を極めたのですから。



 授業の休み時間。

 私はシルヴィアに聞きました。


「全て計算のうちですか?」


「なんのことなのだー?」


 しらばっくれてやがります。

 私が横目で睨むとシルヴィアはため息をついて真相を語り始めました。


「プレッシャーに弱くて自分を見失ってた友達の真似をしただけなのだ」


 確かにその発想はなかった。

 そう。今回の私は完全にいつもの私ではなったのです。

 そして相棒はそんな私を見て頭脳プレーをしてくれたのです。

 彼女のおかげで私はクラスで孤立する事態は避けられました。

 そんな彼女に私は素直になることにしました。


「ありがとう」


「どういたしまして」


 私の顔は真っ赤になっていました。

 目には涙が溜まっていましたと思います。

 恥ずかしいから記憶にはとどめませんが。

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