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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第1章 魔王が転生しました
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リア充という名の怪物がすむ魔の領域 前編

 2年後。

 私たちは5歳になりました。

 毎日、お互いが先生になって稽古をし、おやつを食べて遊ぶ毎日。

 それは唐突に終わりを迎えます。


「アレックス。お前来月から学校行け」


 本当にいきなりでした。

 私はびっくりして、どもりながら追求します。


「なななななななんですと!

ひひひひいひひいひひひいひ人が一杯いるとこに行けですとおッ!」


 学校。

 それは、私のようなぼっちにとっては地獄よりも辛い場所。

 知らない人とコミュニケーションをとらなければならない暗黒の地。

 なんという無茶振り。

 私は動揺のあまりガクブルと高速で振動していました。


「ああああ、アレですね。

……学校。……アレですね。

誰かアレックスちゃんを班に入れてあげてー。

先生、そのゴミ臭いからヤダ。死ねばいいのに。

いやあああああああああああああ!」


 本気で動揺する私。

 完全に我を失っていました。


「どうしよう……殺さなきゃ殺さなきゃ!

学校爆破して……いっそ国ごと広範囲殲滅技で……」


 カチカチと歯があたる音をさせながら、私はブツブツと独り言をいいます。

 それを見て、パパが一言。


「シルヴィア殿下も同じ学校だぞ」



 一ヵ月後。

 朝から私は不機嫌でした。

 なぜなら学校に行かなければならないからです。

 でも逃げるわけにはいきません。

 なぜならシルヴィアもいるからです。

 いつシルヴィアが魔法を暴走させて児童を殲滅してしまうかわかりません。

 人道的に見張らなければなりません。

 決して友達が行くから行ってみようなんて思ってません。

 思ってませんからね!


 私は迎えの馬車に乗り込もうと中に入りました。

 ……なぜかいます。

 シルヴィアがです。


「なぜ? ……いるんですか?」


 私は低い声で問い詰めました。


「アレックスと一緒じゃないと学校行かないって言ったのよ!」


 人前のせいか、女言葉で私にそう言うシルヴィア。

 なぜか目の周りが赤くはれています。


「泣いてたんですか?」


「お外怖いのだー! 人が一杯いるのだー!

アレックスが学校に行きたいっていうから仕方ないのだー!

アレックスのばかー!」


 そういうとシルヴィアはマジ泣きを始めます。

 悲しみのあまりすっかり口調もキャラも崩れています。

 ですが、私は容赦なく問いただしました。

 何かがおかしいのです。

 私はシルヴィアに尋ねました。


「私が『行きたい』って言った?

ちょっとおかしいですね?」


「嘘つくなー!

勉強したいっておじさんに言ったのだー!

知ってるのだー!

このリア充がー!」


 ここでようやく私は理解しました。

 私たちは二人とも親に騙されたということを……

 簡単な話です。

 おそらく世間体が悪かったのでしょう。

 保護者もおらずに城の庭で死人が出る勢いで遊び続ける二人の子供。

 噂にならないはずがありません。

 それも悪い噂でしょう。

 それで私のパパとお后様は考えました。

 もういいや学校入れちゃえと。

 なあに片方が行くって言い出せば片方もついて来るさと。

 だって友達いないもん。


「つまりそういうことです……」


 私は陰謀の全てをシルヴィアに話しました。

 顔が真っ赤になって歯軋りをするシルヴィア。

 キレてます。


「じーじーうーえー!」


 王様の事です。


「よくも! よくも騙したなー!

最近『はっはっは! ビッキー(愛称)は少し魔法の制御覚えなきゃな』って言ってたけど、これだったのかー!」


「何したんですか?」


「うん? 宮廷魔術師の研究塔を吹っ飛ばしたのだ!

あいつらアレックスより教えるのヘタ!」


 相変わらず化け物じみています。

 ですが、私も似たようなことなら多少覚えがあります。


 つい数週間前の事です。

 私は剣術指南役と言う人と稽古しました。

 パパも含めて今まで近づこうともしなかった我が家。

 仕方ないので兵隊さんと遊ばせてみたら怪我人続出。

 それが3歳でシルヴィアに会って大人しく遊ぶようになったので放置。

 実際はお互い死ぬような稽古をしていたのですけどね。

 それが突然、習い事をせよというのです。

 私は何かの陰謀かと疑いました。

 まあ、でも五歳の幼児を陰謀に掛けても何も得しないだろと、冷静に考えたわけです。


 私は大人しく言われるがままに剣術指南役の人と会いました。

 構えからじっくり習う。

 そのつもりでした。

 ですが、私の構えを見た瞬間、相手の態度が変わったのです。


「一手、勝負を所望いたします」


 勝負が始まりました。

 さすがに修行の結果マップ兵器と化した気功を使うと相手が死んでしまうので、剣術だけでの勝負です。

 将軍の息子なので手加減してくれる。

 私はそう思ってました。

 私はたかをくくっていたのです。

 ですが、やって来たのは全力の上段。

 私は、シルヴィアとの(手を抜いたらマジで殺される)稽古を思い出して、上段を打ち落としに行きました。

 あらかじめ半身から半歩踏み出して、ひざの力を一気に抜いてそれを推進力として相手の懐へ。

 相手の剣の威力を生かしてカウンター気味に木刀に打ち込みます。


「きえええええええええええぇッ!」


 相手の木刀を横から両断。

 ですが、シルヴィアならここからが恐ろしいのです。

 折れた木刀で最後まで襲ってきます。

 シルヴィアの恐怖を無意識レベルで刷り込まれた私は、そのまま、最小限の動きで首を狙い剣を横薙ぎ。

 相手も指南役。

 その程度の攻撃は予期してました。

 折れた木刀で防ぎます。

 私はそのまま木刀を返し、顔の横に引きました。


「きえええええええええええぇッ!」


 渾身の突き。

 胸を狙います。

 指南役はそれを折れた木刀で弾き、そのままの動きで折れた木刀を振るってきました。

 ですが私はそれを狙っていたのです。

私はそのまま突っ込んでいく。

 相手の懐に入り振るって来た木刀の先にある腕を片手でとり、相手の勢いを利用して投げます。

 背が小さいほうがかかりやすい系統の投げ技だったため、簡単に投げられてくれました。

 そう、私に攻撃を振るった時点で相手は無理な体勢でした。

 つまりすでに崩れていたのです。

 ですが、これがシルヴィアなら必ず白兵戦に持ち込んできます。

 投げただけでは安心できません。

 気がついたら馬乗りにされてボコボコにされるのです。


※幼女に馬乗りになられてマウントパンチは一部の紳士に大好評に違いありません。


 あいにく私はロリという名のフロンティアを欲する紳士ではないのでそれだけは嫌です。

 あのクソロリは手を抜いたらマジで殺しにかかってくるのです。

日ごろの殺伐とした訓練のせいか、私の体は考えるよりも先に動きました。

 私は反射的にかつ、全力で止めを刺しに行きました。

 私はそのままの勢いで木刀を振り上げました。

 すると相手は手を上げました。


「ま、参った! 参った!」


 私は戦闘モードになった頭を何とか冷やして木刀を寸止めしました。

 たった数十秒の攻防ですが息が切れます。

 私は吐きそうになりながら地面に突っ伏しました。

 これでは多人数相手に立ち回ることなど無理です。

 私は剣術で勇者を相手にしていたシルヴィアをあらためて化け物だと思ったのです。

 結局、動けなくなった私はそのまま剣術指南役の人に部屋まで連れて行ってもらいました。

 お姫様抱っこでしたよ(勝ち誇った顔)。


 その夜のことです。

 剣術指南役とパパがもめていました。

 なぜそんなこと知ってるかって?

 覗きです。うふふ。


「将軍! アレックス様は国の宝でございまする!」


「いや……でもね……誰にも教えられないし誰にも制御できなんだよね。あの子」


「え? ……では誰に師事をしてあれほどまでの腕前に?」


「本人はシルヴィア殿下だって言うんだけどね……さすがにそれはないでしょ?」


「だからこそ……!」


「いやでもね……!」


 言い争いは続きます。

 さすがに私もこの頃には眠くなってきてめんどくさくなったのでスルーして寝ました。

 ……ってそれがフラグだったのか!


 ……とにかく私たちは売られる家畜のように馬車で学校に連れられていくのでした。

 べ、別に話そらしてませんからね!


 たどり着いた先は学校。

 そこはリア充という名の怪物がすむ魔の領域。

 私たちは尻尾から落ちてくる大蛇の群れに襲われる探検隊のように身を引き締めるのでした。

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