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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第4章 エルフの帝国編 ~おうちに帰るまでが革命です~
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ノーム

 代官屋敷への放火でエルフさんたち、もはや言い訳できなくなった私は……開き直りました。

 私は勢いで砂漠地域を平定。

 と言えば格好いいのですが、砂漠の集落にいたのは全てハーフエルフさんだったのです。

 みなさんスライムをけしかけられて死にそうになっていたようで、暴動……じゃなくて正義の世直しに加わりました。


 紹介しましょう! 我が新しい有望人材を!


「フッハハハハー!」


 オーガさんとエルフさんのハーフの獄長様です。

 存在だけでアヘ顔Wピースが表紙の薄い本ができそうな人材です。

 実に素晴らしいです。

 この人とハート様だけで幸せな気分でおなかいっぱいになります。


 さて……えーっと突然なんですが、ある集落で神様が奉られてました。

 ウィンデーネさんの例もあるので、慎重に対処せねばなりません。

 私は神様のほこらの前にやってくるとウィンデーネさんを呼び出します。


「ショター!(鳴き声)」


「早速ですがこのほこらの主ってわかります? できたら呼び出してほしいのですが。報酬はハーフエルフさんを適当にお持ち帰りしてくださいな」


「ショター!!!! ……たぶんノームじゃの。ハイエルフとして契約してくれ。お持ち帰りはその子で。立派な男の娘に育てるからの!!!」


 握手。

 二人に言葉はいりません。

 感動すると言葉が出ないものですね。

 そして呪文でも唱えるのかなっと思った私に衝撃の瞬間が飛び込んできました。


「おらぁ! ノーム出てこいや!!! おるのはわかっとんじゃ!!!」


 ゲシゲシとまるで借金取りのようにほこらにヤクザキックをかますウィンデーネさん。


「出てこねえと火つけんぞボケェ! オラァッ!」


 水の精霊の言葉とは思えません。

 するとほこらが震え、何者かが飛び出してきました。


「なによー? うるさいわねぇ」


 それは、おさげのロリッ娘。

 近くに大きいお友達がいたら10秒で誘拐されるほどの美形です。

 しかも大きいお友達に威圧感を与えない文学少女系。

 しかもコイツ……自分の容姿を自覚してる!!!

 わざわざアヒル口を作っての抗議。

 全身で男に媚びるその動き!


 私は一瞬で理解しました。

 こいつ清楚系ビッチだ!!!


 清楚系ビッチ。

 知的生命体が溢れるコンクリートジャングル。

 その中で絶対的な力の指標はコミュニケーション能力。

 コミュニケーション能力がないと、余計な一言で会社の面接で敵を増やしていく空気も読めないクソジジイに捨て台詞付きで採用を断られるのです。

 そんな酷い世界で食物連鎖のトップに君臨するのが清楚系ビッチです。

 男を見ると全身で媚びへつらい、あるときは同僚を罠にはめるために、あるときは己のミスを隠蔽するために暗躍します。

 配慮ができるのは自分を中心とした半径3メートルまで。

 仕事は他人に押しつけ、上司に媚び、男女関係なく新人社員は小馬鹿にしながら辞めるまでイビる。たまにコマす。

 その態度がヒンシュクを買うやいなや、被害者ぶって泣き出す。

 しかもなぜか庇うのはイケメン。

 なにの男性デブ社員への当たりの強さはまるで親の敵かのようです。

 そこに残るのは猜疑心とギスギスとした雰囲気。それと憎悪だけ。

 全ては自分だけの利益のために。

 どう考えても組織全体のためにならない存在です。

 いつまでもちやほやされると思ってるなよ!

 お前ら30過ぎたらただの人だからな!


 くわッ! ぺッ!


 なんかムカついたので私はウンコ座り(鳳凰型)をしながらメンチを切ります。

 ウィンデーネさんもウンコ座り(青龍型)をしながらメンチを切ります。


「なにその態度!」


 私はその被害者ぶった態度に怒りを覚えます。


「……謝れ」


「え?」


「世界中の喪女に謝れ!!! いや、世界中のモテないお一人様に謝れ!!!」


 私は泣きながら謝罪を要求しました。

 イケメンはレアアースクラスの貴重な資源です。

 なのにそれを一見清楚系のクソビッチが乱獲しやがります。

 そのせいで喪女に訪れるのはバッドエンド固定のナイトメアモードな人生!

 気がついたら職場で私の前で結婚というワードが禁句になっていた。

 職場と自宅往復するだけの日々。

 部屋にあふれかえるビール缶。

 畳むのが面倒くさくなった普段着。

 汚くなっても放置プレーなガラスのコップ。

 寂しくなってワンコを飼おうか悩む日々。

 数年前から『結婚』を口にしなくなった両親。

 外出着よりジャージとスウェットをハードに着用。

 面倒くさくなって2分で終わるメイク。

 持て余す性欲。

 このさいデブでもハゲでもなんでもいいから男が欲しい。

 どうやって会話すればいいかわからないけど。

 あると思います。


「謝れ! 謝れええええええぇッ!!!」


 あ、男性はいまいち共感できないかもしれません。

 ですがこう考えると納得できるかと思います。


 女の子を食い散らかす、イケメンサッカー部員とかイケメンバスケ部員はみんな死ねばいいのに。

 ヤリチンは地獄に落ちればいいのに。

 あー学校に隕石落ちてみんな死なないかなあ。

 テロリストが攻め来てイケメン皆殺しにしないかなあ。

 男だけ死ぬウイルスが蔓延して自分だけ生き残らないかなあ。

 ……と、にやりと笑ったら教室のどこからか聞こえる「キモい」のささやき声。

 ブログとSNSの中だけは彼女持ち。

 女性にフレンド登録するとテンション上がりすぎて、どん引きされて即フレンド登録解除される。

 一人布団の中で涙を流す日々。

 持て余す性欲。

 本来の目的に使われない主砲。

 職場や学校と自宅を往復する日々。

 無駄にレベルが上がっていく家事スキル。

 週末は家の掃除と洗濯。

 増えていく健康サプリ。

 たまにガーデニング。

 なんか最近女子より花にくわしくなったぞ。

 寂しくなって熱帯魚に手を出したら、今までにない勢いで財布から消えていくお金。

 ネットやってたら一日が終わった。

 ……すっげえあると思います。


 ということで清楚系ビッチは死ね!

 貴様らのせいで世界から争いはなくならないのだ!


 この世の全て憎悪するかのようなブルータルなメンチ。

 視線だけで全ての生命体を殺せるに違いありません。


「な、なに? なんなの!」


「じゃかしゃああああッ! このビッチぃ!」


 私は魂からのシャウトをします。負け犬丸出しで泣きながら。


「えっと帰っていい?」


「ぐすん……契約」


「やだ」


「……契約しないとノームさんをこの世から滅ぼすもん。全てのほこら壊して川に流すもん」


「お、鬼か! 私が何をしたのよ!」


「鬼でもいいもん。……グスッ。 みんなぶっ殺すもん」


 私は泣きながら抗議します。

 許せません。

 絶対に許せないのです!


「おいノーム! こんな小さな子を泣かせるとはなんだ! 契約くらいしてやれ」


 ウィンデーネさん。ナイスアシスト!


「え? 私が悪役!」


「あーらーらーこらーらー せーんせーいにいってやろー」


 すかさずウィンデーネさんが追い詰めます。

 ナイスです!


「……わかったわ! 契約すればいいんでしょ! 契約すれば!!!」


「……グスッ」


 私はこくんと頷きました。

 うにゃり。

 これで契約完了でございます。

 この際、謝罪はどうでもいいです。

 だってインネンつけただけですから。


 あーすっきりした。

 リア充への嫌がらせほど楽しいことはありませんね!



「拳王だ! 拳王が来たぞ!」


 叫び声が上がりました。

 あ、拳王って私のことらしいです。

 本名はマズいのでちょうどよかった……

 我々拳王軍はとうとう帝国本土と砂漠を分ける関所まで迫りました。

 そこにいるのはエルフの軍隊。

 板金鎧に身を固めた兵隊の手には剣に弓に槍、それにハルバード。

 遠くでは三段列を組んだ弓兵に大型弩砲(バリスタ)平衡錘投石機(トレビュシェット)の姿まで。

 その数、目視で五千以上。

 その全てがエルフさんです。

 うっわー……皆殺しにする気だ……

 農民約千人に出す規模の兵力じゃねえです。


 でもね……


()ー!!!!」


 弓から放たれた矢が雨のように降り注ぎました。


「ふおおおおおおおおッ!(呼吸)」


 原形を留めないほどビルドアップされたハーフエルフさんたちが降り注ぐ矢を回し受けで叩き落とします。

 もちろん、バリスタの巨大な弓矢や投石機からの岩石も受け止めます。


「破ッ!!!」


 投げ返した岩石の上に乗って一気に敵陣地まで飛んでいくハーフエルフさん。

 手刀で板金鎧をボコボコにひしゃげさせ、パンチで騎馬を崩し、腕力だけで槍部隊を蹂躙します。

 もう弓とか使いません。

 素手で充分です。


 私……もう帰っていいですか?


 一方的な狩りの時間はすぐに終わりました。

 だって人間がスーパーボールみたいに跳ねてるんだもん。

 あんなん見せられたらそりゃ逃げますわ。


 それにエルフさんたちは人間さんと比べて腕力も持久力も控えめです。

 長い間戦えません。

 弓矢も効果が無い以上、精霊魔法を使わなければこんなもんですね。

 散り散りに逃げていくエルフの軍隊。

 こうして我々は正規軍に勝利を収めたのです。


 大変遺憾ながら、この日の戦いは歴史に残り、後に圧倒的戦力差を跳ね返した知将とか軍師がうんたら戦略がどうとかとバカな学者が偉そうに語りますが真相はただ単に圧倒的腕力による蹂躙です。

 脳みそなんて一グラムも使ってません。



 どいつもこいつもみんな死ねばいいのにまる

 『アレックス王の遠征日記より』

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