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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第4章 エルフの帝国編 ~おうちに帰るまでが革命です~
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第4章 プロローグ アレックスちゃん。今、敵国にいるの。

 みなさんこんにちは。

 砂漠に咲く一輪のバラ。

 正当派ヒロイン! アレックスちゃんです。


 アレックスちゃん。今、敵国にいるの。

 アレックスちゃん。今、駅にいるの。

 アレックスちゃん。今、あなたの後ろに(略)


 えー。

 絶対神を「いしのなかにいる」にしたナックルにかけておいた転移魔法はすで切れてました。

 UFOもうんともすんとも言いません。

 というか、あのUFOなんですが……科学の産物でした。

 全部機械なのよ!

 文系で科学をつまみ食いしただけの私には修理できません。

 わかってはいたけどドワーフさんって凄かったのね……


 で、困った私は……


「ヒャッハー!」


「まったく世紀末は最高だぜえ!」


「暴力暴力暴力ウウウウウゥッ!」


 ハーフエルフさんたちとヒャッハーしてます……

 私が微妙な顔をしていると声がかけられました。


「覇王様ァ! 代官所に火いつけてやりましたぜ!!!」


 元ハーフエルフの集落の長です。

 ちなみに今はスペードと名乗ってます。

 もちろんモヒカンにフェイスペインティングです。


 あー。代官所がパチパチ燃えてます。

 あー。両手に斧を持ったハーフエルフさんたちがヒャッハーしてます。

 インプさんも光線銃片手に暴れ回ってます。


 どうしてこうなった?

 私のショタハーレムはどこに行った?

 なんでみんなマッチョになった?

 話は一ヶ月ほど前に遡ります。



「他の集落はありますか?」


 私は最優先の疑問を直接ぶつけてみました。

 いえね。

 他に集落があれば助けを求めればいいですし、なければ砂漠の資源は使い放題です。

 集落を維持できるということは水源は確保してるでしょう。

 木材もどこからか手に入れるアテがあるに違いありません。

 問題はその品目と入手方法なのです。

 収拾か交易なのか、それとも略奪なのか……

 それによって生存戦略が変ってしまうのです。


「……あるが……代官の作った関所のせいで交流はほとんどないな」


 なるほど。

 隔離政策ですか。

 マジで殺しにかかってますね。


 ということは生活の基本は狩猟や採集ですね。

 だとしたら今すぐは死にませんね。

 よし!


「食料や水は?」


「ああ、川が近くにあるのでな」


 川? 砂漠のど真ん中に?

 地下水脈でしょうか?

 それとも本当に川でしょうか?


「連れて行ってください。お力になれるかも!」


 そういう私を見て長は鼻で笑いました。

 態度悪いですね。

 顔覚えましたからねー。

 あとで泣かしてやります。


「まあいいだろう。我らも食料をとってこなければならないからな。邪魔はするなよ!」


 人に指を指す長。

 すっげーバカにされてます。

 人に指をさしちゃダメだって教わりませんでしたかー?

 指を掴んで逆に曲げてやりたい!

 クッソ! ここがセシルだったらボコボコにしてやんのに!

 ……ついでに押さえつけてセクハラも。


 私は怒りをため込みながらも笑顔でついて行くことにしました。



 川です。

 濁ってます。

 どぶ川です。

 ゴミが浮いています。


「えー……この水飲んだら死にませんか?」


「ああ死ぬ」


 死ぬんか。


 ……ほんとうにギリギリの生活ですね。

 川の側にはまばらに雑草が生えてました。

 でも食べられる野草が見つかりません。

 ハマダイコンすらありません。

 まあ、季節が合いませんけどね。

 

 その他の植物も私の知らないものだらけです。

 うーん困った。


「また生えたか……」


 長が何かを引っこ抜いています。

 それは小さな木。

 なんでしょうねえ?

 ……ってこれアレやん!


「っちょ! なんでそんな貴重なもの引っこ抜いてるんですか!」


 それは伝説の……防御の実。……の苗木でした。

 飲むと体が物理的に強くなるアレです。

 あまりにも貴重すぎて勇者も窃盗や強盗してまで手に入れる一品です。

 私もほとんど見たことがありません。

 なぜならステータスアップの実は国や有力者によって情報も含めて厳重に管理されているからです。

 魔王の私ですら視察で何度か見たことがある程度です。


 私は慌てて止めます。

 ですが返ってきたのは私の予想もしない答えでした。


「この木があると作物が枯れ、あたり一面に植物が生えなくなるのだ! そのくせ放っておくといくらでも増えるのだ!」


 え?

 貴重な木じゃねえの?

 うん? 待てコラ。

 いますげえ嫌な予感がしたぞ!


「も、もしかして集落の家って……(震え声)」


「この木だが?」


 頭がずきずきと痛みます。

 持病の偏頭痛です。

 泣きそうです!


 なにこいつら!

 防御の木で家作ってたの!

 なに駆除しまくってんの?

 バカなの!


「えっと……じゃあ果実は?」


「果実? この木に実などならんぞ?」


 ……あっれー?

 おかしいなあ?

 うーん……この木に関しては誰も教えてくれなかったんだよねえ。

 おかしいなあ。


 ん? あたり一面に植物が生えなくなる?


 ……もしかして。



 えー。結論から入ります。


 防御の木を適当に川に投げ込んだら次の日にはドブ川が清流になっていた。


 みなさん何を言ってるかわからねえと思います。

 私も未だになんでやねんと思ってます。

 これはあくまで推測ですが、どうやら木の根っこに正体不明の浄化作用を持つ菌がいるようです。

 で、これがもの凄い勢いで水中のヘドロなどを分解。

 一晩にして川が清流に……

 周りに植物が生えなくなるのも栄養を吸いすぎるためでしょう。

 ついでに砂漠化もこれの仕業のような気がします。


 ねえよ!

 あり得ねえよ!


 私は地団駄を踏みます。

 それは仕方ありません。

 なにせ1000年も部下に騙され続けていたのです。

 防御の実はレアでも何でもないのです。

 都市部に植えればいくらでも生産可能だったのです。


 防御の木があれば水源の汚染問題解決したやん!

 下水処理場の誘致問題楽に解決したやん!

 六価クロムで汚染されまくった土地の問題も解決したやん! ……これは違うか。

 この木だけで何回殺されずにすんだか!


 きいいいいいいいいッ! 悔しいいいいいいいッ!


 私は人を騙すのは大好きですが騙されるのは大嫌いなのです!


 うきいいいいいいいいッ!


 で、相変わらずこんなことをやってたら事件が起こったんですね。

 まあ、なんといいますか。

 いろんな世界で伝承されている泉に斧を放り込む話と言いますか……



 川に中学生の男子狙いの新人女性教師のようなエロい格好をした痴女がいました。

 うらやま死ね!

 透けるような透明感のある青い肌。

 物憂げな表情。

 足場もなく川に立っているその姿。

 女性から溢れ出る大量のマナ。

 んー。これ知ってる。


 精霊さんですね。

 水属性のウィンデーネさんです。

 なぜかいつも人間さんに味方して魔族をいじめる悪いヤツです。


 いつもエロい格好でショタに取り入っているのです!

 気に入りません!

 気に入りませんよ!


 私はウィンデーネさんに近寄ります。

 グーで殴るためにです。

 ところがいきなり私の頭の中に直接声が響きました。

 どうやら先制攻撃はできないようです。

 私はエレガントな淑女ですからね!

(っち! 話し合いか!)


「うぬが我が川を蘇らせし勇者か……さあ褒美を取らせようぞ!」


 そんなウィンデーネさんに私は精霊語で話しかけます。

 ふふふん。

 魔王はこういうとこ器用なのですよ!


「いらねっす」


「っちょ! 話も聞かずに断る……ってなんで人間が精霊語を……ってなんだハイエルフか……」


「ハイエルフ? 誰が?」


「うぬじゃ」


「私の父親は人間ですよ。ハーフエルフじゃなくて?」


「ハーフ? いや、うぬはどこをどう見てもハイエルフじゃが?」


 おかしいです。

 うちのパパはドワーフに間違われるレベルのチビデブ短足糖尿です。

 永遠のショタであるハイエルフには見えません。

 っていうかハイエルフが助走をつけて殴りに来るレベルです。

 困惑する私にウィンデーネさんは続けます。


「うむ、じゃあ契約じゃな」


「契約? めんどいからやだ」


「お前、先ほどからなんなのだ! 男の子なら精霊と契約して魔王退治とかに憧れるだろ!」


 あー。『うぬ』から『お前』になりました。


「えー。あれでも魔王さんって苦労してるんですよ。政治グループのメンツを潰さないようにどの順番で会食するかとか、大臣が不正を働いたら誰を悪者にしてトカゲの尻尾切りするとか、圧力団体のロビー活動をどうあしらうかとか」


 ※全て実体験です


「お、おう……じゃない! お前エルフなんだからとにかく契約せよ! わらわの好きなものを当てるのだ! 見事当てれば契約完了じゃ!」


 問答無用です。

 酷い話もあったものです。

 しかもクイズなん?

 まあいいや。

 契約したからって命まで取られないでしょうしね。

 なあに金や命を取られそうになったら影で始末すれば良いだけの話です。

 うふふふふ。

 ということで私は仕方なく契約をすることにしました。

 さてクイズの答えです。

 そんなものはわかっています。

 わかりきっています。

 大きく一言元気よく。



「半ズボン!」



 ウィンデーネさんが親指を立て言いました。


「ショタ!」


 契約完了です。

 もう語り合うことはありませんでした……

 二人の淑女が砂漠で出会ってしまったのです。


 ……ってなんで私にまとわりついてるの!?


「ショター……ショター! (訳:ショタエルフはぁはぁ)」


 ってまとわりつくな!

 ……なんで私に……ってそうか!

 あー! 忘れてた! 今の私はショタなのか!


 ふふふふふふ。


「なんで私の周りは女ばかりなんじゃああああああああああッ!」


 私の心の叫びが砂漠にこだましました。

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