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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第3章 産業革命編 頑張ったけど街が消滅しちゃった……もう自重しないもんね
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第3章 最終話 ハーフエルフとチュパカブラ

 私の周りを取り囲む美ショタの群れ。

 ハーフエルフさんです。

 ハーフエルフ。

 人間とエルフの混血種です。

 たまーにオークとの混血種もいます。

 あ! 今、エロいこと考えたでしょ!

 ねえエロいこと! エロ……こほんッ! 話が脱線しました。


 ハーフエルフさんの解説ですね。

 ダークエルフを含むエルフより魔力も弓も音楽も不得意で寿命も短い。

 人間よりは腕力が低く、非生産的で不器用。

 その代わりエルフよりは腕力が強く、人間より寿命は長い。

 エルフよりは器用なので鍛冶屋などの生産職も可能……ですがホルローたちダークエルフと同じように論理的思考が苦手なためエンジニアには向いてません。

 音楽や弓は人間より上手ですがエルフと比べると残念です。

 属性も無属性のため空軍勤務も無理です。

 メリットよりデメリットが多い……いわゆる劣等種です。


 シンセサイザーの時代が来るとテクニック偏重のエルフよりも熱い名曲を作り出すんですけどねー。

 わざと壊れたシンセサイザー拾ってきたり、音質の悪いレコーディングスタジオで曲を作ったりとかですね。

 とある世界ではブラックメタルと言ったらハーフエルフさんでしたね(遠い目)


 ……話を元に戻しましょう。ってどこまで戻ればいいんだっけ?


 えーっと、私はこれから訪れる酒池肉林……大いなる未来に思いをはせました。

 まあ簡単に言うとエロい妄想なんですけどね。

 だって美形なんだもん。

 あれですよ!

 エルフの正統派の美形も確かに好みです。

 ですが……鬱屈した感情を持て余したどこか影のある美形……もまた好みなのです。

 じゅるり。


 うっしゃああああああああッ!

 正統派ヒロインの私の時代キタアアアアアアァッ!

 私は我を忘れてました。

 この千年間こんなに物事がうまくいったことはないのです!

 今までは将軍の家に生まれたと思ったら幼児のうちに辺境に追放とか、王女さま(中身は魔王)と強制婚姻とか、覚えてないほど昔に絶対神を殺したせいで嫌がらせを受けるとかの難易度高すぎる人生ばかりだったのです!

 おそらく難易度インフェルノな我が人生の中でこれは唯一のボーナスステージ!

 今度こそ邪魔するヤツは皆殺しなのです!


 私の目が怪しく光りました。

 ふしゅるーふしゅるー。


 そんな私を見てハーフエルフさんがビクッとしました。

 怖くないですよー。

 かみつきませんよー。

 セクハラするだけですよー。


 ですが私のエロ妄想はいきなり終わるのです。


「チュパカブラが出たぞー!」


 え? UMA? ツチノコ?

 私がキョトンとしていると弓を構えたハーフエルフさんが怒鳴りました。


「貴様らが呼んだのかぁッ!」


「ちゃ、ちゃいます!」


 なぜかエセ芸人になりながら必死に弁解します。

 まだ何もしてません。

 インプの皆さんの方を向くと彼らも「なんもしてません」とアピール。

 まあでもインプさんはアウトですが、私はどこをどう見ても幼児です。

 誤解が解けなければインプさんに誘拐されたことにしてインプさんに罪をなすりつければ大丈夫でしょう。

 そのためにも一応状況確認です。


「なにがあったんですか!」


「化け物だ! 帝国は砂漠に追放になった我らをなぶり殺しにするつもりなのだ!!!」


 その時、私の脳裏にエロへと続くシナリオが降臨しました。

 私は怪しく目を光らせながらインプさん達を見ます。

 目に恐怖の色がありありと浮かぶインプさんたち。


「妖精さん。正義のために戦ってくれますよね? (訳:死にたくなければ戦え)」


「イーッ! イーッ! イーッ! (訳:っちょ! 旦那! 旦那に殴られた傷がまだ治ってないんすよ!)」


 イーイーともの凄い勢いで抗議するインプさん。

 どうやら私はニュアンスで彼らの言葉がわかるようです。

 なぜだ? ……うんまあいいや。 (思考停止)

 そのままあくまでエレガントに笑顔のままで会話を続けます。


「妖精さんは優しいから戦ってくれますよね? (訳:誰が旦那だ! 逃げたら殺すからな♪)」


「イーッ! イーッ! (訳:ひでえコイツ! 絶対神より鬼だ!)」


「るせぇッ! お前ら今すぐ殺されないだけありがたいと思えゴラァッ!」


 おっと最後だけ本音が声に出てしまいました。

 エレガント。エレガント。


 恐怖のあまり涙目になるインプさんたち。

 そんな顔は芸人として失格ですよ。

 そこは「押すなよ押すなようわあああぁッ!」でしょ!

 まったく! リアクション芸の一つもこなさないなんて最近の魔族はなってませんね!


「さて行きますよ!」


 私はインプさんを引き連れて出陣しました。

 有害鳥獣を狩るために……なんかかっこわる……。



 柵で覆われた村の中に入ると緑色の猿のような怪物が村人を襲ってました。

 見たことのない生き物です。

 これがチュパカブラ!

 ショタがピンチです!

 私はすぐに駆け寄り拳を振り上げます。

 魔族さんだったら嫌なので手加減パーンチ!


 ……あっれー?


 えーっとグロにつきモザイクが必要になりました。

 インプさんもどん引きです。

 

「い、イーッ!イーッ! (訳:だ、旦那! いきなり撲殺とかなにやってんすか!)」


「い、いやね! 手加減したのよ! 超手加減したのよ!」


 私が必死になって言い訳していると叫び声が聞こえました。


「後ろ! 後ろ!」


 え?

 リアクション芸?

 このさなかに?

 三千世界の輝く伝説の芸人デ・ガーワでも難しくね?


「イーッ! イーッ! イーッ! イーッ! (訳:旦那! 違う死んでない! 後ろ! 後ろ!)」


 ほあた!

 後ろから来た何者かに裏拳をめり込ませます。

 ペアレントコントロールでモザイクをかけないとダメな光景が広がってます。

 その時私は気づきました。

 肉片が動いてる?

 そのまま、うにょうにょと肉片が移動していきます。

 そして肉片と肉片が繋がってチュパカブラになっていきます。


 あっれー?

 これ知ってる。

 大きなお友達が大好きな服を溶かすえっちいモンスターさん。

 スライムじゃね?

 

 私はこのとき何となく犯人がわかったような気がしました。

 インプさんを乗せた空飛ぶ円盤。

 スライムさんで無理矢理チュパカブラ。

 宇宙人大好き。

 SEはテルミン。

 この安っぽい発想は絶対神の関係者に違いありません。


 困りました。殴っても倒せません。

 知性もないので交渉で仲間に引き込むのも無理です。

 魔法も使えませんので無理矢理使役もできません。

 うーん困った。

 周りを良く見るとハーフエルフさんは弓とか剣で戦ってます。

 倒せるわけないじゃん!

 殴っても飛び散るだけだし。


 私はその辺にいたハーフエルフに聞きました。


「スライムは火に弱いんです! 火はありますか? 火炎魔法でもいいから!」


「火起こしなら家に……うわああああッ!」


 うっわーハーフエルフさんがスライムに襲われた!

 とりあえず殴ります。

 魔王パーンチ寸止め!

 やっぱり吹き飛びますがダメージは極小のようです。

 とは言っても仕方ないのでとりあえず対処療法として殴っていると、だんだんとスライムの個体数は減り肉片が大きく集まっていくようになってきました。

 二匹が一匹に。十匹が一匹に。

 あー。こりゃ巨大化だわ。

 巨大怪獣だわ。


 んで大きくなったスライムに飲み込まれて消化エンドと……


 うわわわわ。

 火火火火火火!

 そうだ火起こし!

 って時間かかるわ!

 ああー! ここはセシルじゃないのか!

 えっとライターライター。

 ライターどこだ!

 私は体をまさぐります。

 あー! そうだ!

 「火遊びするから没収です」ってゼスさんにとられたんだった!

 どんだけ信用ないんだよ私!

 んが! あ、そうだ! マナ手榴弾! って威力デカ過ぎるわ!


 周りも確認しているとアレが目に入りました。

 インプさんが腰からぶら下げた光線銃。


「それだああああああッ!」


「イーッ? (旦那なんすか?)」


「光線銃です!」


「イーッ! (そういやそんなもんあったな!)」


「貸せコラ!」


 エレガントを遙か後方に置いてきぼりにして、私はインプさんの光線銃をひったくります。


「おどりゃ玉とったらー!」


 まるで東方に伝わるヤクザのように光線銃を構える私。


「イーッ! (あ、それだめええええええええッ!)」


 え?

 ぴしゅんっ。


 光線が伸びていきました。

 スライムを素通りして小屋へ直撃。

 あ、あれ誰かの家ですよね?

 そういや私、銃撃ったことないや。

 そんなのが撃っても当たるわけないじゃん!


 って思ったら……

 

 ちゅどーんッ!


 火の手が上がりました。

 普通に火属性の爆発呪文です。


「ちょっと待てコラ。これ相手が緑色の骸骨になって死ぬ光線だよな?」


「イーッ! イーッ! イーッ! (絶対神の野郎はそういうとこが手抜きなんすよ!)」


「あー……なるほど」


 残念な神は何をさせても二流のようです。

 まあいいや。

 とりあえずこれで行くぞ!


「皆さん! スライム殺ちゃってください! (丸投げ)」


「イーッ! (まかせろ!)」


 そう言いながらインプさんたちは嬉しそうにハーフエルフの村を蹂躙しました。

 ゲラゲラ笑いながら。

 ぴしゅん。どがん。ぼぼぼぼぼ。です。

 火が出てますねー。(遠い目)

 スライムさんは溶けたマシュマロみたいになってますねー(棒)

 ハーフエルフのみなさん泣いてますねー(絶望)

 奇跡的に人的被害ゼロ。

 でも村壊滅。

 エルフさんの家だった小屋は丸焼けだったのです。


「なんてことをしてくれたんだ!」


 今、私たちは正座(罪人座り)させられて怒られています。

 私たちの目の前には貧弱な体をしたエルフさんたち。

 その中に村長と思わしき茶髪ロングの超絶美形がいます。

 片眼を髪で隠した影のある20代くらいの若い男です。

 とは言っても200年ほど生きるハーフエルフは見た目で年を判断できませんけどね。

 それにしても騎士団のマッチョ軍団もいいですがやはり細身ですね。

 実にエロいです。じゅるり。


 あ、そうそうなんで助けたのに怒られたんだよって思うでしょ?

 仕方ないと言えば仕方ないのかもしれません。

 家が焼けたのです。

 お外もある程度安全な現代とは違い、有害鳥獣が普通に歩いているこの時代では家がなくなると即死亡フラグが立ちます。

 かなりの死活問題なのです。


 っつーかなんでハーフエルフが砂漠に住んでるのよ?!

 普通、エルフに差別されながら森にいるか、自由が欲しくて人間の街に暮らしてますよね?

 とりあえず聞いてみましょう。


「あのーすいません。あなた方……ハーフエルフですよね? なんで砂漠にいるんですか」


 その一言で場が凍り付きました。

 あ、あれ? 地雷踏んだ?


「貴様らがそれを言うか! 我らは貴様ら帝国民に森を追い出されたのだ!」


 胸倉を捕まれます。

 指関節を極めてから放り投げてもいいのですが、ここは我慢しましょう。

 その代わりに私は必死に説明します。


「うちらは王国民です! 事故で飛ばされたんですよ! つかね、ここどこなんですか?!」


 私の必死な様子にハーフエルフさんも嫌な顔をしながらも手を離してくれました。


「帝国の辺境だ!」


 ん? 帝国?

 あ!

 王様がくれるって言った新しい領地!

 確か接してるのはなんとか帝国。

 んで北側に砂漠が広がってるはず!

 私の新しい領地は南側……。

 つうことは……ここは仲の悪い隣国の領土内!!!

 ……捕まったら運が良くて人質、悪いと拷問後に殺されます。


 これが普通の国家だったら人質にするでしょう。

 ですが帝国は民度が低いので有名!

 投降したら拷問されて死亡。

 マップ兵器として殺戮に走っても人海戦術で捕まって拷問されて殺される。

 暗い未来しか見えません。


 しかも実家の王国サイドもあてにできません。

 軍隊なんか派遣したら全面戦争になりますので救助は来ないでしょう。

 たとえ圧倒的な戦力差があったとしても戦争は金がかかるのです。

 私の命を切り捨ててでも回避する程にです。

 特に私は見殺しの確率が高いです。

 ……だって私の場合、空飛ぶ円盤と相打ちになって死んだことにした方が綺麗に終わるんだもん。

 悲劇の英雄として銅像だけ建てられる未来が目に浮かぶようです。

 ……つまり私は自力で戻らないといけないのです。


 私の死亡フラグのランプが爛々と妖しく輝きました。


 第三章 完

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