殴り込み
「竜殺しのアレックス、深夜のお泊りデート」
「竜殺しのアレックス、遠足にバナナはおやつに入らない派か?」
「竜殺しのアレックス、宇宙人と密談か?(お約束)」
「これが竜殺しのアレックスの陰謀だ!」
「アレックスちゃん『ぼくまだこどもだからわかんにゃい』(※メリケンサックをはめた写真)」
王スポの紙面はどれも私のニュースで持ちきりです。
どれもこれもくだらない。
まさにジャンクニュースです。
ラジマゲドンも朝から私の悪口を全力で垂れ流してます。
もちろん全てでたらめです。
そんな刺激的なニュースの片隅で他の新聞は放火事件を取り上げていました。
私はそれを見て心の底から大きく笑うのです。
つか最後、ジェイコブのおっさんだな!
イヤミで返しやがった!
どうやっても言いなりにはにはならないようですね。
ええ。私は、まだ新興メディアでしかない新聞の権威全てを壊してやることにしたのです。
青筋立ててぐぬぬと悔しがっているバカどもの顔が目に浮かぶようです。
真正面から戦うわけねえだろ!
ばーか! ばーか! ばーか!
「さーて、めんどくせえから目的済ませたらとっとと帰りますかねー」
私はパジャマのズボンに手を突っ込んで尻をかきながら微妙な勝利宣言をしました。
バカニュースでこの世を埋め尽くしてやる。
便所の落書きレベルというのを世間様の常識にしてやる!
……というわけです。
そのうちトドメでインターネット開通させますし。
【ハッピーバースデー私】祝アレックスちゃん30歳【取り返しのつかない年齢】
なんか脳裏に浮かびました。
このスレッドが数々の罵倒とともに『アーッ!!!』で埋まる姿が目に浮かぶようです。
……悲しくなんてありませんからね!!!
これが各新聞社への嫌がらせです。
次は記者個人への報復です。
我が印刷所のヘビーユーザーである腐り神な創作活動をされているお嬢様がた。
この王都にはすでに数十人~数百人ほどいると思われます。
その中の人気作家数名に新聞記者同士のカップリングでの同人誌の配布を頼んであります。
もちろんハードかつ鬼畜……もちろん総受けです。
じゅるり。
愚かな人間どもよ!
民主主義を経験した歴戦の魔王に泥仕合で勝てるとでも思ったのか!
乙女達のケダモノのような視線を一身に受けるが良い!
ぬははははははッ!
※最低の発言です。
というわけでマスコミは放っておきます。
一番良い時期を体験することなくあっさり死にますので。
さて放火犯です。
犯人は勇者だというのが(さんざん酷い目に遭った経験から)わかっています。
よしッ!
もういいや乗り込んじゃえ。
そう決心すると私はモヒカンのヅラをスポッと被りました。
◇
「つーわけで乗り込むっス!」
私はシルヴィアに元気よく言いました。
「うむ了解した。それにしてもやっとだな」
あっれー?
「えっと? 当初は穏便に陰謀を繰り広げてハメ殺しにするつもりだったんですけど……」
「短気なお前にそれができるとでも思ってるのか?」
酷い言いっぷりです。
ですが確かに短気は否定できませんので華麗にスルーします。
「……じゃあとりあえず守備兵団の皆さんとか呼んでください」
「もう呼んだぞ」
「えー。マナ榴弾砲も呼んで欲しかったんですけど……」
「呼んだ。ついでにダークエルフとメドゥーサも呼んだ。ホルローたちが乗ってくる」
「っちょ! アンタ! あれは試作機なんですよ!」
ダークエルフとメドゥーサ。
セシルの秘密兵器です。
時代を数百年先取りしてみました。
通常兵器としては、おそらくこの世界最強でしょう。
それにしても恐ろしく手際が良いようです。
「えーっと。いつから用意してたんで?」
「最初からだ。お前が殴り込みをかけないわけがないだろう」
失礼な!
まるで私が考え無しの乱暴者のような言いぐさです。
今までだってちゃんと頭脳プレーで乗り切ってるんですよ!
たとえばバイロン → 腕力で退治
たとえばウェルギリウス → 腕力で(略)
内政 → 運と腕力で(略)
王都との外交 → 家柄と有能な部下と腕力で……
あっれー?
「もしかして私、防御を固めて物理で殴ってるだけなんじゃ……(震え声)」
「気づくの遅いのだ!!!」
こんなバカなやりとりをしてる私はまだ気づいていなかったのです。
石を溶かす火炎魔法。
その物理的な側面に。
このとき私はタカをくくっていたのです。
科学を知っているのは自分たちだけに違いない、どうせ相手は何もできないだろうと。
ええ、完全に調子に乗っていたのです。
◇
私とシルヴィア、それにレイ先輩、運転手のサブちゃんはわざと悪趣味にしたオープンカーでとある建物へ向かっていました。
それは海賊党本部です。
まだ世界では議会政党というものが広く認知されていません。
ですので表向きは議会議員の社交クラブという事になっています。
もちろんアポもなにも取っていません。
なぜこんな派手なことをやらかしたのか?
それは単純です。
ただの嫌がらせです。
それにもう仲良くする余地はないと言うことを相手にわからせる必要もあったのです。
はっきり言って仲良くするメリットより、仲良くするために必要なリソースが上回っています。
もはや下出に出てやるほどの価値は彼らにはないのです。
ええ潰します。
そんなことを考えていると海賊党本部前につきました。
野次馬がどんどん集まってきています。
そして建物から男が出てくるのが見えました。
それは一般的な市民の服装ですが、どことなく戦闘的な雰囲気の男でした
ここまで派手にやればやればアポを取っていなくても出迎えてくれているようです。
「竜殺しのアレックス様の家中のものとお見受けする! ここは神聖な議会議員の社交クラブであります。議員資格のない方の入場をお断り……」
「知るか!」
私は男を素通りして建物の前に立ち、ドアを思いっきり蹴飛ばしました。
吹き飛ぶドア。
それを見た男が顔を真っ赤にして殴りかかって来ました。
どうやら頭は弱いようです。
私は、そんな男の拳をかわして服を掴み頭の上に掲げて一気に建物中へ投げ込みました。
建物の中から木製の何かが破壊される音が響いてきました。
「拡声器!」
私がそう言うとシルヴィアが私に拡声器を私に寄越します。
「あーあーあー。こちら竜殺しのアレックスだ! 大人しく放火犯を指し出せ! 証拠は挙がってる!」
嘘プー。
証拠なんてありません。
でも可能なのはこいつらだけなのです。
そしてこいつらがいる限り私ろ領地の幸せはやってこないのです。
もうこいつらと刺し違える覚悟はできているのです。
魔王扱いだろうがなんだろうが知るかボケ!
私がそう言うと建物から満面の笑顔をしたオッサンが揉み手をしながら出てきました。
「まあまあ、落ち着いて。アレックス様は何かをかんちがグフッ!」
私は問答無用でオッサンの腹に拳をねじ込みました。
オッサンは腹を抱えて悶絶してます。
「あー。お前らー。相手がどれだけ怒ってるかとかわかれなー。嘗めた真似したらこいつと同じ目に遭うからなー」
私がオッサンを指さしながらそう言うと、五人の集団が出てきました。
勇者レンジャーですね。(今考えた)
イラッとするキラキラオーラを纏っています。
「竜殺しのアレックスよ……尋常に勝負しろ。我らに勝てたら犯人を差し出してやる」
「あんたらどうせ変身するんでしょ? 皆さんに迷惑かけないように町を出ますよ」
私はレイ先輩を見ます。
レイ先輩は頷き返事を返しました。
これはここを見張れという命令です。
いくら勇者とは言っても約束を守るとは限らないのですから。




