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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第3章 産業革命編 頑張ったけど街が消滅しちゃった……もう自重しないもんね
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その聖女凶暴につき (被害者 → 絶対神)

 次の日。


 二日目の予定は全てキャンセル。

 シルヴィアと会食とかの母校アカデミーへの視察とかの猿芝居でしたのでキャンセルは別にかまいません。

 実家へ帰るのもキャンセルに。

 まあいいです。

 5歳で追い出された家に帰ってもなんの感慨も無いわけですし。


 ですが、全て事情聴取になったのはムカつきました。

 王都の衛兵もマスコミも庶民の皆さんすらも、我々が拉致された領民を奪還後、焼き払ったと思っています。

 決して違法ではありませんけど。

 残念なことに身分制が残るこの世界では、貴族は庶民を殺したとしても、たいした罪には問われないのです。

(もしネオセシルでやったら生まれて来たことを後悔させてやります)

 しかも今回は領民の奪還という大義名分もついています。

 ちゃんと避難も救助も治療もしてますのであとは補償だけすれば、なんの御咎めもないのです。

 今回の被害は周辺も武器屋だったので補償交渉もスムーズでした。

 ついに竜殺しが仕返しにやってきたぞ。

 ……との事です。完全に諦めてました。

 かわいそうだったので多めにお見舞金出しときました。


 実際は消火と救助しかしてないんですど……


 これだけの大事件。

 今回の件もすぐにマスコミによって記事にされたわけです。

 領民奪還作戦。

 竜殺しを本気で怒らせた悪党の最後。

 そういうノリです。

 

 私が領民を大事にしているのはマスコミのせいで王都にも知れ渡っています。

 さらには治療行為で王都の民を救った過去もあり、「ああ武器屋がよほど酷いことをしたんだろう」とみなさん納得されたのです。


 なんもしてないのに……


 そしてまた癒しの聖女の伝説が語り継がれるわけです。

 目撃されまくりましたから。

 私はこれには完全にノーコメント。

 あ、それ俺っす。

 あははははは。

 誰が信じると?


 それはそれとして、おかしいのは妙にマスコミが私に肩入れしてます。

 上げて落とすのがマスコミです。

 一度上げたということは必ず落とすネタを持っているはずです。

 それにしても敵を容赦なく焼き払うというのは格好の落とすネタの筈なんですが……

 なんでしょうね?

 この圧倒的な不安感は……


 うん。考えるのやめよう。


 マスコミは火の無いところに煙を立てるのが仕事ですからね。

 ねー。

 


 三日目です。

 今日は多神教本部に殴りこみます。

 

 るーんたったーるんたったー


 スキップしながらシルヴィアと一緒に連中の用意した馬車に乗り込み多神教神殿に向かいます。

 今回は二人だけで乗り込みます。

 これは公然の秘密である会合というヤツでして、バスは目立つからダメとかめんどいのです。

 護衛が暴れるのが嫌なだけでしょうけど。

 アイツらわかってませんね。

 私の護衛は私から人間を守ってるだけなのに。


 さて今日のために用意した道具を確認しましょう。


・チェーンソー

・釘を打ち込んだヒャッハーバット

・肩パット

・モヒカンのヅラ

・刃がギザギザでナックル部分がトゲトゲなナイフ

・皮の手袋

・マナ手榴弾

・バナナ

・銅貨30枚以内のお菓子(バナナはお菓子に入りません)


 うん。よしッ!


「よしッ! じゃねえのだ!」


「ぬう! 貴様エスパーか!」


「その肩パットとモヒカンのヅラはなんなのだ!」


「ヒャッハーです!」


「うがああああッ! 何でお前は他の手段取れるときでも物理攻撃に走るのだ!」


 もちろんキレたからです。

 昔の事を蒸し返しやがって!

 殴らないと気がすみません。


 私は危険色的な感じで目を赤く光らせるのです。


 ええ。敵は全部破滅させます。

 生まれてきたことを後悔させてやります!!!

 


 馬車でやって来たのは多神教の総本山。

 ええ。山です。山岳信仰ですね。

 馬車用の道があるので歩かなくてすみました。

 いくつも鳥居が並んでいます。

 鳥居は神の通る場所なので馬車はここまで。

 私は馬車を降りて一言。


「大佐か……こんな組織をつくったのは」


 キリッ!


「申し訳ありません。婚約者がバカで」


 なぜかシルヴィアがキャラを作って案内の人に謝ってます。


「そいつはもう殺げぶらッ!」


「やかましいわ!」


 顔面にめり込むのはシルヴィアの拳。

 血……私の血……

 いでえぇよぉおおおおおおッ!!!なのです!


 せっかく今は悪魔が微笑む時代なのに。


 鳥居をくぐって行くと木造の神殿が見えて来ました。

 シルヴィアの好きそうなデザインです。

 中は土足厳禁のようです。

 適当に靴を脱いで入ると畳張りの部屋にオッサンが正座してました。

 偉い人のようです。


「おい。アレックス。アイツ強いぞ。」


「でしょうね……」


 正座で座っているのに隙がありません。

 膝に重心をかけた正座。

 後ろ足も組んでません。

 正しい座法です。

 つまり攻撃体勢にもすぐに移れる姿勢だということです。


「アレックス様。ようこそおいでくださいました。私が大神官、高倉永英(たかくらながひで)と申します。娘のアデルがご迷惑をおかけしたようで真に申し訳ありません」


 深々と礼をする男。

 これが今のラスボスです。


「で? 私になにをさせたいのですか?」


 私は胡坐をかき態度悪く言い放ちます。

 オッサンの圧力にモヒカンのカツラ出し損なったのは秘密です。

 肩パッドもトゲトゲナイフも。

 

「全ての世界を救っていただきたいのです。……まずはこれをご覧ください」


 高倉さんがそう言うと女性が何かを持って横に立っていました。

 いきなり何も無い空間から現れたのです。

 ゴーレム。

 いえ違いますね。

 精霊魔術です。

 式神ってヤツです。

 その証拠に女性の顔が認識(・・)できません。

 表情も何もかもがわからないのです。

 女性が三方(神への供物を載せる台)に載せているのは折れた棒。

 これはなんでしょう?


「御手に取ってください」


 私が棒を握ると……またもやフラッシュバックが始まりました。



「ほう……羽虫が……せいぜい麻呂を楽しませるがよい」


 それはラスボス戦でした。

 絶対神。

 普通の人間位のサイズというかオッサン。

 直衣を着て烏帽子を頭に載せ、お歯黒、白塗り、口紅、殿上眉。

 それは紛れもなく麻呂でした。

 絶対神(ラスボス)が麻呂なのは特に理由もなくイラッとします。

 クラウディアと一緒に殴りたいです。

 でも何もできません。

 これは過去の事なのです。 


 クラウディアは剣を抜きました。

 黄金に輝くオリハルコン製の剣です。


「おどりゃ(タマ)取ったらあああああッ!」


 さすが私です。

 台詞が凶暴すぎて女とは思えません。

 片手剣を斜め上に持ったまま全速力駆けてその勢いのまま斬り(スラッシュ)

 首狩り族のような野蛮な戦い方です。

 でもアホみたいに強いです。

 剣先が見えません。

 斜めのスラッシュから胴切り、そしてそのまま腕を回し頭に剣を振り下ろします。

 全ての攻撃を麻呂はかわそうともせず棒立ちしていました。

 普通でしたら、肩口を斬られ、腹を切られ、頭をカチ割られているはずです。


 ところが……麻呂は無傷でした。


 危険を感じバックステップで離脱。

 良い判断です。


「フフフ。オリハルコンでは麻呂を傷つけることなどできぬ」


 クラウディアはオリハルコンの片手剣を捨て、魔法を詠唱します。

 召喚魔術!

 するとその手には漆黒の両手剣が現れました。


「光属性がダメなら闇属性はどうですか!」


 闇属性の剣に持ち替え気合。


「いやあああああああああッ!」


 そのまま剣を斜め上方に持ち上げ、全速力で駆け出します。

 そして全く減速せずに麻呂に一直線に向かう。

 麻呂が間合いに入った瞬間、膝を落とし剣を全力で叩きつけます。


 あ、あれは侍の中でも一番おっかない集団が使う剣術です。

 銃でも止まらないんですよ。連中。

 かなり前の前世でも、ガトリング砲に集団で突っ込んで来た挙句、言葉通り仲間の屍を踏み超えて突撃、ガトリング砲を奪取されたという苦い経験があります。

(ちなみにそのとき私はあまりの迫力に魔法の詠唱忘れて逃げ回りました。しょぼーん)

 

 上に剣を持ち上げては叩きつける。ただそれだけ。

 だけどそれを激しい勢いで繰り返す。

 クラウディアは何度も何度も何度も剣を叩きつけます。

 あの勢いですとグレーターデーモンですら頭潰されますね。

 私がガクブルしながら見てると、パリーンッ!と音がして魔剣が折れました。

 魔剣が折れるってクラウディア本当に人間ですか!

 オーガですよね!

 絶対オーガですよね!


「あははははは! 効かぬ! 効かぬぞぉッ! 麻呂にはありとあらゆる攻撃が効かぬのだ!」


 麻呂は拳を振り上げるとクラウディアを払うように横から殴りつけました。

 クラウディアは吹き飛ばされ壁に突っ込みます。

 クラウディアが叩きつけられた壁は粉々に崩れ、塵が煙のようにが待ってました。

 そこから瓦礫を蹴飛ばして出てくるのはクラウディア。

 無傷です。


 いやちょっと待て。

 今、気功使ってないよな。

 サイボーグかこの女!


「人間を舐めるな!」


 いやお前、絶対に人間じゃねえよな!

 よく見ると絶対神(麻呂)も軽く引いてます。


「お、お前、麻呂は今殺すつもりで殴ったんでおじゃるよ! なんで無傷でおじゃるか!?」


「戦いで散っていった強敵(とも)の思いが私を強くする!」


 嘘です。絶対に嘘です。

 本人もわからないから適当なこと言ったに違いありません!

 なぜか断言できます。

 

「絶対神! 世界のために貴方には死んでもらいます!」


 かっこいいセリフですが、先ほどからのクラウディアの化け物っぷりの方が頭を離れません。

 台無しです。


 今度は素手でした。

 麻呂はそれをまた棒立ちで受け止めます。

 避けようともしません。

 恐らく心を折りたいのでしょう。

 麻呂の顔面を殴ります。


「今度は素手か。どんな武術家の攻撃も効かぬでおじゃる! おじゃるぞ! ぬははははは!」


 鼻っ柱に拳が直撃したにも関わらず高笑い。

 全ての攻撃を無効化するとは厄介な。

 ですがクラウディアには作戦がありました。

 とは言ってもそれはタックル。

 麻呂の足を取りテイクダウン。

 そのまま馬乗りに。

 グラウンドパンチ……いえ馬乗りになっての肘打ち狙いでしょうか?


「あひゃひゃひゃひゃ! 効かぬ! 効かぬでおじゃる! 何をやっても無駄でおじゃる!」


「これでもですか?」


 そう言うとクラウディアは呪文を唱えます。

 またもや武器召喚です。

 その手に現れた武器は……


 ひのきの棒でした。

 

 クラウディアはいきなり小突きます。

 馬乗りになりながら、両手でひのきの棒を握り、力いっぱい振り下ろします。

 血しぶきが飛び、麻呂の顔にモザイクがかかりました。

 残酷すぎてレーティングに引っかかったようです。


「な、なじぇだ……麻呂はなぜ傷を負っている? 麻呂はじぇったいしん……」


「貴方に殺害されたパーティの記録を集めたところ、皆さん最強装備でした。なのに一方的に負けた。そこで私は魔力付加武器の魔法式を分解解析リバースエンジニアリングしたんですね。総ざらいで。原初の部分まで解析できる魔法使いの友人がいなければ無理でしたよ!」


「な、な、な……」


「すると全ての武器の宣言文に『ただし絶対神には無効』っていう文字列があることを見つけたんですよ! 巧妙に暗号化されて!」


「や、やめろ!!!」


「で、通常武器にもなぜかこの宣言文があることを見つけたんですね! 拳にすら『ただし絶対神には無効』がありました」


「そ、それは、に、人間ごときが触れてはならない領域でおじゃる!」


「でね。それが書いてないアイテムを探したんですよ! うふふふふふ」


 今確信しました。

 こいつ私の前世です。

 そしてクラウディアは懐からスプーンを取り出しました。


「でもやはりHPが高すぎて致命傷にはならないようですね♪ でも心はどうでしょう!」


 一方的な虐殺が始まりました。

 あああああああッ!

 す、スプーンをそんな斬新な使い方するなんて!

 あ、今度は子供のおもちゃをそんなところに!

 が、画鋲レボリューション!

 ひいいいいいッ! 見てるほうが痛い!


「あぎゃあああああああッ!」


「刺さらないものが刺さったほうが痛いのねー♪」


 麻呂は完全にモザイクに覆われています。

 残酷すぎてお子様に見せられない。

 よくわかります。


「これは貴様の手下(魔王)に殺された両親の分!」


 ゴスッ!おのれッ!ゲシ!す、スプーン!グサッドゴッ!バキ!パキン!


「これは村の人たちの分!」


 ゴリゴリゴリッ!ブシューッ!や、やめッ!パーンッ!ドゴォドゴォ!


「これはガラハッドの国の人たちの分!」


 ぐっちゃー!


 はじめは抵抗し悲鳴を上げていた麻呂も今では無言でビクンッビクンッと痙攣するだけになりました。

 アレは完全に心が折れましたね。

 私もひのきの棒で無理矢理口をこじ開けて、無理矢理画鋲を突っ込んだ所から見るのをやめました。

 マフィアでもやりません。

 クラウディアはそれはそれは楽しそうに笑ってました。

 よほど腹に据えかねていたのでしょう。

 やはり私です。


「ま、麻呂を(モゴ)倒しても(モゴ)第二第三の絶対神が……(げふッ!モゴモゴ)」


 拷問が続く中、搾り出すように麻呂が言いました。

 恐らく断末魔的な感じです。


「絶対神が何人もいてたまるか!!!」


 ゴスッ!ゴリィッ!

 ですよねー。

 ひのきの棒を大きく振りかぶって叩きつけました。

 頭骸骨が割れた音のような何かが聞こえましたが、精神衛生上聞こえないふりをします。


 ああ、これは死んだな。

 私はそう思いました。

 ですがその瞬間、麻呂から黒いものが噴出したのです。

 黒いものに覆われるクラウディア。

 すると声が聞こえて来ました。


「神を殺した咎人に呪いを! お前は108回殺されるまで孤独を味わうがよい!」


 な、な、な、な!

 なんじゃそりゃあああああああ!

 私は叫びました。

 そして私の絶叫が辺りを包んだ瞬間、それは起こりました。

 後ろから何かが押し付けられる感触がしました。

 それは案外ドラマチックではない、いつもの感覚。


 クラウディアの胸から剣が突き出ていました。

 

 後ろから剣で刺されたのです。


「ね、姉さん……僕の頭の中で『108回死ぬまで愛するものを殺し続ける』って……ボクじゃない! か、勝手に手が……ね、姉さん! 姉さん! うわああああああッ!」


 刺した犯人を確認しようとすると、犯人の顔の位置にクマさんマークで『見せられないよ!」の文字が浮かびました。

 そして熊さんはどんどん増殖、画面を埋め尽くして行きます。

 

 な、なにこれ?

 絶対神の一撃で死なないのに剣で死ぬのかよ!


 そうツッコんだ瞬間、傍観者である私の意識は貧血を起こしたときのように一気にブラックアウトしていきました。

 

「おんどりゃああああああああッ!!!」


 目覚めた私の第一声はそれでした。

 私の非モテの理由。

 それは個人の努力の問題ではなかったのです。

 そう言えばシルヴィアは!?

 横を見ます。

 寝てます。

 ふう……良か


「にゃああああああああッ!」


 起き上がりました。

 私と同じように過去を見てたようです。


「108回殺されるまで誰にも愛されないって! 何じゃわりゃあああッ!」


 それは呪いでした。

 うん。

 同じ呪いを持ってるものどうし傷を舐めあいましょうかね。

 ところがシルヴィアの反応は私の予想の斜め上に飛んで行きました。


「あ、アレックス!たいへんなのだ! 我の呪い……は置いといて、エリザベスの呪いが危険なデンジャーなのだ!」


 それを聞いて私は確信しました。

 クラウディアを殺した犯人はエリザベスの前世だったのです。

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