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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第3章 産業革命編 頑張ったけど街が消滅しちゃった……もう自重しないもんね
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ペンは剣よりも強し(捏造報道的に)

 あはははははははは!

 殺す! ぶっ殺す!

 絶対に泣かす!

 あははははははははは!

 ……にしても先ほどからこちらに喧嘩売ってるのはどこの新聞社でしょう?


「えー。すいません。どこのどちら様でしょうか?できれば名乗っていただきたいのですが」


 メンチきりながら丁寧に尋ねました。

 あー。今すぐ脳出血起こして倒れればいいのに。


「これは失礼。王都日報のジェイコブです。で、質問の続きですが貴方はどのように文字も読めない蛮族を支配されたのですか?」


 だらしのない無精ひげ。

 短いチュニックに腰より上まであるズボン。

 靴は皮の

 まあ、ややだらしないですが普通の格好です。

 Tシャツとデニムパンツがデフォのネオセシルが異常なのでしょう。

 流行らせたの私ですけどね。


「まず、文字も読めないというのは事実ではありません。彼女らの殆どが文字の読み書きができます。もちろん多少の訛りはありますがね。あなたがたの王都下町弁と同じ程度ですよ」


 ジェイコブのイントネーションには王都のダウンタウンで用いられている方言独特の訛りがありました。

 私はそこを突きました。

 もちろん挑発です。


「さすが貴族様、訛りまで気にするようで。庶民を小馬鹿にしていらっしゃる」


 ここネオセシルでは、庶民も貴族も同じものを食べ生活水準もほとんど変わらず、実質的に身分制度は機能してません。

 私の体制に正面から反対するような偉そうな地方貴族様は一日16時間以上強制労働に励んでいます。

 庶民を小馬鹿にする人間などどこにもいません。

 私はジェイコブを小馬鹿にしたのです。


「いえいえ。うちの領民を文字も読めない蛮族などと仰られたのでへそを曲げただけですよ。ほら、私子供ですから」


 どうやら私はニヤニヤしているようです。

 マスコミに効く殺虫剤ってなんでしたっけ?

 ポロニウムでしたっけ?

 私たちは顔を見合わせ笑いました。

 あははははははははははははは!

 一瞬の間。

 その一瞬で私たちは怒りを溜めました。

 そして喧嘩が始まります。


「べらんめえ! てめえ人が死んだのになんだその態度(ていど)は!」


「だーれーもーしーんーでーまーせーんー! こっちはちゃんと調べてるんですよ! いい加減なこと言うなバーカバーカ!」


 あらかじめ避難のプランを練っていたので誰も死んでいません。

 災害も戦争も投資もヤバければ即撤退。

 逃げ足の速さが一番重要です。

 私は災害を舐めてるタイプの政治家じゃないんですよ!


「なんだこの馬鹿野郎! ドラゴンにアンデッドの襲撃で人が死んでないだと! あるわけねえだろ!」


「あはははははは! バーカバーカ! とっとと避難させてるんで誰も死んでませんよーだ!」


「どう考えても無理だっつってんだよ! 20年前の王都へのドラゴン襲撃では1万人以上が死んでるんだ!」


「100万人都市と人口3000人の田舎じゃ人口密度や条件がまるで違いますよーだ!」


「いちいち揚げ足取るんじゃねえ! このクソガキ! ドラゴンってのはそれだけ絶望的な状況なんだよ!」


「大いなる神による奇跡なのです(ニコッ♪)」


 げひゃひゃひゃひゃひゃ!

 一神教はなんでもかんでも神のせいにすれば丸く収まるんですよ!

 一切信じてませんけどねー!

 うけけけけけけけけ!

 死ね! 死んでしまえ! 神と一緒に死んでしまえ!


「神の奇跡だと……じゃあ、次もあるんじゃねえの! なあ! このクズ領主が! 領民死んでから泣くなよ!」


 バキィッ!っという破壊音が響き渡りました。

 ええ。皆さんの予想通りです。

 これは私が机を殴り壊した音です。


「俺の舎弟(領民)に手を出したヤツは地の果てまで追いかけて泣かす! ドラゴンだろうがアンデッドだろうが構わねえ! ドラゴンは骨まで加工させてもらったし、アンデッドは未来永劫この土地の資源を生み出すようにしてやった! 敵に回ったやつは生まれてきたことを後悔させてやる! テメエ等もおなッモゴッ!」


 いきなり後ろから口を塞がれロープでぐるぐる巻きにされ拉致されました。

 ええ。シルヴィアたちです。

 人間じゃないくらいにキレた私を見て、続行不可能と判断、強制退場と。

 まあそういうことです。


「えー。領主アレックス様は持病の癇癪で続行不可能となりました。アレックス様に代わり商工会会長のローレンスが質疑応答を……」




 今話題の英雄『竜殺しのアレックス』

「俺の舎弟(領民)に手を出したヤツは地の果てまで追いかけて泣かす!」


 それが次の日の朝刊の一面でした。

 内容は圧力をかけたかのように不自然なまでに好意的。

 公式に否定したはずの竜殺しの伝説もアンデッド討伐も事実として書かれています。


 きいいいいいいいいッ!

 ビリビリビリビリビリビリッ!


 枕を引きちぎる私。


 うがあああああああああああああッ!


 枕の中身をぶちまけて投げる。


 はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……


 王都日報 朝刊 一面


 竜の討伐を成しえた英雄(ドラゴンスレイヤー)アレックス。

 若干5歳にして国内最強の侍を剣技で圧倒。

 天神梵天流印可。

 アカデミーにて麻黄湯を開発。

 王都で起こった疫病で大勢の命を救う。

 アカデミーから学士号を授与。

 この功績によりセシル領領主に任命され、王女シルヴィアと婚約。 

 この婚約により近く王位継承権第三位に。

 ドラゴン討伐、アンデッド討伐を経て街の復興に全力で取り組んでいる。


 このどこまでも胡散臭い経歴。

 高位貴族の箔付けだろうと思うだろう。 

 本誌記者もこの経歴を当初は信じていなかった。

 だがどうだ!

 彼は本物だった。

 見たこともないような道具が溢れ、ネズミ一匹いない清潔な街。

 音楽が常に身近にあるという文化的先進性。

 領主の館は庶民に開放されており、領主やその部下たちは常に庶民目線で熱く未来を語る。

 かつての侵略者を許し、ともに生きることを選ぶなど領民の民度は極めて高い。

 この街には希望が溢れている。

 まるで御伽噺に出てくるような理想郷ではないか!

 これだけをもってしても領主は極めて優秀であることが伺えるだろう。


 そして彼の本当の顔は国内最強の武闘派貴族である。

 彼は我々を前にして堂々と宣言した。


「俺の舎弟(領民)に手を出したヤツは地の果てまで追いかけて泣かす!」


 貴族の在り様が問われる昨今、貴族の根源的存在意義を堂々と語り、そして実行できる貴族がどれほどいるだろうか。

 まさに将軍家という武門の家が生んだ最高傑作、傑物と言えるだろう。


(挿絵には超絶美形の若者の肖像画。背景は薔薇)



 うがああああああああああああッ!



 また嘘だー!

 嘘が嘘を呼んでる!

 嘘が仲間になりたそうにこちらを見てる!

 田舎に追放されたのはレンフォール司教を脅迫したからなの!

 

 クッソー! 完全に騙された!


 ……わざとだ。

 わざと挑発したんだ!

 私の本音を引き出そうとしたんだ。

 恥ずかしい。

 もう街を歩けない!


 なんて悔しい思いをしたのなんて、これからの苦労と比べたら屁でもなかったのです。



「アレックス様が仰った通り、やはりゴミが漁られてました」


 それは完全にストーカーでした。

 やはりそうきましたか。

 ゴミを漁るのは個人情報を得るのに最適な手です。

 何を食べ、どこに行き、どう生活してるのか。

 それを全て丸裸にすることができます。

 もちろん現代という時代では最低の行為です。

 

「それとアレックス様のベッドでアレックス様のズボンを頭から被って寝てた侍女のエリザベスを捕縛しました」


 別のストーカーもいました。


「そちらはスルーで……」


 スルーするしかありません。

 それ以外のコマンドがないのです。


 さて、初期の芸能マスコミはゴミを漁ることから始まったと言われています。

 喰いかけの食べ物を拾って「女優の~さんが食べた品。安くするあるよ」と売ってたそうです。

 私の前世でも、往年の名女優が食べかけで捨てたリンゴを樹脂で固めた品がオークションに出品されて、庶民の年収2年分くらいで落札されたことがあります。

 あと首紅拭いたハンカチに年収の半分とか。

 うん。きもいですね。 

 きんもー☆(言ってみたかっただけ)


 ちなみに私の別の前世の議員時代に議員宿舎に下着ドロボーが入ったんですが、なぜか私の下着だけ華麗にスルーされました。

 その伝説は下院の任期6年ほど語られ続けたとさ。……おしまい。

 そういう外道は永遠に地獄を彷徨えばいいと思います。(血涙)

 

 話はそれましたが、エリザベスじゃないほうのストーカーの正体はマスコミです。

 まだマスコミが生まれて間もないため規制する法律が存在しないのです。

 それにしても順番がメチャクチャです。

 あることないこと悪評を書く方が先だと思ったのですがね。


 うーん。

 プライバシーのない生活には慣れているのでゴミ漁られるのは特に困らないのですが、今回は隠し事が多いですからね。

 勇者とか多神教とか。

 困りましたね……

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