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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第3章 産業革命編 頑張ったけど街が消滅しちゃった……もう自重しないもんね
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マスコミ出現!

「アレックス様。申し訳ありません」


 そう言いながら土下座するゼスさん。

 突然の出来事に私は固まります。


「妻アデルの不始末の責任は夫である我が命を持って」


「わわわわわわわーッ! ストップ! ストップ! ストップ!」


「ですが!」


「ダメ! ゼスさんにしかできない仕事がたくさんあるでしょ! うちは人材足りないの!」


「騎士の名誉を……」


「るせー! はい! 何もなかった! 何もありませんでした!」


「……」


「叔父上。今は、あえてそう呼ばせてもらいます。処罰は私の権限の範囲です。叔父上は私を説得し納得させるだけの材料をお持ちですか?」


「だがアレックス。それではシメシがつかん」


「じゃあ、交換条件です。ゼスさんのお持ちの全ての情報の開示を要求します。それにはゼスさん自身の情報も含まれます。考えておいてください!」


 私はそう通告すると踵を返して去っていきました。

 少し早足だったのは、要するに逃げたのです。

 アデルさんやゼスさんに処分を下すくらいなら全て隠蔽したかったのです。

 今のところ事態を把握しているのも、被害を受けたもの私だけなのですから。


 同時に情報も欲しいという思いがあるのも事実です。

 私はすでにゼスさんが自分の叔父にあたる存在なのは、よく理解しています。

 ですが、ゼスさんは非嫡出の身分です。

 大神官の娘という政治的に重要な立場の女性と婚姻をさせる理由がありません。

 多神教が政治に不介入を宣言していても、その組織力は無視できないのです。

 仮にこの婚姻が政治的な理由によるものであれば、ゼスさんは地方の守備兵団の団長などという中途半端なポストで飼い殺しにする意味がありません。

 せっかくのカードをドブに捨てるような行為です。

 通常でしたら扱いに困る人間は、相続人がおらず宙に浮いた領地に適当な爵位をつけて、領主あたりにしていつでも使えるようにキープするはずです。

 この私のように。

 断言しますが、これは誰も死なないし傷つかないベストプランです。

 軍隊を率いて中央に戦いを挑むような愚かな選択さえしなければ、生命も名誉も守られますし、領地経営を真面目にしていれば、いずれは中央に返り咲くこともできます。

 私の場合はいきなり毒殺されるようなことはありませんし、イレギュラーはあれど領地に関しては基本的には好き放題できます。

 暴君として領地に君臨することも、淫蕩にふけることも可能です。

 具体的には作ろうとさえ思えばショタハーレムも設置可能です。


 ですが騎士は違います。

 手元に置いて常に使うカードです。

 あくまで善意で私に使わせるために置いたカードなのか?

 それとも多神教がらみで私に押し付けたカードなのか?

 その見極めが重要なのです。


 そして、知りたいという興味のほかににも、家族の事ですからね……なるべくなら解決してやりたいとも思うのです。


 ……ああそうか。そうだったのか。


 今の私には家族がいるんですね。

 自分で言っておきながら今気づきました。

 何千年もおひとり様だったので、家族なんて考えたこともありませんでした。

 だから放置プレーがデフォの実の父親と離されても悲しくなることもなかったわけです。

 母親は父親よりもレアキャラですし。

 私にとってはゼスさんやシルヴィア、それに舎弟どもが家族なんですね。

 この魔王アレックスにまだ何かしてやろうという過保護な連中ですけどね。



 私がゼスさんのところから逃げ帰ると領主の館はジジババに占領されてました。

 一見すると死に掛けの干物ですが、このジジババどもは商工会の幹部です。

 奥にローレンスさんもいるようです。


「オジジにオババの皆さんどうしたんですか?」


 私が声を掛けるとジジババが一斉にこちらを向きました。


「アレックスちゃんたいへんじゃ! キシャと名乗る連中が大量にやってきたのじゃ!」


 キシャ? 汽車? 喜捨? 記者!!!

 あーマスコミだ!

 そうか! ラジオも生まれたし、印刷技術もアイデア自体はハンコだから所期のなら真似できる。

 だからニュースで商売しようという動きが生まれるのは自然な成り行きです!


 さて、この世界でのニュースというのはどうやって伝えるのでしょうか?

 それはタウンクライヤーという役職にあります。

 タウンクライヤーはニュースなどを大声で伝えるのが仕事です。

 どの世界でもそうですが、識字率が低い国では、行政の公示を口頭で行う必要があります。

 だって立て札かけても読めないんだもん。

 かといって一軒一軒廻っていくのは非常にめんどくさいのです。

 ですのでタウンクライヤーに街中で大声で叫んでもらいます。

 所得税が60パーセントになったよー(願望)とか。

 それだけですと仕事が少ないので、ほとんどの街や村では災害情報とか犯罪情報とか新しい店の開店情報とかも彼らに公示してもらってます。

 うちの領地はラジオ放送をやっているので、タウンクライヤーはいません。

 あ、大丈夫です。

 彼らの雇用は守っていますよ。

 タウンクライヤーさんは現在、公営放送でDJやってますので。

 で、マスコミの件なのですが、メディアの発達した我が領内では、今のところニュースなどはセシル行政局の公的なアナウンスを流してもらってます。

 新聞もレポーターもいません。

 というか、マスコミはめんどいのでわざと作らなかったんです。

 だって、嘘ばっか書くんだもん。

 売れるためなら手段選ばないんですよ! 彼ら!

 都合悪くなると黙るし。

 ペンは剣よりも強しなんてよく言いますが、ペン使って好き放題暴力振るってるだけですからね。

 あのアホども。


 私は心の底から辟易としながら、深いため息をつきました。

 あー!やだわー。

 椎茸よりやだわー。

 嫌いなのわかってて細かく刻んでミートローフに入れようとするコックよりやだわー。


「仕方ありません。会いましょう。会場セッティングしてください。ローレンスさんも来て下さい」


「え? 私ですか!」


「もちろん。上手く立ち回ればセシルの特産品を一気に売り出すチャンスですよ……」


 指示を出しながら私はもう一度深くため息を着きました。



「これより『竜殺し』アレックス様の会見を開催いたします」


 ダークエルフの司会者が開催をアナウンスしました。

 裏から記者たちを見るとメモに一生懸命書き込んでます。

 写真はまだ作ってないので絵を描いているのでしょう。

 ジャーナリズムは写真とともに一気に発展しました。

 それを考えると、写真機を作りたくなくなりました。

 死んでも作らねえからな!

 私は笑顔で心の中だけで毒を吐きながらローレンスさんとともに会見場に向かいました。


「|商工会会長《商人ギルド・ギルドマスター》のローレンスです。我らの敬愛する領主様をご紹介いたします」


 私は手を振り、張り付いた笑顔を振りまきます。

 あーみんな今すぐ食中毒起こして泡吹いて倒れないかなー。


「ふざけるな! なんだそのガキは! 竜殺しのアレックスを出せ!」


 ローレンスさんの紹介で私を認識した記者が怒鳴りました。

 あーやっぱりそう来たか。

 そりゃ信じられませんよねー。

 こんなクソガキが武闘派なんて。


「アレックス本人です。竜殺しのほうがデマです」

 

 ザワザワとドヨメキが起こりました。

 失礼な物言いをしたことは瞬時に忘れたようです。

 帰り道で転んで足の骨折ればいいのに。


「補足致しますと、竜を倒したのは誉れ高い我が領地の守備兵団と私の私兵(警察)です」


 ギリギリ嘘ではありません。

 トドメを刺したのは警察を含む部下たちです。


「アンデッドの大群に襲われたとの情報がありますが?」


「はい。事実です。もちろんそれも守備兵団と私兵の活躍により沈静化しました。まさかこんなガキが最前線で活躍するわけないでしょ」


 大嘘です。

 兵を置き去りにして、がっつり最前線でヒャッハーしてました。


「では領主は何もしてないと?」


 喧嘩売ってんのかこの野郎。


「はい。住民の避難などの指示は出しましたが、それも優秀な現場指揮官の功績あっての事です」


「街が滅んでしまったと聞きましたが?」


「残念ながら旧市街はアンデッドによる瘴気で住めなくなりました。現在の街は草原に急ピッチで作ったものです。中心部以外は私に忠誠を誓った遊牧民の協力で仮設住宅のテントを用意しています」


「遊牧民が忠誠の件は聞き及んでおります。どうやったのですか? あの胡散臭い演劇と同じではないでしょう?」


 鬼の首を取ったように人を小バカにしたような笑みを浮かべる記者。

 完全に舐めてやがります。

 それにしても……そうきたか!

 他民族を恭順させるって確かに胡散臭いですね。


「全くの偶然です。ドラゴンに襲われていたので保護しました」


「その程度で薄汚い蛮族を従えられたと? それができたら国境沿いの領主全てが楽でしょうな?!」


 ああ?

 今なんて言ったこの野郎!

 人の舎弟(ダークエルフ)を蛮族だと?

 あははははははははははは!

 ぶっ殺すぞこの蛆虫ども。



~そのころ楽屋裏~


 「アレックス様が記者にメンチきりました!」


 「うむ。機嫌が悪くなった。今日の夕食はキノコ料理は禁止なのだ!」


 「キノコ禁止入りましたーッ!」


 アレックスの機嫌を観測しているのはシルヴィアとアレックスの舎弟たち。

 彼らがなぜアレックスの機嫌を観測しなければならないのか?

 それにはアレックスの悪癖について述べなければならない。


 アレックスに致命的な悪癖がいくつかある。

 その中でも最も悪質なものが次の二つである。


 一つは、喧嘩っ早い。

 非常に気性が荒いのだ。

 頭脳戦ができるのに最後は暴力に頼るのは、このせいである。

 今は奇跡的に悪いほうには転んでいないが、利用されるのは時間の問題である。


 もう一つは、ストレスが溜まるとその発散のために異常なイタズラをするのだ。

 つい最近のBL小説騒動もこのイタズラの範疇である。

 また、トラックや魔法機器を作ったのも、本音ではただのイタズラだ。

 少なからず世界を変えてしまったこれらの発明は、ただのイタズラから生まれたのである。

 アレックスのタチの悪さは、誰も損をしないイタズラで世界を混乱に陥らせることにある。

 セシルの街の壊滅にしても、被災してほとんどの住民が家を失ったに関わらず、住民の不満は皆無である。


 なぜなら、新しい街であるネオセシルの一般人の生活水準は現在の状態ですら王侯貴族を上回っている。

 公衆衛生、医療、雇用、生活の全てが高水準なのである。

 それが全て一個人のストレス発散の暴走行為の賜物なのだ。

 そして、このアレックスの暴走を目の当たりにした彼らは、全員一致でアレックスのストレスを管理する方向で合意した。


 彼らは恐ろしくなったのだ。

 薄笑いを浮かべならがドワーフの工房に入り浸り、見たこともない道具をひたすら作り続けるこの幼児の事が。

 そして彼の作る不思議な道具によってこの世界にもたらされた変革が。

 

 アレックスから世界を守らなければならない!


『アレックス取扱説明書』


・ストレスを与えない

・追い込まない

・料理にキノコを入れない


※ストレスが一定以上溜まると発明をします

※発明品は世界をメチャクチャにします

※発明後は革命が起こりやすくなりますので注意

※被害は主に支配者層に集中します

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