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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第3章 産業革命編 頑張ったけど街が消滅しちゃった……もう自重しないもんね
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クラウディア

「えっと……あの……その……脱ぐのだ!」


 ろり太郎がテンパって脱ぎ芸に走ろうとしました。

 私は楽屋裏から瞬時に加速。

 スパコーンッ!

 ステージ上のシルヴィアの顔面をハリセンで引っぱたきます。


「にゃー!!!」


「脱ぐなー!」


「わはははははは!」


 客席から笑いが起こりました。

 よし、『とりあえずツッコミ入れて誤魔化すでござるの術』成功しました。

 姫様にこんなことさせていいのか?

 イインデスヨー!

 幸いこの世界には写真はないので、今のところ姫様がろり太郎であることはばれていませんし。

 

 私は速攻で裏に移動、すぐに音楽を鳴らすように指示します。

 ド演歌が流れ、やることを思い出したシルヴィアがマイク片手に歌い始めます。

 うん。なんとかなった。

 私は額に浮かんだ冷や汗を拭くのです。


 ステージが始まりました。

 とは言っても単にステージだけでは面白くありません。

 主に私と領地の懐的に。

 ですので客層をリサーチ。

 幸いにも優秀な警察の働きにより、すぐに客層の把握ができました。

 まあ予想はしてたんですが、どいつもこいつも金持ちです。

 そりゃこの世界で旅行できるのですから金持ちですわね。

 ですので、魔道具の展示即売会を間に挟みます。


 彼らは、すでにラジオの恩恵に与っている身です。

 そこに更に生活の質を上げてくれる夢のマシーンが登場したらどうなるでしょう?

 ぬはははははははは!

 欲しいよな!欲しいよな!

 買え!買うのだ!

 領地の皆さんにはすでに無料で配った我がマスィーン!

 高い金を出して買うのだ!

 欲しければ我が魔王軍に金を落とすがいい!

 金はいい。

 金は素晴らしい!

 もっと豊かにもっと便利に!

 ぬはははははははは!


 私がステージ裏でヘブン状態になっているとサビ部分の音楽が聞こえて来ました。

 

「非モテの怒りをぉ 非モテの妬みをぉ 江戸のかぴばらー」


 何度聞いても酷い歌です。

 

「キャーッ!シルヴィアちゃんかわいいー!」


 女性の黄色い声援が聞こえました。

 それは邪悪な視線を向ける大きいお友達ではなく、娘の学芸会を見に来たお母さんのような……

 私はわからないようにそうっと楽屋から顔出し、その声の主を見ました。

 男性がにやけツラを晒しそうになる、ほわほわーっとした雰囲気の女性。

 アデルさんでした。


 私はアデルさんを確認後、楽屋裏から客席に出て、ゴキブリのように音もさせずアデルさんの背後にまわりました。

 ええ。団長捕獲しないと。

 皆さんも首にリボンつけた団長のシックスパックの腹筋見たいですよね?

 見たいはず。

 ねえ見ようよ。

 ……見ないと殴る。


 というわけでアデルさんを尋問しなくてはなりません。


「アデルさーん。団長どこですかー?」


 私は優しく圧力をかけながら声を掛けます。


「あ、クラウディアちゃん!探してたんだ!」


 クラウディア。

 エリザベスが口走る電波ワード。

 今では誰も気にしてないほど定着しなかったのです。

 なぜ、わざわざその名前で私を呼んだのでしょう?


「あ、あのアデルさん。エリザベスじゃあるまいしクラウディアはやめてください。腹筋……じゃなくて団長どこですか?」


「ゼスちゃんのことは置いといてー、今日はクラウディアちゃんにお話があるの。ちょっと来てくれるかな」


 そう言ってアデルさんは私を問答無用で引っ張っていきました。

 そこはステージがある集会場の裏でした。


「さてここに御座いますはこの会場にも設置されているエアコン!これさえあれば夏の暑さも冬の寒さも……」


 理事長の声が外にまで漏れ聞こえてきました。

 エアコンの設置に関しては、ドワーフさんたちの研修を受けた優秀な施工業者が承ります。

 買ったはいいけど使えないなどという穴は残しません。

 私は邪悪な笑みを浮かべました。


「アレックスちゃん。もうッ。また悪い顔してる!」


 アデルさんに注意されました。

 フフフフフフフフ。

 やめませんよーだ。


「で、お話ってなんですか?」


「今日、アレックスちゃんにはクラウディアちゃんの記憶を取り戻して欲しいの」


 そう言うとアデルさんは私の額に指を伸ばす。

 殺気が全くない。

 なぜか防御などできませんでした。

 そしてそうっと私の額に指が触れた瞬間……私の意識は黒い意識の水底へと落ちて行きました。


「アレックスちゃんどいて殿下殺せない♪」


「エ・リ・ザ・ベ・ス・ちゃーんッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハーイッ!」


 ピコピコとしたノリのいい音楽と歓声が遠くで聞こえていました。



 それは真っ黒なワイヤフレームでもなくポリゴンでもない薄暗い通路。

 CGでもないのにどこか作り物のような壁。

 そこはダンジョンのようでした。  


「クラウディア大丈夫?」


 私の目の前には15歳くらいの異常なほどの美形がいました。

 異常に綺麗な顔なのに、女性か男性かすらわからないその姿。

 15歳程度に見えますが、実は私と同じ5歳児。

 というか、エリザベスの野郎です(動揺)


「少し目眩がしただけです。それに私が、この程度じゃ死なないのは知ってるでしょ?」


 素敵なイヤミを言おうとしたのになぜか口が勝手に言葉を紡ぎました。

 あっれー?

 口調自体は同じなのですけどね。


「ガラハッドとライアンどこ行ったのかなあ?」


 ガラハッド?

 シルヴィアの事ですね。

 どういう事でしょう?

 それにしても……


「……来た」


「敵か」


 私たちは、先ほどから凄まじいほどの殺気を浴びせられていました。

 そして殺気の主が姿を現しました。

 人間型。

 女性なのか男性なのかすらわからないその姿。

 背中から生えた翼。

 その姿は美しいと言えるでしょう。

 でもそれを見た瞬間、私の中に嫌悪感が沸き起こります。

 それはいわゆる天使。

 魔王をやっている私の敵です。

 だがおかしいのです。

 私はあまり戦ったことがないのです。

 というか一神教の連中が大好きなテンプレ天使なんてレア中のレアです。

 それなのに何十もの天使に囲まれていました。

 天然記念物に囲まれまくり。

 なのに全然嬉しくありません。


「神に逆らう愚か者が!貴様らの魂とその存在ごと抹殺してげぶらッ!」


 それはメイスでした。

 気がついたら私は天使の話など全く聞かずに、嫌悪感に導かれるままに天使を殴打してました。

 なにこの圧倒的な凶暴性。

 一撃でマンガのように放物線を描いて吹っ飛んでいく天使。

 つええええええッ!


「貴様!それが神官のやるこ、たわばッ!」


 口を開いた天使に問答無用で襲い掛かる。

 またマンガのように吹っ飛んでいく天使。

 体の使い方から推測すると全て気功ではなく、純粋な腕力です。

 天使を殴ったメイスは根元からへし折れてました。

 うん。化け物ですね。

 仲間の無残な姿を見て無駄口をやめた天使たち。

 剣を抜き集団で襲い掛かってきました。

 

 ……それは一方的な蹂躙でした。


 天使たちによる蹂躙?

 いいえ。

 (クラウディア)による天使たちへのです。

 頭突き。目潰し。何でもアリアリ。

 無駄に大振りなモーション、連打よりも一撃の威力を重んじる、その動き。

 それは戦士や格闘家のそれではありません。

 いわゆるチンピラやヤンキーが使うヒャッハー喧嘩殺法。

 でもなぜか、マップ兵器レベルの出力を誇る私でも全く勝てる気がしません。

 その証拠にエリザベス?も自分に被害が及ばないように遠くから見守ってます。


「相変わらずクラウディアの天使嫌いは凄まじいね。彼らも被害者なのに……」


 全てが終わると遠くからエリザベスが声をかけて来ました。

 私の周りには何十もの頭が天井に突き刺さった天使、顔面が壁にめり込んだ天使、フロアの床に(略)が無残な姿で放置されていました。

 この女……オニですね。

 手加減とか一切なしです。

 戦い方が美しくない!

 私が心底あきれていると、またもや口が勝手にしゃべり出します。


「人が世界を救おうとしているのに邪魔して……ああいう自分でものを考えられない奴らが一番嫌いなんですよ」


 世界を救う?

 何でしょう?この中二病的台詞は……


「神の言葉を信じるのが神官だというのに。でもそこが素敵だクラウディア。愛してる」


「殴りますよ」


「うふふふ。今から絶対神を倒そうというのに殴られる程度を恐れはしないさ」


 私は顔が真っ赤になる思いでした。

 何このやり取り!

 絶対神。パーフェクトすぎる中二病ワード。

 だって世界は多神教。

 間違っているのは一神教主義者。

 私は転生の神のパンツズリおろそうとしたんですよ!

 だから絶対神なんて存在しないのです。

 存在しないものと戦うなんて、何たる中二病!

 恥ずかしいからもうやーめーてー!


「ええ、神から世界を解放しなければなりませんね」


 またもや中二病!

 布団をかぶって足をばたばたさせる程度ではすみそうもないほどの破壊力!

 やーめーてー!マジでやーめーてー!

 たーすーけーてー!


 私がかなり真剣に居もしない絶対神にこの苦行を終わらせてくれと祈る寸前、またもや私の意識はブラックアウトしました。



 空が見えました。

 草のにおいが鼻をくすぐり、遠くで鳥のさえずりが聞こえていました。

 目の前には私の顔をのぞき込むアデルさんの顔。

 頭にはアデルさんの膝がありました。

 

 集会場からはまだエリザベスの歌声が聞こえています。

 私が悪夢を見ている間に二回目のステージでもやってくれてたのでしょうか?


「私は何時間ほど寝てたんですか?」


「ほんの数秒でございます。クラウディア様」


 アデルさんがそう言いました。

 数秒!脳の記憶領域の最適化にしては短すぎる。

 それになぜ敬語?


「何で敬語なんですか?あとあのゴリラ女と一緒にするのはやめてください!」


「やはり記憶が戻られたようですね」


「ただ単に変な映像をみただけです!」


 私は必死になって否定します。

 嫌だったのです。

 愛と正義と友情と勝利のために修行してというノリが……

 私が不貞腐れているとアデルさんが口を開きました。


「私めは多神教会大神官が娘でございます。このたび大神官から神殺しの聖女クラウディア様、剣王ガラハッド様、魔剣士エドワード様にお仕えせよと命を受けました」

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