きのことおいなりさん。そして汚いケツ。
次の日は完全武装の兵隊さんでした。
昨日より偉い人たちのようです。
ご挨拶をしなければなりません。
「クンッ」
中指と人差し指を上方に突き出しました。
それと同時に自分の周辺をオーラで爆発させる。
ズァオ!という音とともに飲み込まれていく鎧の人たち。
これが『ごあいさつ』です。
なんとかゲイザーとか真空なんとか拳はどうなったって?
なんか気分じゃないのです。
その技明らかにオーバーキルだろ!って、もちろん加減はしますよ。
素敵エロフラグはどこに転がっているものかわかりません。
無駄な恨みを買う必要はないでしょう。
唯……一つ残念だったのは……鍛えられえた裸体を拝もうと鎧と服を壊したのですが……萌えません。
確かに私のストライクゾーンは美少年です。
ですが、鍛えられた肉体を持つ屈強な兵士にセクハラしたい。
そんな日もあるのです!
魚が好きでも毎日魚ばかりでは飽きるのです。
無性に肉が食いたくなるときもあるのです!
そして昔なら肉体が蒸発してしまうほどの出力だった私の力は、魔法が使えないことで抑えられています。
今の攻撃力の弱い気の力なら鎧と服だけを壊すことが可能なのです。
ですが……なんでしょうか……萎びたきのこやおいなりさん、そしてオッサンの汚いケツに対するこの嫌悪感は……
全てがむなしい……
私は072をしたわけでもないのに賢者タイムを迎えていました。
……ハッ! ……もしかしてこれもリア充の陰謀!
私は瞬時に理解しました。
人生のクライマックスで全てを邪魔しに来たリア充ども。
なんということでしょうか。
わずか3歳にして、もうすでにリア充の魔の手が迫っているのです。
私は焦りながら気を探知しました。
私が倒した兵隊さん以外の気を探すのです!
中庭の練兵場。その端に二つのかすかな気を感じる。
瞬時に気を放出。
文字通りその気に向かって飛んでいきました。
「死ねいッ! リア充!!!」
拳を握って突っ込む私。
だが、その姿を確認したとき、私は自身の考えが間違っていることに気づきました。
慌てて拳を引っ込める私。
それはパパでした。
あいかわらず自分は安全な位置にいたのです。
そしてその横には小さな女の子がいました。
誰でしょう?
「アレックス! このお方に無礼を働いてはならんぞ!」
なんかパパがマジギレしてます。ビビリながら。
鉄拳制裁は怖くないのですが、おやつを禁止されるのが地味に辛いので大人しく従います。
「……ごめんなさい」
下を向いて反省してますとアピール。
もちろん反省などしてません。
ここで反省などしたら私の積み上げた2000年が全否定されてしまうのです。
薄汚いリア充どもを滅ぼすという悲願が達成されないのです!
私はそう心の中で誓うと茶番を続けました。
「おとうさまあああああごめんなさあああああいいいいい」
泣きました。泣けば許してもらえる。超ヌルゲーです。
ところがその時です。
悪魔の声が響き渡りました。
「あんた嘘泣きしてるでしょ?」
横のメスガキが余計なことを言いやがりました!
よく見ると美形です……フッ!……おどれリア充があああああああああぁッ!
「シルヴィア様……何を……?」
パパがびっくりして女の子にそう言いました。
すると女の子は言ったのです。
「嘘泣きって言ってんのよ! ちゃんと謝りなさいよ! このちび!」
……正しい意見と言ってはならない台詞を同時にいいやがりました。
確かに嘘泣きは事実です。責められても仕方がないでしょう。
でも後半。気にしていたのです。
背が低いこと。
パパも背が低いこと。
ママも背が低いこと。
自分の将来の事。
この薄汚いビッチは私の怒りの導火線に火をつけていたのです。
怒りのあまり私は完全に自分を見失っていました。
「ちびっつーな! ばーか! ばーか!」
もはや制御できずに頭の悪そうな言葉を連呼してました。
すると女の子が顔を真っ赤にして反撃しました。
「何よ! このちび! ちび! ちび!」
「ばーか!ばーか!ばーか!」
「ばかって言った方がばかなのよ! このちび!」
「バカバカバカバカ!」
「チビチビチビチビ!」
バカとチビの応酬。
なんと不毛なことでしょう。
ですが私は燃えていたのです。
目の前のクソビッチを言い負かすことに。
そうしてバカとチビの応酬はなおも続きます。
「バカバカバカバカはにゃバカバカバカバカ!」
「チビチビチビチビチビチビチビチビ! 言い間違えたわねこのチビ!」
しかし突然にこの醜い言い争いは終焉を迎えることになります。
「あらあらあらあらー。すっかり仲良くなっちゃって。うふふふふふー」
なんだか凄くスローな喋り方をする女性が現れました。
「あ、お母様!」
うん母親か。似てないね。
「お后様!」
パパの声がひっくり返ってます。
おきさきさま?
ああ……なんだっけ?それ?
なんか私には一生無縁で遠い存在っぽいその単語。
あー! 王様の嫁!
ってことはこのクソビッチは姫様ですか!
私は唸っていました。
なにせ相手は権力です。
自分の魔王時代でも舐めた口を利いた部下は処刑していました。
私もさっくり殺られてしまうかもしれません。
もちろんその場合は国を道連れにしますが。
ですが私の懸念は全く持って杞憂だったようで、お后様は機嫌よく笑っていました。
そして斜め上の発言をします。
「ごめんねー。うちの子ねえ。魔力強すぎてお友達いないのよー。同じくらいの子を前にどうしていいかわからなかったみたいー」
どこかで聞いた話です。
お前は私か。
哀れみの視線をクソビッチに向けます。
するとパパが余計な一言。
「いやあ。うちの子も達人レベルの気功を体得してるので怖がって誰も近づかないんですよー。わーはっはっは!」
おいジジイ! てめえちょっと体育館裏来いや!
体育館の場所知りませんけど。
なんでしょうか、目の前のクソビッチが勝ち誇った笑みを浮かべています。
その笑みはブーメランですからね!
悔しくなんかないですよ! ホントですからね!
その日の夜は人がいないところで超泣きました。