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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第3章 産業革命編 頑張ったけど街が消滅しちゃった……もう自重しないもんね
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江戸のかぴばら

 数日後。

 ローレンスさんとエメラルド、それに魔道機械を積んだトラックキャラバンの第一陣がネオセシルを出発しました。

 中央にはサブが運転していくのは刺激が強すぎるので、サブの元でドライバーを育成しました。

 現代の自動車学校よりは期間が短かったような気がしますが、他に自動車は存在しないし大丈夫でしょう。

 盗賊が出たらアクセル全力。

 バイロンでも出ない限りはこれでまくことができます。

 冷凍庫も建設したので、冷蔵便で運んで冷凍倉庫で保管が可能です。

 これで冬の心配は無くなりました。

 うふふふふふ。


 そのうち台数増やして黒わんこセシル便を立ち上げる予定です。

 軌道に乗ったら鉄道に銀行業務に保険業務。

 武器商人を組合ごと買い取って巨大財閥を作ってくれるわ!

 首洗って待ってろや武器商人!


 そうそう。

 パパの部下はリゾートを満喫してます。

 プールでキャッハウフフです。

 ※あくまでアレックスの主観です。


 うん。いい腹筋ですね。


 脱走兵出たらどうしようと思うくらい楽しそうです。


 うん。いい腹筋です。


 彼らに渡すお土産は、マナ式髭剃り、懐中電灯とマナランタン、ポケットラジオにしました。

 ラジオ放送は領内で試験的に歌やニュースを流してますが、なかなかの評判です。

 照明なども含めて一度手に入れたら手放せなくなることでしょう。


 ぐへへへへへ。


 さらに数日後。

 大量の食物を運んだ何台ものトラックが帰ってきました。

 それらはフォークリフトを操るゴブリンさんの手でそのまま冷凍倉庫に。

 私はローレンスさんと会談します。


「収支はどうですか?」


「あれだけ食糧買っても圧倒的に黒字です。まさかこんな額の商いをすることになるとは……心の臓が潰れそうですな」


「でも楽しいでしょ?」


 我々は笑顔になります。

 まずはローレンス商会でのエメラルドの販売。

 残念ながら私は宝石の工作機械は詳しくないので、連日ドワーフさんと工作機械の設計の打ち合わせをしてます。

 なので今はまだ原石の販売です。

 どうやらセシル領のエメラルドは傷が少なくグレードが高いようです。

 年度末にはローレンス商会から徴収した税金で復興資金を作ることが可能でしょう。

 その税金の一部を元に第三次産業を立ち上げ、領内にお金が入る仕組みを作るのです!


「そうそう。ローレンスさんに限って心配は無いでしょうが。妖精さんや遊牧民の待遇は皆さんと同じにしてくださいね。私は人種に関係なく正しいと思う側の味方をしますので」


 私は釘を刺します。

 ローレンスさんは心配ありませんが、ローレンスさんの部下までが平等主義者とは限りませんので、私はちゃんと言葉にして警告しておきます。

 こういう曲解の余地を潰しておくのは非常に重要なことです。

 たまにいるんですよね。裏技探すの得意なヤツ。


「畏まりました」


 取り様によってはかなり厳しいことを言ってしまったにも関わらず、ローレンスさんの表情は嬉しそうでした。

 こうして私の黒わんこセシル便への野望の第一歩が開始されたのです。



 さてもう一つの課題の方の調査です。

 現在ラジオ放送は商工会と役場による『ネオセシルラジオ」と領内のニュースや音楽を流す『セシル公共放送』の二つがあります。

 ですが最近ラジオをとある周波数にチューニングすると別の放送が聞こえてくるのです。

 私がその放送局にラジオをチューニングするとヨナ抜き音階の音楽が聞こえてきました。

 誰かが勝手に作った放送局『ラジマゲドン』の放送です。

 私は嫌な予感全開で放送に耳を傾けます。

 するとなんだか聞き覚えのある声の司会がセリフを読み上げます。


「故郷を捨てて旅がらす。やって来ましたセシル領。見ててくださいお父様。シルヴィア殿下でセシルの三度笠」


 この声レイ先輩です。

 というかシルヴィア!

 

 ちゃんちゃらりらー ちゃんちゃらりらー ちゃらららりんちゃんちゃん ちゃらららー ちゃんちゃんちゃんー


「なーがーどーすふりかざしー。やってきましーたーセシルりょうー」


 コブシ全開なのにヤケに甲高いお子様の声が聞こえました。

 ええ。シルヴィアの声です。

 つうかドス振り回すってどこの通り魔ですか!

 以降も論理性を欠いた不可思議なポエムが歌い上げられました。


「アニキぃアニキぃアニキぃぃぃ!セーシールのふーゆー!」


 どんな歌詞だ!

 私は突っ込みをいれずにはいられませんでした。

 ええ。どうしようもない。オイコラ。


 ちゃんちゃらりらー ちゃんちゃらりらー ちゃらららりんちゃんちゃん ちゃらららー ちゃんちゃんちゃんー


 歌は間奏を経て2番に入ります。

 ド演歌!しかも股旅物かよ!などなどツッコミどころが多すぎてツッコミきれません。

 つかさ、人が全力で仕事をしてるときになに楽しそうなことしてんの。


「とおちゃん!ドラゴンを倒しました。だけどアンデッドに街を滅ぼされました。でも俺負けません。オレ領主だから!」


 ちょっと待て!これ私のことですよね!

 ……また理事長か!あの野郎!

 私は焦りました。

 演劇ならまだいいのです。

 ある程度の規模と人数がいなくては公演できませんから。

 ですが歌は違います。

 一瞬で広まるのです。

 なぜなら歌うこと自体は一人でもできるのですから。


 なにせ娯楽の少ない世界です。

 これは流行る!流行ってしまう!


 お前ら!恥ずかしいよー!まじ恥ずかしいよー!やーめーてー!

 その後も私の公開処刑は続きます。


 頭を抱える私。

 シルヴィアの曲が終わる頃にはMPが0になってました。

 そしてラジオからはヨナ抜き音階の演歌に代わり電子機器ぽいピコピコとした音が。


「次はエリザベス・フーヴァーさんで『アレックスちゃんそこをどいて!殿下殺せない!』」


 ぷち。

 私は脊髄反射的な動きで瞬時にラジオをオフにします。

 なぜ膝がガクガク震えているのでしょうね?

 あはははははははは。

 


 「セーシールのふーゆー!」


 「あれっくすちゃん そこをどいてー でんかころせないー」


 あれから数日。

 道行く子供たちが口ずさんでいるのは例の曲。

 やはり流行しやがりました。

 ラジマゲドンは朝晩2回で1時間放送X2の一日2時間の放送なのに聴取率100パーセントのお化け放送局です。

 クッソ!ラジオ開発がうれしくて調子に乗って住民全員にラジオ配っちゃったよ!

 そこにゲリラ放送とは!

 私が怒りのあまり歯軋りしているとラジオから音が聞こえて来ました。

 

 「ひと~つ非モテの生血を啜り、ふた~つ不埒なきゃっはうふふ、みっつ醜い浮世の(ビッチ)を、退治(シメ)てくれよう、ろり太郎!」


 新番組、ラジオドラマ『ろり太郎侍』です。

 タイトルの時点で嫌な予感しかしません。


 「へいへいへーい!このサキュバス屋藤衛門ただでは死にませんZO!YOUも愛で空が落ちてくるようにしてやるZE!かもーん先生方!」


 スケさんですよね……なにしてやがる。


 「おーやー!テメェッ!やんのかコラァ!俺のラリアットでみんなぶっつぶしてやるよ!」


 おいカク。お前もナニしてやがる。

 届かない私のツッコミが空回りする中、ラジオから流れてくるのは、ろり太郎侍のキメ台詞。


 「やかましいや!このリア充!てめえらの結婚相談所の紹介した男の娘のせいでAさん(55歳・荘園管理業)の財産盗るわ借金するわで、ケツの毛まで抜きやがってぇ!許せねぇ!てめえら人間じゃねえや!叩っ斬ってやる!」


 なにこの最低のセリフ。

 王女に言わせていいと思ってるのか……

 殺陣のシーンが終わりエンディングテーマ。


 「非モテの怒りをぉ 非モテの妬みをぉ 江戸のかぴばらー」


 なにこのカオス。 

 こんな酷い出来なのにおそらくこれも流行るでしょう。

 娯楽がないというのはどこまでも恐ろしいのです。


 それにしても……こんな酷い番組でも文句はつけられません。

 嫌いなんです。メディア規制。

 いえ、ちゃんと合理的な理由があればやぶさかではありません。

 でも胡散臭い番組だとしても、身元がちゃんとしてる知り合いが学園祭感覚でやっているだけの無害なものです……


 でもやっぱムカつくわー!


 私はあくまで個人的理由で吼えました。

 このとき私は舐めてました。

 クオリティが学祭レベルだと思って完全に舐めていたのです。

 メディアを手に入れた人間さんたちの恐ろしさを……

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