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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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VSゾンビ シャレにならない方編 2

 私は背中に寒いものを感じながらエドガーと一緒の馬に乗っています。

 なんでしょうね。この本能から呼び起こされる圧倒的な恐怖は……

 第一印象が悪すぎたのでしょう。

 三権分立や法の支配の概念が無く、権力=法なこの世界。

 彼は議会に命じられた執行官としての職務を果たしただけです。

 きっと会話などして誤解を解けば仲良くなれるはずです。

 とりあえず父親の話なんかを聞こうと思います。


「えっと、エドガー。貴方は御父上を告発した形ですが他に情報はありますか?」


「そうだね。まず第一点。アレとボクは血は繋がってないよ。

話し始めると長いんだけどねえ。聞くかい?」


 こうしてエドガーの身の上話が始まりました。

 ええ。正直聞かなければ良かった。マジで後悔してます。


 チャールズ・コルソンこと賢者ウェルギリウスはバイロンの恋人である姫を寝とりました。

 そしてベラベラと余計なことを喋られると困るのでバイロンを捕らえ抹殺。

 ウェルギリウスは王女と結婚し王に即位。

 すぐに子供も生まれ幸せな生活を送りました。


 しばらくは。

 

 ですが、ウェルギリウスはずっと恐怖を感じてました。

 長男が自分に似ていないと言う事実に。

 成長するに従いバイロンに似てくる第一王子。

 それは自身の罪を見せつけれられているかのようでした。

 徐々に狂い始めた彼は第一王子を闇に葬ることを思いつきます。

 ですが殺意を抱いていたのはウェルギリウスだけではありませんでした。

 長男も自身の出生の秘密に気づいていたのです。

 そんな王子の前に現れるバイロンの遺児たち。

 総勢100名以上。

 

 バイロンはもっと苦しませてから殺せばよかったと思いました。

 

 この頃には狂った王により国は荒廃してました。

 兄弟姉妹に出会い、本当の親の仇という真実を知り、そして狂った王を倒すと言う大義名分を与えられた第一王子はウェルギリウスを殺害することを決意します。

 結局、王国は王派と第一王子派の血みどろの戦争に突入します。

 バイロンの子供たちは、バイロンに似ず全員が優秀でした。

 あるものは人間の戦士を率い、あるものは魔法使いを束ねていました。

 さらに言えば魔族との混血が半数を超えていたそうです。

 さすがバイロンさん。

 各魔族の族長の娘に子供を生ませていたと。


 横にいたら無言で裏拳入れてるレベルですよね。


 それらが手を取り合い、友情パワーがうんたらかんたら。

 最終的にウェルギリウスは第一王子に討たれる寸前までいったのです。。

 ですが、狂ったウェルギリウスもただでは転びません。

 悪い方向に覚悟を決めたウェルギリウスは妻を殺害。

 その魂をスターターとして使い、世界を恨み、世界を呪い、世界の滅亡を願う大魔法を使ったのです。

 それは国民全てを生贄にアンデッドを発生させ続ける魔法でした。

 王国は瘴気に飲み込まれ、逃げ遅れた一般国民は次々とアンデッドに。

 王国のほぼ全ての土地は、瘴気が充満する魔族すら住めない地獄へと変貌しました。

 生き残った人間と魔族は、手と手を取り合い生きていきましたとさ。

 ウェルギリウスが自身の魔法に飲み込まれたせいで、世界がどうなったかわからないので最後のは創作です。

 たぶんリアル結末は絶滅エンドかなと……


 ガラハッドことシルヴィアがどれだけ優秀だったかが良くわかる内容ですね。

 だってガラハッドが死ぬまでは、人間さんも魔族も小競り合い程度しかしなかったそうですから。

 魔族を特に理由もなく全力で殺しに来るくせに、いざ魔族がいなくなると内輪もめで絶滅するとこまで殺し合いを繰り広げるのは人間さんの悪い癖だと思います。

 

 さてこれだけでも充分病んでいますが、話はこれで終わりません。


 ウェルギリウスは子供からやり直したのではなく、自身の魔法に飲み込まれたと思ったらこの世界にいたそうです。

 一房の髪の毛を持って。

 それは自らが殺害した妻のものでした。

 その後、身よりもないので荘園で小作農などをしていたそうです。


 ところがある日、ウェルギリウスは自身がおかしくなっていることに気づきました。

 いえ頭は安定しておかしいのですが、問題は能力の方でした。

 死体関係の魔術しか使えないのです。

 治療も何もできない。

 炎も雷も出せない。

 でも死体だけは動かせる。

 そう、ウェルギリウスはネクロマンサーになってしまっていたのです。

 

 怖いのはここからです。

 能力に目覚めた瞬間、ウェルギリウスのタガが外れました。

 それまでも安定して狂っていたのですが、ネクロマンサーになったことで理性の最後のクサビが抜けてしまったのです。

 まず彼は、自身が小作人をしていた荘園の荘園主であるコルソン一家を皆殺しにしました。

 小作人も含めてです。

 恐らくアンデッドを使ったのでしょう。

 こうしてコルソンに成り代わった彼は、とある研究に没頭しました。

 自らの手にかけた妻の作成。

 最初はフレッシュゴーレムで作ったそうです。


※具体的な作り方はグロすぎるので黙秘させていただきます。


 ですが所詮ゴーレムですから簡単な命令をこなすのが限界でしょう。

 そこで考えたのがホムンクルスの作成。

 そう。妻を髪から作り出す研究です。

 生まれ変わらせるのではなく一から作る。

 発想が根本から病んでます。

 理解したくありません。

 ですが、ここで重要な疑問が浮かびます。

 フレッシュゴーレムと同じ顔のエドガーは……


「つ、つまり……それって……」


「ああボク、ホムンクルスだよ。製造されてから5年ってところかな」


 ぎゃあああああああああああッ!

 

 恐らく殺した妻の髪から生成しやがったんです!

 もうやだコイツら……頭おかしすぎる。

 絵の謎もアビゲイルの正体もわかりました。


「え、えっとエドガー。するとあなたは女性ということですか?」


「違うよー。まだ男でも女でもないよ。あと五年くらいすると、どちらかになるみたい。

でね、親父が気持ち悪い視線送って来るのに耐えられなくて家出して騎士団に入ったわけ」


 頭痛い。マジで頭痛い。

 話を変えねば!


「え、えっと。なんでご自分の手でなさらなかったので?」


「親父殺すこと?クラウディア、ボクの属性見てごらん」


 私はエドガーの属性を調べます。

 がっつり闇属性。つうか病み属性。

 なんか凄い納得したぞ!


「あー。できないんですね。闇属性のアンデッドに攻撃しても無効とか吸収ですね」


「そうそう。最後には女装で絵のモデルにされてムカついたから家出する前に殺そうとしたんだけど失敗しちゃった♪テヘッ♪」


 テヘッ♪じゃねー!

 私は知恵熱を出しそうになりながら頭を抱えるのです。

 そんな私の側の問題を軽く無視して、エドガーは楽しそうに言うのです。


「うふふふふふ。ピクニックみたいだねー♪ デート、デート♪」


 世界一嫌なピクニックのはじまりです。

 マジでシルヴィア助けて!



 うむ。おさむらい様である。

 今、バイロンに食われそうになった時より、はるかに大きいアレックスの悲鳴が聞こえたような気がしたけど、たぶん気のせいだと思うのだ。

 

 それはいいとして、我は先ほどから思いついた魔法を行使している。

 死霊騎士を作る要領で光属性にしてデザインは鎧武者と。

 光とともに二体の鎧武者が現れる。

 うむ。できた。思ったより楽だった。


「な、なにをされてるんですか?」


 ギルが口を開けながら見ている。

 クール系の美形が台無しになっている。


「うむ。我の友人のスケさんとカクさんなのだ。今回の助っ人として来て貰ったのだ」


 スケさんはマナで作った日本刀装備。カクさんは素手である。

 なぜか二人ともガムを噛みながら「OKボス」とか言ってるが気にしないようにしよう。


「殿下の友人という時点で嘘確定じゃないですか!」


 容赦ないツッコミ。

 ひどいのだ!泣くぞ!


「YOYOYO!そこのBOY!なに俺らのボスをディスってるん?」


 スケさんが頭にウジがわいたような台詞を吐きながらギルに詰め寄る。

 うん。キャラ設定失敗した。光属性が悪かったのか?


「おめーなめてっとオレっちの毒針キックでワンパげぶらッ!」


 とりあえずカクさんも余計なことを言い出したので腹パンして黙らせる。

 それを見てスケさんも黙ったので良しとしよう。

 もうすでに致命的なボロが出たような気がするが、それでもこれ以上ボロは出したくないのだ。


「もうどうでもいいです……」


 先に諦めてくれたのはギルだった。

 なんかすまん。

 でも結果的に成功したので我はドヤ顔で命令する。


「スケさんカクさんやってお仕舞いなさい!」


 なんか違うの交ざったぞ……

 まあいいのだ。

 カクさんが近くの死霊騎士に突っ込んで行く。

 死霊騎士の目の前でストップ。

 溜めて、はいドロップキック。

 ちょっと待て!なんだ今の動きは!

 消滅する死霊騎士を前にプロレスLOVEポーズ。


「イーヤァッ」


 こんなにパチモン臭いのになぜ無駄に強いのだ?

 だが胡散臭いのはスケさんもだった。

 刀を鞘から抜く。それは金属バット。

 うん?何かおかしい。なんで刀がいつのまにか金属バットになってるのだ?


「オーイエー!」


 かきーん。

 死霊騎士をホームラン。

 だからなんでこいつら無駄に強いんだ?

 光属性だからで説明できない次元にいるだろ!

 うん。なんか考えるのめんどくさくなったから……もういいや。


「よしお前ら守備兵団を守るのだ!」


「オーケーボス!」

 

 良い声で返事。

 雑魚はコイツらに任せておけばいいだろう。

 他の団員が少し心配なので一応辺りを確認する。

 ゾンビは瞬殺。死霊騎士には多少苦戦しながらも無難に撃破。

 非常に優秀である。

 守備兵団も警察もオリハルコン装備なので怪我人もいないようである。

 岩のゴーレムは彼らの手に余るが、数が少ないのでスケさんカクさんに任せておけばいいだろう。

 この要領で領主の館を拠点に交代しながら駆除していけば安全にアンデッドを駆除できるはずだ。


 だが残念なことにこれは前哨戦だ。

 秘術と言うほどのアンデッドやゴーレムは見ていない。

 そしてこの瘴気。

 ゾンビを打ち倒しているのに関わらず、なぜかどんどん濃くなっていく。

 そもそもゾンビは都市制圧兵器である。

 それが土地をダメにしてしまう瘴気の中で動いている理由がわからない。

 

 我はやや残念な頭なので、あとでアレックスに考えさせよう。

 うん。それでいい。


 なんて思ってた我が甘かったのだ。


 スケさんカクさんを作って楽をしていた我の元に伝令がやって来た。

 門の方で住民の避難をしていた部隊である。


「シルヴィア様!門の方に新手のアンデッドが!斬ると変なガスが発生してしまい手を焼いています!」


「住民の避難は?」


「ほとんど完了しております!」


 ガス? 恐らく瘴気だろう。

 斬ると瘴気を発するアンデッド。

 オリハルコンで斬れば瘴気も浄化されるはずなのに。

 なんだろうか。

 我の問題処理能力を超えているような気がするのだ!

8/10 間違いを修正

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