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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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VSゾンビ シャレにならない方編 1

 うむ。シルヴィアである。

 今、セシルの街の住民の避難が行われているところだ。

 とりあえずホルロー達がキャンプしていたところに連れて行く予定である。

 事件が終わるまでゲルというテントで暮らしてもらうことになるかもしれない。

 

 幸いにもアンデッドの襲撃はまだ行われていない。

 アレックスの予想では空間転移の魔法は使われないとのことだ。


「だって大勢運ぶのめんどくさいですし。シルヴィアだって一度に運べるのは5人程度でしょ?」


 アレックスの言葉は説得力がある。

 確かに空間転移は軍勢を運ぶのには向いてない。

 一人だったらどこでも行けるのだが。

 アレックスが言うには一人でも気をつけないとならないらしい。

 座標を間違えると『いしのなかにいる』状態になって死ぬしかなくなるとのことだ。

 恐ろしいものだ。

 超おっかないのだ!

 生き埋めとか無理なのだー。


 それはとりあえず置いておこう。

 今我はドワーフの工房にいる。

 バイロンの鱗で作ったドラゴンアーマーが完成したのである。

 工房の中にはアレックスの子分たち。

 王族や一部の大貴族しか持っていない憧れのドラゴン装備にテンションが上がっている。

 うむ。気持ちは良くわかる。

 我も村正ブレードを貰ったときテンション上がりすぎておかしくなった。

 やはり男は単純で楽である。

 我は男たちを眺めながら、どう輪に入っていこうかと考えていた。

 あれぇ?会話ってどうやるんだったっけ?

 引きこもり生活を続けているうちについには男との会話の仕方すら忘れてしまっていたのだ。

 キョドる我。自分で言うのもなんだが、不審者そのものである。

 するとドワーフの一人と目が合う。


「あ、おさむらい様だー」


 立ち上がって手を振ってくる。

 すると我に一気に視線が集中する。

 うん?何か返さないとまずいのか?

 面白いこと言わないとダメなフラグなのか!

 我は焦る。


「お、オイッス!」


 シーン……

 アレックスの真似をしたのにダメだった。ハズした!

 ぬおおお!

 これは男の部下には暗いと女の部下には臭いと陰口を叩かれる、あの暗黒の日々の復活フラグなのか!

 静寂が我を追い込む。そんな静寂の中ひそひそ声がした。


「おい。タメ口で大丈夫か?」


「殿下ってあのクソ生意気なアレックス様と婚約者やってられるんだろ?大丈夫なんじゃね?」


「いやでも王族だし」


「こないだ団長が拳骨落としてたけどお咎めなしだったぞ」


「団長マジ勇者!」


「女だったら惚れるわー」


 否定的な印象は受けないのだが我は置いてきぼりである。

 我はおろおろする。そんな時だった。


「みなさん!そろそろ仕事ですよ!」


 やってきたのはギルだった。

 知り合いがやって来た安堵感から我は思わずギルの足に抱きつく。


「ギルゥ……」


 我がギルにしがみつくとざわざわと声がした。


「やべカワイイ……」


「今、俺マジでペドに目覚めそうになったわ!」


「ギルさんとコイツ通報しますよ!」


 良く見るとギルの顔が引きつっている。

 我の本性を知ってる身としては色々言いたいことがあるのだろう。

 ギルは深く深く溜息をつき、そして前方を見据えた。

 頭を切り替えたのだろう。

 根性あるなコイツ。


「作戦の概要を発表します。まず警察官の半分が工房の子供たちを避難キャンプへ送り届け、残った人員で防衛します。

オリハルコンの使用許可が出ておりますので全員オリハルコン装備。防具は今配布したドラゴン装備で。

避難はほぼ終わっておりますが逃げ遅れた人がいるかもしれません。救助を優先してください!」


 全員が頷く。

 シルヴィアはそんな彼らののオーラを眺めていた。

 コイツら凄いな。さすがゼスの部下だ。

 ここの領地の兵は異常なほど強くなっている。

 団長のゼスは明らかに人間の頃のバイロンより強い。

 通常装備のバイロンであれば鼻歌混じりにボコボコにするだろう。

 このギルもやはり人間バイロンより強いだろう。

 他の団員もドラゴン化したバイロンとの一戦から急成長している。

 普通のゾンビ程度では相手にならないだろう。

 人口の推移次第では大陸の覇権を取れるほどに成長するかもしれない。

 肝心のアレックスが内政型なのが残念である。

 我がギルにしがみつきながら見ていると外から半鐘の音が聞こえてきた。


「来ましたね。では殿下。急いで離脱をお願いします」


「イヤッ!」


「いや貴方は王族なんですからね!万が一の事があったら責任取りきれませんよ!」


「クックックックック……我を止められるというならやってみるがいい!」


「なぜそこでわけのわからない開き直りをするんですか!

止められないのは事実ですが……いいですか!後方にいてくださいね!」


 我は頷く。もちろん言うことを聞く気などさらさらない。

 そこで我は気づいた。

 我は今スカートである。

 なんだっけこの服装。ゴスロリみたいなやつ?女の服装はよくわからん。

 侍女に任せたらこんな服装にされたのだ!

 王家の御用達商人に作らせた小豆色のジャージにしておけばよかった!

 せっかく胸の部分に『いちねんいちくみ しるびあ』と魔族語で書いたのに。 

 アレックスにしかわからないギャグではあるが。

 ゴスロリ幼女が脇差持って大暴れ。

 うむ。一部の大きなお友達に大人気なのだ。

 よしがんばるぞ。



 外に出るとそこは魔界であった。

 立ち込める瘴気。

 土から生じるアンデッド。

 アレックスの予想では城壁を囲むんでくると予想されたアンデッド。

 だが実際はセシルの街のいたるところから発生してきた。

 ゾンビだけではない。

 死霊騎士やゴーレムまで発生していた。

 先行した連中はゴーレムや死霊騎士に苦戦していた。

 そんな彼らを通り抜け我らに突っ込んで来た三体の死霊騎士がハルバードを振りかざす。

 ギルがナイフに手をかけ叫んだ。


「し、シルヴィア様にげ」


 ギルが言い終わる前に我は脇差を抜き、ハルバードごと死霊騎士の腕を切り捨てた。

 そのまま膝から力を抜き落下の勢いを利用して別の死霊騎士の足を切り払い、連続で切り上げ。

 今度は切り上げで立ち上がった勢いのまま方向転換、三体目を一刀両断にする。

 腕を切られた一体を残し死霊騎士たちはそのまま消滅していった。


「ぎ、ギル主計長!今の見えました?」


「剣を抜いたところすら見えません。アレックス様のお師匠様が殿下という話は本当だったのですね……」


 そんな驚きの声も我には不満である。

 うむ。遅いのだ。

 やはりこの女の体は剣士としての才能は微塵も無い。

 筋力の向上も期待できないだろう。

 村正の攻撃力で補正できているだけである。

 このまま戦い続ける体力も無い。

 己の情けなさにため息をつく。

 そして腕を切り落とした死霊騎士にトドメをさしてやろうと近づく。

 すると死霊騎士から男の声がした。


「そうか。その剣筋。お前の方がガラハッドだったのか!領主のガキは貴様の弟子か!バイロンを殺したもの貴様だったのか!」


「貴様は誰だ?」


「今の名はチャールズ・コルソン。不死のチャックの方が有名か!だが貴様にはウェルギリウスと言えばわかるかな?」


 ウェルギリウス?

 バイロンのパーティの賢者だ!

 賢者ウェルギリウス。

 バイロンの女を寝取りバイロンを死に追いやった男なのだ。


「偉大なる剣王ガラハッド!貴様にはウェルギリウスの現世での秘術をお目にかけよう!」


 死霊騎士の口を借りたウェルギリウスが叫ぶ。

 本来なら恐ろしいはずの宣言。

 だが我はどうでもいいことを考えていた。


 なぜ部下は我をちっとも敬ってくれないのに常に敵だけは我を過剰に評価してくれるのだろう?と……



 私たちは馬を走らせます。

 シルヴィアなら万が一の事が起こっても大丈夫だとは思うのです。

 それでも全転生で最初の友達なのです。

 心配じゃないわけがありません。

 急がなければならないのです。


 私が急いで馬を走らせていると前方に馬が見えました。

 それに乗っている男。

 それはエドガー・フーヴァー。

 私たちは慌てて馬を止めます。

 邪魔する気なのでしょうか?

 屋敷にあった絵。あれは少なくともエドガーの関係者です。

 それにエドガーそっくりのフレッシュゴーレム。

 そもそもエドガーは人間なのでしょうか?


「やあクラウディア!」


 相変わらず人懐っこい割に心のこもっていない笑顔です。

 そんなエドガーはいきなりとんでもないことを言いやがったのです。


「クラウディアにお願いがあるんだ。セシルの街を襲ってる不死のチャック殺してくれない?

あれボクの親父なんだ。あ、山賊やってた証拠も持ってきたよ」

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