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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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VSゾンビ ギャグ編

「あれエドガー・フーヴァーですよね?」


 私はゼスさんに同意を求めるかのように聞きました。


「私にもそう見えますな」


「確か相続人はいないんですよね?」


「人別帳に登録してない婚外子かもしれません」


 なるほど。

 納得しながらも私は絵を凝視。

 何か書いてあるようです。


『我が妻アビゲイル・フーヴァーに永遠の愛を誓って』


 アビゲイル?新しいキャラの出現です。

 でもどう見てもこの絵、モデルはエドガーです。

 実に写実的な技法のせいか、エドガー独特の心が全くこもっていない笑顔まで完全再現されてます。

 つうか逃げ出したいくらい怖いです。この絵。

 絵の前でガクブルする私。

 その時でした。

 きい。きい。きい。と車輪が回る音がエントランスに響きました。

 エントランスの奥の通路からカートを押す人影。

 気を探って誰もいないことを確認したはずなのに!

 人影はゆっくりと近づき、我々から見える位置までやって来ました。

 その姿はメイド服のエドガー・フーヴァー。……のような何か。

 いえ。見た目はエドガーなのです。

 ただ動きが不自然です。まるで人形のような。

 それがカクカクとした動きでカートを押してきました。

 人形は我々の近くまでやってくると、どこを見ているのかすらわからない虚ろな目をキョロキョロと動かし、作り物のような抑揚の無い声を上げました。


「あるじ チャールズ コルソン から の 伝言 です 。

領主 アレックス よ 。 

我 が 友 バイロン の カタキ は 討たせ て もらう 。

貴様 の 大事 な もの を 壊 して やる 。

地獄 で 後悔 する が いい 。 」



 私は伝言を無視して人形の気を探ります。

 やはり無反応。

 生き物ではないのかもしれません。

 次に魔力を振り絞り属性を見ます。

 頭は闇属性。首から下は無属性。

 まるで二つのものを無理矢理つなげたような。

 なるほど。一つだけ心当たりがあります。

 私はその答えを口に出します。


「あんた。フレッシュゴーレムですね。なんとまあ美しくない魔法を」


 フレッシュゴーレム。

 死体をつなぎ合わせて作るゴーレム。

 岩や泥のゴーレムと比較して重量が無いため攻撃力は低く、おまけに火という弱点まで生じるため戦闘力は期待できません。

 気持ち悪いため人間さんへの嫌がらせ効果はありますが戦闘力はマナコストが半分に満たないゾンビと同程度。

 正直言ってなんのためにやっているかすらわかりません。

 趣味ですかね?

 そんな私を見もせずゴーレムは伝言を続けます。

 スルーかよ!


「アンデッド から 逃げ 回る が いい 。 踊れ 踊れ 踊れ 踊れ 踊れ 踊れ 踊れ 踊れ ……」


 踊れを連呼し続けるゴーレム。

 敵意、いえ意思自体がないのでしょう。

 ということは放って置いても問題はないでしょう。

 そう結論付けた私の耳に外からの物音が入りました。

 それは争うような音でした。

 見張り要員が襲われたに違いありません。

 私はゼスさんの方を見ます。

 ゼスさんはそれを見て無言で頷きました。

 そして深く息を吸い。

 怒鳴りました。


「撤退である!アレックス様をお守りしながら全力撤退!族はおそらくセシルの街を襲撃するはずだ!」


 それを合図に我々は外に出ました。

 そこにいたのは100体以上ものアンデッドの群れ。

 殆どはゾンビ。その中に死霊騎士が見えます。

 恐らく指揮官ユニットなのでしょう。

 ああなるほど。これで疑惑は確信に変わりました。

 不死のチャックとチャールズ・コルソンは同一人物なのでしょう。

 アンデッドを操り商人を襲っていたのです。

 そして本命は我がセシルの街。

 絶体絶命のピンチです。

 

 ふふふふふふふふ。


 ここまで予想通りの展開になるとは!


 あはははははははは!


 ここまで予測してたからオリハルコン置いて来たんですよ!

 バーカ!バーカ!ぶぁーか!

 私はゲラゲラ笑いながら命令します。


「レイ先輩!狼煙上げてください!」


 レイ先輩は煙幕玉に火をつけます。

 この手順は最初に打ち合わせしてました。

 途中の道に何人もの伝令を配置。

 狼煙を確認次第、自らの煙幕玉に火をつける。

 あとは煙幕による伝令リレーと。

 もちろん敵に先を越されていることも考慮して伝令要員は見張りも兼ねています。

 不審な集団を見かけたら即煙幕です。

 そして煙幕による伝令がセシルの街に伝わり次第、住民の避難と迎撃準備を始めます。

 シルヴィアもいますのでヌルゲーですね。


 さてこっちも片付けますか!

 そう思った私は両手のメリケンサックを強く握り5歳児のツラとしては放送禁止レベルの悪人面を曝け出しました。

 バイロン戦からの久しぶりの戦闘なのです。楽しまねば!


 オレ物理攻撃ダイスキ!レベル上ゲテ物理デ殴ル。


 そのままゾンビの群れに突っ込んで行こうと思ったその時。

 上から手が伸び、私は男性の小脇に抱えられてました。

 私を抱えた男性は言うまでもなくゼスさんです。


「ゼス団長。なぜ自分は小脇に抱えられているのでしょうか?」


「アレックス様。ドラゴンのときに私は領主が前に出てはいけないと言いましたよね?」


「いえ。ここはオフェンサーとしての自分をもっと評価して頂きたく候……」


 パーンッ!ぴぎゃー!毎度恒例のスパンキングです。

 私の尻に一切の容赦無く手が振り下ろされます。


「だから!(パーンッ!)領主が(パーンッ!)前に出ては(パーンッ!)イケナイ!(パーンッ!)」


 最初のも入れて5回もぶったー!


「わ・か・り・ま・し・た・ね・!」


「はいでござる」


 酷い話です。

 いいですよー。後方でテキトーに気功弾打ちますから。

 はいはい、みなさん私のためにがんばってくださいねー。

 格ゲーやろうと思ったらガンシューに変更になってしまいました。

 テンション駄々下がりの私はゼスさんの脇にがっちりとホールドされながら気功弾を撃ちます。

 ちゅどーん!

 土煙を上げながら吹っ飛ぶゾンビ。

 もちろんお仕事をする団員さんのアシストになるようにです。

 できる限り舎弟は守る。それが一流の魔王なのです。(ドヤッ!)

 

 なんかちょっとだけ楽しくなってきました

 

 うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!

 私は気功弾を連打します。完全にヘヴン状態です。

 自分がトリガーハッピーだったとは知りませんでした。


「っちょ!アレックス!もっと気をつけて撃てって!」


「アレックス様ぁ!やーめーてー!」


「ギャーッ!」


 いえ。当たってませんよ。ちゃんと当てないようにしてるんですよ。

 だんだんギリギリの場所に撃つようになっただけで。

 辺りに広がるのは、まるで現代戦の榴弾兵器に蹂躙されたかのような戦場。

 ゾンビは吹き飛び逃げ回る味方。

 私はそれでも笑いながら気功弾を連射しました。


 あっはっは、見ろ人がご(パーンッ!)


「落ち着け!」


「はい……(しょぼーん)」


 尻が痛いです。

 直接戦闘に加わってないのにステータスが黄色になっているはずです。

 いいもん。見てるから。

 その後は残ったゾンビの掃討戦でした。

 みんなで囲んでメイスでゾンビをはたくだけのお仕事です。

 具体的には盾でゾンビを小突き回しながら一箇所に集めて集団でタコ殴り。

 某県警察VS暴走族とほぼ同じだと思っていただけるとわかりやすいかと思います。

 一方的なボコです。

 我が兵たちはゾンビごときでは踊りも逃げもしないのです。

 

 チャールズ・コルソンの最大の過ち。

 それは彼が思うよりもはるかに我々が強かったことです。

 だって団員たちがドラゴン討伐したほうの話が真実なんだもん。

 どうですか!あの自信に満ちた顔。

 ドラゴンとの戦いを経て身についたとんでもない経験値。

 それが彼らに自信を与えました。

 今の彼らにはゾンビなど敵ではありません。

 はっきり言って個人としては国軍の正規兵より強いです。

 ですので、あっという間に戦闘は終了し、あとは死霊騎士を残すのみとなりました。

 死霊騎士はゾンビよりは強いです。

 怪我人は出したくないので遠方から気功弾連射で倒すとしましょう。

 私は死霊騎士の気を探ると自分から真っ直ぐ前にいることがわかりました。

 なぜか死霊騎士の気は非常に弱い反応です。

 私は前方を凝視しました。

 吹き飛んだゾンビの真ん中。

 そこに頭から地面に突き刺ささっている死霊騎士の姿が。

 自分でも知らないうちに吹き飛ばしてたようです。

 そしてその姿は次第に透明になり世界に散っていき、ついには見えなくなりました。

 あ、死んだ。


 ……終了。


「アレックスがいると大抵の事はギャグになるよな」


 その台詞を吐きやがったレイ先輩は後で泣かしてやります。

 

 誰一人怪我人が出なかった完全勝利を喜ぶ私たち。

 ところがその裏でセシルの街の方に危機が迫っていたのです。

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