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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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村正ブレード(LV1の侍でポイズンジャイアント一撃死)

 うむ。剣王ガラハッドことシルヴィアなのだ。

 我は今、婚約者であるアレックスの仕事を肩代わりしているのだ。

 内容はドワーフの工房の見学。

 アレックスによると剣の使い手側から見ての感想を聞かせろとのことである。

 

 これは命を書けたミッションである。

 

 女ドワーフとは目を合わせないようにしなければならない。

 もし女ドワーフに話しかけられたらどうする?

 我が知らない女と話す?

 想像するだけで軽く死ねる。

 ホルローとかいうアレックスの新しい女とも一分以上会話が続かないというのに。

 そう我は今、死地に向かわんとしているのだ。

 決死の覚悟で工房に向かうのである。


 やっぱ一人じゃ無理。


 我はさすがに一人でこの重要なミッションに向かうのは無謀と判断した。

 幸いにもギルというアレックスの子分がその辺を歩いていたので捕獲。

 一緒に来てもらった。


「殿下はその人見知りを本気で治されたほうがよろしいかと思いますよ」


「イヤ!」


「言うこと聞かないとアデル様呼びますよ!」


「ヤー!」


 男とはこのようにちゃんと会話ができてるではないか!

 アレックスと初めて会ったときよりは口数が少なくなってるような気がしなくもないが。

 それでも余計なお世話なのである。


 ギルの言うことを無視して我は工房のドアを死にたい気持ちと重い足取りで開ける。

 ドアを開けると我と同じくらいの子供が一斉に我の方を見た。

 我に向けられる視線。

 こ、これはイジメのフラグか!

 イジメのフラグなのだな!

 そう思い我は身構える。

 イジメカッコワルイ!だからイジメッ子は殺す。

 うむ。いつもながらシンプルにして明確な判断である。

 ドワーフのリーダーと思われる子供が身構える我を一瞥した。

 ドワーフは一瞬ぎょっとした表情を浮かべ、すぐさま懐から出した石をハンマーで叩き始める。

 それは黄色い石であった。

 山に落ちているオリハルコンだろうか?

 いや微妙に色が違う。

 あれはヒヒイロカネではないだろうか?

 我が真剣な眼差しを向けると、ドワーフはハンマーで非常にいい加減なリズムでヒヒイロカネを叩き始める。

 そこには職人の威厳も迫力もなにもなかった。

 待つ事数秒。ドワーフのその手には一本の脇差が握られていた。

 我は紳士なのでヒヒイロカネで作ったのに玉鋼?などという無粋なツッコミはしない。


「おさむらい様に最高の武器を」


 そう言ってドワーフは我に脇差を差し出した。

 まだ柄もついていない。

 仕上がりを確認しろという事だろう。

 我は脇差を眺める。

 刃紋は両面とも同じ。なかごはタナゴ腹。

 美術品としては垢抜けないデザイン。

 伝統的な一族の作とはとても言えないだろう。

 あくまで美術品としてはだが。


 だが我はこの脇差を見てクククと笑う。


「殿下。何がそんなにおかしいので?その刀に何かあるのですか?」


 ギルがいぶかしむようにそう聞いた。

 確かに我のこの笑いは不審であろう。

 だが我は笑いが止まらなかった。


「ギルよ。これは村正ブレードなのだ。いや作ったのはドワーフだから『村正のようなにか』なのだ」


 村正ブレード。

 魔王の城や周辺のダンジョンに無造作に置いてある理不尽アイテム。

 その理不尽さはオリハルコンに次ぐ。

 その最大の特徴は防御無効レベルの切れ味。

 魔王の赤身ですらもスパスパ切れてしまう。

 これを装備したサムライやニンジャが養殖したグレーターデーモンで経験値稼ぎ。

 一気にレベルを上げた勇者一行に我が惨殺されると。

 思い出しても腹が立つ武器なのである。

 だが今度は我が村正を手に入れた。

 筋力の関係で脇差なのが残念ではあるが。

 だがこれさえあれば全身オリハルコンの勇者など指先一つでダウンである。

 どんな勇者がやってこようと700年は引きこもれる!

 お外に出ないですむのだ!


 我は押し殺すようにクククと笑う。

 憧れのカーテン閉めきった部屋での引きこもりライフ。

 それを成しえる武力が手に入ったのだ!

 誰にも文句は言わせない!

 アデルにすらも!

 アレックスの言うことは……まあ聞いてやろう。

 話し相手がいなくなると困るのだ。

 

 どこまでもテンションが上がり、はしゃぐ我。

 このとき我はこの村正ブレードが男爵領の次の伝説を作るとは全く思っていなかったのである。

 


 ちーっす。アレックスです。

 バカどものオシオキも終わりましたので今度はチャールズ・コルソンです。

 守備兵団と警察の一部を引き連れた私は荘園に乗り込みます。

 どこまでも続く農地。

 ところが農地は例外なく荒れ果てていました。

 人の姿もありません。

 農道も管理されていないようで雑草が生えています。

 いつから馬車が通っていないのでしょうか。

 

「こりゃ当たりですかね」


 私はゼスさんにそう言いました。


「まだ断定はできません。書類上チャールズ・コルソンには相続人である妻子が存在しないようですので、人知れず死去したのかもしれません」


 荘園の管理者である荘園主が死亡。

 小作人は自由を求め逃亡。

 いつしか荒れ果てていたと。

 確かにその可能性は否定できません。

 私は頷き、レイ先輩に同乗する馬をゆっくりと走らせます。

 一時間ほど進むと荘園主の館が見えて来ました。

 途中に作物の倉庫などもありましたが全て廃墟になっていました。

 何かに襲われた形跡も反乱が起こった形跡もありません。

 まるで突如として人間が消えたかのようでした。

 そのまま我々は館を目指します。

 館についた私たちはメイスを装備します。

 チャールズ・コルソンが不死のチャックであるという証拠はありませんし、バーのアンデッド騒ぎの原因であるとも言いきれません。

 そんな状態ではオリハルコンを使用許可を出すわけにはいきません。

 ドラゴンちゃん装備もドワーフさんが作っている最中なのでまだ使えません。

 ですので最悪の場合アンデッド相手となることを想定して装備を整えました。

 アンデッドは死者ですから殺すことより動けなくすることを重視します。

 ですので刃物は却下。

 今回は室内戦ですのでハルバードなどの長物も却下。

 フレイルやモーニングスターも同士討ちしやすいので却下。

 結局、メイスをチョイスしました。

 私だけは重い武器は体格的に難しいのでメリケンサックを指にはめます。

 これでもドワーフさん製作のものです。信頼性は充分でしょう。


「さて……野郎ども乗り込むぞ!」


 私がそう怒鳴りながら手を上に上げると、ゼスさんが声を張り上げました。


「アンデッドが出たら手足を壊して動けないようにしろ!それさえできれば少なくとも死ぬことない!わかったな!」


 その声を聞いて団員も警察も背筋を伸ばし整列。

 完全に調教済みのようです。(意味深)

 いつもの通り先行するのはレイ先輩。

 腕は良いのに落ち着きが無い残念キャラです。

 レイ先輩は荘園主の館のドアをノックし声を張り上げます。


「領主アレックス様の視察である!門を開けろ!」


 レイさんが声をあげてる間に私は庭の石像などを眺めます。

 くぼみにクモの巣がはっています。

 どうやら手入れはされていない模様です。


「レイ先輩。人はいないようです!」


 私の声を聞いたレイさんは門の取っ手を引っ張りました。

 施錠はされていなかったようで簡単に開きました。


「やはり人はいません!」


 レイ先輩の声を合図に我々は室内へ。

 打ち合わせでは入り口に見張りを立てて、その以外は室内を探索する予定です。

 私が中に入るとそこは人間に管理された空間が広がってました。

 掃除が行き届いた室内。

 塵一つ落ちてません。

 この館の主人はかなり細かい神経をしているようです。

 館のエントランスには肖像画。

 そこに描かれているのは私の知っている人物。


「エドガー・フーヴァー……?」


 ゼスさんが思わずつぶやきました。

 絵の中であの異常なほどの美形が女装をした姿でこちらに微笑んでいたのです。

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