兵隊さんと遊ぼう
チートな赤ん坊だと発覚してから3年。
俺は城の中庭にいた。
俺…なんかかっこよくないですか?
抱かれたい!きゃーッ!(すごくむなしい)
というわけで私は城の中庭にいました。
なんでそんなところにいるかって?
なんかパパの部下の人に遊んでもらう事になったんです。
すごく突然に。
城の正規兵。
最初は鎧もつけずに木剣で手加減して切りかかってきたので、瞬時に加速し懐に入る。
驚いた顔を浮かべる兵士。それをボディブローで浮かせる。
文字通り空中に浮かせる。
浮いた兵隊さんの身体の下に潜り込み、地面に手を突き片手で体を支え、真上に蹴り。
穿弓腿。
さらに浮く。そして始まる連続攻撃。コンボが繋がりまくりです。
20ヒットほどして壁が見えたので鉄山なんたらでフィニッシュ。
兵隊さんは白目を剥いて壁にめり込んでました。
魔法が使えないため気功を練り続けた結果なのか、私は火力では前世よりも遥かに劣けど、異常なほど強靭な身体を手に入れたようです。
マップ兵器だったのに戦士になりました的な。
男の子って不思議。
「クソッ! 奴は化け物か! 弓だ!弓を使え! アイク将軍から許可が出てる!」
弓が降り注ぐ。
普通なら死ぬレベル。
容赦ないです。
だが甘いですよ!
「墳破ッ!」
なんかかっこいい掛け声とともに両手に溜めた気を地面に放出。一気に爆発させる!
爆風に煽られ弓は勢いを失い、そのまま下に落ちる。
でも、さすが訓練された兵士のみなさんです。
弓が無効化されたのを見て、今度は槍を持って集団で襲いかかって来ました。
「なんとかストーム!」
自分の周囲からオーラの柱を立てる。
吹き飛ぶ兵士たち。
とりあえず残心。油断はしない。これ重要!何度も失敗したので学習しました。
KOしてましたね。だれも動いてませんでした。
「よし、やめッ!」
どこからともなくパパが出てきました。
巻き込まれないように避難してましたね。
私はわかってます。
「アレックス! よくやった!」
「ぱぱー!」
抱き合う親子。
茶番。子供でも空気を読む能力はあります。
ちなみにアレックスっていうのは今の名前です。
「ぱぱー! へいたいさんあそんでくれたのー」
天使のスマイル。
パパも私の中身のアレな感じは察しながらもにっこりと笑います。
うふふ。
「そうか。よかったなー。明日も別の兵隊さんと遊んでくれな」
「あいー」
よっしゃ! 次はパワーなゲイザーとか真空なんとか拳試そうっと!
ふははははははははははッ!
「ところでアレックスは将来何したい? パパと同じ将軍かな」
「んー。りあじゅうほろぼすのー」
「りあじゅう? なにそれ?」
「んー。せかいでいちばんわるいひとたちー」
今までの屈辱だらけの前世の歴史が走馬灯のように頭によぎりました。
魔族の王として勇者と戦い敗れる私。
ショタドラゴンを性的な意味で食おうとしたら後ろから刺される私。
世界中継されたパレード中に射殺される私。
072の最中に殺される私。
……最後のは黒歴史です。
リア充(勇者)だけは許さない!
リア充(勇者)だけは滅ぼす。
リア充と勇者がごっちゃになってないかって?
なってますが何か?
とにかく滅ぼすのです。
なぜ人は争うのでしょうか?
なぜ平和がやってこないのでしょうか?
なぜ貧困や差別があるのでしょうか?
なぜ私は肉食系なのにもてないのでしょう?
なぜ右手が恋人なのでしょうか?
なぜラブ&ピースって口では言いながら私はお一人さまなのでしょうか?
……すべてリア充のせいです。
全部リア充が悪いのです!
まさに外道!
ぶっ殺します。
根きりじゃー!
「うふふふふふふふふ」
幼児にあるまじきどす黒い笑いを発する私。
家族が将来を心配する笑みです。
実はパパは悩んでいました。
うちの子やばいんじゃね?って。
どうヤバイのかって?
ぬいぐるみが大好き。
なんかかわいい系の服が好き。
かっこいいとか強いとかより、かわいいで物事を判断する。
友達いない。つうか召使の子供すら怖がって近づかない。
仕方ないやん。
元女ですもん。
最後以外。
まあ友達の方は権力を使って本人の意思に関係なく仲良くするって方法があるんですけどね。
「仲良くしないと首はねちゃうぞー。一家全員な(ぼそっ)」
とか。
そんなことやって恥ずかしくないの?ですって!
2000年もお一人様だったのに今更ナニを恥ずかしがれと?
前世では私がすっぽんぽんで城をうろついても誰もツッコミ入れませんでしたよ!
エロイ目すら向けてもらえませんでしたとも!
あーテンション下がるわぁ……
……話を元に戻しましょう。
要するにパパは私を男らしくしたかったんですね。
・酒場に入ったらとりあえず乱闘
・力だけが正義
・おっぱい!おっぱい!
・ニンゲンノ肉ウマイ
実に男らしいと思います。
……たぶん。周りに男が寄り付かなかったので特に勇敢な部下を基準に考えてみました。
これを目指す必要があるということでしょう。
「うふふふふふふふふ」
私の表情を見てどん引きするパパを前に私は笑い続けました。
いつまでもいつまでも笑い続けました。