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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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警察始動

 みなさんこんにちは。

 魔王ちゃんこと領主のアレックスです。

 最近妙に守備兵団や私兵などの子分の皆さんが浮かれています。

 何があったのでしょう?


「ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!」


 私をアニキコールで出迎える彼ら。

 なにこのノリ。

 

「現在、ドラゴン退治の一件で全員が女性にモテております。

ほとんどの団員が生まれてはじめてのモテ期に浮かれておるありさまで……

アレックス様についていけばいいことあるぞと学習した模様です」


 そうギルさんが呆れたように私に事情を説明しました。


「すみません。私の管理力不足です」


 そういうゼスさん。

 いえ。たぶん悪いのは私です。


「ゼス団長もドラゴン騒ぎから奥様とたいへん仲がよろしいようです」


「ぎ、ギル!それは内緒だって約束しただろ!」


 うわあ……ダメじゃん。

 自分の中のゼスさん像がどんどん崩れていきます。

 正義の騎士で間違ってることには間違ってるとはっきり言って、嫁さんには甘くその嫁さんの前では子供のようにドラゴン退治に浮かれてる。

 あれ?いい人じゃね?

 私は少し悩んだ後とりあえず考えるのをやめました。


「ところでニコラス殿はいかがされましたか?」


 私はこの間の理事長とのやり取りを思い出して少しだけむっとしました。



「理事長あんたねえ!5歳児がドラゴン倒したって誰が信じると思ってるんですか!」


 理事長の机を両手でバンバン叩きながら威嚇する私。

 そんな私を見ながら楽しそうに笑いながら理事長は言いました。


「いいじゃない。少しはサービスしなよ」


「そういう問題じゃねー!リアリティが壊滅的にないでしょ!」


「でもその噂のおかげで君はダークエルフを処分しなくてすんだ。違うかな?」


「ま、まあそれには感謝してますが……」


「それにさ。君の年齢なんて関係ないんだ。君の年なんて良く知ってる僕達だけしか知らないよ。

他の人からしたらドラゴンを誰かが倒した。それだけでいいんだ」


「確かにそうですが……」


「これから忙しくなるよ!今まで存在した脅威が無くなったんだ。

財布の紐も緩むだろう。あとは街道と街の治安をどうするか?そこにかかっているよ」


「むうううう。そこが問題なんですよ!」


「悩め悩め!今度はドラゴンのようなイレギュラーなしの君の実力が試されてる!

僕はそれを見させてもらうよ!」


 最後の理事長が浮かべたえぐい笑顔。

 とても表現ができません。

 その表情を見て私はフラストレーションを溜めるのでした。



 嫌なことを思い出しました。

 ですが今は目の前の仕事に集中しなければなりません。

 私は今、守備兵団と私兵の前でドラゴン退治の恩賞、いわゆるボーナスを発表しようとしてました。

 私は無理やり笑顔を作り大声でみんなに言いました。


「みなさん!今回のドラゴン退治。お疲れ様でした。特別ボーナスを発表します!」


「うおおおおおおおお!」


 皆さんから歓喜の声が上がります。

 

「皆さんの倒したドラゴンで作った装備を皆さんに進呈します!

地位に関係なく手元に残った分を山分けと考えてください。

加工資金はドラゴンの肉を売った金で作ります」


「うおおおおおおおおッ!」


 過去最高レベルのテンションでの雄たけびが上がります。

 ドラゴンで作った装備。

 それは全てドラゴンスレイヤーとなります。 

 オリハルコンのようなほとんど冗談のような存在ではなく王侯貴族の一握りが持つ手に入る中では最強の装備。

 それもほとんどはドラゴンの巣から鱗を盗んできただけのものです。

 ドラゴン退治の物語り付きの装備ですからその価値は博物館展示クラスになると思われます。

 半分は王家に献上することになりますがもう半分は私や皆さんで山分けすることにしました。

 簡単に言うと『みんな頑張ったから高級外車あげちゃうぞー!』ってな感じです。

 みなさんの眼がハンターのそれに変わります。

 それを見た私は今が好機と判断し演説を開始しました。


「でも野郎ども!ここに一つ問題がある!

ドラゴンを運ぶ街道は山賊、ごろつき、追いはぎが好き放題やってやがる!

いいのか?お前らのドラゴンちゃん盗られちまうぞ!」


「よくねー!ふざけんな!俺のドラゴンちゃんに手を出したヤツはぶっ殺す!」


 ヤジが入りいくつもの笑い声が響いた。

 私はそれを聞いてニヤニヤしながら続けました。


「だよなあ!だよな!だから野郎ども!

今からアイツらに地獄見せんぞ!」


「おおおおおおおおおッ!」


 力強い声!

 そうです。自分のドラゴンちゃんの未来がかかっているのです。

 必死にならないはずがありません。


「おっしゃー!それでこそ俺の舎弟だ!

領主私兵!犯罪捜査専門の部署を立ち上げろ!

お前らは今から警察官と名乗れ!」


「承知致しました!」


 元気良く彼らが答えました。


「守備兵団!今度こそ街道の大掃除だ!

警察官と協力してヤツラを根絶やしにしろ!」


「イエスマイロード!」


 守備兵団の声が響き渡りました。

 これは『守備兵団の持っている捜査権を警察に委譲するよ』くらいの暴論でした。

 ですが異論は出ませんでした。

 なぜなら彼らはドラゴン退治で死線をくぐったマブダチどうし。

 最初から違う組織なんて認識はなかったのです。

 もちろん武器商人にいい様にされていた苦い経験もあったのでしょう。

 そして最後に私は言いました。


「残された期間は最悪の場合で2ヶ月。

それを過ぎると新しい武器商人がやってきてまた同じ状況に戻っちまうぞ!

あとで警察官は俺の部屋に来い!以上解散!」


「ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!ア・ニ・キ!」


 嫌なアニキコールが響きます。

 そんな私の胸に押し寄せる感情。

 それは圧倒的なまでのコレジャナイ感でした。

 最近どんどん女という生物から離れていっているような気がします。



 演説の後、私は領主私兵改め警察官を執務室に集めました。


「みなさんお疲れ様です。

ではこれからの事を話しましょうか」


「アレックス様。そのことなのですがご報告がございます」


「なんですか?」


「警察でしたか。新たな組織の設立。準備完了いたしました」


 あれ?もうやってたの?

 資金は?大丈夫なの?


「あ、あの……わ、私、お金渡してませんよね?大丈夫でしたか」


 まずい。失敗した。

 ちゃんと予算回しとけばよかった!

 私は頭を抱えます。

 ところがガチムチアニキ達の反応は私の予想とは違っていたのです。


「え?頂戴しましたよ」


「うん頂戴しましたね」


「はい。確かに」


「ん?」


 あっれぇ?


「最初に頂いた大量の金貨で本部を借り事務員や各種手続きなどの手配を済ませました。

こちらが明細書です」


 あれ?

 そこで思い出しました。


 では、この一ヶ月分の給金をどう使うのか?それをテストとさせていただきましょう!

 では、この一ヶ月分の給金をどう使うのか?それをテストとさせていただきましょう!

 では、この一ヶ月分の給金をどう使うのか?それをテストとさせていただきましょう!


 あれマジでギャグだったんですけど……

 さすがギルさんと同郷の人たち。

 真面目すぎる! 

 なんかすごく可哀想なことしたぞ!

 ヤバイごまかさないと。


「ウ、ウン。ヨキニハカラエ」 


 私が不審者になりながら裏声でそう言うとガチムチアニキのリーダーが続けました。


「ついては遊牧民の女性達を雇用するお許しをいただきたく思います」


 それは面白い。けど……


「でも大丈夫ですか?犯罪者が取り締まる側に回ったら相当な反発がありますよ」


「それに関しては大丈夫です。守備兵団や我々の裏方をやっていただきます」


 なるほど。と納得。

 その時私は気づいてませんでした。

 そこに彼らとゼスさん以外の守備兵団全員がグルになった陰謀があることを。

 とは言っても大したことではありませんでした。

 守備兵団と警察官。

 厳しい規律と鬼軍曹に監視される生活。

 女の子と遊ぼうにもゼスさんという鬼がいるのです。

 ゆえに彼らは出会いに飢えていました。

 そこに現れた超絶美形の集団。

 いえ。お嫁さんにしたいとかそこまでは彼らも考えていません。

 ただ近くに置いておきたかったのです。 

 生活に潤いが欲しかったのです。

 綺麗なものが見たかっただけなのです。

 うん。なんでこいつらの心情が痛いくらいわかるんだ?


「ではその分の代金をお支払いいたしますので見積もりだしてください」


「は!」


 ピコピコピコーン。と音が鳴りそうな感じで高感度が上がったようです。

 わかりやすいなこいつら。

 そこで私は重要な事を思い出しました。


「あ、そうそう。

商人の護衛の件ですがそろそろ細部をつめましょう」


「もうすでにドラゴン退治のあとから実施致しておりますが?」


 はい?もうやってるですと?

 焦る私。その脳裏にあることが浮かびました。

 それは私をモデルにした例の演劇の事です。

 

 『この度、王都公演が決まったそうです』

 

 護衛が機能してるから可能だったのか!

 そう心の中で納得し瞬時に警察全体の経費を計算。

 それを渡したお金から引いて残りを彼らの人数で割ると……

 守備兵団の見習いの給料の3分の2ほどでした。

 まずい……非常にまずい。

 ほとんどただ働きさせてた!


「え、えっと皆さん」


「はい」


「こ、これで試用期間は終わりです。

よ、良くぞこのブラック企業的な理不尽に耐えられた!

本当の給与を与えます!」


 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


「そ、そんな勿体のうございます。

今でも寮にいれば食事は無料。

護衛に行けば商人が食料出してくれますし。

お金なんて溜まるばかりです」


「たまにお菓子も酒も買えるしのう!」


 ブワッ!私の涙腺が崩壊しました。

 ごめんよう!ごめんよう!

 まだやってないと思ってたんだ!


「い、いえ。皆さんには警察官たる重要な地位の職務を遂行するだけの報酬を受け取る義務があります。

なるべく急ぎますんで数日待ってくださいね!」


「かしこまりました」

  

 ホントごめんなさい。

 こうしてこの世界初の犯罪専門部局が立ち上がりました。

 あと2ヶ月でごろつきどもに地獄を見せねばなりません!

 ゲラゲラゲラ!見てろぉ!

 そう私は心の中でほくそ笑むのです。

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