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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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新しい舎弟

 最近変な夢を見ます。

 起きてるときは覚えてませんが。

 寝ているときだけはハッキリ思い出せます。

 夢の内容は前世のものです。

 それも勇者に殺されたときのダイジェストです。

 疲れてるのかな?

 ですが何か重要なことのような気もします。

 細部が記憶と違うんですよね。

 例えば私がショタドラゴンを手篭めにしようとしたときの女勇者。


「クラウディア。君がボク以外を見るからいけないんだ!死に行くキミの前でこのドラゴンを犯してやる!」


 こんな台詞ありましたっけ?

 この女勇者おかしいです。

 そう言えばその前の女勇者の台詞もおかしいです。


「クラウディアどうしてキミはボクを拒絶するんだ!人類なんてどうでもいい。ボクだけを見てくれ!」


 その前もその前も。


「クラウディア!せっかく僕が男に生まれたのにそんなはしたない台詞を言うようになってしまって……キミを殺して元の美しいキミに戻してあげる」


「クラウディア!ボクはこの世界ではキミと会うこともできない立場なんだ。それならいっそ一思いに」


「クラウディア!君のいない世界なんてもういらない。ボクに口づけをしてるこの愚かな男を殺してキミに捧げるよ」


「クラウディア!キミを男なんかに渡さない!」


「クラウディア!キミを女なんかに渡さない!」


「クラウディア!キミを殺すことでボクはキミを手に入れる」


「クラウディア!愛してる」


「クラウディア!」


「クラウディア……」


「クラウ……」


 これは何でしょうか?

 どれもこれも上級者向けすぎて何がなんだかわかりません。

 つうかほとんどが相手女ですよね?

 欲求不満すぎて脳がバグッたのでしょうか?

 にしてもクラウディアって誰?

 夢の中でも思い出せません。

 そんなことを考えていると夢と言う記憶の整理作業が終わり、徐々に私の意識が覚醒していきます。

 こんな重要そうな夢の内容も起きた頃には全て忘れてしまうのでした。



 みなさんこんにちは。アレックスです。

 最近、我がセシルの街がエライことになってます。

 事の始まりは調子に乗った守備兵団の若いのとガチムチアニキがバイロンの死体を運んできたことです。

 次々と現れる見物客。

 彼らは最初はバイロンの死体を見て驚きます。

 次の日には誰がドラゴンを倒したのかの話題で持ちきりになります。

 そして守備兵団とガチムチアニキ、そして私の仕業だとわかると私の家に巡礼に来るようになりました。

 正直言ってうざいです。

 めんどくさかったのでガチムチアニキ達に全部守備兵団がやったことにする情報操作を頼んでいたのですが……

 なぜか事態は真逆に動き、仕舞いには全て私の仕業という事になりました。


 初めて見るドラゴンの死体。

 それに創作意欲を刺激されたのは演劇一座や芸人たち。

 彼らも最初の頃は事実を忠実に再現。私がバイロンから落下して気絶するところまで面白おかしく演じていたようです。

 私は親しみやすいキャラを自認しているので残念キャラは望むところです。

 ところがいつの間にかコメディだったはずの演目がバイロンの脅威から部族を救う英雄の物語になっていたのです。

 

 汚い陰謀によって追放された王子が与えられた領地にやって来るところから物語は始まります。

 領地に来た王子が見たもの。それは遊牧民の略奪に怯える農民の姿でした。

 義憤に駆られ略奪をする辺境の部族の野営地に乗り込む王子。

 そこにいたのは邪竜バイロンに女子供を人質にとられ強盗を強要される男たち。

 王子が女子供を救出。

 妻や子供との感度の再会。

 そして竜に脅されて強盗を働いた己を恥じ贖罪と名誉のためにバイロンに戦いを挑みます。

 次々と命を落とす部族の戦士たち。

 クライマックスシーンは名誉のために死んだ友の為、忠誠を誓った騎士と部族の姫を引き連れ邪竜バイロンと戦う王子の活躍です。

 族長との熱い友情。そして別れ。涙涙の展開。

 娯楽の少ない男爵領ではみんなが一度は見ている大人気作品です。

 


 つうか誰だそれ!責任者出て来い!

 


 この度、王都公演が決まったそうです。

 あー部屋から出たくないです。かなりマジで。



 ホルローは領主の執務室で英雄の到着を今か今かと待っていた。

 部族を滅ぼしたドラゴン。

 それを倒し部族の全滅後に永遠に世界を彷徨う運命だった祖霊をも救った男。

 騎士とかいう男たちが言うにはホルロー自身の命も救われたらしい。

 ドラゴンが爆発した後の事は何も覚えていないのでどこまで本当なのかわからないが。

 そんなことを考えているとドアがノックされた。


「はいはい。アレックスちゃん入りますよー」


 高い声。

 竜殺しを成しえる戦士であるならハゲ頭でヒゲを生やした熊のような大男に違いないと思ったが違うようだ。

 部族のものも貧弱で華奢な男ばかりであったが最後まで勇敢に戦った。

 決め付けはよくない。反省しなければ。

 声の主が部屋に入ってくる。 

 期待に胸を膨らませたホルローの見たもの。

 一人は期待通りの大男。ハゲてはいないが。

 そしてもう一人はどこからどうみてもただの子供だった。



 目の前の女子が私とゼスさんを見ています。

 見た目は十代前半。

 異常なほどの美形。

 浅黒い肌。とがった耳……

 ダークエルフですよね?

 まあいいです。とりあえず置いておきます。


「ふむ。お前が竜殺しの英雄か」


 そう言って目の前のお譲さんがゼスさんに話しかけます。

 確かに彼女の言ったことは間違っちゃいません。

 私はトドメさしちゃいませんし。


「今回の竜殺しは我が守備兵団と領主アレックス様によるものである」


「領主?ああ族長のようなものか。ではそこの小さいのが族長なのか?」


「そうだ。領主のアレックス様だ」


「うむわかった。大いなる族長ドルゴルスレンの長女であるホルローだ。よろしくな。んでそこのでかいの。お前は誰だ?」


「守備兵団団長のゼスだ」


「そうか。よろしくな」


 挨拶はすんだようです。

 さて真面目なお話っと。

 ところが目の前のお嬢さんは私の方を見ると、とんでもないことを言いやがりました。


「我が部族は全てお前のものだ。好きにしろ」


「いりません」


 私は即答します。

 シルヴィアでさえ持て余しているというのに!

 おまけに謎のヤンデレまで現れました。

 私のMPは最早ゼロです。


「なぜだ?あの時、我らはドラゴンの獲物であった。

所有物と言っても過言ではないだろう。

ドラゴンを殺したお前はドラゴンの全てを強奪しなくてはならない。

ゆえに我らはお前のものになるのが道理だ。

たくさん子を作り更なる繁栄をするがよい」


 だめだこいつ。文化が違う。


「5才児に無茶言わんでください!」


 私は一応反論します。無駄でしょうが。

 すると目の前のアホ娘はとんでもないことを言い出しやがりました。


「お前。男色野郎か?」


「ちちちちちちちち、違いますよ!」


 私は必死に否定します。

 超必死に否定します。

 クソあやしい動きをしながら弁解する私。

 ゼスさんあたりに自分は女ですと主張したが最後、男の中の男にされてしまうに違いありません。

 

「男にときめく?それなら男を磨け!男の中の男になれば悩みなどなくなるのだ!まずは指立て200回!」


 容易に想像できました。

 それだけは嫌なのです。

 目の前のアホ娘はそんな私をスルーしてくれました。


「では問題ないな」


「だからあ!」


 頭を抱える私を見てゼスさんが割り込みます。


「アレックス様。食料強奪の件をお願いします」


 あ、忘れてた。


「貴方たちの部族はここセシルの街を襲撃して周辺農家から食料を強奪してましたね?」


「うむ。我らのために作ってくれてありがとう」


 殴りたい。

 目の前のアホアホ娘と話すのが嫌になったので話題をゼスさんに振ります。


「ゼスさん。こういうときはどうしてますか?」


「窃盗は罰金。強盗は利き手を切断です。ですが今回の件は生き残りが女子供だけですから量刑は罰金、資力はないでしょうから労役をもって罰金に当てるのが慣習に則しております」


「その線はなしで。仕方ないので私が払いますよ」


 女子供の労役はバカスカ死ぬので嫌いです。

 それに相手がダークエルフなら魔族です。

 私が保護しなければならない存在です。

 たぶんゼスさんも労役の件をわざと言ったのでしょう。

 そういうの嫌いなの見透かされているようです。


「うむ。我が部族全ての女を妻に所望か。さすが竜殺しの戦士だな」


「いーりーまーせーん。よーく聞いてくださいね!

貴方の部族はこれから全員私の舎弟です!

私の女ではなく舎弟ですから勘違いしないように。

借金分働いてくださいね。わかりましたね!」


 できの悪いツンデレのようになってしまいました。

 とりあえず舎弟でいいです。

 考えるのがいやになったではありませんよ!

 ふと横を見るとゼスさんが必死に笑いを堪えてます。

 ひでえなおい。

 アホ娘は頷くと真面目な顔で言いました。


「あいわかった。たくさん子供作ろう」


 何一つわかってねえ!

 仕方ないのでアホはスルーしてゼスさんに話を振ります。


「ゼスさん。街の人たちの感情はどうですか?」


「最初は恨み骨髄に徹すといった具合でしたが演劇のおかげで同情的な意見に変わったようです」


 うわぁそこまで変わるのかよ。メディアの世論工作ってマジで怖いわー。


「誰が仕掛けたんですか?あの世論工作」


「ニコラス殿です」


 ニコラス?誰?

 んー?って理事長じゃん!


「あーのーボケェッ!!!」


 私はこめかみに血管を浮かべながら指をポキポキ鳴らしこれから始まる制裁へのウォーミングアップをするのでした。

 

 後日、演劇のストーリーに族長の娘とのラブ話が加えられました。

 たぶん理事長の嫌がらせでしょう。

 関係者は精神的余裕が出来次第泣かしますので覚悟してください。

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