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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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三千大千世界全てのソロプレイヤーに捧ぐ

 私はガクガクブルブルと震えていました。

 今になって勇者を詐称したことが巨大なブーメランとなって返って来ました。

 このままでは前世が魔王ということがばれてしまいます。


──隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃ隠蔽しなきゃお尻ペンペン


──落ち着けアレックス。バイロンはどちらにせよ殺す。我という可愛い婚約者の仇なのだ。


――あんたね!まあいいです。バイロンってどんなヤツですか?


――ううー。あいつ超嫌いなのだー。キラキラして女侍らして喜んでるやつなのだ。本人弱いのに装備だけ全部オリハルコンだし。


──なるほど、清清しいまでのリア充ですね。ぶっ殺します!


「会いたかったぞガラハッド。ドラゴンに身を落とした今だったらお前の気持ちがわかる。

あいつらはお前を殺した後に俺を裏切った。

わかるか?姫は俺に色目を使ってたときに賢者ともデキてたんだよ!」


――NTRれたんですか?


――あの性格だしの。我の配下のサキュバスまで手を出してたのだ。自業自得なのだ。


「そうだ一緒に人類を滅ぼそう!

俺たちを裏切った世界を滅ぼそう!

お前だって女に裏切られたから魔王やってんだろ?」


 女に裏切られたから魔王やってんだろ?

 女に裏切られたから魔王やってんだろ?

 女に裏切られたから魔王やってんだろ?


 ん?

 そ、そ、そ、そんなイベント体験したことがありません。

 つかマジで世の中の人々はそこまでリア充なのでしょうか?

 ないわー。

 ないよねー?

 ないって言えよコラ!

 私はバイロンに反論します。


「……お、お、お、女なんていたことねえし(震え声)」


「照れんなよ!そんなヤツ存在するわけねえだろ!」


 存在するわけねえだろ!

 存在するわけねえだろ!

 存在するわけねえだろ!

 存在するわけねえだろ!

 存在するわけねえだろ!


 んぎゃあああああッ!


 なぜリア充の言葉はここまで私の心を抉るのでしょうか?

 私には魔王時代にNTRれる男が存在したことなど一度もありません。

 常にソロプレイです。お一人様なのです。

 目の前のリア充は私やシルヴィアはこの世に存在しないとでも言いたいのでしょうか?

 こんなんでも健気に生きているのです!

 罰ゲームのような転生を何度も繰り返し、その果てにようやく友達ができたところなのです。


 ひ、人よりちょっと成長が遅いだけだし!

 誰とでも寝る男なんて欲しくねーし!

 リア充なんて羨ましくねーし!


 ……前言撤回です。リア充が憎い。

 リア充だけは許さない!

 

──NTRれる女なんていねえッ!最後には部下に女と会話できないのがバレて『キャハッ!魔王様キモいー』とか影でバカにされてたのだ!


 シルヴィアもキレました。

 つうかあんたの前世インサーンモードだったのですね。

 私は怒りのあまり震えます。


「勇者バイロン。貴様は私を怒らせた!いや全次元の全ての世界のソロプレイヤーを怒らせた!」


 私は力強く宣言しました。

 そうです。怒らせたのです。

 これは義憤です。

 決して羨ましいからじゃありません!

 

「三千大千世界全てのソロプレイヤーのために貴様を倒す!」


 私は剣の魔力を解放します。

 全てのぼっちよ私に力を貸してください!

 

――シルヴィア!光属性の大きいの撃ってください!


――らじゃなのだ!


 魔法使いがいる時の戦術的な定石。

 それは前衛が壁役として時間を稼ぎその間に最大威力の魔法を詠唱というものです。

 私はそれを忠実に実行します。

 ただし壁ではなくアタッカーとして時間稼ぎしますがね。


「薄汚い魔王がいまさら勇者のフリかよ!」


 そう言ったバイロンは口を開け私めがけて小さい闇属性の炎をいくつも吐いてきます。

 さすが勇者です。喧嘩のイロハはわかってらっしゃる。

 小さくて早いやつ相手なら手数を増やせばいいのですから。

 

 でもこいつバカです。

 勇者でありながら闇属性相手でのオリハルコンの理不尽な性能を学習していないのですから。

 

 私は魔力を解放したオリハルコン(で磨いた)剣を無造作に振ります。

 その瞬間、炎は消滅。

 バイロンは口を開けたまま固まりました。

 

「あんた。救いようのないバカですね」 

 

 私は片手で気功を練り手をドラゴンにかざします。

 間髪いれず発射。

 それはただの気功弾。

 ですがオリハルコンの効果でドラゴンスレイヤー効果がついてます。

 爆発音。気功弾はバイロンの顔面を捉えました。

 よろめき白目をむくバイロン。

 私はそのまま気功で加速。

 バイロンの足元に移動します。

 狙うは足。

 私は容赦なく足の小指の先に切りつけます。

 

 バイロンの悲鳴。

 

 「あひゃひゃひゃひゃ!小指を壁の角にぶつけたら痛いですよね?痛いですよね?」


 まさに外道!あひゃひゃひゃひゃひゃ!苦しめリア充。

 私がヘブン状態でいるとシルヴィアから念話が入ります。


――アレックス。魔法詠唱完了なのだ!撤退するのだ!


 悶絶するバイロンを尻目に私は全力で逃げ出します。

 さすがに巻き込まれたら死にますからね。 

 バイロンから背を向け必死に逃げる私。

 そんな私の目に変なものが映りました。

 それは女の子。

 10歳になったかならないかくらいです。

 それが巻き込まれると確実に死ぬ範囲にいました。

 このときの私は念願の暴力を振るったためか少しだけ賢者モードになっていたのかもしれません。

 なぜか気がついたら女の子の方へダッシュしてました。

 女の子をひったくるように地面から攫いお姫様抱っこしてダッシュ。

 近くにいた馬に乗って全速力で逃げます。

 そして私の見たもの。

 それは半径数キロにも及ぶ巨大な光り放つ魔法。

 それが発射される瞬間でした。


 うわああああああああッ!死ぬ!死ぬ!


「ガラハッド。たとえ俺を殺そうとも第2第3の勇者がやって来」


 最後まで言い終わらないで光に飲み込まれるバイロン。

 最後まで私をガラハッドだと勘違いしたままでした。

 私はガラハッドの弟子なのですが。 

 ってそんなこと考えてる暇なんてない!

 後ろから迫る光。

 オリハルコンで強化されたはずのお馬さんも必死こいて逃げてます。


 そして背後から爆音がしたかと思うと凄まじい爆音が起こり私たちは馬から投げ出されました。



 目を開けるとお馬さんが見えました。

 元気そうです。

 私はお馬さんに大丈夫?とアイコンタクトします。

 お馬さんも俺はやりきったぜ!と誇らしげです。

 そんなお馬さんの尻尾が焼ききれてなくなっている事実は伝えないでやりましょう。

 なにこのやり取り。

 

 女の子の姿を探します。

 すぐ近くに倒れてました。

 口の前に手を置くと息はしてました。

 あー良かった。

 私は女の子を抱きあげ馬に乗せます。

 すぐ前に守備兵団が見えました。

 私は手を振ります。

 彼らが私を指差します。

 もうやだなー。

 そんなに誉めてくれなくてもいいっすよー。

 でへへへへへへへへへ。

 お馬さんが後ろ振り向いたかと思うといきなりダッシュしました。

 なによー!

 もうちょっと余韻があってもいいじゃない!

 そう私が憤慨していると私の体が宙に浮きました。

 

 あれ?


 なんかおかしいなと思い後ろを振り向く私。

 そこにいたのは体が半分吹っ飛んだバイロンでした。

 そうです。

 私はバイロンに襟をガッツリ掴まれていたのです。


「えーとバイロンさん?まだ生きてたんですね?いやもう最強ッスね!この色男!」 


 自分の頭を叩きながらテヘペロ。

 見苦しい?

 黙らっしゃい!

 私は隙を作るためならなんでもします!

 

 私はこんな時だからこそバイロンを深く観察します。

 濁った目で血を噴出しながら浅く息をするバイロン。

 死期は近いでしょう。

 ああダメだ。こりゃもう闘争心だけで動いてる状態だわ。

 交渉なんてできません。

 ここで相手が打てる手はなんでしょう?

 ドラゴンブレス?

 ツメ?

 踏み潰し?


 そう私が考えているとバイロンは大きく口を開け私を口の中に運んで行きます。

 咀嚼!っちょ!いくらなんでもその死に方はしたことないです。

 私は焦りまくって足をじたばたさせてました。

 気功?

 ですよねー。ですよねー。

 使えばよかったんですよねー。

 焦りすぎて忘れてたんです。

 だってこのときの私。

 なぜか魔法詠唱してたんですもの。使えないのに。

 1000年の習慣って恐ろしい。


 狼狽し使えもしない魔法詠唱をする私。

 しかもその時詠唱してたのは隕石落とすやつ。

 シルヴィアのマナの残りカス集めたってそんなのできません。

 迫るドラゴンの口。


 シルヴィア助けて!


 完全に負けパターンにハマった私が友人に祈った瞬間でした。

 

「突撃いぃぃぃぃぃッ!」

 

 それはゼスさんの声でした。

 守備兵団の面々が立ち上がったのです。

 彼らはオリハルコン武器、弓を番え、槍で突撃し、ひたすら斬りかかりました。

 隙ができたのを確認。

 精神的余裕ができた私は剣でバイロンの指に斬りかかりました。

 落下する私。

 うん。何も考えてませんでした。

 すると聞こえてくる声。


「アレックス手を伸ばすのだ!」


 シルヴィアでした。

 私は滑空するゴキブリのような気持ちの悪い動きをしながらシルヴィアの手をとります。

 ガシッと手を組む私たち。

 友情の勝利です。と私余計なことを考えた瞬間、手がすっぽ抜けました。


「あ?」


「あ?」

 

「うああああああああああああッ」


 私はそのまま落下。

 気功で飛ぶ?

 忘れておりました……

 私は背中から地面にたたきつけられました。

 そんな惨めな私が薄れいく意識の中で見たもの。

 それはまるで蟻のような人間たちによって集って攻撃され崩れ落ちるバイロンの姿でした。


 この日、勇敢なる我が男爵領守備隊はドラゴンを討ち取りました。

 動員数計120名。(全員オリハルコン装備)

 守備兵団5名軽傷。領主私兵ガチムチアニキ1名軽傷。領主1名全治2週間(私)という華々しい戦果でした。

 田舎の守備隊とはいえ正規軍によるドラゴン討伐という快挙です。

 このとき私はドラゴン討伐できたしこれで遊牧民問題も解決し、ついでに武器商人も難癖つけてシメられるなあと甘いことを考えてました。

 

 王女の婚約者が絵物語にあるようなドラゴンの討伐を成しえてしまったこと。

 ドラゴンを討伐できた兵力が存在すること。

 武器商人以外から調達した謎の武器。

 詐欺の件もあり完全に恥をかかされた形になった武器商人。

 そして女子供ばかりの遊牧民の行方。


 それらがどう転ぶかなんてこの時点では考えもつかなかったのです。 

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