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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第2章 内政編 議会議員の司教を脅迫したら追放されたでござる
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鉱山見つけました。ええ見つけましたとも。

 ハローエブリワン。

 今私はソロでお出かけしてます。

 夜のうちに屋敷を抜け出したとかじゃないんですからね!

 チクッたらマジで殴りますからね!

 ……さてここで近代以前の世界での魔王への就職講座をはじめます。

 まず適当な魔族を一匹捕獲して半殺しにします。

 そして助けに来た兄貴分を捕まえて半殺し、それを繰り返して芋づる式に全員ボコに。

 そして尋問(拷問)後、巣を襲撃。

 全員ボコにして舎弟にします。

 これを繰り返して舎弟が約1000を超えたあたりでいつの間にか魔王様と呼ばれるようになります。

 不思議ですね。(棒)

 さて、では実演しましょう!


「ドワーフどこじゃあ!クソダラァッ!この山にいるはずなんじゃあああああッ!」


 私はついさっき山で捕獲したオークのサブローくんの胸倉を掴んで揺すります。


「あ、アニキ!それ以上やったらサブが死んでまいます!」


「あ、あ、あ、アニキちゃうわぁッ!」


 抵抗する私を後ろから羽交い絞めにするのはゴブリンのゴロー君。彼もサブロー君の近くにいたところを捕獲しました。つうかアニキじゃないもん!女の子だもん!魂は。

 彼らは人間さんから隠れるように静かに暮らしてたところ私に襲撃されて永遠の忠誠を誓いました。

 永遠の忠誠までのやり取りは個人情報なのでカットします。ハイ続き!


「どうしても剣に魔力付加できる人材が必要なんじゃあああああッ!」


 私は叫びます!

 魔族じゃないけど魔族が住んでるところに多くいる種族。

 それがドワーフさんです。彼らは誰もが何でも作ってくれるスーパーマイスターなのです。

 ドワーフさんさえいれば輸入した武器や防具を加工して壊れにくいものにして守備兵団に供給。

 それにより損耗率を下げ、余った武器や防具を武器商人に売り、武器商人はそれを王都に持っていく。

 WINWINの関係を築く予定でした。

 ついでに鉱山があったら接収しようとも。

 ですが、いないのです。ドワーフさんが。

 なんでやねん。


「おうゴロー。なんでドワーフいないんじゃあ!」


「だって武器必要ないですもん。俺たちは人間怖いからなるべく山奥にいるし。山奥は人間住めないし。俺たち菜食主義ですから。だもんで農具の製作頼んでたらいつの間にかいなくなりました」


 草食系魔族ここに極まれり。

 ああああああああ!ドワーフが世をはかなんで逃亡しやがった!完全に詰んだ!

 私はここでは表現できないほどの汚い言葉で運命を罵ります。

 そんな私をさらにイラつかせたのは先ほどからピカピカ光るなにか。

 ん?ピカピカ?

 そう言えばサブの持っていたエモノも鎌でした。エモノといっても農作業用ですが。

 そう思いふと鎌に目をやるとなんかピカピカと光っています。

 光り?なんだか魔法的な感じです。

 付与魔法(エンチャント)か?

 そう思った私はサブを放り捨てて鎌をまじまじと見ます。

 え?この鎌に属性が……


「聖属性!これちゃんと魔力付与されてますよ。どうやったんですか!」 


 私は驚き興奮しながら早口で聞きました。


「なんもしとらんよー?なあゴロー」


「うちらの鎌はその辺で拾った石で磨いただけじゃしのー」


「おー。そうじゃな。えっと確か砥石。たしか持ってたと……」


 魔力付加できる砥石など聞いたことがありません。

 私が疑いの眼差しを向けているとサブが懐を漁ります。


「おーあったあった。これが砥石でごぜえます」


 サブが差し出した黄色い石。それは……


「オリハルコンやんけー!やんけーやんけーやんけーやんけー……」


 私のエセ関西人風の叫び声が山に響き渡りました。 



 鎌と砥石を奪った私は理事長のところにダッシュで戻りました。

 ゴローとサブローの気は覚えましたので逃げたら地の果てへも追いかけていく予定です。


「いやー見事に聖剣化してるね!この鎌。いや凄い!マジでその製法なの?」


 鎌を見て感嘆の声を上げる理事長。


「マジです。オリハルコンを砥石にしただけです」


「うーんオリハルコンの粒子が刃の表面の微細なくぼみに入って剣を聖剣化させたのかな?とりあえずは今のところは仮定だけどね。いやこんな簡単な製法があったとは……」


「貴重すぎて砥石にするなんて発想がありませんからね」


「だねえ。でも肝心の製法がわかってもオリハルコンが手に入らないとねえ。山の魔族もたまたま手に入っただけだろうしね……」


「……それが……あるんです。砥石にするくらいに……」


「え?」


 ゴローとサブローが住んでいる山。そこに落っこちている石。

 あれ全部オリハルコンです。

 それを伝えたところ口を開けたまま固まる理事長。

 そのままぷるぷると震えながら顔がどんどん真っ青になっていきます。

 そして再起動した理事長の第一声。


「君は国を世界を滅ぼすつもりかーーーーーーーーッ!」


 今回のは完全にイレギュラーバウンドです。

 私が探してたのはドワーフさんです。オリハルコンじゃありません。

 というツッコミは無駄です。すでに人でないくらいにキレる理事長。


 理事長がなぜここまでの過剰反応をすることになったのか?

 そもそもオリハルコンは国を買えるほどの価値があります。

 なぜならオリハルコンから作った武具は魔王相手のラストバトルで勇者一人で挑めるほどのでたらめな攻撃力になります。

 聖属性、各種パラメーターボーナス、攻撃回数ボーナス、使用回数無制限、魔力障壁無効、魔術反射、アンデッド消滅効果、悪魔族への攻撃ボーナス、ドラゴンスレイヤー効果、ピンチ時に助けた人の回想シーンから力を分けてもらえるイベント発生など理不尽な効果てんこもりです。

 絶対神もワンターンKOですし、雷も反射しますので死んだはずの兄の攻撃に耐え続けるだけのラスボス戦にも対応してます。

 ちなみに私が前世でショタドラゴンを手篭めにしようとして刺し殺されたときに勇者が持っていた槍もオリハルコン製です。

 で、あの山はその辺の石が全部オリハルコン。

 ついでに言うとおそらく他の山もオリハルコンの産出が予想されます。

 予想される総埋蔵量からオリハルコンの価格はおそらく大暴落すると予想されます。

 もともと値段なんてあってないようなものでしたけどね。希少過ぎて。

 つまりどういう事かと言いますと、この時点で覇権取りました。

 ぶっちゃけ世界征服できますし魔族を武装蜂起させれば人類を絶滅に追い込めます。

 国に手を貸して世界征服してもいいですし、私が自ら武装蜂起してもいいのです。

 後からシルヴィアの婚約者という立場を利用して国を頂けばいいだけですから。

 ですが同時に世界征服をできるということは敵が雪だるま式に増えるということです。

 たとえここで私が何もしなくても 私を男爵領へ追いやったことへの報復を恐れた教会が全力で殺しに来るのはこの時点でほぼ確定です。

 他国に売られるのを避けるために聖剣の商いでは信用できる商人以外、大部分の武器商人も省かれるでしょうから全力で殺しに来ます。

 私の死亡フラグですね。よくわかります。

 ですから私は高らかに宣言します。


「隠蔽しましょう!アカデミーで。

まずは王様宛に私とシルヴィア、それに理事長の連名でこの件の手紙書いて、ゼスさんのサイン入りの副本を私の実家へ送って判断を委ねましょう」


「人の口に戸は立てられないよ。賭けてもいい。絶対に漏れるよ」


「それでもしないよりはいいでしょう!山立ち入り禁止ですからね!

あとでシルヴィアにゴーレムとか死霊騎士作らせます!」


「だから君はなんで常にそうやって教会に喧嘩売るんだ!

アンデッドとかいい加減にしろよ!」


 私たちが醜い言い争いをしていると、いきなりドアが開け放たれました。


「ただいまなのだー!鉱山見つかったぞー!」


 シルヴィアでした。

 私と同時期に魔法で鉱山を探索していたのです。

 そして何かの原石を机に置きました。

 それは大人の拳ほどの石でした。

 やはり他にもオリハルコンがありやがりましたか……

 そう絶望感にさいなまれながら私は石を詳しく観察します。

 それは緑色の石でした。

 オリハルコンは黄色っぽい金色なのでこれはオリハルコンではありません。

 もしかしてこれは……


「……これは翠玉だね。この土地……完全に終わったね」


 それは死刑判決でした。

 この石は翠玉つまりエメラルドの原石です。

 オリハルコン鉱山と一緒にエメラルド鉱山まで見つかってしまったのです。

 宝石産出してラッキーじゃん。そう思う人は多いでしょう。

 それは全く違うのです。

 ただでさえ食い物にされているこの土地でのエメラルド鉱脈の発見。

 それがどういうことを引き起こすのか?

 それは中央の商人が本気になって食い物にしてくるフラグなのです。

 なぜなら我々には加工する力も販売力もないのですから。

 採掘すら無理でしょう。

 それに産業用への転用も無理です。この世界にはまだレーザーないもん。

 採掘もできない。加工もできない。使い道もない。宝石として売るルートすらない。

 そのような致命的な弱みがある以上、対等なビジネスパートナーではなく、食い物にする獲物としてしか認識されないでしょう。

 せっかくの鉱山も領地の外から来た労働者、同じく外から来た商人によって富は大部分が中央に運ばれ、この土地はますます疲弊していきます。

 それがこの領地の未来です。


 具体的な手順としては、まずごろつきや遊牧民に武器を販売。組織化された彼らに山を支配させます。

 そこは売春に麻薬に暴力が渦巻くヒャッハーシティ。

 ヒャッハーシティには農家の次男坊以下の労働者が仕事目当てに集まります。

 そこで生まれる爆発的な需要。ただしその上前は全て中央へ送られます。

 労働者にもたいしてた金額は分配されません。

 そして起こる暴動。街をいくつものグループに分割してその全てに武器を配布。

 血で血を洗う抗争で武器商人大儲けです。

 そして富だけは中央へ。

 たぶんこの時点で私たちの命はなく中央政府も全く手を出せない土地になっていると思われます。

 そして男爵領では労働者やごろつきが永遠に殺し合いを続け、売り上げとエメラルドやオリハルコンは武器商人に貢ぎ続けられます。

 間引き代わりに人が集まり続け、人が死ねば死ぬほど儲かるという商人にとっては最高のシステム。

 それが実現してしまうのです。魔王だってそこまでの非道はしません。

 人様の命を散らして焼け太りするダメな王なら革命を起こして殺してしまえばいいのですから。


 私はこの時点で本気で心が折れそうでした。

 なぜ……鉄とか銅とか石炭ではないのでしょう。私がなにか悪いことしましたか?

 

「とりあえず守備兵団団長のゼスさんと商工会のローレンスさんを呼びましょう」

 

 震える声で私はそういうと机に突っ伏しました。

 私は圧倒的な絶望感に打ちひしがれ涙で前が見えませんでした。

7/11 直したはずなのに直ってなかった誤字脱字をもう一回修正……あれー?

7/12 地球の裏側 → よく考えたら地球じゃないじゃん! → 地の果て

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