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真実の愛ですか?おめでとうございます

作者: 5H
掲載日:2026/03/29

「アーシャ愛幸国第二王子アルバートがここに宣言をする。ルキアール公爵家当主ユキノア。私は真実の愛に巡り合った。愛の女神アーシャ様の愛し子でもあるベルモナド伯爵家長女リリアージュだ。婚約を破棄する。真実の愛を祝福してくれ。」

真実の愛の宣言をした。

殿下がリリアージュ嬢を伴い壁際のユキノアに近づいてきた時からユキノアは「拡声」「同時通訳」と小さく呟き、声を隅々まで響かせ聞こえるように魔法を発動させた。

まわりにはルキアール家の分家や親戚が居たが、表情は皆固かった。

近くにいた令嬢達はその時を見逃さず楽しむように扇子で口元を隠し目は嘲笑っていた。

「ルキアール公爵家当主ユキノアがお答えいたします。アーシャ愛幸国第二王子アルバート様が、真実の愛と巡り合った事お祝い申し上げます。女神アーシャ様に許され、お二人が末永く幸せにお過ごしできますよう心からお祈りいたします。おめでとうございます。」と定型文を伝えた。

まわりからは拍手と歓声があがった。

「殿下おめでとうございます。」

「リリアージュ様。真実の愛の宣言おめでとうございます。」

そこの小さな場所だけが興奮状態で、まわりから距離を置かれた事に気がついたものはその中には居なかった。

カーテシーをし、そう答える事は愛の女神アーシャ様が建国した愛幸国では決まっている。

近隣諸国からは、結婚を反対された者が集まった。

駆落ちしてきた貴族と平民の身分差婚。獣人と人間の一族から反対された他種族婚。竜人の運命の番から逃れたい人族や獣人の竜人拒否婚。同性婚も全て入国の際、愛の女神アーシャ様の神水晶に触れ真実の愛が証明されれば入国と結婚が認められた。


今日は王立魔術学校の卒業式が昼間に行われ、夜は王宮で全貴族、留学生の家族や近隣諸国の来賓が招かれ夜会が開かれていた。

ユキノアは殿下からドレスを贈られることも無く、連絡も無かった為、叔父を伴い入場していた。


3歳の時に王家からの申込みで婚約が成立していたが季節の挨拶の手紙、お互いの誕生日の花、二ヶ月に一度の茶会など最低限の付き合いに留めていた。

此処半年はユキノアから卒業に向け忙しい為と断っていた。

お互いに六歳から王立魔術学校に入学していたが、クラスは成績順位で決まる。ユキノアは、卒業まで特級クラスにいたが、殿下と同じクラスになる事は一度もなかった。


ここ一年の学校内の二人の噂や食堂などの様子を見ていたので、国王夫妻には二人の調査結果も送り対応を待ったが回答は無かった。

数々の不貞の証拠も揃えて準備をしていたが、今日宣言をされる事は事前に知っていた。

雰囲気が落ち着いてきた頃ユキノアが話しかけた。

「殿下。確認したい事がございますがよろしいでしょうか?」

まわりからの祝福の声に機嫌を良くした殿下が答えた。

「許す。申してみよ。」

まだ国王夫妻、王太子夫妻は入場されていなかった。その時間での真実の愛の宣言だったからだ。

「国とルキアール公爵家当主との伝承の約定も同時に破棄されますが国王様の許可は取られましたか?」

と問いかけた。

「愛の女神アーシャ様が神話に基づき愛し子のリリアージュと共に国を守って下さる。」

胸を張り堂々と答えた。


ルキアール公爵家には当主のみに伝承されている約定がある。

民は、親から子へ孫へと

「ルキアール公爵家当主様がこの地を守ってくださっている事を感謝し決して忘れてはならない。」

貴族も当主、当主にならない末子まで

「ルキアール公爵家当主は国の存続の要である。伝承の約定であっても決して感謝を忘れてはならない。何人とたりとて干渉してはならない。」

どの時代でも当たり前のように継承されていた。

しかし時代と共に王が変われば政も変わる。

五世の祖や高祖父母の時代には当たり前の様に伝えられてきた事が、ルキアール公爵家の名前が消え、女神アーシャ様が国を守っている神話と変化し、お伽噺となった。

四大公爵家の一つであるルキアール公爵家の力を削ぎ落としたい政の歪みだった。


「では今この時を持って、王家からの真実の愛の宣言による婚約の破棄、国とルキアール公爵家当主との伝承の約定も破棄されます。」

ユキノアは魔空間から魔法契約書を取り出した。

本来であれば国王夫妻の署名がいるが、殿下が今日魔術学校を卒業し王位継承権の資格を得た。公の場所の発言は口頭でも認められるようになった日でもあった。

白銀の光と共に魔法契約書が半分に分裂し消滅した。

大量の光が空高く四方八方に広がっていった。ユキノア続けて言った。

「愛の女神アーシャ様が作成された魔法契約書通り、王家から真実の愛の宣言によって破棄された場合は、ルキアール公爵家当主達が永きに渡り命を削って守ってきた国の結界の防衛対価、婚約破棄の慰謝料、ルキアール公爵家が国に無償提供していた魔道具の正規貸出使用料の全てを一括精算、魔道具も返却となります。国庫で支払いが出来ない場合は愛幸国の地下資源から魔石、魔鉱石、宝石、他代価となるもの、での「自動掘削」精算となる事は明記されております。

ルキアール公爵家と血族は全ての役職を辞して竜皇国へ帰還し竜皇国ルキアール公爵家として復権いたします。」


国王夫妻と王太子夫妻が顔色を変え慌てた様子で走り入室してきた。

同時にユキノアの前に四人が頭を下げた。

「本当に本当に申し訳ございません。どうか国民の命を守る国の結界を解除する事はお待ちください。一括精算、魔道具を返却した場合、国が立ちいかなくなってしまいます。どうかお許しください。」

国王様が青白い表情で叫んだ。

ユキノアはゆっくりと静かに答えた。

「愛の女神アーシャ様が作成された魔法契約書です。私にはどうする事もできません。殿下の真実の愛の相手である、愛し子のリリアージュ様にご相談ください。」

会場の貴族達は頭を下げる国王様をみて、はじめて深刻な状態である事に気がついた。

真実の愛の宣言で高揚していた会場の雰囲気が一気に緊張した張り詰めたものに変わった。

ユキノアが続けて言った。

「国王様、お顔をお上げください。アーシャ愛幸国の皆様が愛の女神アーシャ様に許され、末永く幸せにお過ごしできますよう心からお祈りいたします。」

国王様は第二王子とリリアージュを膝をつかせ地面に二人の頭を押し付けた。

「本当に本当に申し訳ございません。」国王、王妃、王太子、王太子妃も膝をついた。

ユキノアは表情を変えなかった。

「国王様、そして此処にいる全ての皆様。すでに魔法契約書は発動されております。時間がありません。国民の命を守る結界は全ての皆様の魔力量があれば維持出来ます。民からの税で暮らしている皆様には命をかけ民を守る責任と義務がございます。先程から「拡声」されているこの声は、はじめから全て「同時通訳」され全四大陸とその中心の竜皇国天空都市まで世界中隅々まで届けられております。」


会場にいたルキアール公爵家の血族や家族、見届けた留学生と家族、近隣諸国の来賓達が「移転」で次々と会場から姿を消しはじめた。


「ルキアール公爵家、血族の悲願でもあった竜皇国の天空都市にようやく帰還することができます。王家から婚約破棄していただき、短命で無念の死を受け入れてきた当主達の墓前にも良い報告が出来ます。ありがとうございました。今一括精算も全て無事に終了いたしました。明細は全てこちらにございます。ご確認ください」

魔空間から白銀の精算終了明細を長い長い魔法紙で国王様にお渡しした。

その書かれていた途轍もない金額と別紙には「国庫、地下資源の魔石、魔鉱石、宝石は枯渇の為足らず。代用として未発見鉱物と魔宝石を対価として自動掘削し枯渇。優良な地下資源が無いため、国宝庫から宝飾品、宝具、魔道具で代用。」と書かれていた。

ユキノアは口角をあげ

「魔道具の返却のみ混乱を避けるため一ヶ月後に自動返却といたしました。それではこれで私も御前を失礼いたします。移転。」

ユキノアもカーテシーをして光と共にゆっくりゆっくりと消えた。

「待ってくれ!お願いだ!話を聞いてくれ!」悲痛な叫び声は届かなかった。

其処にいる全員が状況把握が出来ず唖然とした状態だった。


王宮上空にある結界からひび割れた様な大きな破壊音と地面を揺るがす魔物の郡鳴が聞こえた。

残された貴族達が一斉に悲鳴と恐怖の混乱に陥った。

しかし国王の「冷静」「拡大」と魔法発動された声が響いた。

「静まれ!静まれ〜!」会場は無音となった。

「近衛隊は入口を閉鎖し王宮から誰一人出すな。今は時間がない。宰相!魔塔の長を呼び、、、あぁルキアール血族であったか、、、今いる魔術師を集めろ!此処にいる全員で結界のひび割れた箇所を重点に覆うイメージで魔力放出し修復する。「強制」「魔力放出」「修復」開始! 」


二時間程でひび割れた箇所は修復された。高位貴族と王族のみが顔色は悪かったが立っていた。殆どの貴族は魔力切れを起こしたが、国王が魔法切れで亡くならないように九割に留め意識を残す調整をしていた。魔力のない者は支え、皆座り込み肩で呼吸をしていた。

国王が辺境伯を呼ぼうとしたがルキアール血族であった事を思い出し飲み込んだ。

「皆良く耐え結界を守ってくれた。今の状態であれば二日は持つだろう。感謝する。我が国は今未曾有の危機状態である。王都のまわりを守っていた辺境伯は家族と共に既に竜皇国へ旅立った後だろう。誰ももうこの王都結界から出られない状態を理解してほしい。この度の第二王子の責任は重い。第二王子は王位剥奪とし、愛し子などと騙った女と共にベルモナド伯爵一族と血族は例外なく全員結界の魔力源として魔力檻に終身刑とする。連れて行け!」

魔力の無い近衛隊員が連れて行った。

「そして先に皆に伝えておく。状況を確認し整えた後、速やかに私と王妃も結界の魔力源となる終身刑とする。私達はルキアール公爵家に感謝する事も愚かに忘れ、ルキアール公爵家当主一人に犠牲を押し付け放置してきた。それでもルキアール公爵家と血族のおかげで何百年と生活が成り立っていたのだ。感謝し、消してそれだけは忘れてはならない。そして今、魔道具の返却を一ヶ月の時間を貰った。この間に全てを整えなければ私達の命はない。今はとにかく時間が惜しい。現状確認と情報を順次精査し整えるまで全貴族当主夫妻と成人の子、今日卒業した者は王宮待機とする。結界の乱れがあれば強制的に修繕を行う。民や兵から魔力提供の有志を募る。もう充分に理解出来たと思うが私達だけではこの大きな結界は永劫維持出来ない。結界を縮小する。国庫、地下資源の魔石、魔鉱石、宝石はもうこの国にはない。王族全員と王位継承権のある者の全ての個人資産を国庫に入れる。今後は魔物と戦い、その魔石で結界の維持が出来るように変換していかなければならない。明日朝までに民の住居移動、全貴族の爵位関係なく一律の縮小住居とする計画を発表する。今後魔物と戦う為の知識と準備が必要だ。貴族と民の身分は関係なく全員で魔物を倒していかなければならない。冒険者ギルド、商業ギルド、薬草ギルドとも協力してもらう為にもこの状況を作った私達貴族は民に詫びなければならない。そして貴族と民が一丸となりこの危機を乗り越えていこう。どうか皆の命を守る為に協力してほしい。」と国王夫妻、王太子夫妻は頭を深く下げた。


上空から「浮遊」してユキノアは王宮内を「透視」で見ていた。

結界の修復も少し手伝った。

国王と王太子は気付いており目があい黙礼された。

この結界は実は一月の間はは持つようにしてあった。知らせるつもりはないが。

これからの一月の間に、ユキノアが何度か結界を割り、全員で対応を学んで修復の練習をしていかなければならない。魔力を枯渇させた者は魔力量が増える。その準備期間として一ヶ月は必要と判断していた。貴族、そして民にも魔道具のない生活に戻る為に。


ユキノアは国王の執務室の机にルキアール公爵家の当主達の長年の結界の研究資料を「転送」した。

歴代の当主達が当主一人に国の結界を維持管理を任せる危険を陳情を続けていたが、国王まで届かなかった資料だ。

結界は当主一人に任せなくても出来る方法や、他国では当たり前のようにある魔壁の設置など、今後時間をかければやっていける内容の資料となっていた。

今まで全てルキアール公爵家の力を削ぎ落としたい者達によって破棄されていた。


真実の愛などと愚かな王が何代か続き、ルキアール公爵家当主の伝承の約定を愛の女神アーシャ様の神話にすり替え民までが感謝を忘れた。

もとから王族とルキアール公爵家当主との結婚などありえなかった。

ルキアール公爵家と血族はは竜人族であり、運命の番の相手でなければ子が出来ない。だからこそ伝承の約定にはルキアール公爵家には一切干渉しないと明記されていたのだ。

ルキアール公爵家と血族はこのあり得なかった婚約を竜皇国へ帰還できる最後の機会だと気がついた。

帰還の準備と共に愛幸国で何も知らされず一番最初に犠牲になる民を一人でも減らすことにした。

王家や貴族よりも先に、まず孤児院や今日食べることにも厳しい人達を優先した。魔力のない小さな子供でも作れる魔物退避薬草や魔力、魔石、魔道具がなくても生活が出来る便利な原始的な商品を教え作成させた。魔力が少しでもある者には少量の魔力で作成出来る簡易結界の魔法陣や薬草の知識を教えポーション作りなどさせた。ルキアール公爵家が商業ギルドや冒険ギルド薬草ギルドに適正価格で買い取るように、公爵領で取れる魔石や魔鉱石を優先的に卸す約束で徹底させた。

いつでも安全に愛幸国から脱出できるように。

自分達で生きる国を選べる自由を。

脱出する資金を手に入れてほしかった。

ルキアール公爵家の商会を中心に結界に頼らない生活を10年以上をかけて準備した。

商会を営む商人の中には伝承の約定を忘れずルキアール公爵家当主に感謝している者はいた。

何よりも知っていたのだ。伝承の約定だけではなく、公爵家の商会が何代にも渡り民に寄り添う信頼の置ける商会である事を。その当主の優しさを。

だからこそ第二王子の不貞の姿が街中で見られて半年たった頃からは拠点を他国に移し家族や従業員の安全を優先する者が増えた。

そして貴族の中にも伝承の約定を忘れず子や孫に伝えている者はいた。爵位の返上を考え領民達にも出来る限り伝え選ばせた。信じる者は家族と従事者の安全を優先させ他国に渡った者達を頼り国を出た。

正しく伝承の約定を理解できていたものはアーシャ愛幸国を離れてもういなかった。













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