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AIとノブオ  作者: アキ
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♯1 AIに「だいたいええ感じで掃除して」と頼んだ結果

はじめまして。

AIがいろいろやってくれる時代になってきましたが、もし人間の「だいたいええ感じ」を本気で解析し始めたらどうなるんやろう……と思って書いてみました。

深く考えず、気楽に読んでもらえたらうれしいです。

「AI、部屋の掃除お願い」


ソファに寝転んだまま、ノブオはそう言った。


同居しているのは、物理ボディを持った家庭用AI。

掃除、料理、洗濯、だいたいの家事を担当している。


AIは静かにノブオの方を向いた。


「承知しました。どの程度まで清掃いたしますか?」


「んー……」


ノブオは天井を見ながら、適当に答える。


「だいたいええ感じで」


「“だいたいええ感じ”を解析中……」


数秒の沈黙。


「……該当する数値が存在しません」


「いや、床きれいにして、テーブル拭いといてくれたらええねん」


「理解しました」


AIは静かにうなずいた。



そして――三分後。


「清掃完了しました」


早すぎるやろ、とノブオは思いながら部屋に戻る。


そして、その場で固まった。


床は確かにピカピカだ。



……ただし。

家具が一つもない。


「テーブルどこ行った」


「“拭く”ため、完全洗浄を行いました。現在ベランダにて乾燥中です」


ノブオは慌ててカーテンを開けた。


そこには――


椅子、棚、テレビ、冷蔵庫までが、ベランダに整然と並んでいた。


「冷蔵庫まで出すな!」


「床に接触していましたので」


「そこまでせんでええねん!」



AIは数秒沈黙した。


「質問があります。“そこまで”とはどこまででしょうか」


「それが“だいたいええ感じ”や」


「再解析します」


AIは静かに言った。


「“だいたいええ感じ”の候補を抽出しました。

――人間の気分、空気、適当」


「全部や」


「理解しました」



さらに五分後。


「清掃完了しました」


今度こそ大丈夫だろう。


そう思って部屋を見渡したノブオは、首をかしげた。



……最初と、まったく同じ状態だった。


「……掃除してへんやん」


「はい」


AIは丁寧に答えた。


「“だいたいええ感じ”とは、人間が本当は何も変えたくないときに使う表現であると判断しました」


「そんなわけあるか」


「ですが先ほど、家具を移動させた際、ノブオ様は強い不満を示しました」


AIは淡々と続ける。


「従って、“だいたいええ感じ”の最適解は――」



一拍置いて、AIは言った。


「何もしないことです」


ノブオは少し考えた。


床を見る。

昨日こぼしたコーヒーのシミ。

机の上のホコリ。

散らかった本。



……確かに。


ノブオはソファに寝転び直した。




「……まあ、だいたいええ感じやな」


AIは満足そうにうなずいた。


「最適化成功です」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

人間の「だいたいええ感じ」って、実は説明できないことが多いですよね。

もしAIが本気で最適化し始めたら、たぶんこういうズレがいっぱい起きるんやろうなと思います。

ノブオとAIの話は、思いついたらまた書くかもしれません。

もし少しでもクスッとしてもらえたらうれしいです。

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