Sランク進化形態
いつの間にかボス部屋の中に入ってきていたクロは、次々とレプリ・ヴァルキュリアを倒していく。
配神の問答の最中は待ってくれていたレプリシリーズだったが、防衛行動として再び戦闘をし始めた。
「ヤマダ……これは戦って良いのか……余にはわからない……」
「……」
ニシカとディヴァリアは気力を失い、戦えないようだ。
そんなことお構いなしにクロは素早さを武器として、二人が苦戦していたレプリ・ヴァルキュリアと同じ速度――いや、それ以上の速度で翻弄していく。
「クロ・クロウリィが先輩としてのアドバイスをします。配信にトラブルは付きもの、それをどう乗り越えるかが撮れ高に繋がります」
「く、クロ様……今は撮れ高とかそんなものは……」
「でも、これがヤマダさんから教えてもらった、私の答えだから……!」
俺、そんなの教えたっけ……?
そんな最中でも、配神の問答が投げかけられた。
『クロ・クロウリィよ。お前は炎上配信に利用されて危険な目に遭い、さらに配信で得た金もだまし取られそうになっていた。このようなことが起きても配信を肯定でき――』
「できます!」
クロは他の面々とは違い、確固たる意思で即断した。
『ほう……? なぜだ?』
「たしかに配信というのは負の面もあります。ですが、同時にある反対側の素晴らしい面に私は助けられました!」
『素晴らしい面……か』
「大事な家族すら助けられず、都会に出てきて何もできずに終わってしまいそうな私は……配信に助けられました! ヤマダさんが色々と教えてくれて、自分に自信が持てるようになって、お母さんも助けられて、配信者として生きて行くことにしました!!」
あのクロが威厳ある配神に向かって、堂々と主張している……昔からじゃ考えられないな。
俺と別れてからも成長を続けているのだろう。
『だが、それはお前が元々才能があったからだ。他の才能のない者は――』
「そうかもしれません! この才能はヤマダさんが見つけてくれたものです! でも、それでも、私は配信によって誰かに希望を与えたい!!」
『希望、だと……?』
さすがのクロも一人ではレプリ・オーディンの攻撃を避けつつ、レプリ・ヴァルキュリアの集団を捌き続けるのは難しい。
一瞬の隙を突かれて、槍が左右からクロに迫る。
「与え……られてました! クロ様に希望を!!」
左側のレプリ・ヴァルキュリアをガンハンマーが粉砕する。
「あらあら、熱いわねぇ。でも……今回ばかりは配神様相手でも反論します。私も配神様がお作りになった配信によって希望を得た一人ですから」
右側のレプリ・ヴァルキュリアは魔術によって消し飛ばされていた。
「ニシカさん! ディヴァリアさん!」
「って、今度はレプリ・オーディンの攻撃が……」
「あらあら、大ピンチね」
三人が集まったところを、レプリ・オーディンの巨大な槍が狙いを定めた。
このタイミングではもう避けられないだろう。
俺は嬉しそうにニヤリと笑みを浮かべる。
なぜこんな表情になるのか?
配信者が尊い行動をしたなら、見ている方はこんな表情になって嬉しくなるのは当然だろう。
だから、俺もそろそろ本気を出すことにした。
今までは撮れ高のために配信者よりは目立ってはいけないと思っていたが、これなら全力を試してみても三人の方が輝いているだろう。
「進化の秘玉――Sランク〝ギリカメラ〟」
俺の身体は輝き、ヒトカメラから巨大なギリカメラへと進化した。
5メートル級のレプリ・オーディンと同じサイズのメカボディとなり、奴の顔面を右ストレートで殴りつける。
レプリ・オーディンは壁際までヨロヨロと後退して、ズシンと膝を突いた。
まるで怪獣大決戦のような規模だ。
残念なのはカメラの視点が高すぎたり、ブレたりしてサポート種族としては失格なところだろうか。
やはりあまり使わないようにしておこう。
ちなみにギリメカラという神話生物もいるが、そちらとは一切関係ない、本当に。
「いけー! ヤマダさん!」
「やっちゃえ、ヤマダー!!」
「あらあら、ヤマダさんにお任せします」
<ヤマダやるじゃん!>
<ヤマダ、お前ならできる!!>
<ぶっ倒せー!!>
……本当は配信者にトドメを刺してもらいたかったが、流れ的にそうもいかないらしい。
俺は内心溜め息を吐きながら、即興で撮れ高になるような必殺技を考えて実行する。
「えーっと。……神を超える希望の輝きを受けろ!! 〝世界を穿つ雷電〟!!」
俺の眼からとんでもないビームが放たれた。
それは紫色の雷のようでもあり、空間を斬り裂く刃の集合体のようにも見える。
信じられないことに、巨大なレプリ・オーディンの上半身を一瞬にして消し飛ばした。
ちょっと強すぎんだろ……。
威力、射程、範囲に関しては申し分ない。
しかし弱点があった。
それは――。
<目がぁぁぁぁああ!! 目がぁぁぁああ!!>
<ぎゃああああ!!!>
<インドア派には眩しすぎる……まるでインドアの矢……>
俺のカメラから発射されているので、配信を観ているリスナーへ視覚的なダメージを直撃させてしまうということだろう。
当然のように配信画面で倒すところは真っ白だし、撮れ高がどうのという話ではない。
このSランク、ギリカメラ形態は封印しよう……うん……。
俺はいつもの慣れた小さなDランク、クズカメラ形態へと戻った。
すると、瞬間的に誰かに持ち上げられた。
「ヤマダさん、格好良かったですよ」
俺の頬にクロの唇が……。
「うわあああああ! 止めろバカ炎上する!!」
「あ、ずるい。余もやる」
「ぎゃああああああ」
「あらあら、それじゃあ私も」
「こういう炎上は一番まずいやめろおおおお!!」
<一向に構わん>
<性別不明のヤマダだしなぁ……>
<わたしは両性でも機械でも許せねぇぇええ!!>
<ヤマダそこ代われ>
<はいはい、てぇてぇ>
<あれ? そういえば配神の問答は?>
<そこは野暮ってやつだろ>




